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「でも、魔力が濃いっていいんですかね」
「いい、とは」
「いや、キャロルには強すぎるとか、そもそも魔力って人体になにか影響があったりとか」
「元々ユキ様とも相性は良さそうでしたし……確認もしましたけど、前よりキャロル様の淀みも薄くなったような気もします」
「それは遥陽のおかげでは」
「そうですね、一番は神子様のお力でしょう。でもユキ様のお力が関係してるのも確かかと」
どういうことだ、と頭に?を飛ばしていると、セルジュさんは微笑んで、そのままでいて下さいね、と言った。
そのままとは。
「ユキ様は素直な方ですねえ」
「えー、おれめちゃくちゃ捻くれてるよ」
「いえ……いや、まあそういうところも魅力的ですよ」
「くそ生意気とはよく言われます」
「ふふ、すみません、かわいらしいと思って」
「……皆おれのこと子供扱いするんですよねえ、キャロルよりお兄さんなのに」
「皆さんユキ様のことがおすきなんですよ、お城でも話題でしたよ」
「遥陽くらいでしょー、そんなん言ってるの」
大袈裟なんだから、と笑うと、そんなことはないですよ、とベンチに座るおれの前に膝をついた。
細く長い指が、おれの手を掬う。
その手をどこに、と思ってぼんやり見ていると、そのまま甲に唇を落とされる。
あまりにもそれが絵になるような綺麗な光景だったから、反応に遅れてしまった。
「えっ、せる……えっ」
「私もユキ様がかわいくて仕方がないです」
「ちょ、え、えー……?」
ふわりと笑っておれの膝に手を戻す。
からかわれてるのか、なにか意味があるのかはわからなかった。
でもジルとちょっと違う、何か違う。
欲を含むものか、親愛か。
セルジュさんのは後者だと、思う……けど。
思うけどさあ!こんな色んなとこにちゅっちゅするような生活圏に住んでなかったから!わからん!
「もおお……まじこの世界のひとたち攻撃力たかぁい……」
「ふふ」
「だ、だれにでもこんなことするんですか?」
「まさか」
「まさか!?」
「私だってひとを選びますよ」
微笑んだセルジュさんが妖しく見える。
ひゅっと喉が鳴る。
……美人の迫力は凄い。
「ユキ様はかわいいので特別です」
「んわー!もういいです!いいです!」
「ユキ様が信じて下さらないので」
「信じます、信じますから!おれこういうの向いてないのであんま言わないで下さい!」
「帰るのが名残惜しくなりますね」
さて、今日は意識して魔力を使いましょうか、と何もなかったように立ち上がる。
感情についていけない。
おれも同じように立ち上がり、昨日やったことと違うのかを訊く。
昨日は別館周りに結界のようなものを張った。それ以上どうしたらいいかわからない。
「お城の方や、そこを超えて、ユキ様が掛けられる範囲は全部」
「へあ」
「大丈夫です、私もみてますので、思い切りどうぞ」
「お、思い切り」
いきなり凄いこと言うな、絶対これおれ倒れるやつだろ……遥陽もいないってのに。
でもおれに断る選択肢はない。
今日で訓練が最後になるなら、なにか少しでも掴んでおきたい。
「やりますよ!やります!骨は拾ってくださいね!」
「骨?」
ぽかんとするセルジュさんを尻目に、おれは思い切り息を吸い込んだ。
◇◇◇
「……?」
目を覚ました時にはもう窓から見える空は夕暮れだった。
……朝からセルジュさんと訓練していた筈。
しっかりとベッドに寝かされていた。
「あ、起きましたね」
「……セルジュさん」
声のする方を向くと、セルジュさんが安心したようにおれの頬に触れてきた。
ちょっと冷たい手だな、と思った。
「おれ……」
「倒れるだろうなとは思ってたんですけど。それはもう綺麗に」
「あ、やっぱり倒れたんですね」
「ええ」
それにしてもたっぷり寝たものだ。セルジュさんの最終日だというのに。
のっそり起き上がって、頭を下げる。出来の悪い生徒で申し訳ない。
「いえ、ユキ様の力は凄かったですよ」
「……え?」
「今朝ので国の……そうですね、三分の一くらいは覆えたんじゃないでしょうか」
「さんぶんのいち」
それがどれくらいの規模がわからない。
この国がどれくらいの大きさなんてわからないし。
でもほぼド素人のおれがそれだけ出来たのなら上出来では。
「またユキ様にも会いに来る予定ではありますが」
「あ、はい」
ぎし、とベッドの端に腰を掛け、セルジュさんがおれの頭も撫でてくれた。
魔力を最小限で使えるように練習すること、強い力を使う時は遥陽なりジルなり信頼出来る相手の前で使うように念を押される。
「……おれ、遥陽はその、当たり前なんですけど……ジルも信頼出来てるんでしょうか」
「……え?それはそうでしょう」
何を言ってるんだというようにまじまじと見られた。
「貴方、そんなことジル様の前でそんなこと言ったらだめですよ」
「いやそんな、変なことは言いませんけど」
「いえ、だってユキ様……」
「え?」
「……鑑定させて頂いた時に、指をご自分ではなくジル様に切って貰ったでしょう」
「うん?」
「……普通は傷付けられない筈のユキ様の指を切れたのはそうジル様に許したからでしょう?」
「……あっ」
「いい、とは」
「いや、キャロルには強すぎるとか、そもそも魔力って人体になにか影響があったりとか」
「元々ユキ様とも相性は良さそうでしたし……確認もしましたけど、前よりキャロル様の淀みも薄くなったような気もします」
「それは遥陽のおかげでは」
「そうですね、一番は神子様のお力でしょう。でもユキ様のお力が関係してるのも確かかと」
どういうことだ、と頭に?を飛ばしていると、セルジュさんは微笑んで、そのままでいて下さいね、と言った。
そのままとは。
「ユキ様は素直な方ですねえ」
「えー、おれめちゃくちゃ捻くれてるよ」
「いえ……いや、まあそういうところも魅力的ですよ」
「くそ生意気とはよく言われます」
「ふふ、すみません、かわいらしいと思って」
「……皆おれのこと子供扱いするんですよねえ、キャロルよりお兄さんなのに」
「皆さんユキ様のことがおすきなんですよ、お城でも話題でしたよ」
「遥陽くらいでしょー、そんなん言ってるの」
大袈裟なんだから、と笑うと、そんなことはないですよ、とベンチに座るおれの前に膝をついた。
細く長い指が、おれの手を掬う。
その手をどこに、と思ってぼんやり見ていると、そのまま甲に唇を落とされる。
あまりにもそれが絵になるような綺麗な光景だったから、反応に遅れてしまった。
「えっ、せる……えっ」
「私もユキ様がかわいくて仕方がないです」
「ちょ、え、えー……?」
ふわりと笑っておれの膝に手を戻す。
からかわれてるのか、なにか意味があるのかはわからなかった。
でもジルとちょっと違う、何か違う。
欲を含むものか、親愛か。
セルジュさんのは後者だと、思う……けど。
思うけどさあ!こんな色んなとこにちゅっちゅするような生活圏に住んでなかったから!わからん!
「もおお……まじこの世界のひとたち攻撃力たかぁい……」
「ふふ」
「だ、だれにでもこんなことするんですか?」
「まさか」
「まさか!?」
「私だってひとを選びますよ」
微笑んだセルジュさんが妖しく見える。
ひゅっと喉が鳴る。
……美人の迫力は凄い。
「ユキ様はかわいいので特別です」
「んわー!もういいです!いいです!」
「ユキ様が信じて下さらないので」
「信じます、信じますから!おれこういうの向いてないのであんま言わないで下さい!」
「帰るのが名残惜しくなりますね」
さて、今日は意識して魔力を使いましょうか、と何もなかったように立ち上がる。
感情についていけない。
おれも同じように立ち上がり、昨日やったことと違うのかを訊く。
昨日は別館周りに結界のようなものを張った。それ以上どうしたらいいかわからない。
「お城の方や、そこを超えて、ユキ様が掛けられる範囲は全部」
「へあ」
「大丈夫です、私もみてますので、思い切りどうぞ」
「お、思い切り」
いきなり凄いこと言うな、絶対これおれ倒れるやつだろ……遥陽もいないってのに。
でもおれに断る選択肢はない。
今日で訓練が最後になるなら、なにか少しでも掴んでおきたい。
「やりますよ!やります!骨は拾ってくださいね!」
「骨?」
ぽかんとするセルジュさんを尻目に、おれは思い切り息を吸い込んだ。
◇◇◇
「……?」
目を覚ました時にはもう窓から見える空は夕暮れだった。
……朝からセルジュさんと訓練していた筈。
しっかりとベッドに寝かされていた。
「あ、起きましたね」
「……セルジュさん」
声のする方を向くと、セルジュさんが安心したようにおれの頬に触れてきた。
ちょっと冷たい手だな、と思った。
「おれ……」
「倒れるだろうなとは思ってたんですけど。それはもう綺麗に」
「あ、やっぱり倒れたんですね」
「ええ」
それにしてもたっぷり寝たものだ。セルジュさんの最終日だというのに。
のっそり起き上がって、頭を下げる。出来の悪い生徒で申し訳ない。
「いえ、ユキ様の力は凄かったですよ」
「……え?」
「今朝ので国の……そうですね、三分の一くらいは覆えたんじゃないでしょうか」
「さんぶんのいち」
それがどれくらいの規模がわからない。
この国がどれくらいの大きさなんてわからないし。
でもほぼド素人のおれがそれだけ出来たのなら上出来では。
「またユキ様にも会いに来る予定ではありますが」
「あ、はい」
ぎし、とベッドの端に腰を掛け、セルジュさんがおれの頭も撫でてくれた。
魔力を最小限で使えるように練習すること、強い力を使う時は遥陽なりジルなり信頼出来る相手の前で使うように念を押される。
「……おれ、遥陽はその、当たり前なんですけど……ジルも信頼出来てるんでしょうか」
「……え?それはそうでしょう」
何を言ってるんだというようにまじまじと見られた。
「貴方、そんなことジル様の前でそんなこと言ったらだめですよ」
「いやそんな、変なことは言いませんけど」
「いえ、だってユキ様……」
「え?」
「……鑑定させて頂いた時に、指をご自分ではなくジル様に切って貰ったでしょう」
「うん?」
「……普通は傷付けられない筈のユキ様の指を切れたのはそうジル様に許したからでしょう?」
「……あっ」
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