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 やんわりと腕を剥がされる。
 行き場のない手に、ジルの服の裾を掴めば微笑まれた。
 どうしよう、こんなに壊れ物のように扱われたようなことなんかないんじゃないかって思う。
 やることなすこと全てにジルは赦してくれそうで、嬉しくてしあわせで、ちょっとこわい。
 情けないとこ、今から見せてしまうっていうのに。

「っあ……!」
「どこもかしこも薄いな」
「わかっ、てる!あした、から、ちゃんと食べる、からっ……ぅんっ」
「そうだね、折れてしまわないか心配になる」
「あっ、や、そこ、やだっ……」

 脇腹、腹、と這っていた手が、胸元を探り出す。
 こないだもそこ、触ってた。
 こんなとこ、男だと擽ったいだけで……
 おれ、結構擽ったがりだから、そういうとこ、やめてほしい、笑っちゃう。

「っあ……?」
「こっちでも快くなろうね」
「よく、なんかっ……あ、あつ、んぁ」

 じわじわ熱くなる気がする。
 触られてるからだ。だから、熱が集まって……

「や、や、なんかっ……なんか、かゆくなるっ……」
「そう?気持ち良くない?」
「やあ、引っ掻かないでっ……あ、やだっ舐め……!」

 引っ掻くなと言った瞬間に舐められた。
 当然だが、そんなとこ舐められたことがない。
 ぬるりとした熱いものが、おれの胸の突起を、舐めて、転がして、硬い歯で軽く噛まれて、吸われる。

「あ、あぅ、あ、やだ、なんっ……そこ、びりびりするう……っ」

 空いた左胸は指で摘まれて捏ねられて、指の腹で潰される。なんで、なんでそんなとこ、男なのに、感じちゃうの。
 声が止められない。
 痒くなって、びりびりするから、だから、触られたくないのに、触ってほしくなる。
 でもそうすると、触られてない筈の下半身まで響く。

 触って欲しい、でも恥ずかしい、でも触ってくんないと収まんない。
 優しく舐められるだけじゃ、足りない。

「ユキは噛まれるのがすきなのかな」
「ちがうう、いたいのやだあ……っ」
「でもここ、軽く噛むと気持ちよさそう」
「ちがうっ、かゅ、痒いのっ、ジルが触るからあ……!」
「そうか、俺の所為か」

 そう言いながらも嬉しそうにしている。怒ってるのになんでそんな顔をするのか、と見ていると、俺がユキを乱しているのが嬉しい、と言う。
 こわい、そんなの日本人なら言わない。おれ、こんな恥ずかしい言葉をずっと浴びせられるのだろうか。甘ったる過ぎて胸焼けしそう。

「ん、ッ、あ、そこ、もういい、もぅいいからあ……!」
「硬くなってきてかわいい」
「やあ……!」

 潰すな、引っ張るな、おかしくなっちゃう。
 おれ、そんなとこが弱くなっちゃう、やだ、胸でイくなんてやだ、男としてのプライドが……

「おねが……っ、そこや、ねえ、ジル、や、んぅ、はっ……ぁ、下、下がいいっ……」

 まさかこんなおねだりをする羽目になるとは思わなかった。
 でももう爆発しそう、あとちょっと、そこを触って貰えたら、イける。
 胸でイくのはやだ。やだし、なんかその、決定打が足りない。むずむずそわそわするだけで、それが酷くもどかしい。

「心配だな」
「っえ……なに、がっ?」
「ユキは快楽に弱いようだ」
「……ッ」

 誰だってそうだろ、と言いかけて止めた。
 多分それは誤解を生む。
 だから、ジルが触るからだと言うと、口許が緩んだ。どうやら正解だったようだ。

「ね、おねがぃ、そこじゃ、足りない、も、イきた、い……」
「そんなにかわいく言われたら仕方ない、ここはまた今度にしよう」
「ぅあッ……」

 きゅっと軽く摘んで、それからジルの手は下腹部に伸ばされた。
 自分から望んだくせに、つい腰が逃げてしまう。今から触れられるところが、胸なんかより気持ちいいのを知っているから。

「あ、」

 期待をするように、触れられる前に声が出てしまった。
 恥ずかしくて、自分のお腹側をみることができない。
 多分、というより確実に自分のものは勃ってる。
 全裸だから当然だけど、それをジルに見られてると思うと、居た堪れない。

「っん!」

 ぐちゅ、と濡れた音がした。
 え、嘘、もうそんなに?やっと今触られたのに?
 頭に血が昇ってしまう。恥ずかしい、おれ、普段そんなにならない、そんなにすけべじゃない。
 ジルが悪い、変なとこばっかり触るから。おれが変なんじゃない。

「うっ……」
「えっ」
「やだあ……う、うう」
「ごめん、ここ嫌だった?でも下って」

 泣き出してしまったおれに、ジルが慌てる。
 髪を撫でて、大丈夫、落ち着いてと優しくあやしだした。

「ちがう、やだ、やだじゃない、ちが、こんなの……こんなの、なったことない、ジルだけだからあ……」

 こんなことなったことない。今日だけ。今日だけ特別だから。
 だから幻滅したりがっかりしないでほしい。
 本当に、ここに来てから、あの日と、それから今日しかこんなことやってない。だから敏感になっちゃうのは、感じやすくなっちゃうのは仕方のないことで、おれがおかしいんじゃない。

「うう、やだ、イきたいのにぃ……おれ、いつも、こんな変態じゃないよお……」

 躰が熱い。なのに淫乱だと思われたくないなんて、我ながらなんて面倒臭いんだろう。

「大丈夫、俺がユキを気持ち良くさせたいんだ、だから嬉しいよ、とても。気持ち良くなってくれてありがとう」

 おれに寄り添うように横になって、頭を抱えられる。こんなの本当にあやされてる子供だ。
 そのまままた、一回出しておこう、と手を動かされた。
 ジルの胸に抱え込まれて、やっぱりぐちゃぐちゃと濡れた音と、ジルの心臓の音が聞こえる。
 逃げるようにジルの胸にぐいと頭を埋めた。
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