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 いつでもお勉強のお手伝いさせて頂きますね、と笑顔を向けるアンヌさん。
 うう、やっぱり罪悪感がすごい。こんな良い人に怯えてたなんてなんておれは最低な奴なんだ。

「下に降りましょうか」
「はい!」

 下には厨房、応接室、そしてお風呂。大浴場……という程ではないが、家庭用のお風呂と考えると十分過ぎる程広い。
 ちょっとくらいなら泳げそうだ。入りたい。
 ただお湯は張ってなかった。
 残念そうにしてると、アンヌさんが後で準備させると言ってきた。
 お風呂掃除は危なさそうだし、暇だしおれやるけど、と伝えると、それは私達の仕事なので取ったら駄目だと言われてしまった。
 ……そういうものなのか。

「ジル様からは聞いてると思うのですが、数人程清掃等でここに使用人を入れますが、私が見てる者だけですので、ユキ様は安心なさって下さいね」

 そういえばそんなことも言ってたな、と思って頷く。
 アンヌさんの選んだ人なら大丈夫だろう。
 この数時間でアンヌさんのことめちゃくちゃだいすきになってしまった。

「これで部屋って終わりですか?」
「そうですよ」
「二階建てかー、広いなあ……あ、そうだ、あの、庭って出ても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、こちらからどうぞ」

 案内されて出た庭は、上から見たのとは少し印象はかわるが、やっぱり綺麗だった。
 ベンチと、ブランコもある。ここでの昼寝も気持ち良さそう……
 天気がいい時はここで本を読んだりお昼を食べるのもいいかもしれない。
 小さな噴水もあって、お金使ってるなって感じ。
 ここだけ見るとめっちゃくちゃ平和~!って思っちゃうな。

「お昼は外で召し上がりますか?」
「!アンヌさんなんでわかるんですか!?」
「いやー、ユキ様わかりやすいなー」
「えっ顔に出てました?」
「外気持ちいいなーって顔してますよ」
「あああ、そんな顔に出てるとは……直した方がいいですよね」
「いや、かわいくていいと思いますよ」
「モーリスさんほんと弟扱いですね」
「うちの弟達よりかわいいですよ」

 褒められてる気がしない。
 少しむくれてベンチに座ると、ちょっと待ってて下さいね、とモーリスさんが離れる。
 どうしたのかなと思うと、大きな傘みたいな……これパラソルでいいのかな、持ってきてくれて、影を作ってくれた。
 あーこれいい、すごくいい。すっごい寝れそう。
 ハンモックとかで寝てみたいなー、流石に駄目かなー。

「お昼にはまだ少し早いですね」
「さっき朝食べたばかりですからねー」
「アンヌさん忙しいですか?」
「私は暫くユキ様の面倒を見るよう仰せつかってるので、ユキ様にお付き合い致しますよ」
「じゃあこっち座って下さい!」

 アンヌさんをベンチに座らせる。
 暫くおれの話に付き合って貰おうじゃないか。

「ジルに色々話訊いていいって言われてるんで!」
「はいはい、何でしょう」
「おれがここにいる理由は知ってるんですよね」
「……そうですねえ」
「遥陽のことは教えて貰えないってことはわかりました、なのでこの国のことを聞こうと思って!」
「まあ、早速今日からお勉強なされるのですね」

 ユキ様は頑張り屋さんですねえ、と褒められて、こんなこと、他の人なら馬鹿にしやがって!ってなるのに、アンヌさんだと素直に嬉しい。

「冷たいお茶でも用意してきましょうかね」
「モーリス様、私が」
「いえいえ、ユキ様のお相手お願いしますね」

 気を利かせたのか、モーリスさんが席を外した。
 モーリスさんにも答えて貰いたいし、別にいいんだけどな。
 まあそれは戻ってきてからでいいか。

「遥陽……えっと、神子の召喚って割とよくあるんですか?」
「そんなに頻繁ではないですねえ……条件があるのですよ」

 私も詳しくはわかりませんが、と説明してくれた。
 どうやら幾つかの条件の他に、数十年に一度位で召喚の儀式があるらしい。
 この国では基本的に王族には魔力があり、たまに王族以外にも魔力持ちが生まれるが、それは稀で、だからこそ王族の力が強いこと。
 だけど、強い癒しの力を持つものは神子以外にはいないとのことだった。
 薬とかはあるし、軽い治癒くらいは出来るけど、神子の力は桁違いらしい。
 遥陽めちゃくちゃ忙しそうじゃん……と話を聞いて呆然としてしまった。

「おれ、なんも出来ないのばかみたい」

 当然魔力とか治癒とかそんなのなんもないし、本当にただ、遥陽とここに来ただけ。
 近くで支えることすら出来ない。
 おれがいなかった方が、心配事とか少なかったんじゃないか。
 ……もしかしたらおれの処遇とかのせいで、遥陽がやりたくないことを強要されたりとかしてないだろうか、優しい奴だから、そういうの気にしちゃうと思うんだよな……
 おれだって、お前が何かしなきゃ遥陽をどうにかするぞって言われたらその通りにするしかないし……

「難しい顔になってますよ」
「あっ」
「どうぞ」
「あら美味しそうねえ」

 モーリスさんがよく冷えたアイスティーを持ってきてくれた。
 レモンだかオレンジだかの果物が入っていて、ミントみたいなものまで飾ってあってカフェのものみたい。
 これを用意したのがアンヌさんなら何も思わなかったのに、このお洒落な飲み物をこの大きなごつごつした手で用意してくれたのだと思うとちょっと笑ってしまった。
 これはあれだ、ギャップ萌えってやつだな。
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