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アルベールも機嫌が良い。
ぎゅうぎゅうとおれの手を掴む手を開いたり閉じたりとこどもみたいだ、と思った。
もし本当に、ふたりがイヴの小さな時から恋心を抱いていたというのなら、何も知らずに生きてきたイヴよりも苦しかったかもしれない。
そんなに小さな頃から、自分の恋は叶わないとわかっていただなんて。
イヴだってジャンに冷たくされるとさみしかった。けれどそれを耐えられたのは、イヴ自身はジャンへの恋心はなかったから。勿論アルベールとレオンの力も大きいけれど。
兄だから、弟の婚約者だからと幼かったふたりが我慢していたとしたら。
あの時のふたりを思い出すと胸がきゅっとした。
大きく育ち過ぎた。
「……えっ」
「見なくていいと言ったのに」
「えっ、いや、えっ……」
アルベールは背後からの挿入だったから、ナカに入った時の感覚しかわからなかった。
同じように入るか?入んないよね?と心配したけれど、背で感じた重量と、視界に飛び込んだものではまた感覚が違う。
そんなところに、何かを挿れたことはない。今回のことが特別だ、先日のレオンの指が初めて。
それでいたって、なんか違う、と思ったのだ。
……こんなに大きくなかったと思う。
えっ、大きくない?ねえ、こんなものだったっけ?アルベールはどうだった?見てないからわからない。
こんなもの、ナカに入ってた?入る?おれのナカに収まる?やっぱり無理じゃない?
何だか視線を外すこともこわくて、じっと見てしまう。逃げる訳もないというのに。
よくよく考えると、他人のものをまじまじと見る機会がなかった。普通がわからない。基準が自分しかない。
その自分のものより明らかに大きくて、慣らされた指を考えるとこれ指何本分だ?なんて考えてしまった。
思わず腰が逃げた。物理的に。
すぐ後ろにアルベールがいるし、ほぼ横になった状態ではそう動けなかったけれど、わかりやすいくらい仰け反ったおれに、ふたりとも笑った。
「そんなにこわがるな、つい先程までアルベールのものを咥えていただろう」
「ぅあ……」
「見てるのがこわいなら瞳を隠してあげようか?」
「うゔ……」
少し呆れたようなレオンと、少しずれた配慮をするアルベール。視界を塞がれたらそれはそれで……今更もっとこわいかもしれない。
まだ視線を逸らせないおれに、レオンが止めておくか?と声を掛けた。
アルベールの時には逃げないようやれ、なんて言った癖に。
「お前に無理強いをすることではないしな」
「む、むり、な、わけじゃあ……」
少しさみしそうに言うものだから、罪悪感が湧いてしまう。
アルベールは許したのに、レオンはだめなんて言えない。言えない、けど。
やっぱり腰が引けてしまう。
「後ろ……そうだ、また、せ、背中、から……うう、それもこわい、ええと、」
慌てきった状態で何も良い案が思いつく訳もなく、でも先にレオンを傷付けたくないという気持ちの方が先に立ってしまい、結局採用したのはアルベールの案だった。
アルベールの手に繋がれたまま、自分の視線をその手で遮る。
なんだか間抜けなことをしてるな、と自分でもわかった。ふふ、と笑い声も聞こえた。かわいい、と呟く声も。
「だ、大丈夫です、レオンさま、も、は、はいる……」
時間をかければもっとこわくなる。
それもわかっていた。
だからもうひと思いにしてほしい。レオンの言う通り、つい先程までアルベールが入っていた場所だ、全く入らないなんてことはないだろう。
「良い子、大丈夫、こわくないからね」
「……ん、」
「レオンさまが優しくするよう見張っててあげる」
「ン」
こんな時に、愛莉が注射をこわがっていたのを思い出す。
明日のよぼーせっしゅ、学校行きなくないな。おにーちゃんこわくない?大きくなったらこわくなくなるのかな?
いやだなあ、行かなきゃだめ?と駄々を捏ねる愛莉に、針を見てしまうからこわいんだ、刺される瞬間、違うところを見てたらいい、と言うと、じゃあおめめぎゅうしてるね、なんて返されたことがある。
まさかこんな時にそれを思い出すなんて。見なきゃ多分、大丈夫だ。
「……レオンさまがいや、なんじゃ、ないからね……」
それは伝えておかなきゃ、と思ったのだけれど、声は震えていた。
視界が遮られているからだろうか、ちょっとした笑い声にも敏感になってしまってる気がする。
わかってるよ、と言うレオンの声は少し、堪えるように笑いが混じっていた。
ぐ、と足を広げられて、すぐそこにレオンの体温を感じる。
来る、と息を呑んだ。
力を抜いて、とは言われなかった。
言われたってどうせその通りになんて出来ない。
「ッん、う!」
「少し触ってやろうな、力も抜けるだろう」
「あ、う、……っう、ん……っ」
予期していたものとは違うところに触れられて、びく、と肩が震えた。
胸元に大きな手が這って、突起を押し潰される。少し擦られるだけで、甘ったるい声が漏れた。
アルベールの方が丁寧に触れる。でもレオンのほんの少し性急な触れ方も、それはそれで嫌じゃないのだ。
大きな手があたたかくて安心出来るのは、そのひとを信頼しているから。
ぎゅうぎゅうとおれの手を掴む手を開いたり閉じたりとこどもみたいだ、と思った。
もし本当に、ふたりがイヴの小さな時から恋心を抱いていたというのなら、何も知らずに生きてきたイヴよりも苦しかったかもしれない。
そんなに小さな頃から、自分の恋は叶わないとわかっていただなんて。
イヴだってジャンに冷たくされるとさみしかった。けれどそれを耐えられたのは、イヴ自身はジャンへの恋心はなかったから。勿論アルベールとレオンの力も大きいけれど。
兄だから、弟の婚約者だからと幼かったふたりが我慢していたとしたら。
あの時のふたりを思い出すと胸がきゅっとした。
大きく育ち過ぎた。
「……えっ」
「見なくていいと言ったのに」
「えっ、いや、えっ……」
アルベールは背後からの挿入だったから、ナカに入った時の感覚しかわからなかった。
同じように入るか?入んないよね?と心配したけれど、背で感じた重量と、視界に飛び込んだものではまた感覚が違う。
そんなところに、何かを挿れたことはない。今回のことが特別だ、先日のレオンの指が初めて。
それでいたって、なんか違う、と思ったのだ。
……こんなに大きくなかったと思う。
えっ、大きくない?ねえ、こんなものだったっけ?アルベールはどうだった?見てないからわからない。
こんなもの、ナカに入ってた?入る?おれのナカに収まる?やっぱり無理じゃない?
何だか視線を外すこともこわくて、じっと見てしまう。逃げる訳もないというのに。
よくよく考えると、他人のものをまじまじと見る機会がなかった。普通がわからない。基準が自分しかない。
その自分のものより明らかに大きくて、慣らされた指を考えるとこれ指何本分だ?なんて考えてしまった。
思わず腰が逃げた。物理的に。
すぐ後ろにアルベールがいるし、ほぼ横になった状態ではそう動けなかったけれど、わかりやすいくらい仰け反ったおれに、ふたりとも笑った。
「そんなにこわがるな、つい先程までアルベールのものを咥えていただろう」
「ぅあ……」
「見てるのがこわいなら瞳を隠してあげようか?」
「うゔ……」
少し呆れたようなレオンと、少しずれた配慮をするアルベール。視界を塞がれたらそれはそれで……今更もっとこわいかもしれない。
まだ視線を逸らせないおれに、レオンが止めておくか?と声を掛けた。
アルベールの時には逃げないようやれ、なんて言った癖に。
「お前に無理強いをすることではないしな」
「む、むり、な、わけじゃあ……」
少しさみしそうに言うものだから、罪悪感が湧いてしまう。
アルベールは許したのに、レオンはだめなんて言えない。言えない、けど。
やっぱり腰が引けてしまう。
「後ろ……そうだ、また、せ、背中、から……うう、それもこわい、ええと、」
慌てきった状態で何も良い案が思いつく訳もなく、でも先にレオンを傷付けたくないという気持ちの方が先に立ってしまい、結局採用したのはアルベールの案だった。
アルベールの手に繋がれたまま、自分の視線をその手で遮る。
なんだか間抜けなことをしてるな、と自分でもわかった。ふふ、と笑い声も聞こえた。かわいい、と呟く声も。
「だ、大丈夫です、レオンさま、も、は、はいる……」
時間をかければもっとこわくなる。
それもわかっていた。
だからもうひと思いにしてほしい。レオンの言う通り、つい先程までアルベールが入っていた場所だ、全く入らないなんてことはないだろう。
「良い子、大丈夫、こわくないからね」
「……ん、」
「レオンさまが優しくするよう見張っててあげる」
「ン」
こんな時に、愛莉が注射をこわがっていたのを思い出す。
明日のよぼーせっしゅ、学校行きなくないな。おにーちゃんこわくない?大きくなったらこわくなくなるのかな?
いやだなあ、行かなきゃだめ?と駄々を捏ねる愛莉に、針を見てしまうからこわいんだ、刺される瞬間、違うところを見てたらいい、と言うと、じゃあおめめぎゅうしてるね、なんて返されたことがある。
まさかこんな時にそれを思い出すなんて。見なきゃ多分、大丈夫だ。
「……レオンさまがいや、なんじゃ、ないからね……」
それは伝えておかなきゃ、と思ったのだけれど、声は震えていた。
視界が遮られているからだろうか、ちょっとした笑い声にも敏感になってしまってる気がする。
わかってるよ、と言うレオンの声は少し、堪えるように笑いが混じっていた。
ぐ、と足を広げられて、すぐそこにレオンの体温を感じる。
来る、と息を呑んだ。
力を抜いて、とは言われなかった。
言われたってどうせその通りになんて出来ない。
「ッん、う!」
「少し触ってやろうな、力も抜けるだろう」
「あ、う、……っう、ん……っ」
予期していたものとは違うところに触れられて、びく、と肩が震えた。
胸元に大きな手が這って、突起を押し潰される。少し擦られるだけで、甘ったるい声が漏れた。
アルベールの方が丁寧に触れる。でもレオンのほんの少し性急な触れ方も、それはそれで嫌じゃないのだ。
大きな手があたたかくて安心出来るのは、そのひとを信頼しているから。
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