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 思わず胸元を隠したおれに、ふたりはそこじゃない、と苦笑する。
 まあ準備はしないといけなかったからな、と言うレオンに、そうですねとアルベールが頷いた。
 準備……?
 不安そうに見上げるおれににっと笑うと、痛くないようにするからな、と頭を撫でた。
 ……痛くないように?

「……っひ、」
「大人しくしないと痛むぞ」
「まっ、や、えっう、そこはっ……」
「アルベール、左足も押さえておけ」
「はい」

 暴れるおれの両足をふたりして押さえて、レオンが手にした小瓶を傾ける。
 ひんやりとした液体に、びく、と腰が跳ねる。
 なにそれ、と口から出たけれど、本当はわかってる。わかってる上で、それでもそう言ってしまう。

「ま、待って、おれ、その、……そこはっ」
「触ったことあるか?」
「ある訳なっ……」
「じゃあ大人しくしときな」
「ひっ……う、」

 レオンが触れているのは尻だ。それも知ってる。
 男同士の時はそこを使うと、知識だけはあった。でもそれを自分が経験するなんて思ったことはなかった。

「や……や、アル兄さま……」
「ん、こわい?」
「こわいっ、だっ、て、そこ、触ったことっ……」
「大丈夫、レオンさまが意地悪しないようにちゃんと見ててあげるから」
「う、ゔ、あ、やら、指ぃっ……あ、ゔ、ゔ~……ッ」

 撫でていた指が挿入れられた感覚に背中がぞわぞわした。異物感。
 使われた小瓶の中身は恐く潤滑油で、それのお陰でぬるりと入ったけれど、圧迫感がすごい。
 何も経験のない躰で、多分まだ指も一本しか挿入れられてない、それでもこわいくらいの存在感だった。
 その指の主はレオンだとわかっているのだけれど、ついアルベールの方へ助けを求めてしまう。
 アルベールがイヴを助けない訳がないと知ってるからだ。
 ただ、そうされて、レオンが面白くないのもわからない訳ではなかったのに。

「ふ、う、ンん、ぁう……くるし、あ、アル兄さまっ……」
「アルベールばかり呼ばれるのは癪だが」
「ゔ……!?」

 指を抜かれ、腰を抱えられたかと思うと、ぐるりと躰をひっくり返された。
 伸ばされた腕で受け止められる。すぐ目の前に、アルベールの整ったかおがあった。
 にこ、と微笑まれると、胸がぎゅっとなる。こんなことをされてるというのに、その表情にどきどきしながらも安心してしまう。

「まあ仕方ないか、ほら、アルベールの肩でも抱いておけ」
「ん、え、っう!」

 開いた膝で立たされ、突き出した腰に大きな手が触れたかと思うと、再度指が挿入される。
 レオンに言われるまでもなく、思わずアルベールの肩に抱き着くと、頭を撫でられた。
 情報量が多い。あっちからこっちから手が伸びる。
 自分が何をすればいいかわからない。
 されるがままでいいのかな、ふたりはそれでいいのかな。おれの躰から魔力を出すことが目的なら、それでいいのだろうけど。

「はっ、あ、ゔ、やあ……!」
「狭いな」
「そりゃあそうでしょう、優しくしてあげて下さいね」
「十分優しくしてやってると思うのだが」
「レオンさまが優しく触れるのはイヴと植物だけですものね」
「お前にも優しくしてるだろう」
「ゔ~……!」

 おれを挟んでいちゃつくな、さっきまではそれでいい、それがいいと思ってたけど、今はなんか、その、ちゃんとおれに集中しろと言いたい。もうこっちは余裕がないのだ。
 いや、そんなにじっくり見られるとそれはそれで困る、けど。でもちゃんと気にしてほしい。痛くしないでほしい。優しくしてほしい。ずっとおれのこと見てて、見ないで、頭撫でてて。

「そろそろ解れてきました?」
「んぅ……!」
「今日は二本といったところか」
「イヴ、痛くない?」

 アルベールがしがみつくおれの背を撫で、二本目の指を咥えたことに対してだろうか、そっと問う。
 潤滑油のお陰か、レオンの加減なのか、痛くはない。
 でも本当に、こんなところで気持ちよくなるものなのか。
 いまのところ、苦しさと異物感しかないけれど。

 その通り、痛くはないが苦しいと伝えるおれに、そうか、と返事をしたのはアルベールではなく背後のレオンだった。
 ……ここは正直に伝えたらだめなところだったか。変に火をつけてしまったのだろうか。

「ンっう、う、あ、ひあ……っ」
「今まではただ拡げてただけだよ、そろそろお前も気持ちよくしてやらないとな」
「はっ、あゔ、あ、ッなに、これえっ、あっ声っ、出ちゃ……」
「そうだね、かわいい声たくさん聞かせてね」
「やっ、あ、ぅあ!」

 ぐちぐち水音を立てながら少しずつ動かされてた指が、ナカの方で折り曲げられる。
 何かを探すように動く指先に、全身がぞわ、と鳥肌が立ち、それからすぐにレオンはおれの弱いところを見つけてしまった。

「ンぅゔ、あ、ッく、ぅ……やっ、あ、やだ、や、あー……」

 ぎゅうとアルベールに抱きつくおれに、頬をつけながら、宥めるように気持ちいいね、そのまま全部、出しちゃおうか、と柔らかい声が撫でる。
 今度は我慢するとかしないとか、そんな問題じゃなかった。
 押し出される。
 何も出来ないまま、レオンの指とアルベールの体温に、ただ何かを無理矢理出させられるような。
 そんな、感覚だった。
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