上 下
80 / 143
テンペトゥス・ノクテム

希望の光

しおりを挟む


「遅れてしまってごめんなさい。もう大丈夫だから」

鈴のような声が響いた。

うっすらと目を開くとナディア先生が私たちとテンペストゥス・ノクテムの間に立っていた。

「神々の光よ、我が身に宿り、絶対の清浄をもたらせ。全てを照らす聖なる光となれ!サクレッド・イルミネーション!」

ナディア先生の体からまばゆい光があふれ出す。
そしてその光はどんどん大きくなっていき、私たちの体を包み込む。
すると、先ほどまで感じていた痛みが嘘のように引いていった。それどころか体の奥底から力が湧き上がってくるような気さえした。

先生はこちらを振り返り優しい笑みを浮かべると、再び前を向いて立ち上がった。

「思ったより準備に時間がかかってしまって。ナタリーも無事ですよ」

そういってナタリーに近づき優しく頭を撫でる。
あれだけ回復アイテムを使ってもふさがらなかった傷もすっかり治っていた。

「あ、ありがとうございます!」

涙を流しながら何度も頭を下げる。

「それにみんなももう大丈夫ですから安心してください」

ナディア先生が告げる何度目かの「大丈夫」でようやく呼吸ができたような気がした。
あたりに散らばって気絶していた人もナディア先生の魔法によって運ばれてくる。
そして先生の魔法に包まれると、次々と意識を取り戻していった。中にはジェイミーの姿も見えた。先ほどのテンペストゥス・ノクテムに変えられた姿ではなく、元のいつもの姿に戻っているようだった。

「ナディア!!早く……!早く戻るんだ!!もういいから!!俺が、俺が何とかするから!!」

セオドア先生が悲痛な叫びをあげる。しかしナディア先生はその声に優しく微笑んで応じた。

「大丈夫です。ギリギリまで結界魔法につぎ込んできました。それで少し遅れてしまったのだけれど」
「そんなこと……そんなことどうでもいい……」

なぜかセオドア先生は泣いていた。そして握りしめたこぶしからは血がにじんでいた。

「さあ、ここは私が引き受けるわ。あなた達は休んでていてください」

そう言ってナディア先生はテンペストゥス・ノクテムの方へ向き直る。

「先生!!無茶です!!」

セシルが叫ぶが、ナディア先生はいつもの学校で見せるような優しい雰囲気だった。

「大丈夫ですよ。私が倒せなかった時のために旧知のお友達もお誘いしてきましたから」
「いやいや、君が倒せなかったら私にも無理だよ」

突然背後から声が響く。振り返るとそこには――――。

「お父様!?」
「やあやあ、レヴィ、元気にしてたかい?それにみんなお久しぶり」
「な……なんで……?」

あまりの事態に頭が追い付かない。なぜここにお父様が?それに……どうしてテンペストゥス・ノクテムのことを知っているの?

「それにしてもおっかない格好だねぇ。ボスってのはなんでこうも趣味が悪いのかな?」
「アルドリックさん……!」
「セオドア君じゃないか。いつもレヴィがお世話になってるみたいでどうもありがとう」

こんな状況なのにお父様は涼しい顔で頭を下げる。

「アルドリック、あとは頼みましたよ」
「うん、わかった。頑張って」

そのままナディア先生はテンペストゥス・ノクテムのほうへ向かっていった。

「私たちの会話を待ってくれてありがとうございます。それともそういった存在だからですかね?」

そうナディア先生が微笑みかけると、テンペストゥス・ノクテムは腕を振り上げ、先生に叩きつけた。
魔法でも何でもないただそれだけで天が揺れ、大地が震えるほどの衝撃だった。
しかし、ナディア先生はその場から微動だにせず、それを片手で難なく受け止める。その光景を私たちは呆然と見ていた。

「私のかわいい、大切な生徒たちに手を出したのですから覚悟はできていますよね?」

テンペストゥス・ノクテムは何度も何度も腕や足を叩きつけるが、ナディア先生はその全て受け止めていた。
やがて、痺れを切らしたのか、距離を置き魔法攻撃へと切り替えたようだった。

『原初の炎よ、立ちふさがりしモノを焼き尽くせ!イミテーション・フレア!!』

テンペストゥス・ノクテムの周囲に炎がいくつも出現する。まるで小さな太陽が現れたかのような輝きだった。
そしてナディア先生に目がけて炎の球体が一斉に襲い掛かった。
一瞬、ナディア先生の姿が炎の渦の中に消えたように見えたが、次の瞬間にはテンペストゥス・ノクテムの後ろに現れて、思い切り蹴り飛ばしていた。
テンペストゥス・ノクテムは避けることもできずに地面を転がる。

「天空の星々よ、我が創造の力となり、絶対の光をもたらせ。無限の煌めきとともに、全てを焼き尽くせ!スターシャイン・ノヴァ!!!」

空を覆い尽くすほど巨大な魔法陣が出現する。その中心には眩い光を放つ球体が出現しており、今にも弾けそうなほど膨れ上がっている。
次の瞬間、その光球が一気に縮小し、そして目にも止まらぬ速さでテンペストゥス・ノクテムの体を貫いた。
あたり一面が真っ白になり、耳を劈くような轟音と激しい閃光に飲み込まれた。

「あら……結構耐久性もあるのね」

貫かれたテンペストゥス・ノクテムは一瞬で再生する。一対一では敵わないと判断したのか空中に魔法陣を展開し、空を埋め尽くすほどの眷属のモンスターを召喚した。
一体一体がモンスターシーズンで現れたモンスターよりも強大な力を秘めているように感じた。
テンペストゥス・ノクテムは眷属のモンスターに攻撃を命令すると無数の火属性の魔法が降り注ぎ、それに合わせてテンペストゥス・ノクテムも漆黒に染まった魔法の矢を放った。

「空と大地の境界よ、我が声に応え、不可侵の砦を築け。天と地の力を合わせ、絶対の防御と成せ!エーテリアル・フォートレス!」

テンペストゥス・ノクテムと無数のモンスターの魔法はナディア先生の周りに展開された魔法陣に激突すると何事もなかったかのように消滅していった。

戦いが始まるまでは多少回復をしてもらった魔力でナディア先生の援護をしようと思っていた。しかし目の前で繰り広げられる戦いは次元が違いすぎて、見ていることしかできなかった。

「ナディア先生ってこんなに強かったんだ」

誰かがこぼした。先ほどナディア先生に回復してもらった生徒が次々と目を覚まし、眼前で起きている、おおよそ非現実的な戦いに目を輝かせている。
でもその中でもセオドア先生だけは違った。彼は今にも泣き出しそうな悲痛な表情をしていた。

「セオドア先生……どうしたんですか……?」

ナディア先生はテンペストゥス・ノクテムを圧倒している。私たちもナディア先生の魔法で全員無事だ。それなのになんでこんな表情をしているのかわからなかった。

「なんでもない。……やっぱりナディア先生は強いな」

そう小さくつぶやいた。

テンペストゥス・ノクテムは眷属のモンスターを次々と召喚し、ナディア先生へとけしかける。しかしナディア先生の守りは固く、まるで攻撃が通らない。

「光と影の境界よ、我が言葉を叶え、無償の裁きを下せ。神々の力を借り、究極の判決を示せ!ディヴァイン・ジャッジメント!」

空に巨大な魔法陣が現れる。そこから幾千もの光の槍が現れ、召喚されたモンスターに向かって降り注ぐ。一撃一撃が私の全力のヴォルテックテンペストよりも強力で、それはまるで神の鉄槌のように見えた。見た目通りの圧倒的な力の前に、モンスターたちは為すすべもなく蹂躙されていった。

『人の子よ、なぜ抗う。汝は滅びを望んでいるはず』
「あら、その言葉そっくりお返しするわ」
『我が意に背くというのか……?』
「あなたは私の生徒に大きな厄災を振りまいた。そんな存在を生かしておくわけにはいかないのよ」
『ならば我も役目を果たそう』

テンペストゥス・ノクテムは魔法陣を展開し、その中心から白と黒のエネルギーが溢れ出し混ざり合っていく。そして数秒後、大きな塊となったエネルギーがナディア先生に向かって解き放たれた。

「エーテリアル・フォートレス!!」

ナディア先生の前に先ほどと同じバリアが展開される。ぶつかり合ったエネルギーはせめぎ合い、激しい衝撃波と稲妻をまき散らす。

『我を倒せると思っているのか?』
「えぇ、そのために長い間準備をしてきました」

ナディア先生の周囲に無数の魔法陣が展開される。その一つ一つに限界まで魔力が込められており、魔力の威圧感だけで押しつぶされてしまいそうだ。

「私たちはこの世界から退場しましょう」

その言葉と同時に、テンペストゥス・ノクテムの周りに突如現れた光の檻に閉じ込められた。中から抜け出そうと暴れ回るがびくともしない。

「永遠の光よ、我が創造の力となり、不朽の時間をもたらせ。終わりなき煌めきとともに、全てを凍結せよ!ルミナス・エタニティ!」

その瞬間テンペストゥス・ノクテムと魔法陣の中心から眩い光があふれ出し、一気に収縮した。
テンペストゥス・ノクテムは抵抗できずにそのまま静止してしまう。そして徐々に体が透けていき、その存在自体が希薄になっていき、最後には消えていったのだった。

静かな結末だった。

こうしてテンペストゥス・ノクテムは完全にこの世界から消滅した。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~

イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?) グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。 「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」 そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。 (これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!) と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。 続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。 さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!? 「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」 ※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`) ※小説家になろう、ノベルバにも掲載

婚約破棄られ令嬢がカフェ経営を始めたらなぜか王宮から求婚状が届きました!?

江原里奈
恋愛
【婚約破棄? 慰謝料いただければ喜んで^^ 復縁についてはお断りでございます】 ベルクロン王国の田舎の伯爵令嬢カタリナは突然婚約者フィリップから手紙で婚約破棄されてしまう。ショックのあまり寝込んだのは母親だけで、カタリナはなぜか手紙を踏みつけながらもニヤニヤし始める。なぜなら、婚約破棄されたら相手から慰謝料が入る。それを元手に夢を実現させられるかもしれない……! 実はカタリナには前世の記憶がある。前世、彼女はカフェでバイトをしながら、夜間の製菓学校に通っている苦学生だった。夢のカフェ経営をこの世界で実現するために、カタリナの奮闘がいま始まる! ※カクヨム、ノベルバなど複数サイトに投稿中。  カクヨムコン9最終選考・第4回アイリス異世界ファンタジー大賞最終選考通過! ※ブクマしてくださるとモチベ上がります♪ ※厳格なヒストリカルではなく、縦コミ漫画をイメージしたゆるふわ飯テロ系ロマンスファンタジー。作品内の事象・人間関係はすべてフィクション。法制度等々細かな部分を気にせず、寛大なお気持ちでお楽しみください<(_ _)>

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】底辺冒険者の相続 〜昔、助けたお爺さんが、実はS級冒険者で、その遺言で七つの伝説級最強アイテムを相続しました〜

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 試験雇用中の冒険者パーティー【ブレイブソード】のリーダーに呼び出されたウィルは、クビを宣言されてしまう。その理由は同じ三ヶ月の試験雇用を受けていたコナーを雇うと決めたからだった。  ウィルは冒険者になって一年と一ヶ月、対してコナーは冒険者になって一ヶ月のド新人である。納得の出来ないウィルはコナーと一対一の決闘を申し込む。  その後、なんやかんやとあって、ウィルはシェフィールドの町を出て、実家の農家を継ぐ為に乗り合い馬車に乗ることになった。道中、魔物と遭遇するも、なんやかんやとあって、無事に生まれ故郷のサークス村に到着した。  無事に到着した村で農家として、再出発しようと考えるウィルの前に、両親は半年前にウィル宛てに届いた一通の手紙を渡してきた。  手紙内容は数年前にウィルが落とし物を探すのを手伝った、お爺さんが亡くなったことを知らせるものだった。そして、そのお爺さんの遺言でウィルに渡したい物があるから屋敷があるアポンタインの町に来て欲しいというものだった。  屋敷に到着したウィルだったが、彼はそこでお爺さんがS級冒険者だったことを知らされる。そんな驚く彼の前に、伝説級最強アイテムが次々と並べられていく。 【聖龍剣・死喰】【邪龍剣・命喰】【無限収納袋】【透明マント】【神速ブーツ】【賢者の壺】【神眼の指輪】  だが、ウィルはもう冒険者を辞めるつもりでいた。そんな彼の前に、お爺さんの孫娘であり、S級冒険者であるアシュリーが現れ、遺産の相続を放棄するように要求してきた。

処理中です...