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反乱
予定外の来訪者
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「で……どうするよ……この状況……」
イグニスがぽつりとつぶやく。
「どうしましょう?」
その言葉に私はそんな風に返すことしかできなかった。
馬車を借りて移動しようとシルフィード広場に来たものの、すでにシルフィード広場には星辰警団が警戒網を敷いていた。見慣れないきらびやかな馬車も広場中に停まっている。
「ここもバレるのも時間の問題だよなぁ」
ガレンも困った顔で笑う。
今は民家の路地裏に隠れていることができているが、私たちが潜伏できるのはセレスティアル・アカデミーかシルフィード広場のどちらかくらいしかない。この人数でしらみつぶしに探されれば見つかるのも時間の問題だろう。
「いっそストーンバリアで基地でも作ってモンスターの森でサバイバルで時間をつぶすか?」
「いえ……時間をつぶしたところで星辰警団が警戒を緩めるとも思えないですし、ナタリーに早く無事な姿を見せたいですわ」
「そうだよなぁ……馬車屋さんにも話言ってるだろうし、どうする……?歩いていくか?」
「そうですわね……。マナを全部使いきるつもりで移動すれば……馬車と同じ……とまではいかなくてもある程度は何とかなるんじゃないかもしれませんものね……?」
「冗談だよ冗談。風魔法使いでもないのにそんな曲芸できるのお前だけだって」
ため息交じりにガレンが笑う。
「あら?ナタリーも高速移動用の魔法を身に着けていたって言ってましたわよ?」
「いや、ナタリーも師匠が師匠だし大概バケモンだっての……」
ガレンははぁ……とため息を漏らす。
「あとこの広場はこの区画です!!」
そんな雑談をしていると、広場に集まっている星辰警団の団員が声を大きく張り上げた。
「ご苦労。ではこの場所を包囲して、A班は順に路地を確認していけ!」
「おいおい……この近く……っていうかここじゃねーか?」
イグニスが珍しく焦った声を出す。
思ったより早い。さすがこの世界の絶対的な警察組織の星辰警団だ。
「……俺が囮になる……!お前たち二人は先に行け!」
「バカ!そんなことできるわけねーだろ!!」
「もっと声押さえろって。どのみち機動力は俺が一番低いし、もともと俺はあの屋敷でアルドリックさんの身代わりになる予定だったんだ。だから俺が一番都合がいい」
そんなガレンの言葉にイグニスが反射的に胸倉をつかむ。それでもガレンは一歩も引く様子はない。
(――――どうする…?どうする…?)
本当にガレンの言う通りに囮になってもらって星辰警団に捕まっても大丈夫なのか?
ゲームだと捕まったら二度とその周回では出てこない。もしこの世界でもそうだったら?
かといって全員で捕まるわけにも……!!
「……ガレン……お願いできますか?」
「おい、本気で言ってんのか?」
「ええ。ここで全員捕まるのが一番最悪な事態ですわ。そうなってしまったらもう弁解の機会すらありません。ガレンが捕まってもいきなり処刑という事も無い……でしょう」
「…………」
「それにお父様と会話ができればガレンが釈放されるかもしれませんわ」
「でも、だったら3人で戦って……!」
イグニスもきっと本気で言ってはいない。ただ、捕まったガレンがいきなり処刑される可能性が無いわけでも無い今、どうしようと気が気じゃないのだろう。
「あの数の星辰警団にですか?」
イグニスは少しだけ迷って、ガレンから手を離した。
「……わかった……。ガレン!ぜってーつかまんなよ!」
「おう……でもお前たちも絶対につかまるなよ?」
「わかってますわ」
ガレンは私たち二人と軽く拳を突き合わせ、路地から飛び出そうとした時だった。
「おーい、エリオンド!!!」
聞き覚えがある声が路地の先から聞こえる。
「え……?あなたは……!セオドア団長!!!」
「ははっ、もう俺は星辰警団を抜けたんだ。今はセレスティアル・アカデミーのセオドア先生だっての」
「いえ、私にとってはいつまでも尊敬すべきセオドア団長です!」
広間で星辰警団の人とセオドア先生がやり取りをしているのがわかる。
(どういうことですの……?)
イグニスとガレンと視線を合わせるが、二人も同じように混乱しているようだった。
「いえ、私にとってはいつまでも尊敬すべきセオドア団長です!」
「まぁでも、エリオンドが団長を継いでくれたってのも不思議なもんだよな」
「セオドア団長の指導のおかげです!で、どうしたんですか?」
「あぁ、いまエリオンドたちが探してるうちの学生なんだけどな。ほかの生徒からモンスターの森で目撃証言があったんだ。あそこは広いから、ちょっと全員で探してくれないか?」
(セオドア先生……?)
私たちの目撃情報?それもモンスターの森で?どういう事だろう。
「モンスターの森……?本当ですか……?」
「あぁ、うちの生徒はたくましいからな。きっとあの森で1カ月くらいのキャンプは平気でしかねん」
「なるほど。それにこの広場にいたらほかに住民から目撃情報も上がるでしょう。わかりました。私たちはモンスターの森を探索します」
「あ、あとよ、もう一個頼みがあってさ。俺、これからアルドリック公の様子を見に行きたいんだけど、馬車の外出証発行してくれないか?」
「はい、もちろんです。こちらをお持ちください。これがあれば問題なく検問も進めるはずです」
「ありがとよ。これ落ち着いたら今度飲みにでも行こうぜ。団長仕事でいろいろと愚痴も溜まってたりするだろ」
「いえ、部下たちもよくやってくれているんで。でもセオドア団長との食事は楽しみです。ぜひよろしくお願いします」
そういってエリオンドと呼ばれた人物は他の星辰警団に声をかけに行ったようだ。
突然のセオドア先生の来訪、そして星辰警団との関係性、モンスターでの私たちの目撃情報、何が何だかわからない。
「……で?三人ともこのローブを貸してやるからそろそろ出てきたらどうだい?アルドリック公のところへ行くんだろ?」
そのまま身動きが取れずじっとしているとセオドア先生は私たちに向けてそう言った。
イグニスがぽつりとつぶやく。
「どうしましょう?」
その言葉に私はそんな風に返すことしかできなかった。
馬車を借りて移動しようとシルフィード広場に来たものの、すでにシルフィード広場には星辰警団が警戒網を敷いていた。見慣れないきらびやかな馬車も広場中に停まっている。
「ここもバレるのも時間の問題だよなぁ」
ガレンも困った顔で笑う。
今は民家の路地裏に隠れていることができているが、私たちが潜伏できるのはセレスティアル・アカデミーかシルフィード広場のどちらかくらいしかない。この人数でしらみつぶしに探されれば見つかるのも時間の問題だろう。
「いっそストーンバリアで基地でも作ってモンスターの森でサバイバルで時間をつぶすか?」
「いえ……時間をつぶしたところで星辰警団が警戒を緩めるとも思えないですし、ナタリーに早く無事な姿を見せたいですわ」
「そうだよなぁ……馬車屋さんにも話言ってるだろうし、どうする……?歩いていくか?」
「そうですわね……。マナを全部使いきるつもりで移動すれば……馬車と同じ……とまではいかなくてもある程度は何とかなるんじゃないかもしれませんものね……?」
「冗談だよ冗談。風魔法使いでもないのにそんな曲芸できるのお前だけだって」
ため息交じりにガレンが笑う。
「あら?ナタリーも高速移動用の魔法を身に着けていたって言ってましたわよ?」
「いや、ナタリーも師匠が師匠だし大概バケモンだっての……」
ガレンははぁ……とため息を漏らす。
「あとこの広場はこの区画です!!」
そんな雑談をしていると、広場に集まっている星辰警団の団員が声を大きく張り上げた。
「ご苦労。ではこの場所を包囲して、A班は順に路地を確認していけ!」
「おいおい……この近く……っていうかここじゃねーか?」
イグニスが珍しく焦った声を出す。
思ったより早い。さすがこの世界の絶対的な警察組織の星辰警団だ。
「……俺が囮になる……!お前たち二人は先に行け!」
「バカ!そんなことできるわけねーだろ!!」
「もっと声押さえろって。どのみち機動力は俺が一番低いし、もともと俺はあの屋敷でアルドリックさんの身代わりになる予定だったんだ。だから俺が一番都合がいい」
そんなガレンの言葉にイグニスが反射的に胸倉をつかむ。それでもガレンは一歩も引く様子はない。
(――――どうする…?どうする…?)
本当にガレンの言う通りに囮になってもらって星辰警団に捕まっても大丈夫なのか?
ゲームだと捕まったら二度とその周回では出てこない。もしこの世界でもそうだったら?
かといって全員で捕まるわけにも……!!
「……ガレン……お願いできますか?」
「おい、本気で言ってんのか?」
「ええ。ここで全員捕まるのが一番最悪な事態ですわ。そうなってしまったらもう弁解の機会すらありません。ガレンが捕まってもいきなり処刑という事も無い……でしょう」
「…………」
「それにお父様と会話ができればガレンが釈放されるかもしれませんわ」
「でも、だったら3人で戦って……!」
イグニスもきっと本気で言ってはいない。ただ、捕まったガレンがいきなり処刑される可能性が無いわけでも無い今、どうしようと気が気じゃないのだろう。
「あの数の星辰警団にですか?」
イグニスは少しだけ迷って、ガレンから手を離した。
「……わかった……。ガレン!ぜってーつかまんなよ!」
「おう……でもお前たちも絶対につかまるなよ?」
「わかってますわ」
ガレンは私たち二人と軽く拳を突き合わせ、路地から飛び出そうとした時だった。
「おーい、エリオンド!!!」
聞き覚えがある声が路地の先から聞こえる。
「え……?あなたは……!セオドア団長!!!」
「ははっ、もう俺は星辰警団を抜けたんだ。今はセレスティアル・アカデミーのセオドア先生だっての」
「いえ、私にとってはいつまでも尊敬すべきセオドア団長です!」
広間で星辰警団の人とセオドア先生がやり取りをしているのがわかる。
(どういうことですの……?)
イグニスとガレンと視線を合わせるが、二人も同じように混乱しているようだった。
「いえ、私にとってはいつまでも尊敬すべきセオドア団長です!」
「まぁでも、エリオンドが団長を継いでくれたってのも不思議なもんだよな」
「セオドア団長の指導のおかげです!で、どうしたんですか?」
「あぁ、いまエリオンドたちが探してるうちの学生なんだけどな。ほかの生徒からモンスターの森で目撃証言があったんだ。あそこは広いから、ちょっと全員で探してくれないか?」
(セオドア先生……?)
私たちの目撃情報?それもモンスターの森で?どういう事だろう。
「モンスターの森……?本当ですか……?」
「あぁ、うちの生徒はたくましいからな。きっとあの森で1カ月くらいのキャンプは平気でしかねん」
「なるほど。それにこの広場にいたらほかに住民から目撃情報も上がるでしょう。わかりました。私たちはモンスターの森を探索します」
「あ、あとよ、もう一個頼みがあってさ。俺、これからアルドリック公の様子を見に行きたいんだけど、馬車の外出証発行してくれないか?」
「はい、もちろんです。こちらをお持ちください。これがあれば問題なく検問も進めるはずです」
「ありがとよ。これ落ち着いたら今度飲みにでも行こうぜ。団長仕事でいろいろと愚痴も溜まってたりするだろ」
「いえ、部下たちもよくやってくれているんで。でもセオドア団長との食事は楽しみです。ぜひよろしくお願いします」
そういってエリオンドと呼ばれた人物は他の星辰警団に声をかけに行ったようだ。
突然のセオドア先生の来訪、そして星辰警団との関係性、モンスターでの私たちの目撃情報、何が何だかわからない。
「……で?三人ともこのローブを貸してやるからそろそろ出てきたらどうだい?アルドリック公のところへ行くんだろ?」
そのまま身動きが取れずじっとしているとセオドア先生は私たちに向けてそう言った。
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