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モンスターシーズン
モンスターシーズン開幕
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「いまですわ!」
「「ヒートスパイク!!!」」
私の合図で狙撃班であるイグニス、ノーランから放たれた魔法は、次々と迫ってくるモンスターを焼き払っていく。
夏休みが終わりこのモンスターシーズンの日までみんな一生懸命練習してきたかいもあり、無詠唱魔法も板についてきた。中でも夏休みが終わってからのノーランの魔法の成長ぶりには目を見張るものがあった。
威力はイグニスに到底敵わないものの、ヒートスパイクの起動速度はイグニスと変わらない程になったし、一度にコントロールできる量はイグニスの倍近くはある。はじめはただのお調子者だったノーランも、今ではこうして生徒会メンバーの狙撃班を務める程に成長した。
(結構頑張ってるじゃないの)
アリシアの故郷での会話を思い出してなんだか笑ってしまう。
「やるじゃねーか!」
「ま、俺も少しはかっこつけられるようにならないといけないからな!」
夏休みの間ずっと訓練を一緒にしてきたからか、二人の息の合った連携は見ていて気持ちのいいものだった。
「―――っ!敵の遠距離攻撃ですわ!!防御班!お願いしますわ!!!」
「ハイドロバリア」「フロストシールド」
私が声を上げるか早いか、マリウスとナタリーが防御魔法を発動した。こちらも発動タイミングと言い、発動速度と言い完璧な連携だった。
氷と水の障壁が私達の前方に展開され、モンスターから放たれた魔法が障壁に当たっては消える。
「正面のワイバーンはわたくしたちが対応します!右から近づいてくるモンスターは遊撃班たのみましたわ!」
「「シルフィードダンス」」
セシルとミーナが頷いた刹那、文字通り風の様に視界から消え、迫ってくる群れへと突っ込んでいった。
戦闘が始まり既に30分以上は経過しているのに2人には疲れの色は全く見られない。それにあれだけの高速機動をしながら衝突することもなくモンスターを屠っていく姿は、凄まじいの一言だった。
「すまん!1体抜ける!」
正面のイグニスが声を上げる。巨大な棍棒を持ったモンスターがイグニスとノーランのヒートスパイクに焼かれながらもそれを薙ぎ払い、突破を試みてきた。
「任せろ!ストーンバリア」
振り下ろした巨大な棍棒をガレンが防ぐ。ガレンの防御魔法の硬度に体勢を崩したモンスターがたたらを踏んだ瞬間、アリシアのブレイズワークスによって真っ赤な炎に包まれ崩れ落ちた。
「ガレンさん!ありがとうございます!」
「アリシアこそ」
このような巨大なモンスターもガレンとアリシアのオリジナル魔法で撃破出来る。そして私は―――
「遊撃班!下がってくださいまし!!!雷光の連鎖、我が指先に宿りて無限の鎖となれ!閃光の縛め、ライトニングチェイン!」
十二分にマナを練り込んだ雷の閃光が一気にはじけ、迫ってきていたモンスターを一網打尽にする。
「それにしてもすげー数だな」
イグニスが視線を正面に向けたまま呟く。そう、最初に出現したモンスターは精々50体くらいだったのが、既に200近くの大群となって押し寄せてきていた。
「今年のモンスターシーズンは豊作だとかカムラン先生が言っていましたが、これは確かにすごいですわね」
ゲームの時にもこうしたパターンはあった。
ゲームをプレイしている時はモンスター撃破の報酬としてのレアアイテムが大量に手に入ったので喜んでいたが、実際戦う身になると本当にそれどころではなかった。
(これは…数が多すぎる……!)
始めのうちはとても順調だった。
周りの生徒たちも訓練通り3人組を作り迎撃にあたっていたが、疲労とマナが尽きはじめたのか、少しずつ対処ができなくなってくる生徒も現れ始めた。
こうして生徒会メンバーが集まって先頭に立ち迎撃しているが、終わりの見えないモンスターの大群に徐々に私たちは徐々に、でも間違いなく押されつつあった。
「きゃっ!」
「おい!大丈夫か……!?早く治療班に連れて行ってくれ!!!」
周りから聞こえる悲鳴の数も多くなってきた。
「こりゃ、俺様たちがしっかりと頑張らないとな!!」
「当たり前ですわ!」
モンスターシーズンは今日一日限りのイベントだったはずだ。確実に押されてはいるものの、でもこのまま私たちが頑張れば戦線は維持できそうはある。
モンスターシーズンの当たり年にはまだ何か隠しイベントはあった気もする。
(でも―――……うん……っ!)
右手を握りしめて再び魔法の詠唱を始める。
この生徒会メンバーが居ればどんな敵が現れても突破できると確信していたし、何が起こるか分からないこの状況をみんなで過ごせるのが楽しくて仕方が無かった。
こんな時間を事前の知識で手放すなんて考えられない。
このひりつくような緊張感も、周りに感じる仲間の気配も、先が見えない少しの不安感も、こうしてみんなで集まって戦える高揚感も、そして何よりもみんなと一緒に過ごせるこの時間がとても大切だと思えた。
「光と熱の融合、我が手に集約せよ!荒れ狂う極光、プラズマウェーブ!」
空気を引き裂きながら突き進んだプラズマウェーブが眼前に迫っていたモンスターを焼き尽くす。こちらに迫っていたワイバーンも、辺りにうごめくモンスターの群れも、ある程度は殲滅できたはずだ。
あたりにはモンスターを倒した戦利品の装飾品やきれいなドレスが大量に散乱している。
きっとレアアイテムも含まれているだろう。
「レヴィアナさんすごいです!これだけあれば今年の文化祭はきっとにぎやかになりますですね!」
ミーナが嬉しそうにはしゃいでいる。
「はぁ……はあっ……!そうですわね、汚れないうちに回収しないとですわね」
流石に高威力の魔法を連続で使用したので、マナには余裕はあるものの、体力はかなり消耗していた。辺りにモンスターの気配はないが、この後も3波、4波と続く可能性もある。
少し呼吸を整えるために腰を下ろそうとしたその時だった。
―――――ゴゴゴゴゴゴ……
地面が揺れた。
次の瞬間、大きな地鳴りと轟音とともに視線の遥か先の地面がせりあがり、ここからでも目視できるような高さ10mほどの巨大な塔のようなものが現れた。
「おいおい……あれなんだよ……?マリウス知ってるか…?」
「俺も知らない。なんなんだあれは……?」
突然起きた異変に一息ついていた生徒会メンバーも戸惑いをあらわにする。得体の知れないものではあったが、私たちにとって好意的なモノではないことはその雰囲気からすぐにわかった。
「……あれが……ディスペアリアム・オベリスク……?」
「なんですの?ガレンはあれを知っていますの?」
「昔見た書物に書いてあったんだ。あれはモンスターを転移させる石碑だったと思う」
話している間にもディスペアリアム・オベリスクという名前の塔は紫色に発光し始めている。
「まずいかもしれないですね」
ミーナが髪を手遊びしながら、なにかを考えるように呟く。これまで見たことが無い表情をしていた。
「ミーナも知ってますの?」
「……はいです。ディスペアリアム・オベリスクという名前とあの発光で間違いないと思うです。ミーナの村に物語として伝わってるです」
「教えてもらってもよろしくて?」
ミーナはこくりと頷く。
「恐怖の塔の姿。煌めく紫の光が塔から溢れ、天を突くとき、災いの訪れを知る。それは遠くの地まで届く光、人々の心を揺さぶる前触れの光」
ミーナが塔を見つめながらぽつりぽつりと言葉を紡いでいる間にもディスペアリアム・オベリスクは強くそして禍々しく輝きを強くする
「紫の光が消え去るとき、人々は一息つく。だが、終わりではない。今度は深淵から湧き上がるような―――――」
「おい!何か出てくるぞ!!!」
イグニスが叫んだ。
みんなの視線が一斉に塔の方へと向く。私も慌てて視線を戻す。
そこには先ほどまでとは比べ物にならない程の威圧感を持ったモンスターが大量に湧き出していた。
「「ヒートスパイク!!!」」
私の合図で狙撃班であるイグニス、ノーランから放たれた魔法は、次々と迫ってくるモンスターを焼き払っていく。
夏休みが終わりこのモンスターシーズンの日までみんな一生懸命練習してきたかいもあり、無詠唱魔法も板についてきた。中でも夏休みが終わってからのノーランの魔法の成長ぶりには目を見張るものがあった。
威力はイグニスに到底敵わないものの、ヒートスパイクの起動速度はイグニスと変わらない程になったし、一度にコントロールできる量はイグニスの倍近くはある。はじめはただのお調子者だったノーランも、今ではこうして生徒会メンバーの狙撃班を務める程に成長した。
(結構頑張ってるじゃないの)
アリシアの故郷での会話を思い出してなんだか笑ってしまう。
「やるじゃねーか!」
「ま、俺も少しはかっこつけられるようにならないといけないからな!」
夏休みの間ずっと訓練を一緒にしてきたからか、二人の息の合った連携は見ていて気持ちのいいものだった。
「―――っ!敵の遠距離攻撃ですわ!!防御班!お願いしますわ!!!」
「ハイドロバリア」「フロストシールド」
私が声を上げるか早いか、マリウスとナタリーが防御魔法を発動した。こちらも発動タイミングと言い、発動速度と言い完璧な連携だった。
氷と水の障壁が私達の前方に展開され、モンスターから放たれた魔法が障壁に当たっては消える。
「正面のワイバーンはわたくしたちが対応します!右から近づいてくるモンスターは遊撃班たのみましたわ!」
「「シルフィードダンス」」
セシルとミーナが頷いた刹那、文字通り風の様に視界から消え、迫ってくる群れへと突っ込んでいった。
戦闘が始まり既に30分以上は経過しているのに2人には疲れの色は全く見られない。それにあれだけの高速機動をしながら衝突することもなくモンスターを屠っていく姿は、凄まじいの一言だった。
「すまん!1体抜ける!」
正面のイグニスが声を上げる。巨大な棍棒を持ったモンスターがイグニスとノーランのヒートスパイクに焼かれながらもそれを薙ぎ払い、突破を試みてきた。
「任せろ!ストーンバリア」
振り下ろした巨大な棍棒をガレンが防ぐ。ガレンの防御魔法の硬度に体勢を崩したモンスターがたたらを踏んだ瞬間、アリシアのブレイズワークスによって真っ赤な炎に包まれ崩れ落ちた。
「ガレンさん!ありがとうございます!」
「アリシアこそ」
このような巨大なモンスターもガレンとアリシアのオリジナル魔法で撃破出来る。そして私は―――
「遊撃班!下がってくださいまし!!!雷光の連鎖、我が指先に宿りて無限の鎖となれ!閃光の縛め、ライトニングチェイン!」
十二分にマナを練り込んだ雷の閃光が一気にはじけ、迫ってきていたモンスターを一網打尽にする。
「それにしてもすげー数だな」
イグニスが視線を正面に向けたまま呟く。そう、最初に出現したモンスターは精々50体くらいだったのが、既に200近くの大群となって押し寄せてきていた。
「今年のモンスターシーズンは豊作だとかカムラン先生が言っていましたが、これは確かにすごいですわね」
ゲームの時にもこうしたパターンはあった。
ゲームをプレイしている時はモンスター撃破の報酬としてのレアアイテムが大量に手に入ったので喜んでいたが、実際戦う身になると本当にそれどころではなかった。
(これは…数が多すぎる……!)
始めのうちはとても順調だった。
周りの生徒たちも訓練通り3人組を作り迎撃にあたっていたが、疲労とマナが尽きはじめたのか、少しずつ対処ができなくなってくる生徒も現れ始めた。
こうして生徒会メンバーが集まって先頭に立ち迎撃しているが、終わりの見えないモンスターの大群に徐々に私たちは徐々に、でも間違いなく押されつつあった。
「きゃっ!」
「おい!大丈夫か……!?早く治療班に連れて行ってくれ!!!」
周りから聞こえる悲鳴の数も多くなってきた。
「こりゃ、俺様たちがしっかりと頑張らないとな!!」
「当たり前ですわ!」
モンスターシーズンは今日一日限りのイベントだったはずだ。確実に押されてはいるものの、でもこのまま私たちが頑張れば戦線は維持できそうはある。
モンスターシーズンの当たり年にはまだ何か隠しイベントはあった気もする。
(でも―――……うん……っ!)
右手を握りしめて再び魔法の詠唱を始める。
この生徒会メンバーが居ればどんな敵が現れても突破できると確信していたし、何が起こるか分からないこの状況をみんなで過ごせるのが楽しくて仕方が無かった。
こんな時間を事前の知識で手放すなんて考えられない。
このひりつくような緊張感も、周りに感じる仲間の気配も、先が見えない少しの不安感も、こうしてみんなで集まって戦える高揚感も、そして何よりもみんなと一緒に過ごせるこの時間がとても大切だと思えた。
「光と熱の融合、我が手に集約せよ!荒れ狂う極光、プラズマウェーブ!」
空気を引き裂きながら突き進んだプラズマウェーブが眼前に迫っていたモンスターを焼き尽くす。こちらに迫っていたワイバーンも、辺りにうごめくモンスターの群れも、ある程度は殲滅できたはずだ。
あたりにはモンスターを倒した戦利品の装飾品やきれいなドレスが大量に散乱している。
きっとレアアイテムも含まれているだろう。
「レヴィアナさんすごいです!これだけあれば今年の文化祭はきっとにぎやかになりますですね!」
ミーナが嬉しそうにはしゃいでいる。
「はぁ……はあっ……!そうですわね、汚れないうちに回収しないとですわね」
流石に高威力の魔法を連続で使用したので、マナには余裕はあるものの、体力はかなり消耗していた。辺りにモンスターの気配はないが、この後も3波、4波と続く可能性もある。
少し呼吸を整えるために腰を下ろそうとしたその時だった。
―――――ゴゴゴゴゴゴ……
地面が揺れた。
次の瞬間、大きな地鳴りと轟音とともに視線の遥か先の地面がせりあがり、ここからでも目視できるような高さ10mほどの巨大な塔のようなものが現れた。
「おいおい……あれなんだよ……?マリウス知ってるか…?」
「俺も知らない。なんなんだあれは……?」
突然起きた異変に一息ついていた生徒会メンバーも戸惑いをあらわにする。得体の知れないものではあったが、私たちにとって好意的なモノではないことはその雰囲気からすぐにわかった。
「……あれが……ディスペアリアム・オベリスク……?」
「なんですの?ガレンはあれを知っていますの?」
「昔見た書物に書いてあったんだ。あれはモンスターを転移させる石碑だったと思う」
話している間にもディスペアリアム・オベリスクという名前の塔は紫色に発光し始めている。
「まずいかもしれないですね」
ミーナが髪を手遊びしながら、なにかを考えるように呟く。これまで見たことが無い表情をしていた。
「ミーナも知ってますの?」
「……はいです。ディスペアリアム・オベリスクという名前とあの発光で間違いないと思うです。ミーナの村に物語として伝わってるです」
「教えてもらってもよろしくて?」
ミーナはこくりと頷く。
「恐怖の塔の姿。煌めく紫の光が塔から溢れ、天を突くとき、災いの訪れを知る。それは遠くの地まで届く光、人々の心を揺さぶる前触れの光」
ミーナが塔を見つめながらぽつりぽつりと言葉を紡いでいる間にもディスペアリアム・オベリスクは強くそして禍々しく輝きを強くする
「紫の光が消え去るとき、人々は一息つく。だが、終わりではない。今度は深淵から湧き上がるような―――――」
「おい!何か出てくるぞ!!!」
イグニスが叫んだ。
みんなの視線が一斉に塔の方へと向く。私も慌てて視線を戻す。
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