死を見届ける者

大和滝

文字の大きさ
上 下
20 / 20
二章 悔いの無い死を

EP2 想う匂い

しおりを挟む
 夏休み初日は誰しもが浮かれている。1学期が終わり25日間という長い休みが来たという実感が、多分全国の学生はみんな好きだ。
 もちろん俺も好きなうちの1人だ。その証拠に今、朝の10時になった今でもなお俺はベッドの上にいる。
 本当にこんなダラダラできるのは久しぶりな気がする。きっと今日から俺含めて特に帰宅部の人たちはこうやって朝はずっと横になっていて、昼から夜中にかけて活動をして、最後深夜に眠る。そんな生活で昼夜逆転してしまうのだろう。実際俺も中学の頃はそうだった。
 しかし、今はもう高校生。そんな生活になるわけには行かないから俺は夏休みと冬休みにはアルバイトを入れている。だから俺はここで起きる。
 俺は気怠い身体にムチを打って立ち上がりググッと伸びをした。
「よし、降りるか」
 階段を一段一段降りる度にモワモワと熱気を感じる。2階は俺が起きてからずっと扇風機をつけていたから涼しかrたが、1階はひどい。俺は降りてすぐにエアコンをエアコンのリモコンを手に取り、すぐに冷房をつけた。
「あっちぃ…、歯磨かないと…」
 シンクから出る水は思ったより冷たくて、なぜだか少し嬉しい気持ちになった。
 口をすすいだ後、俺は冷蔵庫からペットボトルのぶどうジュースを取り出して一口飲んだ。そのままそれを持って仏間に行った。俺は姉さんの遺影の前の座布団に座った。
「おはよう姉さん。今日から夏休みで、1時からまたバイトがあるから行ってくるね。」
 ぶどうジュースを一口飲んだ。そして右上の柱に掛かったキーホルダーを見た。
「椿さん、おはようございます。俺、実はいまだに椿さんが亡くなった事を受け入れきれてないんですよね。だって、まだそのこと知ってから2日しか経っていないんですもの」
 近くの公園で子供が遊んでいるのだろうか。無邪気な声がここまでしっかり聞こえる。
「楽しそうですね。夏が好きな椿さんが今いたら、外で遊んでいる小学生と大して変わらなかったのかもしれませんね。て、失礼か」
 また一口ぶどうジュースを飲んだ。
 線香をあげようと箱とマッチをとった。
「あれ、そういえばこれって変わらず一本でいいんですかね?椿さんの分も必要なのかな…」
 俺は少し悩んだ挙句、線香を2本さして火をつけた。
「こういうのってやっぱり1人1個がいいですよね。何も知らない素人の考えですみません。あ、そろそろ準備して行くので、姉さん、椿さん、行ってきます」
 俺は立って仏間から出た。線香の匂いがいつもの2倍する仏間は蒸し蒸ししていた。
 
 午後12時半、立派な腰掛けに座る男がいた。
 男は古そうな掛け時計を見て言った。
「コーヒーでも飲みに行くか」
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

さぷぷ
2022.08.06 さぷぷ

強い椿さん、好きです。受け入れられる走馬君も素敵です。こんな話、好みです。

大和滝
2022.08.06 大和滝

ありがとうございます!2章もそのうち書くので是非読んでください

解除

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。