千寿fifteen

大和滝

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村防衛編

やっぱりみんなで音楽を

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 波乱が起きた改革会議後、皆さまざまな思いを抱いて家についた。それは波乱を起こした当の本人も同じだった。自分の行動を振り返ると頭が痛くなっていた。本当にこれでよかったのか…。取り返しのつかない愚かなことだったというのは充分承知だ。でもあのまま何もできないというのも嫌だったのだ。音楽は陽介にとっての表現の糧だったからだ。
『もうダメだな…』
『最低だ…』
『やっぱり、許せないよ』
『いつもの顔に戻ってね』
 放たれた言葉が陽介の頭の中を旋回している。由梨と二人で音楽をやることになったが、どうも実感が湧かずイメージも浮かばない様子だ。そう部屋で頭を抱えていると家のインターホンがなった。陽介の母の流奈るなが「はいはーい」と大きな声で出る声が二階の部屋まで聞こえる。
「陽介~、結斗くんきたよー」
え…。陽介は少し怖かった。だけど部屋から出て、階段を降りた。そして結斗に手招かれて家をでて二人で対面した。
「結斗さん、さっきの会議いましたよね。てことは俺に怒ってる…よね?ごめんなさい」
「あー、違うよ。わざわざ怒りにきたわけじゃないよ。そりゃ確かにさ怒りはあるよ。だって俺の兄さん…健斗さ、役員だもん」
 陽介は申し訳なさで顔をうつむけた。それを見て結斗は陽介の肩に手を置いて優しい声で言った。
「落ち込むなよ。誰の迷惑にもなってないじゃん」
「それってどういうことですか…」
「だって、音楽で村を賑わせれなかったらだろ?じゃあやるしかないじゃん。音楽」
 陽介は意外な言葉に驚き顔をあげた。顔をあげた先には太陽のように明るく笑う結斗がいた。
「村がなくなるってことはさ、俺の兄さんの職がなくなるってことなんだ。健斗さ、めっちゃ勉強して頑張って役員のなれてたからさ、なくなったら可哀想じゃん。あとさ、個人的にあの状況であんな凄いことするお前の度胸と、この面白すぎる展開に乗ってみたいんだ。だから俺を陽介の音楽に参加させてくれないか?歌は苦手じゃないと思うからさ」
 結斗の前向きな考え方はグルグルとしていた陽介の心に光を差した。陽介は微笑みを見せて承諾した。
「じゃあ、明日から今後の計画練ろうか!やっぱり仲間は多ければいいからな。勧誘だろ勧誘。」
 そう言い残し手を振りながら帰って行った。
 
 次の日、千寿村の入り口には一台のスカイブルーの車と小型のシャトルバスが停まっていた。
 降りて出てきたのは坂本だった。坂本は何故だかワクワクとしながら村に入り、村の住宅地を歩き回った。
「あれ~、誰もいないなぁ。午前中でみんな捕まえたいんだよなぁ。だから1人見つけれれば大丈夫だと思うんだけれども…」
 独り言を言いながら村を彷徨う坂本。すると一人公園のベンチでココアを飲みふける姫香を見つけた。いつもの姫香からは見られない表情のため、心配になった坂本は駆けつけて後ろから呼びかけた。
「姫香ちゃんここで何してるの?」
「え!あ、英二さん?考え事ですよただの。そういう英二さんこそ今日はどうしてここに?」
 よくぞ聞いてくれたという勢いでニヤニヤしながら回ってベンチに座った。
「昨日とんでもないことになったじゃん?で、その次の日の今日。村はどうなってるかなって思って。音楽は順調かな?」
「うわ、英二さんってもしかして嫌味な性格?音楽が順調なわけないし、村はもう終末の雰囲気だよ。あーあ、どうしようかな本当に。お父さんなんて昨日家帰ってから寝込んじゃった」
 苦笑しながらやるせない口調で村の深刻さを話す姫香に坂本はそうかそうかと流して急に立ち上がった。
「そんな姫香ちゃんに朗報があるんだけど…聞く?」
「朗報…?なんか英二さんニヤニヤしてて怪しい気もするけど…テンション上がれるなら聞かせてください」
 警戒をしながらも聞く姫香にパァッと晴れた顔を見せて坂本は子どものように話し出した。
「ここで音楽をやるって言ったって、一体何ができると思う?会館のピアノくらいしかちゃんとした楽器がないんだから合唱?さっすがにキツイよねぇ…」
 眉を下げて呑気に言う坂本に少しイラっとする姫香が本題を急かす。
「わかったわかったよ。もう言うよ。俺がみんなに楽器を無償で提供するよ」
「ん?」微妙な空気に包まれた公園。坂本の表情は一定で、姫香の表情は微妙な顔で行ったり来たりしている。そしてまとまったのか目を見開いてバッと立ち上がった。
「……………え⁉︎」
「はぁ⁉︎」立ち上がって長い間を弄した末に大きな声を発した姫香に坂本も驚いた。
「え、楽器って、え、何?どういうの?」
「落ち着け?」
 挙動不審な狼狽うろたえをする姫香を宥めた後にまた話を進める。
「どんな楽器って、普通にギターとかラッパとかだよ。実は俺ね、趣味で楽器を集めてるんだ。俺の家の隣に展示館を造ってそこにたくさんの楽器コレクションを飾ってるんだけど、最近コレクション達が使われないのはなんだか可哀想だなって変な情が湧いてきちゃったんだぁ。だからこの機会は最高にいいんじゃないかと思ってね。」
 急なスケールの大きな話に田舎者の姫香には理解が少し難しかった。
(ん?展示館をえ、そんな簡単に造れるの?財閥主だってのは知ってるけど、そんなにヤバいのこの人?)
「そうなんですかー。すっごいですね、その大事なコレクションを提供するって…みんなって?誰のことですか」
 姫香にはこれが一番気がかりだった。唐澤もなかなか思考が読めないが坂本も負けず劣らずで突拍子のない人だから、彼にとっての音楽をやるみんなとは誰なのか。
「え、もちろん俺はここの15人の子どもたちなのかなって思ってるんだけど、違うの?」
 無垢なのか適当に言ったのか、その答えに姫香は複雑な心境だ。
「あ~、15人かぁ…多分それは厳しいかもしれないです。私だって、陽介のこと昨日から少し敬遠しちゃってるから」
「そうかぁ」
 軽い口調で言う坂本の顔は不思議そうな顔をしている。
「敬遠してるって理由でか。残念だな。俺は姫香ちゃんの郷土愛ってもんを買い被ってたな」
「え…何言ってるんですか。私はこの村を…一番…に」
 姫香はいつもの自信に溢れた郷土愛を語ろうとするが喉につっかえがあるのに気づいた。
「この村を一番に考えてる?かな言いたいこと。なんで言えないのかな?今この村を救うためにできる一番って何?」
「ハハ…そっかぁ。敵わないな。うん、そうと決まったらみんな誘わないとね。今度は私が勧誘する番かな。72回目の奇跡を見せようかな。あと、陽介とは仲良くしてたいからね」
 前を向いた姫香はにこやかな笑顔を取り戻して走り出した。それを見てつられて坂本も顔が綻び同時に走ってついて行った。
 走ったその先は村内放送スタジオだった。ややこしい機材をガチャガチャといじった姫香はマイクを用意して大きく息を吸い叫んだ。
「峯田陽介くん‼︎今すぐ千住村会館にきて‼︎音楽をやるぞ‼︎」
 あまりにも豪快な行動で坂本も引くほどだった。
「さっすがは村長の娘だね。そういうことオッケーなんだね」
「いや、この放送は誰が使ってもいいの。でもぶっちゃけお父さんくらいしか使わなかったけど、あってよかったなって今実感した。よし、家近いからすぐ来ると思うから早く私たちも会館行かないと」

 放送をしてから1時間が経った。会館に走った陽介が姫香と坂本から事情を聞いて歓喜の発狂をしたのは言うまでもなく、由梨と結斗を呼び皆を最後の、72回目の勧誘が始まった。いや、もはや勧誘と呼べるものではなく、姫香の人望と権限で無理やり同行させたに近い。稑に至ってはゲームをしていたのを無理やり引っ張って部屋から出した。そしてあと一人残ったのが昨日、陽介に感情のままに怒りをぶつけた茂だった。茂は家にいる。皆、茂はああなったら頑固だから無理だと言うが、姫香が「私一人で連れてくる」といい深堀家のインターホンを鳴らした。
 出てきたのは寝起きの茂だった。しかし茂は今の状況をもう把握しているようだった。
「茂先輩、今楽器が英二さんから支給されて、楽団が創り上げそうになってるんです。茂先輩も一緒にやりますよね?」
 煽るように言葉を発する姫香に対してあざけるように茂は返す。
「返事がまるでわかっているのに聞くあたり、お前も性悪だな。楽器が使えるからなんだ、たった3ヶ月で村の外から人を招き沸かせる演奏なんてできるはずがなうだろ。村がなくなるだけじゃなく恥までかくなんてまっぴらだ。残りの3ヶ月、俺は平穏に過ごしたいから放っておいてくれ。お前こそこの村が好きなら悪あがきはやめて浸っていたほうがマシだぞ」
「何それ、らしくないじゃないですか。そっちは自称でも村好きNo. 1だったら村を救いたいとか思わないの?」
 冷たく突き刺すような口調で互いに静かな熱いことを言い合う。これは両者引くことのできない一種の冷戦に遠くから様子を窺う者には見えた。
「自称なんかじゃない、俺はこの村を誰よりも愛している。救いたいと思わないなんてことは一切ない。限界集落と化する生まれ育った母村を見過ごせなくて、昨日の改革会議で俺は雄大さんにこの村を買収されて村が生きるなら、俺は腹をくくっていたんだ。でも、それを止めたのは音楽だ。この村を今の状況に一瞬で落とした音楽を俺がやるなんて、冒涜だ…。」
「違います!音楽は悪くない。誰も悪くない!」 
 拳に力を込めて全身から発した姫香の叫びは遠くの者達にもハッキリと聞こえた。姫香は肩を上下に呼吸を整えている。
「本当にわかってますか茂先輩は。陽介はただただ自分勝手に好きなことをしたいわけじゃない。ちゃんと村のことを考えてる。たしかに浅すぎる行動でこうなっちゃってるけど、村好きを語ってるくせに何も言えなかった私たちよりも断然凄いじゃないですか」
 悔やんでも悔やみきれない心情が言葉に現れている姫香の言葉には茂も言い返せない。
「音楽をやることは冒涜なんかじゃない。千寿村を守るための切り札なの。ていうか音楽しかないの。私もあんだけ断ってたことを今になって挑戦するなんて思わないけど、千寿村のためには音楽にすがるしかない。でも音楽はメンバーがいればいるほどいいと思う。だから茂先輩も意地なんてはらないで、音楽を私たちとやろうよ」
 姫香の声には村に対する切実な想いが詰まっていた。茂は自分の意思が揺らいでいるということに気づくがまだ振り切れないものがあった。
「…しかし…俺、は」
 不意にチッと音がが響いた。姫香の中で何かがきれ、舌打ちとなり姿を聴かせた。
「めんどくさい!何が、村の冒涜、買収されるのに腹をくくったよ!誰よりも茂先輩がこの村が変わるのを怖がってるじゃない。不変を信じてるじゃないの。だったら、音楽やるしかないじゃない。いや、違う。もう決めた…。音楽をやりなさい。よ」
 茂に向かって人差し指をビシッと指し尊大な態度で命令を吹っ切った姫香を目にしたと同時に茂の中の何かもぷつりと切れた。そして腹を抱えて狂うほどに笑い出した。姫香は笑われた自分の姿を見てふと赤面し、そして手を戻し笑わないでくださいよと照れ隠しをする。
「大原、お前それ黒歴史になるやつだな。いっつも憎たらしいように優等生演じるお前がこんな偉そうなことをな。ていうか、時期村長は俺だっての。そこ間違えるんじゃねえよ」
「え~何言ってるんですか。時期村長は私に決まってます。茂先輩は私の秘書ですね。コキ使ってあげますね。で、音楽やる?」
「この流れでやらないなんて…いえねぇな。あ、でも楽団に入るわけじゃないからな。ちょっとだけどんな感じかを体験して、可能性があるならやるさ」
「それは大丈夫ですよ。私もふくめてみんないきなり音楽やるぞ!ってテンションになれてないから」
 和気藹々と話す2人の顔はもうすっかりと晴れて朗らかとしていた。それを密かに見ていた陽介たちは拳を握りガッツポーズを決めていた。

 千寿村の二十歳未満15人が勢揃いで坂本の車と一緒に停まっていたシャトルバスに乗り込んだ。そして15人を乗せたバスは走り出した。ほとんどが初めての貸切バスでみんなワクワクしていた。
「桜ちゃん、これなんか都会の遠足みたいで楽しいね」
「うん。私もたまに本屋さんに行く時とかバスに乗るけど、ほとんど一人だけだったから、みんなと乗れるのは楽しいよ。佳奈ちゃんはバス初めてなの?」
「うん!そもそも車に乗ることもあんまりないかな」
 席の隣同士や、かたまりで仲良く話し合っている。陽介も由梨と純と普通に話している。
「なあ陽介…悪かったな。お前の夢を俺は、心の中で馬鹿にしていた節がある。俺もバスケが好きでやりたかったけど由梨と同じ理由で諦めてた。陽介だけが能天気に夢を追いかけているから、腹が立ってたんだよ。本当にすまなかった」
 幼馴染の心の内の告白と謝罪に陽介ははにかんだ笑顔を浮かべる。
「いいよそんなの。俺もついムキになった。由梨もだけど、ごめんな俺のせいでこんなことに巻き込んじゃって」
 神妙な顔は似合わず、二人は吹き出してしまった。
「だから、俺(私)は陽介の無茶に付き合うの慣れてるって」
 3人はまた前のように親友に戻れたように見える。
「俺はいい幼馴染を持ったんだなぁ」
「何言ってんの。当たり前だからね」
『間もなく目的地へ到着いたします』
 運転手さんが操縦席からアナウンスで報告をする。皆窓の方へ目を向けた。するとそこはもう豪華な家や建物が並ぶ新世界だった。そしてバスの停まった所には、白く目立つ建造物があった。
『坂本財閥所有楽器展示館です。どうぞご降車ください』
 バスの扉が開き皆が外に出ると坂本が一足先に待っていた。そして初めての街に興奮する15人を集めた。
「ようこそ新月にいげつ市にみんなきっと新月は初めてだよね。どうだい新天地に足を踏み入れた今の気持ちは。心躍らない?今度改めて案内するよ。まず今日はここに入って楽器とご対面しようよ」
 この中で誰よりもソワソワしているのは陽介だ。夢にまでみた楽器を今実物を見、触れることができるという事実に発狂してみたおかしくない状態だ。坂本もそれを察知してニヤッとしながら展示館の鍵を解き、扉を開けた。するとそこに広がっていたのは壁一面にかけられたギター、ガラス張りのショーケースに入れられた管楽器などのたくさんの楽器が飾られていた。これには陽介はもちろん、他の者も目をひかれた。見るとそこには何人かの大人がいた。そして坂本はこちらを向く。
「よし、じゃあこれから2時間あげる。楽器を選ぼうかみんな。ここにある楽器を各自で見て回って、最終的にこれだ!って楽器をこれから練習していこう。試しにやってみたい場合は近くの人に聞いてくれればいいよ。急遽きゅうきょ頼んで楽器のプロ何人かに来てもらったから。そこにいる人たちが全員プロだからねぇ。なんでも聞いていいよ。じゃあ、はじめ!」
 坂本の手を叩いたのを始めに少し戸惑う者もいたが、皆動き出したのを見て各々ショーケースのもとへ歩き出していった。
「なあ稑、お前なんか気になる楽器あるか?ないんだったら俺あのど真ん中に飾ってあるギター赤くてイカしてると思うから見に行きたいんだけど一緒に行かね?」
「うんいいよ。俺も楽器なんて興味ないから、面倒臭いけど色々見て回ろうと思うし」
 と言い奥の壁に掛かっている赤いエレクトリックギターのもとへ行った。
「実物見ると結構カッケェな」
 と眺めていると、近くの男性が近づいてきて話しかける。
「君らギター興味あるのかい?とりあえず、音でも聴いていきなよ」
ジャッジャッジャジャッジャジャーン
 男は黒いギターを肩にかけながら近寄り、喋りながらもうギターの弦を三角の板で弾いていた。
「どうだい?イカすでしょ?」
 稑は苦笑しているが、皐月は違った。キラキラとした目をして男に言った。
「お願いします。なんでもいいんで、スッゲェゾワゾワするっていうかギラッギラするの少しだけでいいんで弾いてください‼︎」
「いいね少年。要は君の全身の毛が逆立つような痺れるフレーズもってこいってわけだろう?いいねいいね、やってやろうか!」
 男は目を見開き、大きく右手を振り下ろしたと思いきやすぐに弦のほうへ戻して、細かく弦を弾いている。チマチマ弾いているように見えるのに音は一音一音全てが皐月に響く。直感的にこれだと思ったのか、皐月は聴き入ってしまった。
「俺決めた。ギターやるよ。あの赤いギターをおじさんみたいなふうに弾きてぇ」
「おーおー、いいねいいね。未来有望そうなギタリストの誕生かねぇ。俺は水上玄丘みずかみげんきゅうだ。先にやってようぜ」
 続いて皐月も自己紹介をし二人はどこよりも先に楽器の練習を始めた。二人のギラギラとした会話から離脱してしまった稑は頑張れと皐月にエールを送りながらそこから去った。するとギターを弾いているちょっと近くには兄の宇宙がいた。稑が近づくと宇宙は嬉しそうな表情に切り替わった。
「稑、いい楽器は見つけたか?俺はまだまだ良さそうのがなくてさ」
「俺もまだだよ。でもさ、兄ちゃんは似合いそうな楽器あるじゃん。このドラムなんか、兄ちゃんってがたいいいからすっごくカッコいいと思う」
 あまりにも正直に言ってしまって少し恥ずかしがる稑に、宇宙の表情は一変した。
「稑が…そこまでいうと言うなら…理想の兄いちゃんになるべく、俺はドラムを極めようじゃないか!」
 もう止まらないと察した稑は諦めて頑張ってねと奮いを立たせてそこを去った。
「みんな自分の運命的な楽器見つけてるのに、俺にはそういう直感がこないなぁ」
「ねえねえ僕、魅惑的な木管楽器見ていかない?」
 若そうな女に話しかけられた。
「木管楽器?どんな楽器なんですか?」
「木管楽器ていうのはね、ここにあるクラリネットとかみんな大好きサキソフォーンみたいに、口を咥える部分にこういうっていう木の板を挟んで、そのリードうぃ震わせて音を鳴らす楽器のことなんだよ。あとはフルートも実は木管なんだよ。さあ、ここのショーケースは全部木管楽器だよ、魅惑的な子を探しちゃってね」
 愛想笑いをしながら頷き、ショーケースに適当に目をやる。
(なんだろうこの人、音楽家ってみんな変人なのかな?ていうかこの人楽器をまるで子どもみたいに言ってないか。魅惑的な子って言ってるぞ…。楽器にそんな魅惑的とか運命とか…そんなの)
 と思いながら見ているとピタッと止まった。稑の目の先には赤茶色の細長い木の枝のような楽器があった。それをみた女はやや興奮気味で話しかけた。
「ウッソーもしかしてこの子に見惚れてる感じ?」
「見惚れているっていうか、でもなんかいいなぁって思っただけです」
「いいじゃない。それはもう惚れる直前ね。この楽器はよ。別名をバスーンともいうわ。センスいいわねダブルリードよ。私はね、宇佐津響うさつひびきよ。オーボエを吹いてるからよろしくね」
 ダブルリードやオーボエも何かわかっていない稑だが、ファゴットが自分には一番いいなと決断した。それと言った理由はないから響風にいうとだろう。
 それとが対極的に金管楽器のエリアは大層賑わっていた。そこにはプロトランペッターの小島悠こじまはるとホルン奏者の羽馬中玄治はばなかげんじがその場にいる茂や由梨に教えていた。
「ねえ陽介、ラッパって吹くの難しいのかな?」
「由梨、難しい楽器なんてないと思ったほうがいいよ。トランペットのマウスピースは小さいから結構大変だと思うよ」
「へぇそうなんだ。でも私ラッパがいいなぁ、かわいいし」
「文香さんは、金管楽器ゾーンにいますけど、なんか希望とかあるんですか?」
「いろいろみてきたけど、私ピアノにする。あとホルンもこの形の複雑さがスケッチの練習になりそうだからホルンやってみる」
「そうですか。なら俺もホルンとピアノやってみます」
「そう、私を慕って同じことしてくれるのは嬉しいけど、たまには自分で選択してみるのも武には必要だよ?」
 武は大丈夫ですよとニコリと笑ってみせた。そして悠が金管楽器エリアの皆に一斉に言った。
「よーし、みんな金管楽器で良さげなの目星ついたら手に取ってみなよ。大丈夫落としなんてしないよ」
 各々照明の反射でキラリとする楽器を手にした。玄治がそれぞれに持ち方を教え回っている中、悠が指で数えている。
「えーっと、ラッパが3人にボーン1人とホルンが2人か。やっぱトランペットだよなぁ。わかってるね3人。あれ君は選ばないの?」
 一人楽器を持たずみんなを見ている陽介は答えた。
「俺はもう心に決めている楽器があるのでここにはただただ楽器を見にきただけです」
「あ、そうなんだ。ならしゃあないな。気を取り直してみんなまずは基本のことから始めようか。まずはバズィングという金管楽器に必要不可欠な技術を教えるね。こんな風に口を横に張って唇を震わせるんだ」
ビーーーーー
 悠の唇からは蝉の鳴き声のような高い音が鳴った。みんなそれに驚きを見せて自分でやろうと試すが音が全然ならない。そこに玄治がアドバイスを送った。
「最初のうちは息を流す時に口が緩むから、片手をチョキにして唇をこんなふうに抑えたほうが鳴らしやすいぞ」
 これを見て各々手をチョキの形にして唇につけて息を吐いた。途切れ途切れでも音がでる者も出てきている。
「あ、出た!」
「むずくね?これ」
 皆苦戦している中、突如ビーーーと高い音が鳴った。悠も玄治も鳴らしていない。鳴らしたのは茂だった。周りのみんなはもちろんだが、悠と玄治さえも目を丸くした。そして悠が近づいていった。
「君、名前は?」
「俺は深堀茂です」
「茂くんね、本当は次マウスピースを吹かせる予定だけど、急に楽器吹いてみようか。」
 真剣そうな口調で淡々と茂にトランペットの構えを教えた。そしてさっきのバズィングの要領で吹いてみてと言う。
 茂は息を吸い口の形をさっきのを思い出しながら作り息を入れた。
パーーーーー…
 音が鳴った。息が足りず最後は掠れた音だった。しかしそれを聴き悠も玄治も固唾を飲んだ。
「これは…すげぇな」
「うん。初心者の子からこんないいベーの音が聴けるなんて、思わなかった。まだ至らないところだらけだけど…茂くんは逸材かもしれない」

 楽器選択から2時間が経った。外にみんな集まっていた。それを確認した坂本がみんなの前で言った。
「みんなたくさん楽器見て、一応一個は楽器を選んだよね。ということで、明日から2週間、毎日レッスンをパートや個人で受けてもらうよ。そして2週間後にみんな集まってここで初めてのをしようと思う。明日からの2週間でみんなどこまで成長してるか楽しみだなぁ」
 ついに音楽活動が始まるという実感と、合奏という言葉に皆心が昂る。
 バスに乗り込み千寿村に帰っている道中でも皆昂りは冷めず、今日の楽器を触ったり吹いたりしたことを近くの席の者同士互いに話し合っていた。
「十希、お前はなんの楽器をやることにしたんだ?」
「私はねぇ、クラリネットって楽器を選んだわ。なんか小さくて持ち運びが楽そうなのよねぇ。ところで茂、あなた、すごく上手いらしいじゃない。なんて言われたの?」
「俺は、金管楽器の才能があると言われた。俺はだからトランペットをやろうと思う」
「ふふ、いいじゃない。茂らしいわぁ。さて、私は少し寝ようかしら。着いたら起こしてちょうだいね」
 そうして十希はゆっくりと目を閉じた。
「あの、姫香さんは何やることにしたんですか?」
 景がタジタジと聞いた。
「私はね、サックスとトロンボーン。カッコいいでしょ。景は?」
「僕は、ベースを選びました。水上さんっていうギター弾く人がちょっとベース聴かせてくれて、なんか渋くてカッコいいなって思って」
「へぇ、渋い景か。割と似合うんじゃないかな」
「そ、そうですか?ありがとうございます」
 景の顔はほんのり火照っていた。
「由梨は結局トランペットにしたの?」
「うん、そうだよ。茂先輩と佳奈ちゃんと一緒。それより私、陽介の方が気になる。陽介の心に決めてる楽器ってなんなの?」
「クラリネット」
 陽介は思い出を噛み締め昔のきっかけを話し出した。
「小学2年生の頃にお母さんが村の外でやるオーケストラのコンサートチケットをもらってきてさ、お母さんと一緒に浅葱地を出て隣の矢東木やとうぎまで行って聴きに言ったんだ。そこで色んな曲を聴いたけど俺つまんなくて寝そうだったんだよな。そしてらさ、ゲストで柳家勇司やなぎやゆうじっていう凄いクラリネッティストが来てさ、クラリネット協奏曲を吹いたんだ。その時の演奏が本当に凄かったんだ。そして決めたんだよ、いつか柳家さんのような世界的なクラリネッティストになってやるって」
 語っている陽介の目はどんどんとキラキラしてきて、それを見ている由梨と純も楽しそうな表情をしている。
「そうなんだ。そういえば陽介の音楽好きもその時あたりからだったね」
「ああ、あの時確か陽介、流奈おばさんにリコーダー買ってよーって泣きじゃくってたっけな。そして誕生日に買ってもらってたな。お前、クラリネットをリコーダーだと思ってたのか?」
「あの時はそうだね。めちゃくちゃ上手いリコーダーの演奏にしか見えてなくて、リコーダーを買えばああゆう風になれると勘違いしてた。懐かしいな。ていうか純は今日俺らと行動しなかったけど、なんの楽器にしたんだ?」
「俺?俺はコントラバスにした。ていうか、色んな楽器やったけど、どれもセンスあるって言われた」
「え、すごいじゃん純。意外な才能?」
「でも俺背高いからコントラバス似合うって言われたから。ヘ音記号ってのの読み方教えてもらった。あと普通に音好き…低音なんか好きかも」
(これ…低音沼にハマった感じかな純…これは、熱い展開かもしれない)
 そう考え陽介は一人微笑んでいた。
 そんなこんなで千寿村に着いたのは7時を過ぎていて即解散となった。そして次の日から毎日放課後は楽器の練習に皆明け暮れた。

 楽器を皆選び、練習を始めてから早くも1週間が経った。三学期が終わって四月頭までの春休みに入った。毎年この時期が皆がはしゃぎあそびまわるが今年は違った。皆朝から晩まで必死で楽器を弾いたり吹いたりしていた。
 レッスンは千寿村内で全て行われて、各パートごとで千寿村会館、守里神社、グラウンド、田圃の脇道で主に交代でレッスンをしている。順番が回ってくるまでも皆各々個人練習をしているため音が絶えることはなかった。
 現在3月17日の14時、守里神社では悠が茂、由梨、佳奈のトランペットパートを指南していた。由梨と佳奈は銀色、茂は金色のトランペットを吹いている。
「いいかい?何度も言うけど楽器を吹く練習で一番大事なのはだよ。ロングトーンをやる意味も何度も教えてあるよね。由梨、言ってみてごらん」
「はい。肺活量を増やすためと、みんなと音を合わせるためと、自分の音域を広げるためです」
「そうそう。よし、じゃあB♭デュワセット、8拍でスタート」
 悠はメトロノームを動かす。カチカチと左右に倒れるメトロノーム。7回目で息を吐き、8回目で思い切り吸った。そして音を出した。
 3人の音が混ざり合って伸びている。
「佳奈、音が小さい。二人の音量に合わせる!由梨、力入れすぎ、もっとリラックスして吹きなよ。茂、音程が悪いよ。チューナーちゃんとみて音を合わせにいけ」
 厳しく指摘を止まずに言っていく悠に必死に噛みつくように音階を吹き続ける3人。下のシから上のシまで上がってまた下がり終わって吹くのをやめた。
「うん。3人とも音は伸びるようになったね。でも音程、つまりピッチが悪い。まだアンブシュアが整わない。これじゃダメだ。あと1週間これを徹底するんだよ」
「はい!」

 同刻、千寿村会館では皐月と桜がギターで、景がベースのレッスンを受けていた。
3人はメトロノームが鳴り続けているなか、一拍一拍の間に2回音を鳴らし続けていた。8分音符の練習らしい。皐月は赤、桜は緑色のギター、景は黒と黄色のベースをひたすら弾いていた。それを監督している玄丘がトランペットと同じく指摘をしていっている。
「景!ドンドン遅れているぞ。ベースはこの8分音符が主流だ!これを10分20分は楽勝でできないとベーシストなんかにはなれないぞ!!」
「はい!」
 景は疲労の溜まる右腕に力を込めてテンポに合わせた。
「おい!ギター陣!お前らはピックを使ってる分ベースよりも指はキツくないはずだ!気を抜くなよ!」
「はい!」
「うおー!負けねぇ!」
 皐月も力を込めてより一層音量を上げた。
「よし、追い込むぞ!32小節3連符、後32小節怒涛の16分音符だ‼︎5、6、7、8!!」
 玄丘のカウントダウンの後に皆の顔も険しくなり、一拍のうちに2回だった音が3回に増えた。
「これ、きつい…」
「桜、俺まだまだいけるぜ…弱音を吐くにはまだ早いだろ」
 うんうんと頷きながら見ている玄丘は足でトントンとカウントしながら、はかりまた…
「よし、これで最後だ。5、6、7、8!!踏ん張れ‼︎」
 3回から4回になり3人の苦痛の声が止まない…

 同刻人参畑の辺、レッスンの終わった陽介が一人クラリネットの自主練に励んでいた。
タラララタラララタララーン
「だめだ、遅い。指が全然まわってない。十希先輩はもうこのフレーズできてた。俺も頑張らないと」
タラララタラララタララーン
タラララタラララタララーン
 うまくハマらず何度も繰り返す陽介。
「惜しいね。もっとリラックスした方がいいと思うよ」
「俺もそう思う」
 アドバイスの出主はサックスを持った姫香と武だった。
「今日サックスレッスンないんだ。だから二人で練習しよーって思ってたら陽介が吹いててさ。そこサックスも同じことしてるよ」
「そうなんですね。てか武お前、ホルンじゃないのか?」
「そうだけど、響さんて人が君は木管楽器と運命共同体だよ!って言うもんで強制的に木管楽器も教えてもらってる」
「そうそう、武めっちゃ上手いんだよサックス」
「そうなんだ。だったら俺にアドバイスくれよ。俺もっと上手く吹きたいんだ」
 切実に頼む陽介の隣に武は歩いていってサックスのリードを咥えた。不思議そうな目で陽介が見る。
「何見てんだよ。上手くなりたいんだろ?だったら同じフレーズ吹いてると一緒に何度も何度も合わせた方がいいだろ」
「いいね。吹こう吹こう!」
 姫香もサックスを構えて反対側の隣に立った。
「そうだな。じゃあ、この部分からいいですか?」
 楽譜を指差してサックスの二人も自分の楽譜を開いて確認する。
「ああ、いいぜ」
「よし、楽しみだね」
 陽介はチューナーのメトロノームをつけた。
「5、6、5678」
タッタッタラ タラッタッタラ タラッタッタッタラーララ
 軽快なリズムが続き、例のフレーズが近づいてきた。フレーズの前には1小節休みがある。機転を効かせた武が3拍目で楽器を下げ、4拍目で上げた。それに気づき二人は合わせた。
タラララタラララタララーン タラッタッタララララタラララーン
 3人は吹くのを止めた。3人は音がピタリとハマったのを実感した。
「ハマったよね?今」
「ああ、ピッタリだったと思う」
「俺、こんなにスムーズに指回ったの初めて。なんでだろう」
「音楽マニアのくせしてわかんないのかよ。同じ動きをしているやつとやった方が陽介はリラックスできてるんだよ」
 はっとする陽介は自分が一人で頑張りすぎているのだと気づいた。
「ありがとうな。俺、もっと仲間と一緒にやるわ。トゥッティだったな」
 陽介の心はまた一段と軽くなったように見える。

 3月24日の12時。新月市楽器展示館は15脚のイスが用意されていた。今日は初合奏の日。皆緊張を胸に住ませていた。
 指揮者席には坂本がいる。実は坂本は音楽大学出身で指揮術を心得ている。
「さあ、この2週間みなさんは各自自分の担当楽器、中には2つの楽器をやっていた人もいて、練習づくしだったと思います。今日はただ単純にみなさんの成長がみたいんだ。真剣に楽器に向き合い、磨いた力を今日、見せてほしい。よし、まずはチューニングから」
「はい!」
 見たことのない真剣な坂本に皆圧倒されているがそれに負けじと意地を見せた。
「ギター、コードB♭」
ジャーーーン
 皐月と桜は左手でフレットを抑えてB♭のコードを弾いた。坂本はテンポをだした。
「このテンポに合わせて全音符で弾き続けてて。次ベース、5678」
デューーーン
 景もB♭の音を鳴らす。
「ドラム、8分ビート」
ダッダッダッダ
 宇宙はスネアを8分で刻み出す。
「クラリネット。5678」
ターーーーーン
「アルトサックス。5678」
ターーーーーン
「テナーサックス。5678」
ダーーーーーン
「ファゴット。5678」
ボーーーーーン
「弦バス。5678」
ブーーーーーン
「次、金管楽器いくよ。トロンボーン。5678」
バーーーーーン
「ホルン。5678」
ファーーーーン
「最後トランペット。5678」
パーーーーーン
 全員のB♭の音が重なった。坂本が手を上に上げる。そして手を大きく回して手を握った。それと同時に音が消えた。
「皆さんの音は分かりました。完全にピッチが合っているとは言えません。ですが、気持ちは伝わってきてるよ。満点上げれちゃうね」
 みんなの緊張がほぐれた。
「よし、じゃあ2週間の成果見せてね。リラックスだよ。楽譜開いて…特別ベーシックin B♭」
 皆楽器を構えて坂本に集中する。坂本も手を構えて降り出す。
「ワン、ツー、ワンツーさんし!」
ツッツツツッツツツッツツツツツツ
バーーーンババババーーン…
 宇宙のシンバル1小節から始まり、 B♭とFと Dのハモリが入った。そして曲が進む。皆2週間で得た力を出そうと必死だ。
(入りのインパクト良かったんじゃないかな。トロンボーンはインパクト要員として最適なんだ。俺一人だけど全部薙ぎ倒す勢いで…)ババババーーンババーン…
(今のところピッチは合わせられてる。このまま調整しながら行けば大丈夫のはずだ。大丈夫だ、あのロングトーンでトランペット内の音は統一できている。リラックスだ…)パラパパパララー…
(すごい、みんなで音を合わせるってこんな感じなんだな。稑と景先輩とは低音パートとして合わせてたけど、みんながいるとどうも違う。俺らはテンポキーパーだから、一定に一定に。ドラムに合わせよう)ブンブンブンブブブン…
(腕は連日の練習で痛いはずなのに、今はそれすら気持ちよく感じてる。これが合奏の力なのか?)
(皐月くん気合い入ってる。私もついてかないと。音楽、楽しいな。でも、ていうことは…そっか。やっぱりわたしには無理だよね…)ジャジャジャーンジャジャッジャッジャーン
(もう少しであのフレーズか…陽介、リラックスだぞ)
(大丈夫よねぇ、あの後3人で練習してたものねぇ。私も入ろうか悩んだけど、随分と楽しそうだったから崩すわけには行かなかったから…)
(よし、くる)タラララタラララタララーン タラッタッタララララタラララーン
(完璧じゃない?これ)
 皆それぞれ思いの募った曲はまもなく終わる。最後は音が1小節ずつ増えていくだ。
タッタタタタタタタタタタタタ…
 ドラムの音がドンドンと弱くなっていくのと同時に音がなくなっていく。
 皐月、由梨、結斗、純、景、稑が音を出した。( B♭!!)
バーーーーーーーーン
 茂、文香、十希、姫香、桜、佳奈が続く。(F!!)
パーーーーーーーーン
 佳奈、武、陽介も入る。同時に宇宙のローリングが入る。
(D!!)
ターーーーーーーーン
デュルルルルルルルル
 クレシェンドで皆の音が大きくなっていく。そして坂本が大きく手を振れ上げ、斬るように振り下げる。
ジャン!!!!
 音の余韻が館内に響き渡る。皆やり終えたという達成感と呆気に取られていた。
 そして一息つき坂本がとうとう口を開けた。
「皆さん、凄いですよ。2週間でこのクオリティーは俺も驚きました。このまま行けば必ず、村を守れる。俺が補償するよ」
 
 千寿村に戻った15人はこれからの作戦会議を始めようとしていた。茂が皆の前に出た。
「みんなおつかれ。今日の演奏は俺らの始まりだ。これからどんどん精進して、この村を救おうぜ!」
「当たり前でしょそんなの!」
 みんなの意志が一つになった。そんな矢先、桜が手を挙げ、前に出た。
「こんな時にこんなことを言っちゃうのはダメだと思うけど…私は楽団を抜けます。やっぱり私は無理だと思います。もう、あの時みたいなことにはなりたくないですからから…」
 そう言って桜は家に帰ろうとする。みんなも事情を知っているから何も口出しが出来なかった。そんな中で玄丘が言った。
「桜!俺は桜に何があったのかは知らないから下手のことは言えないが、ギターは持っていけ。。ギターを弾く時の桜は無二だ」
 返事はなかった。しかし、桜の使っていた緑色にギターもその場には無くなっていた。皐月と玄丘の表情は緩み、次第に皆も大丈夫だと安堵した。
 その瞬間から彼らの楽団あと2ヶ月と2週間先の勝負へと動き出した。









 


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