10 / 28
行方不明王女とレリルール学園
レリルール学園案内②
しおりを挟む
アウラとルシオラが退出した学園長室で。
「ネロいるか?」
「ここに」
ロイザ学園長の目の前に水が集まっていき、その水が水のまま美しい女性の姿になる。
「我が主人、なにか御用でしょうか?」
たっぷんとネロと呼ばれた女性の水が揺れる。
「アウラとルシオラの護衛を頼む」
「承知いたしました」
「それから、お前知っていただろう?」
「何をでしょうか?」
「アウラとルシオラが付き合ってることだ」
「それは……『ヘルバの泉』に住まう我が眷属から報告はございました」
「アニムス家のことは残らず報告しろと命じていたはずだが?」
「あら、我が子の恋バナも含まれておりましたか」
「はぁ」
ロイザ学園長は頭を抱える。
「ルクルさんが亡くなったことで“アルカヌム”の庇護が失われた。
サラは私の大切な親友だ。16年前の犯人が分からない以上、アウラとルシオラを“マギーア”の庇護下におくしかないだろう」
「…………ルシオラ様は既にご存知のようですし、ディアトロ家へ我が主人の後継者として引き取ったほうが、こんな回りくどくなく簡単に守られるのでは?」
「私に名乗る資格はない」
「カエルラ•アニムスとのことは、私水の精霊王ウンディーネの契約者の“掟”のせいでございますから、あまりご自身を責めないほうがよろしいかと」
その言葉を残して『ヘルバの泉』に暮らしていた、水の精霊王ウンディーネのネロは姿を消した。
ーーーー
ちゃぷん。
「ルシオラどうしたの?」
「いや、水の音?が聞こえた気がして」
「なにも聞こえなかったよ」
「気のせいか」
アウラとルシオラはロイザ学園長から渡された学園の地図で、なんとか寮の共同スペースにある、防音の個室の勉強ルームに来ていた。これから作戦会議だ。
「僕達は魔法薬と、それ以外は筆記中心の授業を選ぼう。
魔法実技は……“魔法詠唱道具”を使えば、アウラが魔法を使ってる風に見せれると思うけど、危険だからやめとこう」
「“魔法詠唱道具”って?」
「学園来る前に『魔力の蝶々』いただろう。
あの蝶みたいに“壊す”と一般人でも安全に魔法が発動出来る道具だよ。
ただこれを使うと他の生徒にバレないように”壊して発動”させないといけないし、残骸も残るからアウラの負担が大きい」
ルシオラはアウラに分かりやすく紙に図解を書いて説明する。
「授業はペアを組んで受けるみたいだし、僕がフォローするからアウラが【惚れ薬】しか作れないことを隠し通そう」
「ルシオラの負担が多くない?」
「大丈夫だよ。アウラの王家の血を引く証、瞳の色と『たったひとつの魔法しか使えない』ことを隠すためだから」
「……うん。無理しないでね」
アウラはルシオラの肩に頭を乗せる。相変わらず近い距離です。
「これで大丈夫かな」
ルシオラがペンを置くと選択した科目を見直した。
歴史……レリルール王国と王家の歴史
魔法歴史……魔法の発展の歴史
地理……レリルール王国含め、交流国の地理など
魔法薬……薬の精製、材料採取方法や注意事項など
魔法薬研究……新しい薬の開発、研究など
「思ったより少ないね」
アウラはルシオラが持ってる紙を覗き込んでそう言う。
「実践授業は省いたからね」
ーーーー
作戦会議を終えてアウラとルシオラは女子寮と男子寮に続く大広間でどうしたらいいのか、悩んでいた。寮へ続く階段やドアは無く、目の前は自分達よりも巨大な2枚の鏡があった。
「ここであってる」
「よね?」
ルシオラは学園寮の地図と周りを交互に見渡して、アウラはルシオラの腕を抱きしめたまま地図を覗いていた。
「どうした?」
「また迷っているの?」
後ろからはじめて聞く少年?の声と王都で道案内してくれた王家の小鳥を連れた少年と同じ声が聞こえた。
「貴方は王都で会った……」
「ごめんね。また名乗っていなかったね。
僕はカナリア。カナリア•ルスキニア•ヴァンデルン•レリルール第四王子だよ」
(アウラの腹違いの弟か)
アウラはルシオラの後ろに隠れて青色のリボンが付いた黒のローブと制服を着てるカナリアともう1人の少年を覗き込む。
「カナリアどういうことだ?」
「王都で道に迷っていたから、案内したんだよ」
「や、抜け駆けかよ」
緑色の髪をポニーテールに纏めたつり目の少年がカナリアに意味不明な突っ込みを入れてる。
フィリオと同じ赤いリボンが付いたローブと制服を着てる。
(私と同じ瞳)
「ああ、俺はラピドゥス•ラーナ•ヴァンデルン•レリルール。
こいつの腹違いの兄だ」
((今度は第三王子かっ!))
「お前達どうした?」
ラピドゥスとカナリアの後ろからリボンの色が違うが、同じローブと制服を着た緋色にみつあみに編まれた男性と銀髪がツンツンと外側に跳ねた垂れ目の男性が歩いて来た。
2人とも王族の淡い紫苑色の瞳。
((ああ、今度は第一王子と第二王子))
アウラとルシオラは1番避けたい人達に遭遇して目の前が真っ暗になった。
「ネロいるか?」
「ここに」
ロイザ学園長の目の前に水が集まっていき、その水が水のまま美しい女性の姿になる。
「我が主人、なにか御用でしょうか?」
たっぷんとネロと呼ばれた女性の水が揺れる。
「アウラとルシオラの護衛を頼む」
「承知いたしました」
「それから、お前知っていただろう?」
「何をでしょうか?」
「アウラとルシオラが付き合ってることだ」
「それは……『ヘルバの泉』に住まう我が眷属から報告はございました」
「アニムス家のことは残らず報告しろと命じていたはずだが?」
「あら、我が子の恋バナも含まれておりましたか」
「はぁ」
ロイザ学園長は頭を抱える。
「ルクルさんが亡くなったことで“アルカヌム”の庇護が失われた。
サラは私の大切な親友だ。16年前の犯人が分からない以上、アウラとルシオラを“マギーア”の庇護下におくしかないだろう」
「…………ルシオラ様は既にご存知のようですし、ディアトロ家へ我が主人の後継者として引き取ったほうが、こんな回りくどくなく簡単に守られるのでは?」
「私に名乗る資格はない」
「カエルラ•アニムスとのことは、私水の精霊王ウンディーネの契約者の“掟”のせいでございますから、あまりご自身を責めないほうがよろしいかと」
その言葉を残して『ヘルバの泉』に暮らしていた、水の精霊王ウンディーネのネロは姿を消した。
ーーーー
ちゃぷん。
「ルシオラどうしたの?」
「いや、水の音?が聞こえた気がして」
「なにも聞こえなかったよ」
「気のせいか」
アウラとルシオラはロイザ学園長から渡された学園の地図で、なんとか寮の共同スペースにある、防音の個室の勉強ルームに来ていた。これから作戦会議だ。
「僕達は魔法薬と、それ以外は筆記中心の授業を選ぼう。
魔法実技は……“魔法詠唱道具”を使えば、アウラが魔法を使ってる風に見せれると思うけど、危険だからやめとこう」
「“魔法詠唱道具”って?」
「学園来る前に『魔力の蝶々』いただろう。
あの蝶みたいに“壊す”と一般人でも安全に魔法が発動出来る道具だよ。
ただこれを使うと他の生徒にバレないように”壊して発動”させないといけないし、残骸も残るからアウラの負担が大きい」
ルシオラはアウラに分かりやすく紙に図解を書いて説明する。
「授業はペアを組んで受けるみたいだし、僕がフォローするからアウラが【惚れ薬】しか作れないことを隠し通そう」
「ルシオラの負担が多くない?」
「大丈夫だよ。アウラの王家の血を引く証、瞳の色と『たったひとつの魔法しか使えない』ことを隠すためだから」
「……うん。無理しないでね」
アウラはルシオラの肩に頭を乗せる。相変わらず近い距離です。
「これで大丈夫かな」
ルシオラがペンを置くと選択した科目を見直した。
歴史……レリルール王国と王家の歴史
魔法歴史……魔法の発展の歴史
地理……レリルール王国含め、交流国の地理など
魔法薬……薬の精製、材料採取方法や注意事項など
魔法薬研究……新しい薬の開発、研究など
「思ったより少ないね」
アウラはルシオラが持ってる紙を覗き込んでそう言う。
「実践授業は省いたからね」
ーーーー
作戦会議を終えてアウラとルシオラは女子寮と男子寮に続く大広間でどうしたらいいのか、悩んでいた。寮へ続く階段やドアは無く、目の前は自分達よりも巨大な2枚の鏡があった。
「ここであってる」
「よね?」
ルシオラは学園寮の地図と周りを交互に見渡して、アウラはルシオラの腕を抱きしめたまま地図を覗いていた。
「どうした?」
「また迷っているの?」
後ろからはじめて聞く少年?の声と王都で道案内してくれた王家の小鳥を連れた少年と同じ声が聞こえた。
「貴方は王都で会った……」
「ごめんね。また名乗っていなかったね。
僕はカナリア。カナリア•ルスキニア•ヴァンデルン•レリルール第四王子だよ」
(アウラの腹違いの弟か)
アウラはルシオラの後ろに隠れて青色のリボンが付いた黒のローブと制服を着てるカナリアともう1人の少年を覗き込む。
「カナリアどういうことだ?」
「王都で道に迷っていたから、案内したんだよ」
「や、抜け駆けかよ」
緑色の髪をポニーテールに纏めたつり目の少年がカナリアに意味不明な突っ込みを入れてる。
フィリオと同じ赤いリボンが付いたローブと制服を着てる。
(私と同じ瞳)
「ああ、俺はラピドゥス•ラーナ•ヴァンデルン•レリルール。
こいつの腹違いの兄だ」
((今度は第三王子かっ!))
「お前達どうした?」
ラピドゥスとカナリアの後ろからリボンの色が違うが、同じローブと制服を着た緋色にみつあみに編まれた男性と銀髪がツンツンと外側に跳ねた垂れ目の男性が歩いて来た。
2人とも王族の淡い紫苑色の瞳。
((ああ、今度は第一王子と第二王子))
アウラとルシオラは1番避けたい人達に遭遇して目の前が真っ暗になった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる