逢魔刻の旅人

ありす

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4人目-目を合わしてはいけない

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会社の帰り
一人暮らしの俺はコンビニで買ったお弁当とビールを片手に帰路に着いていた。
昼は熱いが夜になると
多少は気温が下がり過ごしやすい

前を歩くカップルの横
電信柱に人の影があったように見えた
気にもせず歩を進める

電信柱を通り過ぎる時にはその影も気配も無くなっていた

駅前には沢山いた人も車も
住宅街を進むに連れて少しずつ静かになっていく

涼しい夜風と虫の声が夏を感じさせる

「今日は涼しくていいなぁ」

駅から家までの距離は徒歩で15分ほど

細い路地の住宅街に等間隔に街灯が灯っている

少し先の街灯が
薄暗い路地をぽぉっと照らしている

その街灯の横
また誰かが立っているように感じた
少し薄暗い為か離れたとこからでは分かりづらくはあったが人がいるそんな気がしたのだ

徐々に街灯が近づいてくるとその姿がはっきりと確認出来た
街灯のすぐ横
スーツを着た男が俯いて立っている

酔っ払っているのかな?

そのくらいにしか思わなかった

一瞬目が合ったような気がしたが

男の横を通り抜け自宅へとどんどん向かっていった

また街灯が見えてくる

あれ?また人がいるぞ?

その姿を通り過ぎる際横目で確認すると
先程と同じスーツの男のような気がした

まさか...

気のせいだそういい聞かせた
似たような人なのかも知れないし

次の街頭が近づいてきていたが確認するのが少し怖く感じ
下を向き足元に視線を落とした

街灯の横

スーツの裾革靴が視界の隅に映る

自分の前には誰も歩いていなかった
前を歩いて先に進んでいない限り
先回りをして街灯の下に立つなんて
不可能だ

また街灯が近づく
気付かないふり気付かないふり

街灯の下男とすれ違う

ブツブツと話す声
はっきりと耳に聞こえてきた

《見ェてマスヵ》

気付いては行けないものだ
咄嗟にそう感じ
歩くスピードを早めた

もう少し2つ先の街灯を左に曲がるともう自宅である
足早に向かい鍵をカバンから取り出すと
後ろを確認することなく
玄関へと駆け込んだ
意味も無いことは
何となく分かってはいたけれど
急いで部屋の鍵をかける

布団に包まり電気を消した真っ暗な部屋の中
身を隠しながら近くにあったゴルフクラブを握りしめ息を潜めた

ピーンポーン

ピーンポーン

静まり返った部屋にインターフォンが鳴り響く
モニターには誰も映し出されていない

ピーンポーン

ピーンポーン

《早く居なくなってくれ》
姿は見えないが
先程のあの男が付いてきた

そう感じていた

人間ではなかったんだ

どれほど息を殺して居ただろう

《見ぇテルンでショ》

ハッとモニターを見ると
モニーターを覗き込む
男の顔が全面に映し出されていた

その日から
毎日
時間になると男がやって来るようになった

日常に潜む闇人ならざる者が顔を覗かす事もある
確かめようとしたり
不要に目を合わしてはいけない

ピーンポーン


《 見ェテルンでしョ 》



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