上 下
282 / 347
第7章 新たな進化

18話 聖女のストレス

しおりを挟む
 聖女ハンナは、ヒロトシに促されて風呂に入っていた。

「聖女様、湯加減の方はいかがですか?」

「あ、はい。とても気持ちいいです」

「それは良かった。ごゆるりとして下さい」

「あの、すいません」

「どうかしましたか?」

「この石鹸はわかるのですが、このシャンプーとトリートメント?これはいったいなんでしょうか?」

「ああ。それは髪の石鹸です。よろしければ、お手伝いさせていただきますが、浴場に入ってもよろしいですか?」

「あ、はい・・・・・・」

 メイドは、自分の立場が奴隷だったので、ハンナに許可をとってから浴場に入って、シャンプーの使い方を教えた。その際、自分達がお手伝いしましょうかと尋ねたが、ハンナは丁寧に断ったのだった。

「凄い良い香りがしますね」

「聖女様、髪を乾かす魔道具をお使い下さい」

「これはいったいなんでしょうか?」

「ここから温風とイオンというものが出て、髪を乾かすドライヤーというものです」

「えーと香油は使わないのですか?」

「大丈夫ですよ。あのトリートメントで髪を乾かすだけで髪はサラサラになってまとまりますので」

「そんなものがあるのですか?」

「はい。ご主人様のオリジナル石鹸です。聖女様、風邪をお引きになられます。早く体を拭きましょう」

「は、はい・・・・・・ありがとうございます」

 メイド達は、聖女が不安にならないようにお世話をして、寝室に案内してゆっくり睡眠をとってもらうのだった。
 次の日、ハンナはスッキリした朝を迎えた。

「聖女様、おはようございます。朝食の準備ができております」

「ありがとうございます」

「食堂の方へどうぞ。そのあと、主人のヒロトシと
お話がありますのでよろしくお願いいたします」

「わ、わかりました」

 聖女ハンナは、久しぶりに味わう朝食に涙を流したのだ。これには、メイド達が驚き焦って声をかけた。

「せ、聖女様お口にあいませんでしたか?」

「い、いえ。本当に美味しいです。わたくしをあの場所から救っていただき本当にありがとうございます」

 聖女は、教皇達に監禁され薄暗く何もない部屋で食事も薄味のスープや生臭い魚などだった。教皇も相手が聖女なので、栄養失調にならないようにはしていたみたいだ。
 しかし、味は最悪でここの食事のように、胡椒はおろか塩も使われていなかったのだ。

「そ、そうですか。お口にあって良かったです」

 この屋敷の者達にとっては、この味が普通の事なので、聖女の今までの生活は本当に酷いものだったと思い、メイド達はハンナにおかわりを聞いて奉仕していた。
 そして、ハンナは朝食を堪能し、ヒロトシが待つ部屋に通された。

「聖女様、ゆっくりできましたか?俺はこの屋敷の主人でヒロトシと言います。よろしくお願いいたします」

「わたくしは、聖教国の聖女をしているハンナと申します。今回は、聖教国から救っていただき本当にありがとうございます」

「いきなり部下を行かせて戸惑ったと思いますが、いう通りにしていただき本当に助かりました」

「それなのですが、女神ミレーヌ様に聞いていたので指示に従ったんです。ただ、最近では女神ミレーヌ様の声が聞こえなくなってきたので、あの二人が救いに来た者なのかは不安に思いましたが」

「まぁ普通はそう思いますよね。ですが、もう大丈夫ですよ」

「ですが、ヒロトシ様は大丈夫ですか?仮にも聖女であるわたくしを、あの場所から連れ去った形になるのです」

「それは気にしないでください」

「ですが・・・・・・」

「聖女様には、いずれ聖教国に戻っていただきますから何も心配はいりません。今は、教皇を始め大幹部達を、聖教国から排除する方が大事だからな」

「ですが、ヒロトシ様はなんで聖教国に首を突っ込むのですか?」

「そりゃもちろん、ミレーヌさんから頼まれたからだよ」

「ミレーヌさ・・・・・・ん?」

「ああ。気を悪くさせたらすまない。ミレーヌさんとは友人だから、ミレーヌさんから許可をもらっている」

「女神ミレーヌ様に許可?いったいどういう事ですか?」

「まぁ細かい事はいいが、俺が女神様から聖女様を救ってくれと依頼を受けたんだよ。だけど、聖女様はこのままここで生活をするかい?」

「何を言っているのですか?」

「俺としては、聖教国の事はどうでもいいんだよ。今回の依頼は聖女様を救ってくれという依頼だからね。聖女様がこのままここで生活すると言えば依頼達成なんだ」

「わたくしは、聖教国が心配です!」

「そういう事ならば、聖教国の癌とも言える教皇や大幹部達は、聖教国から排除して聖女様が安心して聖教国に帰れるようにするのが、俺の仕事だよ」

「ですが、どうやって教皇を?」

「それはもうじきわかる事だよ。聖女様はその時まで体調をととのえておいてくれ。たぶん女神様からの声が聞こえなくなってしまったのは、ストレスからくるものだからな」

「・・・・・・」

 実際に、ヒロトシの言う通りでハンナは、シュガー村で過ごして3日目にして、徐々に女神ミレーヌの声が聞こえ始めてきたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依
ファンタジー
主人公 山道賢治(やまみちけんじ)の通う学校で虐めが横行 そのいじめを止めようと口を出した瞬間反対に殴られ、後頭部を打ち 死亡。そして地球の女神に呼ばれもう一つの地球(ガイアース)剣と魔法の世界 異世界転移し異世界で自由に楽しく生きる物語。 ゆっくり楽しんで書いていけるといいなあとおもっています。 更新はとりあえず毎日PM8時で月曜日に時々休暇とさせてもおうと思っています。 星マークがついている話はエッチな話になっているので苦手な方は注意してくださいね。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...