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第6章 研磨という職

32話 王都に住む人間の気持ち

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 ローベルグは、ヒロトシの作った城壁を見てびっくりしていた。
 王都の城壁より、立派なバリケードで王都の見張り台から、遠眼鏡で確認できるほど高くそびえていた。

「ヒロトシ、本当にありがとう。王都は、これで助かったよ」

「ローベルグ様。まだ安心はできません」 

「なんでだ?あんな立派なバリケードを築いたんだ。それに聖域の魔法も唱えてくれるんだろ?」

「ええ。これから結界を発生できる魔道具を設置していきます。それよりも不安なのは貴族達です」

「何が不安なんだ!」

「ローベルグ様も安心できたのでしょ?だったら貴族達も同じ気持ちで安心しているはずです」

「それの何がおかしいというのだ」

「安心した貴族は気を許し、また賄賂を再開させるという事ですよ」

「馬鹿な!そんな事するはずないだろ?公式で発表して見せしめの貴族も見ているのだぞ?」

 ヒロトシは、ローベルグの言葉を聞き、不適な笑みを浮かべた。

「まあ、ローベルグ様も注意していてください。俺の方でも目を光らせてますから大丈夫ですが、ローベルグ様も貴族達に気を許さない方がいいですよ」

 ローベルグは、ヒロトシの言葉を半信半疑で聞いていたが、1週間もしない内に貴族の1人が本当に動き出したのだ。 
 それにローベルグは憤慨し、その貴族を逮捕したのだった。

「馬鹿者!貴様一体何を考えている」

「ですが、王都はもうあの城壁で大丈夫なのでは・・・・・・」

「お前は何を言っている。魔の森の脅威はとりあえずはなくなったが、この地の状況は何も変わっておらんのだぞ!」

「しかし・・・・・・」

「しかしもかかしもあるか!お前は、禁固三年貴様位は剥奪だ!」

「そんな・・・・・・」

「こいつを連れていけ!」

「こんな裁き納得いきません!国王様ぁ!お許しを!」 

 ローベルグは、賄賂をした貴族に一切の恩情をあたえなかった。そして、この事は平民に発表されたのだった。
 この事は、王族が貴族の不正を絶対に許さないという覚悟に平民達の支持率が上がった。

 この決定は、冒険者ギルドでも話が盛り上がっていた。

「おい。聞いたか?」

「聞いた聞いた!貴族が逮捕されて貴族位を剥奪されたらしいな」

「こんな事今までなかったよな?」

「ああ!王族も本気みたいだよな。これで王都も少しは良くなりそうだよな」

「何でもこれはヒロトシ様のおかげらしいぞ」 

「どういう事なんだ?」

「あの北の城壁はヒロトシ様のおかげらしいぞ。なんでも魔の森が南に拡がっていたらしくそれを食い止める為のものらしい」

「本当かよ!だったら王都は本当にヤバかったのかよ!」

「らしいな。さすがはヒロトシ様だよな。貴族の不正をなんとかするかわりに、あの城壁を建てたらしいぜ」

「あの城壁も、1日で建てたんだよな?」

「らしいな」

「ヒロトシ様ってとんでもないな」

「唯一、王家に逆らえる人間らしいからな」

 そこに、ギルドマスターが話しかけてきた。

「お前達!そこまでにしておけ」

「「ギルドマスター」」

「王家の噂はするな!お前達の気持ちはわからないわけではないが、それ以上は言っては駄目だ」

「「はい」」

 冒険者ギルドでも、この話題が持ち上がりギルド職員達も、冒険者がこの話題を話していたら注意をしていた。

「ギルドマスター、今日もあの話題をしたいる冒険者がいました」

「フム、まあそれもしょうがあるまい」

「しかし、これが王家に聞こえれば大変な事になるんじゃ」

「それは大丈夫だよ」

「どういう事ですか?」

「話をしている冒険者には注意を促すが、ヒロトシ様が王家に話は通してくれているそうだ」

「本当ですか?ヒロトシ様って、本来は平民ですよね?」

「本当に、あの方は王家に唯一逆らえる人間なのかもしれないな」

「あの噂は本当なのですか?」

「儂にもそれはわからん・・・・・・だが、ヒロトシ様は儂等平民の味方なのは確かみたいだな」

「私達は、ヒロトシ様のおかげでなんとか生活が出来ているわけですか」

「ヒロトシ様に感謝だな」

「そうですね」

 冒険者ギルドの会議室では、幹部達はヒロトシに感謝をしていた。




 その頃、ヒロトシは魔の森の城壁の強化をしていた。サンクチュアリの効果をとどめる結界石のような魔道具を、城壁に設置していった。

「ご主人様。これは結界石では駄目なのですか?」

「ミランダ、結界石では魔の森はとめられないよ」

「なんでですか?」

「結界石では、悪意のある魔物や盗賊の侵入を阻むアイテムだろ?魔の森は悪意があるものじゃないだろ?」

「確かに」

「だから、サンクチュアリのような聖域を作り出さないといけないんだ」  

「なるほど!」

「でも、魔物はどうするのですか?」

「それは、こいつの出番だ」

 ヒロトシは、サンクチュアリの魔道具と一緒に制作をしていた魔道砲をインベントリからだした。

「これは!」

「こいつがちょうどいいだろ?」

「久しぶりに見ましたね」

「まあ、ここに警備員を配置して当分の間頑張って貰うしかないな」

「当分の間ですか?」

「ああ。王都の経済が元に近づくまでだな」

「どれくらいかかりそうですか?」

「まあ、貴族次第じゃないかな?まずは賄賂を撲滅させないとな」

「・・・・・・」

「まあ、王族も頑張ってくれているみたいだし、一年ほど見た方がいいかもな」

 ヒロトシの説明を聞いて、ミランダはまだまだヒロトシの平穏は来ないと思いがっかりしていた。

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