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第6章 研磨という職

23話 遷都

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 ヒロトシはティアナと話し合っていた。ティアナも又、今までの歴史を破壊することに躊躇していた。

「何で、ヒロトシ様は今までの事を否定するのですか?このままでよくする方法を考えてくれてもよろしいではありませんか?」

「なんで?今の状況はもうどうしようもないところまで来ているんだよ?」

「どうしようもないって……」

「だってそうじゃないか?貴族達は保身にばかり走って、平民の事はどうでもいいって感じだろ?」

「そんな事は……」

「確かに、ハボリムとティアナの代で、今までの王国にある悪癖を清算させるのは辛いとは思うよ。君らの心情が分かると言ったら嘘になるし、今までの悪癖を君達が責任を取れと言うのもおかしいかもしれない。しかし、今の王都に目を向けて見なよ?」

「ううう……」

「ちょっとした改革で元に戻ると思うかい?」

「だったら!」

「俺がやったらいいと言うのかい?」

「それは……」

「俺がやると王国は無くなるだけだよ?」

「なくなるって!」

「当たり前じゃないか。王国のシステムは無くなる事になるよ」

「ヒロトシ様は王国が滅んでもいいと言うのですか?」

「そうだね。貴族や王族が得になる国はなくなるよ。平民や貴族という人種差別は撤廃だな。みんな同じ立場だ。そこには不敬罪という物も無くなり、貴族だった人間も平等に罪が問われる国になる」

「そんな夢物語……」

「まあ、理想だけどね。それに俺はそんな面倒くさい事はしたくないよ。俺は自分の家族が幸せに暮らせるようにできたらいいんだよ」

「はっ?面倒くさい?」

「王国のトップが変わらないと言うのなら、このままいけばいいと言う事だよ。そうすれば俺の家族は幸せに暮らせるからね」

「助けてくれないと言うのですか?」

「いやいや。俺はサンライトの売り上げで、王国に貢献しているじゃないか?平民としては、最大限に協力しているつもりだよ?」

「で、ですが……」

「しかし、シャーロットの旦那としての協力というなら話は変わってくるけどね」

「そうですよ!ヒロトシ様も王族なのですから!」

「だけど、そうなれば俺の意見はローベルグ様の引退だ。そして、君達への王位継承だよ。そして、王国に巣喰う悪癖の改善だ。だが、君達はそれをやるには自信がないんだろ?」

「ううううう……」

「俺は、今回お茶問屋と手を組んでいた貴族の犯罪を暴いた。多分、これからもサンライトにちょっかいかける悪徳商人が出てくると思う。それを叩き潰し貴族を追いやると思うよ。時間はかかるとは思うけど、王都を少しづつ良く出来ると思っている」

「それは……」

「この方法が、ティアナが今のままでよくする考えかただと思うが違うかな?」

 ティアナは、ヒロトシの言葉に反論が出来なかった。

「でも、ヒロトシ様が国王陛下と一緒に……」

「それは無理だな。ローベルグ様達が考えているのは以前の王都の姿だよ」

「それの何がダメなのですか?」

「堂々巡りだね。もっと広い目で見た方がいい。ビアンカという幸運の龍が移住した事で、この土地は元に戻ったんだ。要は王都にとって初めての転換期となったんだよ」

「転換期?」

「そうだよ。王国歴1000年という長い歴史の中で初めて起こった転換時だよ。これは国を運営する貴族達が考え方を変えないと、国が滅ぶかもしれない転換期だよ」

「国が滅ぶってどういう事ですか?」

「いいかい?国の礎は王族でも貴族でもないと言う事だよ。現に平民達は住むところを追われて、税金なんか納めれるような状態じゃなくなっているだろ?そうなった時でも貴族達は自分の保身に走っている」

「あっ……」

「いいかい?国に一番大事なのは平民と呼ばれる人たちだよ?貴族の中には、今だ自分が選ばれた人間だと思っている奴らが大手を振って歩いている。それじゃもうだめなんだよ」

「そんな……」

「いいかい?このままじゃ王都は無くなるよ。まだ元気な平民達は、もうすぐ王都を出る。そして、ミトンの町を目指す事になるよ。そうなる前に考え方を直した方がいいよ」

「王都移転計画をすれば……」

「まあ、それでも構わないよ。だけど、それは俺からの忠告だ!必ず失敗するからやめたほうがいいよ」

「なんでですか?」

「そんな事も気づかないからだよ」

「今、気づきました。わたくし、帰って国王陛下に進言します!失礼しました」

「そう言う事を言っているんじゃないけどな……」

「何か言いましたか?」

「いや、なんにも……あ、ちょっと待って!」

「なんですか?」

「一人で帰るのは危険です。護衛をつけるので一緒に帰ってください」

「わかりました……ありがとうございます」

 そう言ってティアナは、王城へサンライトの護衛の者と一緒に帰っていった。ティアナが帰った後、ナミがヒロトシに話しかけるのだった。

「ご主人様……遷都しちゃうのですか?」

「そういうことらしいな?」

「そんなうまくいくものなのですか?」

「あの地に王都建設なんて何十年かかるやら……今からじゃとてもじゃないが無理だな」

「やはり王族の考える事は凄いですね……でも、本当に王都を移すつもりなのでしょか?」

「王都建設は何十年とかかるだろうが、あのお嬢様は王族や貴族達が移住するだけと考えているだけなのかもしれないな……」

「あのご主人様……笑っているのですか?」

「いや、幸せなんだろうなあと思ってな。まあ……そんな事になれば、ミトンの町がこれから王都になるのかな?シルフォード様は気の毒としか言いようがないが……そうなれば、王国は平気で平民を見捨てる国として軽蔑するけどね」



 王城に帰ったティアナは、王都を移す事を進言した。王族が移動すれば、そこが王都となると言う理由だった。ミトンの町は幸運の龍が住む場所だし、今や産物の宝庫だ。ビアンカがなんで人間にあわせなければいけないのだと怒ったのなら、自分達が移住してしまえばいいと考えたのだった。

「ティアナ!本気で言っているのか?この土地は先祖代々の土地なんだぞ?」

「しかし……この土地はもう豊饒の土地では無くなっているのです。今や、ミトンの町が王都にふさわしいとは思いませんか?」

「それはそうだが……この土地はどうするつもりなのだ?」

「王族が移住するのです。町は無くなってしまいます」

「それは……いくらなんでも駄目だ!」

 ローベルグは、ティアナの意見を却下した。

「なぜですか?もはや王都は……それに王都をミトンの町に移せば、前の様に元に戻るじゃありませんか?」

「いや、ならん……確かにあの土地は幸運の龍が住まう地域だ」

「だったら!」

「あの幸運の龍は、我らの思う通りにならんからだ。我らが移住しても、あの土地に居続けるとは思えん」

「しかし、ヒロトシがあの土地にいるのですよ?」

「お主には、ヒロトシの事がまだよくわかっていないようだな」

「ヒロトシの事が?」

「そうだよ。ティアナ、君はヒロトシの手のひらの上で踊らされているだけだよ」

「ハボリム様まで何を言うの?」

「いいかい?ヒロトシは今この状況で王族を試しているんだよ……その証拠にヒロトシは、決定的な案は国王の辞任しか発言していないだろ?後はどっちつかずの意見ばかりだ」

「あっ……」

「多分、王族がここを捨て移住すれば、平民達を見捨てたとしてヒロトシは我々を平気で切り捨てるぞ」

「なっ!」

「そうなれば、ヒロトシはミトンの地域を平気で去るはずだ。その結果、ビアンカもヒロトシについていき、ミトンの周辺の地域はここと同じになるんだよ」

「そう言う事だな……」

「そ、そんな……じゃあ、わたくしのやった事は……」

「「「……」」」

 ティアナは、ヒロトシの考えが分からなかった。そして、その場に崩れうつ伏してしまった。

 その頃、ヒロトシは王都の商人ギルドにやってきていた。ヒロトシが王都の商人ギルドにやってきたことに、受付嬢は驚いていた。


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