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第6章 研磨という職
14話 悪徳商人焦る
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ヒロトシは、ローベルグに王都での不正取り締まりに力を入れることを公言した。
「しかし、いきなりこんな事をしては……」
「俺だってそんな面倒臭い事に首は突っ込みたくないですよ」
「だったら、それは置いておいてビアンカを2号店で働かせてくれれば良いではないか?」
「いいですか?今王都周辺では資材が取れなくなっています」
「だからこそ、復活を急いでもらいたいのだ?」
「分からないですか?」
「何がだ?」
「今、王都では悪徳商人が自分の商品の商品が高騰するのを待っているんですよ」
「どういう事だ!」
「商人とはそれほど目ざといものですよ。王都からビアンカがいなくなり、資材が取れなくなってきたといち早く察知し、在庫を抱え込んでいるのです」
「な、なんだと?」
「そうでもしない限り、いきなり品薄状態になるわけないじゃないですか?」
「しかし、何でそんな事をいち早く……」
「その商人の後ろには貴族がついているからに決まっているでしょ?その商人と手を組み、品物が高騰したら一気に吐き出すのが目的です。そして、貴族にはバックマージンとして売り上げの一部が舞い込むということですよ」
「なんて事だ!それでヒロトシは何をするつもりだ?」
「まずはポーションからやってみます」
「ポーションだと?」
「ええ!癒し草が品薄になっているでしょ?これは、冒険者にとって生命線です。ポーションは、今までの3倍の値で取引がされています」
「まさか、そのバックに貴族が?」
「ええ、まさに濡れ手に粟状態で私腹を肥やしているでしょうね?」
「しかしどうやって、その貴族を捕らえるのだ?」
「まあ、見ててください」
そう言って、ヒロトシはローベルグと別れてサンライトに帰っていった。
その頃、あるポーション屋の店主は、薬草採取に翻弄していた。
「どうですか?癒し草や薬草の採取は?」
「ジェニファーさん駄目です……今日はこの量しか取れませんでした。ギルドの方はどうでした?」
「ギルドに依頼を出してはいるのですが、芳しくありません……」
「やはり、うちもポーションの値段を上げてはいかがでしょうか?」
「そんな事をすれば冒険初心者が生活できません」
「しかし、そのせいで薬草工場から薬草を卸してもらえないではありませんか?」
「あんな馬鹿高い薬草でポーションは作れません……」
「しかし、採取する量が減っているのです。うちも値上げをしても……」
「値上げと言っても限度があります。3倍いえこのままいけば4倍の値となりそうな勢いです。うちみたいなポーション屋は今まで冒険者達に助けられてきたのですよ?」
「ですが、このままでは……」
その時、ポーション屋に一人の男が入ってきた。
「ジェニファーさんや。どうした?ポーションは品切れ続出じゃないか?」
「ぐっ!クーパーさん……何をしに」
「だから言ったじゃないか?ポーションの値上げをしてうちの薬草を買えと」
「貴方みたいな卑劣な商売の片棒を担ぐわけにはいきません!言う事を聞かない同業の薬草問屋を潰してしまい、言う事を聞く薬草屋を抱え込んだくせに!」
「おいおい!人聞きの悪い事を。ワシは王都の薬草事情を考えて組合を作ったのだ。みんなが協力して薬草を売り生き残る為のな!」
「その考えなら素晴らしい事よ!しかし、実際は組合の人間を脅して無理やり薬草の値を釣り上げて、組合長のあなた一人が儲けているだけじゃない!」
「くかかかかかかか!何を証拠にそんな事を?実際組合に加入した薬草屋は儲けているではないか?」
「ぐっ……」
薬草屋の中にも、良心を痛める者はいた。そして、組合を脱退しジェニファーのような錬金屋に薬草を安値で提供してくれていたのだ。
しかし、そういった薬草屋は不慮の事故にあったり、冤罪で奴隷落ちしたりしていた。
「お主が折れれば共に大儲けが出来るのだ。いい加減言う事を聞いてもよかろう?」
クーパーがジェニファーの店を潰さないのは、ジェニファーの店が大きいからだ。今まで冒険者達に優しい価格で商売してきたジェニファーにとって、クーパーの誘いは死んでも拒否し続けるつもりでいた。
「あんたのような商人とは絶対に組むことはないわ!お引き取り下さい」
ジェニファーの完全なる拒絶に、クーパーは顔を歪ませた。
「後悔するなよ?」
「貴方と組む方が後悔します」
そういうと、クーパーはジェニファーの店のカウターを蹴り飛ばし出て行ったのだった。
「薬草や癒し草さえあれば、あのような値で商売は出来ないのに……」
ジェニファーは、土地が枯れたことを嘆いていた。今はミトンの町が豊穣と聞くが、あの地から薬草を取り寄せても輸送費がとんでもなく高くなるのは分かっていたので諦めていた。
どうにかしてこの近辺で薬草を手に入れないと、この高騰は収まらないと考えていたのだが、いい考えが浮かばなかった。
それから数日後、ジェニファーの店で働く従業員が相次いで襲われて薬草採取がままならなくなってしまった。
「ジェニファーさん!大変です!」
「どうかしたのですか?」
「従業員達が、薬草採取をしているところを襲われて、死亡した人間が出ているようです!」
「なんですって!」
薬草採取は王都を出て、近場の森に入り見つけないとできない。その為、冒険者に護衛を頼み一緒についてきてもらう事になる。そこを襲われたらしいのだ。また、町中でも因縁を吹っ掛けられて暴行を受けた者もいた。
「犯人は?」
「まだ捕まっていませんが……」
「クーパーの手先という事ですね……」
「証拠がなくて訴えることはできませんがたぶん……」
ジェニファーの店は暗く沈みこんだ。これでは、数少ない薬草も手に入れる事が出来なくなるからだ。
「どうすれば……」
「やはり他の錬金屋と同じように、クーパーの組合から薬草を購入した方がいいんじゃ……」
「そ、それは、絶対に駄目です!」
「ですが、このままではこの店は閉めることに……」
「うぐっ!」
その時、一人の男性と女性がジェニファーの店に入ってきた。
「すいません!この店はジェニファーさんの店でしょうか?」
「えーっと、今立て込んでいて……」
「貴方がジェニファーさんですか?私は……」
「ちょっと待ってください!今それどころじゃないんです」
「どうかしたのですか?」
「お店の事なので言えません!」
「そうですか……」
「なので今はお引き取り下さい!」
「待って!待って!商談が出来なければご主人様に怒られるんです」
「商談?」
「ええ!私の主人はヒロトシといいます」
「ヒロトシ様?あのサンライトの店主ですか?」
「ええ!合っています。そのサンライトの主人が、ジェニファーさんと商談を結んで来いと言われまして」
ジェニファーは、ヒロトシが錬金屋と商談と言われても理解できなかった。それは当然であり、飲食店の店主がうちに何を売り込むのかわからなかった。
「飲食店経営のヒロトシ様が、うちに何を売り込むと言うのですか?」
「薬草と癒し草、毒草と解毒草、魔緑草の各500本です」
「う、嘘でしょ?そんな数の薬草をどこから?」
「仕入れ先は商人にとって命ですよ」
「何でヒロトシ様が、うちに薬草を売ってくれると言うのですか?」
「あのできれば、奥の部屋でお話させていただけますか?ここではちょっと誰が入って来るかわかりませんし……」
「わ、わかりました。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
ジェニファーは、ヒロトシの使いと言った男を奥の部屋に招いた。
「私はロバートといいます。以後お見知りおきを。こちらは私の仲間のアイリと言います」
「ご丁寧にどうもです。ロバートさんは何でうちに?」
「私達はヒロトシ様の奴隷です。呼び捨てで結構です」
「えっ奴隷?」
やはり、ジェニファー達もヒロトシの奴隷の姿に驚いていた。奴隷だと言われないと分からないほどたくましく美しいからだ。
「それで話は元に戻しますが、なんでジェニファーさんの店に薬草を持ってきたのかというと、クーパーのような悪徳商人を突っぱねていたからです」
「ヒロトシ様はそれを知っておいでで?」
「ええ、クーパーのバックについている貴族までも」
ロバートは、ニヤリと笑った。
「これから、王都にあるしがらみというか元凶は、ヒロトシ様の手で淘汰されていくでしょう。その為にもジェニファーさんのような、平民に優しい店は残るべきというのが、ヒロトシ様の考えです」
「しかし……これら薬草をいくらで?」
「前の値段でいいと言う事です」
「前の値段?」
「えぇ……今やポーションは前の値段の4倍はしています。なのでこの薬草を使って、ポーションを安価で大量流出させてほしいのです。そうすれば、クーパーが隠し持っている薬草は値崩れしてしまいます。それがヒロトシ様の計画です」
「本当ですか?」
「その代わりポーションの売値も前の値段にしてもらいます。これがこれらの薬草を卸す条件です」
「しかし!値を元に戻すには500本でも多いとは言えません。継続的に卸していただけないと。それに、申し訳ないのですが……」
「まだ何か?」
「この500本を購入できるほどの資金が……それと人材を新たに確保しないといけないのです……」
「この店には従業員はいないのですか?」
「それが証拠はないのですが、クーパーの手先に邪魔をされて怪我人が続出したのです……その為、人材が……」
「なるほど、それでしたら怪我をした従業員の人数分の薬草を余分に納品しましょう。それで従業員のけがを治してもらえますか?」
「よろしいのですか?」
「はい!怪我をした従業員から犯人像の事情聴取もよろしくお願いします。そして、薬草の代金はポーションが売れてから支払って頂けますか?」
「それでもよろしいのですか?」
「はい!これは今までのあなたの事を、ヒロトシ様が信頼をしているという事ですので、お忘れなきようお願いします」
「あ、ありがとうございます!」
ジェニファーはさっそく従業員のポーションを製作し、それを従業員に飲ませた。運悪く亡くなってしまった従業員もいたが、助かった人間で錬金屋はまわせる事が出来た。
ヒロトシのおかげでヒールポーション(回復)やキュアポーション(解毒)は前の値段で大量販売することが出来たのだった。これには、冒険者達がこぞってジェニファーの店に押し掛けたのだった。
「こんな安くて本当にいいのか?」
「この値段は高騰する前の値段だぞ?」
「申し訳ありませんが!お一人様3本まででお願いします!」
「なんでだよ?」
「一人でも多くの冒険者に使用してもらいたいのです。ご理解のほどを」
「た、確かに……だが、この値段でまた売ってくれるのか?」
「はい。独自の薬草の販売ルートを確保できたのでそこは安心してください」
「本当か?」
「明日もこの値段で販売させていただきます」
購入した冒険者の後ろには、まだまだ順番を待っている冒険者がたくさんいて歓喜に震えたのだった。
そして、これに慌てたのはクーパー達だった。
「しかし、いきなりこんな事をしては……」
「俺だってそんな面倒臭い事に首は突っ込みたくないですよ」
「だったら、それは置いておいてビアンカを2号店で働かせてくれれば良いではないか?」
「いいですか?今王都周辺では資材が取れなくなっています」
「だからこそ、復活を急いでもらいたいのだ?」
「分からないですか?」
「何がだ?」
「今、王都では悪徳商人が自分の商品の商品が高騰するのを待っているんですよ」
「どういう事だ!」
「商人とはそれほど目ざといものですよ。王都からビアンカがいなくなり、資材が取れなくなってきたといち早く察知し、在庫を抱え込んでいるのです」
「な、なんだと?」
「そうでもしない限り、いきなり品薄状態になるわけないじゃないですか?」
「しかし、何でそんな事をいち早く……」
「その商人の後ろには貴族がついているからに決まっているでしょ?その商人と手を組み、品物が高騰したら一気に吐き出すのが目的です。そして、貴族にはバックマージンとして売り上げの一部が舞い込むということですよ」
「なんて事だ!それでヒロトシは何をするつもりだ?」
「まずはポーションからやってみます」
「ポーションだと?」
「ええ!癒し草が品薄になっているでしょ?これは、冒険者にとって生命線です。ポーションは、今までの3倍の値で取引がされています」
「まさか、そのバックに貴族が?」
「ええ、まさに濡れ手に粟状態で私腹を肥やしているでしょうね?」
「しかしどうやって、その貴族を捕らえるのだ?」
「まあ、見ててください」
そう言って、ヒロトシはローベルグと別れてサンライトに帰っていった。
その頃、あるポーション屋の店主は、薬草採取に翻弄していた。
「どうですか?癒し草や薬草の採取は?」
「ジェニファーさん駄目です……今日はこの量しか取れませんでした。ギルドの方はどうでした?」
「ギルドに依頼を出してはいるのですが、芳しくありません……」
「やはり、うちもポーションの値段を上げてはいかがでしょうか?」
「そんな事をすれば冒険初心者が生活できません」
「しかし、そのせいで薬草工場から薬草を卸してもらえないではありませんか?」
「あんな馬鹿高い薬草でポーションは作れません……」
「しかし、採取する量が減っているのです。うちも値上げをしても……」
「値上げと言っても限度があります。3倍いえこのままいけば4倍の値となりそうな勢いです。うちみたいなポーション屋は今まで冒険者達に助けられてきたのですよ?」
「ですが、このままでは……」
その時、ポーション屋に一人の男が入ってきた。
「ジェニファーさんや。どうした?ポーションは品切れ続出じゃないか?」
「ぐっ!クーパーさん……何をしに」
「だから言ったじゃないか?ポーションの値上げをしてうちの薬草を買えと」
「貴方みたいな卑劣な商売の片棒を担ぐわけにはいきません!言う事を聞かない同業の薬草問屋を潰してしまい、言う事を聞く薬草屋を抱え込んだくせに!」
「おいおい!人聞きの悪い事を。ワシは王都の薬草事情を考えて組合を作ったのだ。みんなが協力して薬草を売り生き残る為のな!」
「その考えなら素晴らしい事よ!しかし、実際は組合の人間を脅して無理やり薬草の値を釣り上げて、組合長のあなた一人が儲けているだけじゃない!」
「くかかかかかかか!何を証拠にそんな事を?実際組合に加入した薬草屋は儲けているではないか?」
「ぐっ……」
薬草屋の中にも、良心を痛める者はいた。そして、組合を脱退しジェニファーのような錬金屋に薬草を安値で提供してくれていたのだ。
しかし、そういった薬草屋は不慮の事故にあったり、冤罪で奴隷落ちしたりしていた。
「お主が折れれば共に大儲けが出来るのだ。いい加減言う事を聞いてもよかろう?」
クーパーがジェニファーの店を潰さないのは、ジェニファーの店が大きいからだ。今まで冒険者達に優しい価格で商売してきたジェニファーにとって、クーパーの誘いは死んでも拒否し続けるつもりでいた。
「あんたのような商人とは絶対に組むことはないわ!お引き取り下さい」
ジェニファーの完全なる拒絶に、クーパーは顔を歪ませた。
「後悔するなよ?」
「貴方と組む方が後悔します」
そういうと、クーパーはジェニファーの店のカウターを蹴り飛ばし出て行ったのだった。
「薬草や癒し草さえあれば、あのような値で商売は出来ないのに……」
ジェニファーは、土地が枯れたことを嘆いていた。今はミトンの町が豊穣と聞くが、あの地から薬草を取り寄せても輸送費がとんでもなく高くなるのは分かっていたので諦めていた。
どうにかしてこの近辺で薬草を手に入れないと、この高騰は収まらないと考えていたのだが、いい考えが浮かばなかった。
それから数日後、ジェニファーの店で働く従業員が相次いで襲われて薬草採取がままならなくなってしまった。
「ジェニファーさん!大変です!」
「どうかしたのですか?」
「従業員達が、薬草採取をしているところを襲われて、死亡した人間が出ているようです!」
「なんですって!」
薬草採取は王都を出て、近場の森に入り見つけないとできない。その為、冒険者に護衛を頼み一緒についてきてもらう事になる。そこを襲われたらしいのだ。また、町中でも因縁を吹っ掛けられて暴行を受けた者もいた。
「犯人は?」
「まだ捕まっていませんが……」
「クーパーの手先という事ですね……」
「証拠がなくて訴えることはできませんがたぶん……」
ジェニファーの店は暗く沈みこんだ。これでは、数少ない薬草も手に入れる事が出来なくなるからだ。
「どうすれば……」
「やはり他の錬金屋と同じように、クーパーの組合から薬草を購入した方がいいんじゃ……」
「そ、それは、絶対に駄目です!」
「ですが、このままではこの店は閉めることに……」
「うぐっ!」
その時、一人の男性と女性がジェニファーの店に入ってきた。
「すいません!この店はジェニファーさんの店でしょうか?」
「えーっと、今立て込んでいて……」
「貴方がジェニファーさんですか?私は……」
「ちょっと待ってください!今それどころじゃないんです」
「どうかしたのですか?」
「お店の事なので言えません!」
「そうですか……」
「なので今はお引き取り下さい!」
「待って!待って!商談が出来なければご主人様に怒られるんです」
「商談?」
「ええ!私の主人はヒロトシといいます」
「ヒロトシ様?あのサンライトの店主ですか?」
「ええ!合っています。そのサンライトの主人が、ジェニファーさんと商談を結んで来いと言われまして」
ジェニファーは、ヒロトシが錬金屋と商談と言われても理解できなかった。それは当然であり、飲食店の店主がうちに何を売り込むのかわからなかった。
「飲食店経営のヒロトシ様が、うちに何を売り込むと言うのですか?」
「薬草と癒し草、毒草と解毒草、魔緑草の各500本です」
「う、嘘でしょ?そんな数の薬草をどこから?」
「仕入れ先は商人にとって命ですよ」
「何でヒロトシ様が、うちに薬草を売ってくれると言うのですか?」
「あのできれば、奥の部屋でお話させていただけますか?ここではちょっと誰が入って来るかわかりませんし……」
「わ、わかりました。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
ジェニファーは、ヒロトシの使いと言った男を奥の部屋に招いた。
「私はロバートといいます。以後お見知りおきを。こちらは私の仲間のアイリと言います」
「ご丁寧にどうもです。ロバートさんは何でうちに?」
「私達はヒロトシ様の奴隷です。呼び捨てで結構です」
「えっ奴隷?」
やはり、ジェニファー達もヒロトシの奴隷の姿に驚いていた。奴隷だと言われないと分からないほどたくましく美しいからだ。
「それで話は元に戻しますが、なんでジェニファーさんの店に薬草を持ってきたのかというと、クーパーのような悪徳商人を突っぱねていたからです」
「ヒロトシ様はそれを知っておいでで?」
「ええ、クーパーのバックについている貴族までも」
ロバートは、ニヤリと笑った。
「これから、王都にあるしがらみというか元凶は、ヒロトシ様の手で淘汰されていくでしょう。その為にもジェニファーさんのような、平民に優しい店は残るべきというのが、ヒロトシ様の考えです」
「しかし……これら薬草をいくらで?」
「前の値段でいいと言う事です」
「前の値段?」
「えぇ……今やポーションは前の値段の4倍はしています。なのでこの薬草を使って、ポーションを安価で大量流出させてほしいのです。そうすれば、クーパーが隠し持っている薬草は値崩れしてしまいます。それがヒロトシ様の計画です」
「本当ですか?」
「その代わりポーションの売値も前の値段にしてもらいます。これがこれらの薬草を卸す条件です」
「しかし!値を元に戻すには500本でも多いとは言えません。継続的に卸していただけないと。それに、申し訳ないのですが……」
「まだ何か?」
「この500本を購入できるほどの資金が……それと人材を新たに確保しないといけないのです……」
「この店には従業員はいないのですか?」
「それが証拠はないのですが、クーパーの手先に邪魔をされて怪我人が続出したのです……その為、人材が……」
「なるほど、それでしたら怪我をした従業員の人数分の薬草を余分に納品しましょう。それで従業員のけがを治してもらえますか?」
「よろしいのですか?」
「はい!怪我をした従業員から犯人像の事情聴取もよろしくお願いします。そして、薬草の代金はポーションが売れてから支払って頂けますか?」
「それでもよろしいのですか?」
「はい!これは今までのあなたの事を、ヒロトシ様が信頼をしているという事ですので、お忘れなきようお願いします」
「あ、ありがとうございます!」
ジェニファーはさっそく従業員のポーションを製作し、それを従業員に飲ませた。運悪く亡くなってしまった従業員もいたが、助かった人間で錬金屋はまわせる事が出来た。
ヒロトシのおかげでヒールポーション(回復)やキュアポーション(解毒)は前の値段で大量販売することが出来たのだった。これには、冒険者達がこぞってジェニファーの店に押し掛けたのだった。
「こんな安くて本当にいいのか?」
「この値段は高騰する前の値段だぞ?」
「申し訳ありませんが!お一人様3本まででお願いします!」
「なんでだよ?」
「一人でも多くの冒険者に使用してもらいたいのです。ご理解のほどを」
「た、確かに……だが、この値段でまた売ってくれるのか?」
「はい。独自の薬草の販売ルートを確保できたのでそこは安心してください」
「本当か?」
「明日もこの値段で販売させていただきます」
購入した冒険者の後ろには、まだまだ順番を待っている冒険者がたくさんいて歓喜に震えたのだった。
そして、これに慌てたのはクーパー達だった。
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