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第5章 意外なスキル

閑話 ローザの想い

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 時は10数年前に戻る。

「ねえ、あんた?羽振りがよさそうね」

「ああ!冒険がやっと終わったからな」

「じゃあ、あたしにも驕ってよ」

「構わないが、今晩相手をしてくれるのか?」

「お兄さんかっこいいからいいわよ」

「ほう!ならいいぜ」

 ここは、ギルドじゃない酒場である。ローベルグは久しぶりに王都に危険が迫り、Sランクの魔物を討伐をして、ご機嫌で酒を飲んでいた。

 そして、次の日ローベルグが目を覚ますと、見知らぬ女性が寝息をたてて、ローベルグの腕の中で寝ていた。

「ンッ……ここはどこだ?」

 ローベルグはガバッと起きると、その女性も起きた。

「おはよ。昨日はよかったわ」

「こ、ここは?」

「ここはあたしの家よ。それにしてもあなた凄かったわ。あたし腰が抜けるかと思ったんだから……」

「あっ……」

「な、なに?昨日の事覚えてなかったの?」

「ああ……俺は昨日……飲み過ぎてその後どうなったんだ?」

「呆れたわね……あたしと一緒に飲んだじゃない。驕ってやるから一晩相手をしろって」

「俺はそんな事を言ったのか?」

「ええ!なんか浮かれていたから無理もないわ」

「そうか……確かに浮かれていたと言ったら浮かれていたかもな。にしても、もったいねえ……」

「何がよ?」

「昨日の事覚えてねぇ……こんな美人を抱いたと言うのに」

「あら。うまい事言うのね。お世辞でもうれしいわ」

「なあ、もう一回やらせて」

 ローベルグは冗談交じりに両手を合わせた。

「だーめ。驕って貰った分は昨日やらせてあげたでしょ」

「じゃあ、また驕ってやるから」

「それなら構わないわよ。だけど今日はもう無理。これ以上やったらホントに腰が抜けちゃうわ……あんた底抜けにすごいんだもの。昨日は死んじゃうかと思ったわ」

「わ、悪い……」

 その日は、ローベルグは大人しく帰ったのだった。そして、その晩また、昨日の酒場に顔を出したローベルグはローザと会った。

「よう!今日もおごってやるぜ」

「あなた本当に今日も来たの?」

「ああ!昨日は勿体ない事をしたからな」

「まあ、いいわ。驕ってくれるなら、今晩も相手にしてあげる」

 その晩、ローベルグはローザと楽しみ、ローベルグはローザにお城に来いと言ったのだった。

「はい?何を言っているの?お城?」

「なんだ?ローザは俺がだれか知らなかったのか?」

「知るわけないじゃない!お城ってどういう事?」

「俺はローベルク=フォン=ロドン。俺はお前が気に入ったから、第2婦人として迎えてやる」

「ひっ!こ、国王様……」

 ローザは国王と聞き、ベットから飛び出て土下座をしたのだった。

「知らなかったとはいえ、無礼な口を聞いて申し訳ありません……」

「おいおい。止めてくれ。俺は今はプライベートだ。そんなかしこまる事ないよ」

「しかし……あたしなんかが」

「俺が気に入ったから気にするな。で、どうだ?」

 ローザは頭を悩ませた。お城に行けばこんな生活とはおさらばできる。しかし、この生活も気に入っていた。ご飯にありつけない日もあるが、自由気ままに出来るからだ。

「少し考えてもいいですか?」

「なぜだ?お城で生活が出来るのだぞ?」

「確かに魅力的だと思いますが、あたしなんかが身分不相応なことですので……」

「まあ、確かに生活は一変するだろうな。わかった、後悔のないように考えたらいいよ。ローザはこの家に住んでいるんだろ?」

「は、はい……」

 この家は風が吹けばすぐに倒れそうな掘っ立て小屋のようで、空いてた土地にローザが勝手に建てたような感じの家だった。

 ローベルグは、今日から仕事が忙しくなるから当分来れない事をローザに告げた。その間にゆっくり考えたらいいと言ったのだった。

「分かりました……」

 4ヶ月後、ローベルグはローザの住む家にいくと、そこには誰もおらずもぬけの殻だった。

「ローザ……なぜいなくなっているんだ?」

 家の中には、一通の手紙が残されていた。

『ローベルグ様何も言わずいなくなることをお許しください。
真剣に考えたのですが、やはりあたしに王宮の生活はあわない
と考えました。
 そして、面と向かって断る事などできないと思い黙って姿を
消す事をお許しください
                         ローザ』



 その手紙を見て、ローベルグはその場で大笑いした。

「くははははははは!ローザの奴め。俺を振るとは大したものだ。しかし、俺をなめるでない。俺は欲しいものは必ず手に入れる人間なのだ」

 そして、ローベルグはローザを秘密裏に捜索することになった。その頃ローザは王都を抜け出していた。ローザがローベルグを振った訳は、子供が出来たからだ。ある朝、吐き気を催し、それがつわりだと気づいた。ローザは子供の事も考えたのだ。このままでは、国王様の後継ぎ問題になるのではないかと思ったのだ

 そんな事は子供にさせるわけにはいかないとローザは強く思った。そして、王都を出ることを決意したのだった。
 ローザは旅先の宿屋で、シャーロットを生み旅を続けた。そして流れ着いたのが、パルランの町だった。その旅の途中、魔素だまりの地域を旅をした事で、シャーロットは魔力欠乏症となってしまったのだった。

 母は強しと言ったが、ローザは2年という長い月日をかけて、シャーロットを育てながら、パルランの町へと到着し、そこでサキの父と知り合い結婚をしたのだ。

 サキの父に、ローザは再婚だと嘘をついた。シャーロットは国王の娘だと言うのは隠し通していたのだった。サキの父は、冒険者をしていて小さな家だったが、家族4人が住むにはちょうどいい大きさの家で、ローザは幸せに生活をしていた。

「う、嘘でしょ……何であたしを残して死んじゃうのよ!」

 サキの父が冒険で魔物に殺されてしまったのだった。それでも、サキの父はそれまでの金を貯金できるほどに、稼げていた冒険者であり生活の心配はなかった。

 生活の心配はないとはいえ、ローザは冒険者ギルドに登録をしてFランクの依頼をこなす日々を過ごしていた。老夫婦の家の掃除やら薬草の採取などである。

「何でこんなところに……オーガがいるのよ!サキ、シャーロット……先に逝く母を許して……」

 ローザはシャーロットだけでなくサキにも愛情を注ぎ、幸せな日々を過ごしていたのだが、もう少しで先が成人するところで、魔物に襲われてしまいこの世を去った。

 そして、ローザがローベルグの元を逃げ出して13年が経ち……ここ、パルランの町にヒロトシがやってきた。

「お、おい!早くこの扉をあけろ」

「しかし、ここはよそ様の家で……いくらご主人様でも不法侵入となります」

「ここは誰の家だよ?」

「それは、シャーロットの家で……」

「いや、サキはまだ生きていて俺の奴隷だ。奴隷の物は俺の物だ。不法侵入なわけないだろ」

「た、たしかに!」

 そして、ヒロトシはシャーロットをギリギリのところで助けることができたのだった。


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