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第5章 意外なスキル
28話 これからの事
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ヒロトシは、パルランの町でサキの家の手続きを済ませた。サキが生きていたと言う事でシャーロットが相続したいたのだが、年間の維持費が払えなくなるためだ。
「ヒロトシ様、本当にありがとうございます。これであの家は売らずにすみます」
この家の年間費は、ヒロトシのギルドカードから自動的に引き落とされる事になるので、いちいちパルランの町に来なくてもいいのだ。
「さあ、一日無駄にしたが手続きも済んだし、ミトンの町へ帰るぞ」
「「「「「はい!」」」」」
ヒロトシはまだ気づいていなかった。このシャーロットの事でこの先新たな問題が発生することに。
そして、ヒロトシはトラックを家の前に出すと、当然シャーロットは目を見開き驚いた?
「こ、これは何ですか?」
「まあ、馬車の代わりだな」
すると、カノン達はそそくさと後ろに乗り込もうとした。
「おい!お前達何をシャーロットさんを助手席に座らせようとしている」
「「「「「い、いや……それは……」」」」」
「シャーロットさんはお客様として扱え!行きは急いでいたから助手席には座らせなかったが、帰りは誰かがこっちに座れ!」
「だ、だけど……」
「なんだ?カノン。行きは、誰かが助手席に座るのが当たり前だと言っていたじゃないか?」
「い、いえ……それは……」
「ヒロトシ様?どうかしたのですか?」
「いや、シャーロットさんはお客様だ。こっちの後ろに乗ってくれたらいいよ。ソファーもあるしゆっくりできるから。まあ、運転し出したら俺の隣の奴がうるさいとは思うが気にしないでくれたらいいよ」
「わ、分かりました……」
その言葉にカノンは呆気にとられ言葉が上ずった。
「ご、ご主人様?……う、嘘ですよね?」
「お前達は、日頃自分達は奴隷だとうるさいのに、自分の都合が悪いとしれっと擦り付けようとするのが気に入らない。今回はお前達は変わりばんこで助手席に座れ!」
「「「「「そ、そんな……」」」」」
「うるさい!今回はお前達に罰を与えるから反論は許さん!」
この時シアンだけはニコニコしていた。シアンは、ヒロトシとしゃべりたいので助手席を克服した人間だからだ。
「あたしはご主人様と話したいから助手席の方がいいからよかった」
「「「「「あんた狡いわよ!」」」」」
「悔しかったら、あたしみたいに克服したらいいじゃない!」
「「「「「むぐぐぐぐ!」」」」」
カノン達は、シアンの言い方に何も言い返す事が出来ずにいた。
「ああ!シアン。お前は助手席には座らせないからな。そっちの方が罰になるだろ?」
「ええええええ!そんな!」
それを聞いたカノン達はシアンを笑ったのだった。その様子を見て、シャーロットは主人と奴隷の関係じゃないと思ったのだ。罰と言われていても、奴隷達に悲壮感がなくみんなが信頼感のある感じだった。それを見ていたシャーロットはクスクス笑い笑顔となっていた。
「シャーロットさん。どうかしたのか?」
「いえ……今の雰囲気を見て、ヒロトシ様が奴隷をどのように扱っているのがよくわかったような感じがします」
「えっ?いや、罰というのはちょっと違ってだな……」
「分かっています。この方達には悲壮感が無いし、ヒロトシ様を信頼しているというか、信じているのが分かりました。多分、お姉ちゃんも大事にされていると思います」
「シャーロットさんに、そう思って貰えてよかったよ」
「ああ、それとヒロトシ様?」
「なんだ?」
「あたしの事はさん付けはしなくてもいいです。シャーロットと、呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」
「いやいや、知り合ってまだ1日だよ。いくら年下とはいえ礼儀はわきまえないとな」
「あたしがいいと言っているんだからそうお呼びください。それに、これからあたしは姉共々、あなたに援助して貰えないと生活もできないんですから」
ヒロトシはシャーロットを見て感心した。年齢はまだ成人前の13歳だというのにしっかりしていたからだ。地球では中学生ぐらいなのに、この世界の子供は本当にしっかりしているのである。
ヒロトシにとったら驚く事だが、この世界の人間は10歳から働いているので当たり前と言えば当たり前なのだ。
あと2年もすれば成人として認められ、早い子では結婚もする人もいるので、そんな驚くような事でもなかった。
そして、シャーロットはトラックの荷台の方に乗り、トラックのスピードに目を見開き驚いた。
「なんですの?この速い乗り物は?」
「シャーロットさん凄いでしょ?馬車なんかじゃ比べ物にならないから、ミトンの町までは今日中に着く事も可能なんですよ」
「本当ですか?」
後ろに乗っていたミランダが、シャーロットに自分の事の様に自慢げに話していたのが、助手席に乗っていたカノンの耳に入った。
「ちょっと!そんな事言わないでください!これ以上スピードを出されては……いやぁ~~~~~~~!ご主人様もっとスピードを落してぇ~~~~~!」
カノンの叫び声が、パルランの町からドップラー効果の様に消えていくのだった。
そして、三日をかけてミトンの町に到着したのだった。
「旦那さま。おかえりなさいませ」
「セバスただいま。何か大変な事はあったか?」
「いえ。なにもございません」
「そうか。それならよかった。そしてサキとジュリはどうだ?」
ヒロトシがそう言うと、サキが家から飛び出してきていた。
「シャーロット!」
「お姉ちゃん!」
二人は感動の再会を果たしたのだった。シャーロットは必ず生きていると信じていたので本当に嬉しかった。サキはもう2度と会えないと思っていたので涙でぐちゃぐちゃになっていた。その様子を側でジュリが微笑んでいたのは印象的だった。そして、落ち着いた3人は改めてヒロトシにお礼を言った。
「「ご主人様、本当にありがとうございます」」
「いやいや、間に合ってよかったよ」
「間に合ってとはどういう事ですか?」
「ヒロトシ様!」
その言葉にシャーロットは焦って大きな声を出した。
「まあ、そのことは家の中で説明するよ」
ヒロトシは運転で疲れていたこともあって、とりあえず屋敷の中で休憩したかった。
「セバス、悪いが疲れたよ。お茶を淹れてくれないか?」
「分かりました。シャーロットとサキとジュリの分もよろしく頼むよ」
「シャーロットたちは一緒に来てくれ」
そして、ヒロトシに付いて一緒に部屋に入ってソファーでくつろいだ。
「さてと、これからの事なんだがいいか?」
「「「はい」」」
「サキとジュリの二人は、立場上俺の奴隷だ。精神的に治るのは数年後になるだろう。これは君達と一緒に救いだされた10人も違いはあろうが一緒だと思う」
「「……」」
「あ、あの!」
「サキ。まあ、まずは聞いてくれ」
「は、はい……」
「俺は君達を役に立たないと言って、奴隷商に売ったりはしないから安心してくれ」
「「えっ……」」
「だから、数年間治療に専念をしてほしいんだ。医者には通って貰い、その治療費は俺が出すし、その間の衣食住も保証しよう」
「「「ほんとうですか?」」」
「ああ。嘘は言わない。しかし、治った時にはサンライトでちゃんと働いてもらうのが条件だ。いいかな?」
「「は、はい……はい……」」
サキとジュリは、もう冒険者として働けないだろうと自分達でも思っていた。その為、あのような人気店で働けることを光栄に思っていた。店で働く事でヒロトシの役に立って見せると瞳に涙を溜めた。
「そして、シャーロットの事なんだが、いずれ病気が完治した場合ここに残るか?それともパルランの町に帰省するか?自分で決めてくれたらいいよ。病気が完治するまで面倒は見るからさ」
「ちょ、ちょっと待ってください!シャーロットを一人で、パルランに帰すってどういう事ですか?」
サキがその説明に吠えたのだった。それには、ヒロトシはびっくりして目を見開いた。
「何でサキがそんなに怒るんだ?」
「なんでって、シャーロットは持病があって、一人で生活が出来るとは!」
「待て待て!ちゃんと俺の説明を聞いていたのか?俺はシャーロットの病気が完治したらと言ったじゃないか?」
「それがおかしいと言っているのです。シャーロットの病気は、難病で治る事が無いと言われているんですよ?」
「いやいや……魔力欠乏症なんだろ?かかりつけ医がそう言っていたぞ?」
「だからじゃないですか。魔緑草を使ったポーションか丸薬で補うしかないんですよ。この病気はそうやって付き合っていくしか……」
サキのその説明に、シャーロットは自分が如何に迷惑をかけていたのがわかり、下を向きうつむいて落ち込んでいた。
「それは分かるよ?だけど、治った場合シャーロットは奴隷じゃないんだ。自由に行動も出来るし、自分の力で生きていけるんだよ?」
「それは治った場合の事ですよね?」
「ああ、そうだよ。魔力欠乏症が、何で治らないって決めつけるんだ?」
「そうはいっても、この病気を治そうと思えば万能薬がいるはずです。もしくは、エリクサーならどんな病気も治す事が出来るでしょうが、そんな薬をどうやって手に入れるのですか?」
「お前はここにきてまだ日が浅いんだ。わからないかもしれないが、俺はオークションに宝石や鏡台を出品しているんだぞ?手に入るかもしれないじゃないか?」
「まさか、そんな高価な薬をシャーロットにお使い下さるのですか?」
「そうじゃないと治らないんだろ?だったら手に入れれば使用するに決まっているだろ?」
「そんな事をすれば、シャーロットにいくらの借金が出来ると思うのですか?とてもじゃないけど、一人で返せるわけが……」
「はぁあ?何でシャーロットが借金を負う事になるんだよ?俺が購入するって言ってるじゃないか」
「じゃあ……ご主人様は、エリクサーをタダでシャーロットに?」
「当たり前じゃないか。お前の妹なんだろ?幸せになってほしくないのか?」
ヒロトシがそう言うと、サキは瞳から涙が止めどなく流れて、手を口にあてて嗚咽をもらすほど感動していた。そして、シャーロットも又嘘のような話でポカンと呆けていた。
「なあシャーロット?お前はどうしたい?パルランの町に帰りたいと言うのならあの家はお前に返そう。それまでは俺が管理費を全額だすし何も心配はいらないよ」
「本当にそんな事をしてもらえるのですか?」
「ああ。乗り掛かった舟だ。最後まで面倒を見させてもらうよ」
「だったら、あたしはこの病気が治ったら考えがあります」
「ほうほう!それはなんだ?出来る事なら協力してやるぞ」
「本当によろしいのですか?」
「ああ!大人を頼りな。出来る事なら何でもしてやるよ」
「言質を取りましたよ。だったら、早くこの病気を治してください。治ったらその願いを聞いてもらいます」
「何で今言わないんだ?」
「あたしにも覚悟という物があります。今は時間が欲しいとだけ……」
「まあ、一人で生きていくのは覚悟がいるもんな。わかったよ。なるべく早く魔力欠病症を治してあげるよ」
ヒロトシは、エリクサーが手に入らなくとも万能薬は作れると思っていた。レアな薬草だが、ヒロトシには魔の森を捜索できる強みがあったからだ。万能薬を作るには、魔緑草と大魔苔それにマンドラゴラが必要と知っていた。
この大魔苔とマンドラゴラがなかなか見つからないが、魔の森の奥地には普通に採取できる事を知っていた。この素材を薬師に持っていけば万能薬を作ってくれるのは分かっていたのだ。
「まあ、なるべく早く薬を調達するから楽しみになってな」
「はい!ヒロトシ様」
そういって、シャーロットはヒロトシに不穏な笑顔を送ったのだった。ヒロトシは、その笑顔に少し引っかかったが笑顔で返した。
「ヒロトシ様、本当にありがとうございます。これであの家は売らずにすみます」
この家の年間費は、ヒロトシのギルドカードから自動的に引き落とされる事になるので、いちいちパルランの町に来なくてもいいのだ。
「さあ、一日無駄にしたが手続きも済んだし、ミトンの町へ帰るぞ」
「「「「「はい!」」」」」
ヒロトシはまだ気づいていなかった。このシャーロットの事でこの先新たな問題が発生することに。
そして、ヒロトシはトラックを家の前に出すと、当然シャーロットは目を見開き驚いた?
「こ、これは何ですか?」
「まあ、馬車の代わりだな」
すると、カノン達はそそくさと後ろに乗り込もうとした。
「おい!お前達何をシャーロットさんを助手席に座らせようとしている」
「「「「「い、いや……それは……」」」」」
「シャーロットさんはお客様として扱え!行きは急いでいたから助手席には座らせなかったが、帰りは誰かがこっちに座れ!」
「だ、だけど……」
「なんだ?カノン。行きは、誰かが助手席に座るのが当たり前だと言っていたじゃないか?」
「い、いえ……それは……」
「ヒロトシ様?どうかしたのですか?」
「いや、シャーロットさんはお客様だ。こっちの後ろに乗ってくれたらいいよ。ソファーもあるしゆっくりできるから。まあ、運転し出したら俺の隣の奴がうるさいとは思うが気にしないでくれたらいいよ」
「わ、分かりました……」
その言葉にカノンは呆気にとられ言葉が上ずった。
「ご、ご主人様?……う、嘘ですよね?」
「お前達は、日頃自分達は奴隷だとうるさいのに、自分の都合が悪いとしれっと擦り付けようとするのが気に入らない。今回はお前達は変わりばんこで助手席に座れ!」
「「「「「そ、そんな……」」」」」
「うるさい!今回はお前達に罰を与えるから反論は許さん!」
この時シアンだけはニコニコしていた。シアンは、ヒロトシとしゃべりたいので助手席を克服した人間だからだ。
「あたしはご主人様と話したいから助手席の方がいいからよかった」
「「「「「あんた狡いわよ!」」」」」
「悔しかったら、あたしみたいに克服したらいいじゃない!」
「「「「「むぐぐぐぐ!」」」」」
カノン達は、シアンの言い方に何も言い返す事が出来ずにいた。
「ああ!シアン。お前は助手席には座らせないからな。そっちの方が罰になるだろ?」
「ええええええ!そんな!」
それを聞いたカノン達はシアンを笑ったのだった。その様子を見て、シャーロットは主人と奴隷の関係じゃないと思ったのだ。罰と言われていても、奴隷達に悲壮感がなくみんなが信頼感のある感じだった。それを見ていたシャーロットはクスクス笑い笑顔となっていた。
「シャーロットさん。どうかしたのか?」
「いえ……今の雰囲気を見て、ヒロトシ様が奴隷をどのように扱っているのがよくわかったような感じがします」
「えっ?いや、罰というのはちょっと違ってだな……」
「分かっています。この方達には悲壮感が無いし、ヒロトシ様を信頼しているというか、信じているのが分かりました。多分、お姉ちゃんも大事にされていると思います」
「シャーロットさんに、そう思って貰えてよかったよ」
「ああ、それとヒロトシ様?」
「なんだ?」
「あたしの事はさん付けはしなくてもいいです。シャーロットと、呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」
「いやいや、知り合ってまだ1日だよ。いくら年下とはいえ礼儀はわきまえないとな」
「あたしがいいと言っているんだからそうお呼びください。それに、これからあたしは姉共々、あなたに援助して貰えないと生活もできないんですから」
ヒロトシはシャーロットを見て感心した。年齢はまだ成人前の13歳だというのにしっかりしていたからだ。地球では中学生ぐらいなのに、この世界の子供は本当にしっかりしているのである。
ヒロトシにとったら驚く事だが、この世界の人間は10歳から働いているので当たり前と言えば当たり前なのだ。
あと2年もすれば成人として認められ、早い子では結婚もする人もいるので、そんな驚くような事でもなかった。
そして、シャーロットはトラックの荷台の方に乗り、トラックのスピードに目を見開き驚いた。
「なんですの?この速い乗り物は?」
「シャーロットさん凄いでしょ?馬車なんかじゃ比べ物にならないから、ミトンの町までは今日中に着く事も可能なんですよ」
「本当ですか?」
後ろに乗っていたミランダが、シャーロットに自分の事の様に自慢げに話していたのが、助手席に乗っていたカノンの耳に入った。
「ちょっと!そんな事言わないでください!これ以上スピードを出されては……いやぁ~~~~~~~!ご主人様もっとスピードを落してぇ~~~~~!」
カノンの叫び声が、パルランの町からドップラー効果の様に消えていくのだった。
そして、三日をかけてミトンの町に到着したのだった。
「旦那さま。おかえりなさいませ」
「セバスただいま。何か大変な事はあったか?」
「いえ。なにもございません」
「そうか。それならよかった。そしてサキとジュリはどうだ?」
ヒロトシがそう言うと、サキが家から飛び出してきていた。
「シャーロット!」
「お姉ちゃん!」
二人は感動の再会を果たしたのだった。シャーロットは必ず生きていると信じていたので本当に嬉しかった。サキはもう2度と会えないと思っていたので涙でぐちゃぐちゃになっていた。その様子を側でジュリが微笑んでいたのは印象的だった。そして、落ち着いた3人は改めてヒロトシにお礼を言った。
「「ご主人様、本当にありがとうございます」」
「いやいや、間に合ってよかったよ」
「間に合ってとはどういう事ですか?」
「ヒロトシ様!」
その言葉にシャーロットは焦って大きな声を出した。
「まあ、そのことは家の中で説明するよ」
ヒロトシは運転で疲れていたこともあって、とりあえず屋敷の中で休憩したかった。
「セバス、悪いが疲れたよ。お茶を淹れてくれないか?」
「分かりました。シャーロットとサキとジュリの分もよろしく頼むよ」
「シャーロットたちは一緒に来てくれ」
そして、ヒロトシに付いて一緒に部屋に入ってソファーでくつろいだ。
「さてと、これからの事なんだがいいか?」
「「「はい」」」
「サキとジュリの二人は、立場上俺の奴隷だ。精神的に治るのは数年後になるだろう。これは君達と一緒に救いだされた10人も違いはあろうが一緒だと思う」
「「……」」
「あ、あの!」
「サキ。まあ、まずは聞いてくれ」
「は、はい……」
「俺は君達を役に立たないと言って、奴隷商に売ったりはしないから安心してくれ」
「「えっ……」」
「だから、数年間治療に専念をしてほしいんだ。医者には通って貰い、その治療費は俺が出すし、その間の衣食住も保証しよう」
「「「ほんとうですか?」」」
「ああ。嘘は言わない。しかし、治った時にはサンライトでちゃんと働いてもらうのが条件だ。いいかな?」
「「は、はい……はい……」」
サキとジュリは、もう冒険者として働けないだろうと自分達でも思っていた。その為、あのような人気店で働けることを光栄に思っていた。店で働く事でヒロトシの役に立って見せると瞳に涙を溜めた。
「そして、シャーロットの事なんだが、いずれ病気が完治した場合ここに残るか?それともパルランの町に帰省するか?自分で決めてくれたらいいよ。病気が完治するまで面倒は見るからさ」
「ちょ、ちょっと待ってください!シャーロットを一人で、パルランに帰すってどういう事ですか?」
サキがその説明に吠えたのだった。それには、ヒロトシはびっくりして目を見開いた。
「何でサキがそんなに怒るんだ?」
「なんでって、シャーロットは持病があって、一人で生活が出来るとは!」
「待て待て!ちゃんと俺の説明を聞いていたのか?俺はシャーロットの病気が完治したらと言ったじゃないか?」
「それがおかしいと言っているのです。シャーロットの病気は、難病で治る事が無いと言われているんですよ?」
「いやいや……魔力欠乏症なんだろ?かかりつけ医がそう言っていたぞ?」
「だからじゃないですか。魔緑草を使ったポーションか丸薬で補うしかないんですよ。この病気はそうやって付き合っていくしか……」
サキのその説明に、シャーロットは自分が如何に迷惑をかけていたのがわかり、下を向きうつむいて落ち込んでいた。
「それは分かるよ?だけど、治った場合シャーロットは奴隷じゃないんだ。自由に行動も出来るし、自分の力で生きていけるんだよ?」
「それは治った場合の事ですよね?」
「ああ、そうだよ。魔力欠乏症が、何で治らないって決めつけるんだ?」
「そうはいっても、この病気を治そうと思えば万能薬がいるはずです。もしくは、エリクサーならどんな病気も治す事が出来るでしょうが、そんな薬をどうやって手に入れるのですか?」
「お前はここにきてまだ日が浅いんだ。わからないかもしれないが、俺はオークションに宝石や鏡台を出品しているんだぞ?手に入るかもしれないじゃないか?」
「まさか、そんな高価な薬をシャーロットにお使い下さるのですか?」
「そうじゃないと治らないんだろ?だったら手に入れれば使用するに決まっているだろ?」
「そんな事をすれば、シャーロットにいくらの借金が出来ると思うのですか?とてもじゃないけど、一人で返せるわけが……」
「はぁあ?何でシャーロットが借金を負う事になるんだよ?俺が購入するって言ってるじゃないか」
「じゃあ……ご主人様は、エリクサーをタダでシャーロットに?」
「当たり前じゃないか。お前の妹なんだろ?幸せになってほしくないのか?」
ヒロトシがそう言うと、サキは瞳から涙が止めどなく流れて、手を口にあてて嗚咽をもらすほど感動していた。そして、シャーロットも又嘘のような話でポカンと呆けていた。
「なあシャーロット?お前はどうしたい?パルランの町に帰りたいと言うのならあの家はお前に返そう。それまでは俺が管理費を全額だすし何も心配はいらないよ」
「本当にそんな事をしてもらえるのですか?」
「ああ。乗り掛かった舟だ。最後まで面倒を見させてもらうよ」
「だったら、あたしはこの病気が治ったら考えがあります」
「ほうほう!それはなんだ?出来る事なら協力してやるぞ」
「本当によろしいのですか?」
「ああ!大人を頼りな。出来る事なら何でもしてやるよ」
「言質を取りましたよ。だったら、早くこの病気を治してください。治ったらその願いを聞いてもらいます」
「何で今言わないんだ?」
「あたしにも覚悟という物があります。今は時間が欲しいとだけ……」
「まあ、一人で生きていくのは覚悟がいるもんな。わかったよ。なるべく早く魔力欠病症を治してあげるよ」
ヒロトシは、エリクサーが手に入らなくとも万能薬は作れると思っていた。レアな薬草だが、ヒロトシには魔の森を捜索できる強みがあったからだ。万能薬を作るには、魔緑草と大魔苔それにマンドラゴラが必要と知っていた。
この大魔苔とマンドラゴラがなかなか見つからないが、魔の森の奥地には普通に採取できる事を知っていた。この素材を薬師に持っていけば万能薬を作ってくれるのは分かっていたのだ。
「まあ、なるべく早く薬を調達するから楽しみになってな」
「はい!ヒロトシ様」
そういって、シャーロットはヒロトシに不穏な笑顔を送ったのだった。ヒロトシは、その笑顔に少し引っかかったが笑顔で返した。
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