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第5章 意外なスキル

9話 盗賊逮捕

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 セレンとシアンは、独自に動き今回の犯人をつきとめた。クバードという兵士が借金のかたに、倉庫の鍵を手渡し合鍵を作ったことまで調べ上げたいた。そして、盗みに入った3人を割り出したのである。

「ご主人様!倉庫に盗みに入ったのはテオ・トーマス・アーロンの3人だと思われます」
「クバードという兵士は博打に溺れ、借金のかたに倉庫の鍵を手渡してしまった模様」

「なるほどな……兵士が博打にのめり込むほどストレスに感じてたというのか……」

「はい!連続出勤が1ヶ月も続いたら気が変になるのかもしれませんね……」

「そうだな。自分は、兵士になれるぐらいエリートだと自分は思っているのに、働き方は奴隷と変わらないもんな」

「そうですね。やっぱりご主人様の忠告は正しかったということです」

「それで、その3人はどの方面に逃げたのか分かったのか?」

「そこまではちょっとわかりかねませんが、こういった場合統計的に一番多いのは、とりあえず一番近いオーランの町かと」

「なぜだ?」

「盗んだ物を早く処分したいと思うからです。あの町には闇ギルドが顕在しております。徒歩で向かっているはずなので取り敢えず一番近い町かと」

「わかった!」

 ヒロトシは、すぐに行動に移した。自転車に乗り、北に向かって一直線に全速力で突っ走ったのだった。さすがはシアンとセレンの二人だとヒロトシは感心した。まさかこの短時間で主犯格の名前まで調べ上げたのだ。

「さすが、元闇ギルド最強のアサシンだ。名前さえ分かればサーチで後を追える」

 ヒロトシは独り言を言い、サーチを起動させると、最初は範囲外だった為確認が出来なかった。しかし、シアンとセレンの予想を信じて、オーランの町に向かって自転車を走らせた。すると、北に向かう3人の名前が揃っているのが確認できた。
 余談ではあるが、ヒロトシが城門をものすごい勢いで通過した時は、王国騎士団が何やら騒いでいたが、一刻を争う事なので当然無視をして城門を強行突破していた。

 今は事情を説明している時ではなく一刻を争うときだったからだ。北の森をつききり、あの3人の先回りをしないと倉庫の商品を売られたら終わりになるからだ。ヒロトシは、余裕で3人を追い越し、先回りして街道へ出て待ち伏せをした。

「やっとオーランの町まで1日ほどで着くな」
「ああ!これだけの商品だ。闇ギルドに売れば遊んで暮らせるぜ」
「クバードの奴、傑作だよな。確かに借金はチャラにしてやったが、普通の生活に戻れるわけがねえのによ」
「本当だぜ。ギャンブル狂いは後先の事が考えられなくなるからな」
「まあ、その弱みをついてやれば楽勝だぜ」

「「「ぎゃはははははは!」」」

「まあ、そんなうまくいくわけがないよな。結局は悪は成敗されるのがオチだよ」

「「「だ、誰でぇ!」」」

「オーランの町に着く前に追いついてよかったよ。ミトンの町の倉庫から盗んだ物を返してもらおうか」

「ま、まさか……」
「ヒ、ヒロトシ男爵様……」
「か……」

「ほう!俺の事を知っているんだ。まさか犯罪者にも顔が知れてるとは思わなかったよ」

「う、嘘だろ?何であんたがここに?」

「さあな?そんな事より大人しくした方が身のためだぞ?」

「や、やべえ!コイツだけは敵に回したら駄目だ……」
「馬鹿な事を!」
「やっと、一生遊んで暮らせるんだぞ?」

 テオは、ヒロトシに追いつかれた事で降参したが、トーマスとアーロンは諦めずに逃げ出そうとした。 しかし、ヒロトシのレベルに敵う訳もなく、一瞬で追いつかれて腹にボディーブローを叩き込まれて気絶してしまった。

「う、嘘だろ……何で一瞬で距離を詰められているんだ」

 テオはヒロトシのスピードに愕然とした。

「さあ、残りはテオだったか?あんただけだ」

「なんで、俺の名前を……」

 ヒロトシが、自分の名前を知っていることに驚愕し後づ去りしていた。

「そんなことはどうでもいいよ。さあ、どうする?」

「わ、わかった。俺達の降参だ!大人しくするから……」

「はい!おりこうさん。従ってくれて俺も助かるよ」

 そう言ってヒロトシは、3人を素巻きにしてしまった。そして。3人からマジックバックを取り上げ、町の倉庫にあったものを全て取り戻す事ができたのだった。
 そして、ヒロトシはトラックのコンテナ部分に3人を放り込み、荷台に縛り付けて逃げれない様にした。

「こ、これが噂の乗り物かよ……」

「まあ、鉱山送りになる前に堪能したらいいよ。ったく……町の倉庫に盗みに入るとは大胆な奴らだ」

「成功すれば一生遊んで暮らせるんだ!これぐらいの無茶はするさ!」

「何威張ってやがる。その姿勢を正しい方に活かせよな」

「偽善ぶりやがって!俺達は子供のころから、泥をすすって生きてきたんだ。これも貴族達のせいなんだよ。なんで俺達が貴族が贅沢する為に働かなきゃいけねえんだ!」

「まあ、お前達の言いたいことは分かるけどな……」

「そうだろ?あんたは平民上がりの貴族だからそんなことはねえが、王国の貴族ですら腐った奴らばかりだ。俺達平民は、自分の奴隷だと思ってやがる」

「それなら、何でシルフォード様の町でこんな事をするんだ。シルフォード様は、平民の事を考えてくれる数少ない善政をしている貴族の一人じゃないか?」

「ああ……それは知っているが、それでも貴族として贅沢をしているじゃないか!そんな金があるなら、もっと俺達に金をよこせってんだ!」

「馬鹿な事を……善政をするのにどれほどの労力がいると思う?それを考えたらシルフォード様はもっと贅沢をしても構わないよ」

「馬鹿な事を!」

「いいか?シルフォード様の贅沢はここ数年と言ったところだ!贅沢と言っても、他の貴族様より全然質素な生活をしていらっしゃる。その証拠に俺が、この町に住みだしてからと言ってもいいだろう」 

「何であんたにそんなことが分かる……」

「わかるさ!それまでシルフォード様の奥方様は、お茶会で他の貴族から自慢ばかりされて、肩身の狭い思いをしていたからだよ。自慢しようにも、お金はギリギリで全部町の事に使っていたんだからな」

「……」

「それでも、シルフォード様は平民達の事を考えて、町の税率は10%から絶対にあげなかったんだ。そんな貴族が他にいるか?」

「そ、それは……」

「テオ!あんたの失敗はこの町で犯罪を犯したことだ。他の町なら成功したかもな」

「ぐっ……」

 ヒロトシはそう言いながら、トラックをミトンの町へと走らせたのだった。そして、半日もせずにミトンの町へと到着して、ヒロトシはまた騎士団のメンバーに小言を言われた。

「ヒロトシ様!いったいどこに行ってたのですか?」
「本当ですよ!あんな全速力で城門を突破しないでください!」
「「「「「我々がどれほど心配したか!」」」」」

「悪かったな。時間が無かったんだよ」

「時間が無いってどういう事ですか?貴方はもう男爵様なのです。その身分を自覚して頂けないと困ります!」

「そんなにガミガミ言われるのなら男爵位を返還しても構わないよ。俺は貴族に興味がある訳じゃないんだからな」

「馬鹿な事を!」

「それより俺の話を聞けって」

「分かりました。その時間がなかった理由をお聞きしましょうか?」

「町の倉庫の泥棒を捕まえてきたよ。ほら、これは町から盗まれた物だ」

 ヒロトシは、テオ達から取り返したマジックバックを王国騎士団に提出をした。

「はぁあ?」

「驚いてないで、すぐに盗まれたももを比べて!そして、シルフォード様に連絡!」

「はっ!わ、承知しました!」

 王国から派遣されていた王国騎士団隊長は、ヒロトシの言ったことに驚きながらもその指示に従っていた。

「こ、これをどうして⁉」

「時間が無かったのは後ろに詰め込んだ犯人が、他の町に逃亡しようとして、その盗んだ物を闇ギルドに横流しをしようとしていたからだ。こいつ等が徒歩で町に向かったのが運が良かったんだ」

「な、なんですと!犯人まで捕らえてきたのですか?」

「そういうこと。時間が無かったと言ったわけが分かったか?」

「も、申し訳ありませんでした……」

 王国騎士隊長は、ヒロトシにぐうの音も出ず平謝りだった。

「さて……そんな俺に対してあんなにガミガミと……」

「本当に申し訳ございません!知らないこととはいえ……ほら、お前も頭を下げないか!」
「「「「「申し訳ございません!」」」」」

「これはもうローベルグ様に報告しちゃおうかな?」

 ヒロトシがそう言った瞬間、隊長達は顔から血が引くのを実感できた。

「「そ、それだけは!」」
「私達はヒロトシ様の身を心配したのであって……」

「ぷっ!あはははははははは!」

 王国騎士団の姿が必死だった為、ヒロトシはこらえきれず吹き出してしまった。

「「えっ?」」

「冗談だよ。そんな事言いません!」

 冗談だと聞き、騎士達はその場にへたり込んでしまった。その時、血相を変えたシルフォードを始め、町の役員達が城門前に駆けつけてきた。


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