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第4章 魔道スキルと研磨スキル

閑話 幻のアサシン

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 漆黒の闇夜に、動く二つの影。

 一人はピンクのロリータ衣装に似た服装に身を包み、太ももの辺りに武器を忍ばして、偵察には不利だと思うシアン。
 もう一人は真っ黒なゴスロリ衣装に似た服装に身に包み、こちらは偵察には適しているかと思ったが、その利き腕には大鎌が装備され、とてもじゃないが隠密には不利な武器だと思う重そうな武器を、片手で軽々と持つのがセレンである。

 今宵もある貴族の家に忍び込み、その様子をうかがっていた。

「ちっ……やはりこいつは始末した方がいいわ」
「そうね。胸糞悪い」

 そこには、貴族が奴隷の少女をいたぶる光景が展開されていた。闇ギルドにこの貴族を始末して欲しいとの依頼が舞い込んだため、シアンとセレンがこの依頼を受けたのだ。
 シアンとセレンは、滅多に依頼を受ける事はない。こういった屑を始末する依頼で、潜入が難しいとされる貴族や大商人の時だけ、依頼を遂行するのだ。

「ほらぁ~~~~~!もっと泣け!」

「いやぁ~~~~~!もうお止め下さい……」

 そこには貴族の息子が奴隷をいたぶり、貴族の親が息子におもちゃを与える感じでその親も観ていた。

「マサル。まだまだ玩具はあるから遠慮しなくてもいいぞ」

「パパ。ありがとう!最高の誕生日プレゼントだよ」

 貴族の息子がそう言って振り向いた後ろにスッと影が出来た。その瞬間大きな鎌が一陣の風を起こし、貴族の息子の胴を真っ二つに狩ったという表現が正しい。

「がっ!」

「きゃ!」

 貴族の息子マサルはただ一言、息をもらしただけで絶命した。奴隷の少女はその光景に悲鳴をあげる前に気絶させられた。セレンが少女の頭を触る仕草をしただけで、気を失ってしまったように見えた。

「マ、マサル!貴様よくも我が息子を!ものども出会え!」

 すると、屋敷を警備していた私設兵団がワラワラと現れた。

「ったく……あの子ったらまだこんなに残っているじゃない」

「何をブツブツと。我が息子の敵を取るのだ!」

「「「「「おおおおおお!」」」」」

 兵士達が、セレンに一斉に跳びかかった。しかし、セレンは冷静にその重そうな大鎌を右手一本で振り回した。

「スラッシュ!」

 その大きな鎌から剣気が飛び、兵士の首を寸分狂いなく捕らえた。そして、その瞬間兵士達の首が一斉に飛んだのだった。

「私の異名は首狩りのセレン!」

「なっ!く、く、首狩りだと……闇ギルドの幻のアサシンか……」

 貴族は震えあがり後づ去りした。

「何故闇ギルドが……」

「貴方みたいな屑がいるから、世の中は混沌になるのよ」

「はっ!何を言っておる。お前達闇ギルドに言われたくないわ」

「そうね……私達闇ギルドも混沌の権化ね……」

「うっ……」

 貴族が言いかえすと同時に、ピンクの衣装に身を包んだシアンが、貴族の首にダガーを付き付けた。

「なっ……もう一人アサシンだと!」

「あーあ。早く私に首を狩られていたら、一瞬で苦しまなかったものを……同情するわ」

「な、何を言っている……」

「私の異名を教えてあげましょう。ハードポイズンのシアン」

「なっ!もう一人幻のアサシンだと……」

「それじゃ、さ・よ・う・な・ら」

 シアンは、その貴族のほっぺたにダガーで少し切ったのだ。そして貴族のほっぺに切り傷が少しだけ出来た。

「な、何……がががががががががが!」

 貴族がいきなり苦しみだし、胸をかき乱しだした。そして10秒もしない内に口から泡を吹き出し、苦しみのたうちまわりそのまま動かなくなった。

「ねえ。いつ見ても残酷なんだけど。もっと一思いにならないの?」

「いやよ。あんたみたいな殺し方したら、衣装に返り血がかかって衣装を捨てなきゃいけなくなるじゃない」

「ったく……何であたし達の職業で、そんなピンクの衣装を着るのよ。目立つじゃない」

「嫌よ!この衣装が可愛いんだから」

「ったくもう……それでもう屋敷の中は片づいたの?」

「当たり前じゃない!ほら!これを見てよ全部麻薬」

 シアンのマジックバックの中には麻薬がいっぱいだった。

「じゃあ、帰るわよ」

「ええ!」

 その貴族の家に生きている者は、奴隷の少女だけだった。翌朝、その貴族の屋敷には捜査が入ったが、手掛かりは0だった。屋敷の者は全員が首を刎ねられているか、毒殺されていたからだ。
 唯一の手掛かりだった奴隷の少女だったが、記憶があやふやで大きな鎌を持った人間が、貴族の息子の首を刎ねた事しか覚えていなかった。
 そして、貴族の家からは不正の証拠が続々と出てきて、麻薬の売人と子供達の誘拐だった。これを証拠に芋づる式に犯罪者が捕らわれたのは言うまでもない。

 そして、シアンとセレンは闇ギルドに帰り、ミッションの成功を報告。闇ギルドのカウンターで成功報酬をもらった。

「あいつら、自分が正義の味方か何かだと思ってんのか?」
「ああ……おかしな奴らだぜ。貴族の中でも屑な奴らの依頼しか受けねえ」
「まあ、俺達からしたら偽善だ偽善」

 シアンとセレンは、闇ギルドの中でも浮いた存在だった。権力を振りかざす貴族や、今回のような人道的に外れた人間ばかりを始末して依頼を遂行していた。
 他のアサシン達からは偽善と罵られたりしていたが、シアンとセレンは最凶のアサシンとして君臨していた。そして、総帥の親衛隊としての地位もあった為、自分が納得した依頼しか受けていなかったのだ。

「「総帥。ただいま帰りました」」

「ああ。ご苦労」

「今回の貴族も屑ばかりでした」
「あのような奴らが多すぎる……」

「お前達は変わった奴らだな……ああいう貴族は、闇ギルドにとって利用価値があるのだから、泳がせておけばいいだろ?」

「依頼があると言うのはあまりに目に余る事だと……」
「私達も依頼があった時にしか動きません」

「まあ、お前達の好きにすればいいさ。依頼があると言う事は闇ギルドにも、それなりの潤いがあると言う事だからな」

「「ご理解していただきありがとうございます」」

「日頃は何も言わぬが、余の言う事には絶対に従ってもらうぞ」

「「はっ!私達は総帥の手足でございます」」

「ならよい!」

 シアンとセレンの二人は、闇ギルドでも異質で幻のアサシンと呼ばれている。表の世界では、この二人の存在は脅威であり、その姿を見た人間はほとんどいない。そのすべての命が、この世から始末されるからである。


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