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第4章 魔道スキルと研磨スキル

44話 生存確認

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 ヒロトシは、一日ゆっくりしてミトンの町に戻った。まさか、ダンジョンに偵察を送っていたとは思っていなかった為、ミトンの町でヒロトシが死んだ事になっているとは思いもしていなかったのだ。

「それじゃセバス。ミトンの町に行ってくるよ」

「本当にお一人で行ってくるのですか?やはりトラックで護衛の者を……」

「魔王を倒した俺に護衛などいらないだろ?それよりも護衛メンバーには魔の森で修業してもらった方が、これからの役に立つよ」

「それはそうですが……」

「それに一人なら瞬間移動もできるしな。そんなに心配するな。用事を済ませたらすぐに帰って来るから」

「分かりました」

 そういって、ヒロトシはリコールを唱えて、㋪美研に瞬間移動して出発してしまった。

「はぁぁ……旦那様はもう何でもありですね。そのうち本当に、今回の地震で犠牲になった大工職人10人を蘇生してしまいそうですね」

 出発を見送ったセバスは呆れた様子で呟いていた。

「やっぱり瞬間移動は便利だな」
 
 そして、冒険者ギルドに向かうと町の人間が驚いた様子で、中には号泣しながらヒロトシに近づいてくるのだ。これにはヒロトシは、ビックリしてなにがあったのかと理由を聞こうとしても、全員が好き勝手説明するもので上手く伝わらず首を傾げた。ただ分かったのは、ヒロトシが死んだとかよく生きていらっしゃったとかだった。

「ちょっと待て!なんで俺が死んだことになっているんだよ?」

「それは兵士の皆様が、そのようにシルフォード様に報告をしたので……」

「なんだそれ?」

「ヒロトシ様が、ダンジョンに魔王に討伐してから最後の地震が起きたのです。それがあまりに大きく町の建物が倒壊し、シルフォード様は兵士様達に指示を出してダンジョンに偵察を向かわされました」

「はっは~ん!なるほどな。それであのダンジョンが埋まってしまった事を知ったのか?」

「その通りでございます。ダンジョンが埋まってヒロトシ様を救う手段がなくなり、魔王と相打ちで死亡したと結論付けるしかなくなったのです」

「なるほどな……まあ、あの後景を見れば、その決断もしょうがないか」

「「「「「それにしても、生きておられて本当に良かった」」」」」

「わかった。わかった。じゃあ俺はすぐにその間違った情報を訂正させる。ギルドとシルフォード様の所に行くからそこを開けてくれないか?」

 ヒロトシが町の人間に説明し道あけてもらった。この事は一気に町中に広まり、ミトンの町はあれほどお通夜のような感じだったが、一気にお祭りの雰囲気と変わっていた。

 そして、ヒロトシはすぐに冒険者ギルドへと行った。冒険者ギルドに入ると全員がヒロトシの顔を見た瞬間、お化けでも見たような顔になり、冒険者とギルド職員は思考が停止したのだった。そして、一番に声をあげたのはミルファーだった。

「ヒロトシ様!生きておられたのですか⁉」

「おいおい!なんで俺が死ななきゃならないんだよ。この通り足もちゃんと付いているよ」

 そういった瞬間、冒険者ギルドも歓喜に包まれた。その歓声はギルド中に響き、何事かと思いギルドマスター達幹部もホールに出てきたのだった。

「何事だ!やかましいぞ!」

「ギルドマスター!あれを」

「ミルファー、何を泣いておる?それになぜこんなに騒がしく……なって……」

 ギルドマスターは、ミルファーが指をさした方を見ると、冒険者達やギルド職員に囲まれているヒロトシの姿を見て言葉を失った。

「やっぱり生きていたか……本当に良かった……」

 スキンヘッドの厳ついギルドマスターが、ヒロトシの無事を確認できて涙を流していた。

「ギルドマスターが涙を流すなんて滅多に見れませんね」

「うるさいぞ!ミルファー。いちいち茶化すんじゃない」

「ヒロトシ様!よくご無事で」

「ギルドマスター。心配かけてすまなかったな」

「ほら、お前らヒロトシ様から離れぬか!俺は、絶対ヒロトシ様が生きていると思ってたから心配はしていませんでした」

「本当かよ?」

「ヒロトシ様。嘘ですよ嘘……ギルドマスターが一番落ち込んでいたんですから」

「う、うるさい!」

「「「「「「「「わはははははははははははは!」」」」」」」」

 顔を真っ赤にしたギルドマスターを見て、冒険者達が大笑いしたのだった。そこに、冒険者ギルドに息を切らせて入ってきた人物がいた。

「ヒロトシ君が生きていたと言うのは本当か?」

 町中が騒がしくなって、会議中のシルフォードに報告されたようで、冒険者ギルドに駆けこんできたようだった。

「シルフォード様。ご心配かけました」

「本当に生きてくれていて良かった……あのダンジョンを見てもう無理だと思っていたんだ」

「えぇ……俺もダンジョンが崩壊し出した時は、命を諦めました」

「ではどうやって助かったのだね?」

「今回、この依頼はローベルグ様からお願いされましたよね」

「確かに国王陛下から通信が入ったから、ヒロトシ君は行動を起こしたが、それと何か関係が?」

「ローベルグ様は、何でこの事を知ったと思いますか?」

「それは確か、昔のパーティーのメンバーからとしか……」

「ええ。そのメンバーは聖職者のジェシカさんからですよ」

「はっ?ジェシカと言えば、その身分は聖女と崇められると言われていて、その行方は不明とされていたはず……」

「まあ、その行方不明は置いておきますが、大元は女神ミレーヌ様からのお願いですよ。今回の魔王討伐は、女神様がその聖女様に連絡がいって、ローベルグ様から俺に連絡が来たと言う事です!」

「女神様が?」

 この衝撃の事実に、シルフォード達は目を白黒させて驚いていた。

「そうです。そして、俺は女神様に助けてもらって、ここに帰ってこれたという訳です」

「な、なるほど!」

 その説明に全員が息をのんで納得したのだった。

「これで何もかもうまくいく!ヒロトシ君も生きていた。本当に今日は嬉しい事ばかりだ!ギルドマスター通信機を貸してくれ」

「王都へ連絡を入れるのですね?」

「そうだ!ヒロトシ君の無事を陛下に報告するのだ」

 そして、この知らせはすぐに王都本部からローベルグに知らされる事になり、今回の働きにより、ヒロトシは又王都に呼び出される事になる。



「あー!そうだ。シルフォード様に報告したいことがあるんだ」

「なんだね?」

「俺達、しばらくの間ミトンの町を離れることにしたんだ」

「えっ……な、何を言っとるんだ?」

「そ、そうですよ!何を冗談を言っているのですか?」

「えっ?冗談なんか言ってなんかないよ。俺達はずっと町の為に頑張ってきただろ?ちょっと疲れたから休憩だ」

「なんだ?焦らすでない。休暇を貰うと言う事か。それでどのくらいだ?1ヶ月ほどか?」

「いや数年単位で」

「ちょ、ちょっと待ちたまえ!それは困る。これからミトンの町は復興せねばならんのだ。㋪美研がこれから数年単位で営業しないとなれば、復興が滞ってしまうではないか?」

「それは頑張ってくださいとしか……俺もローベルグ様のお願いを聞いて頑張って魔王を討伐したんですから、俺の好きなようにやらせてくれても罰は当たらないでしょう?」

「それはそうかもしれないが、君に数年単位で休まれては……それに、そんなに休んだ場合、君の商人としてのランクが剥奪される事になるんだよ?」

「いやいや。魔王討伐の時にシルフォード様が、何とかすると言ってくれたではありませんか?」

「それはだな……討伐している間の事を言っていた訳であって……」

「じゃあ、シルフォード様は魔王討伐した人間に対して、もう世の中は大丈夫だから休憩もささずに働けと?」

「そうは言っていないではないか?休憩にしても数年単位はやりすぎだ。1ヶ月ぐらいなら容認できると言っているんだ」

「だけど、魔王討伐にはローベルグ様のような強さの人間でないとできなかった依頼ですよね?俺が行かなかったら今のこの状況はなかったはずです。それぐらいの我儘を聞いてくれてもいいかと思うのですが」

「確かに君の言いたいことは分かる。しかし、ミトンの町の状況を見たまえ。これから復興をしていくのだ。町の稼ぎ頭である㋪美研が数年単位で休まれたら困るのだ」

「そんな事俺に言われても、困るのはこっちの方ですよ」

「いいや!ここは私も譲れないよ。君の力絶対に必要なのだ!」

 シルフォードは、今この状況でヒロトシに休まれては本当に困ると真剣な目つきで必死に訴えるのだった。

「どうしてもだめだと言うのですか?」

「ああ!駄目だ。それに、もうじき国王陛下から、今回の事でまた褒美を与える事になるはずで、王都に呼び出しがあるだろう。君にはあの乗り物があるから往復で2週間、休暇で2週間としての一ヶ月。それから㋪美研サンライトの営業を再開してもらいたいと思っているほどだ」

「馬鹿な事を!わざわざ休暇を王都に行く移動時間をいれろと言うのですか?」

「それほどまでに、ミトンの町には余裕がないんだ」

「余裕がないのは分かるが、何でそこで俺が犠牲にならないといけないんだ?おかしいじゃないか」

「君には確かに依存していると思う。確かにそれは認めるよ……」

「だったら、俺の好きなようにさせてくれても」

「それは待ってくれ!今君にそんな長い間休まれては本当に困るのだ。頼むこの通りだ。1ヶ月……それ以上の休みは止めてほしい。この通りだ!」

 シルフォードはヒロトシに頭を下げた。それと同時に幹部達役員や、各ギルドの幹部達も一斉に頭を下げたのだった。
 それほどまでに、財政はひっ迫しているのである。ヒロトシが生存していたと分かれば、頼りたいという気持ちがでてくる。
 そして、長期休暇を取られないような雰囲気に持っていくシルフォード達だった。

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