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第4章 魔道スキルと研磨スキル

20話 心配事

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 ヒロトシにお叱りを受けた冒険者達は、大人しくなり㋪美研から帰っていった。この一件でオプションスキルはヘイストだけではない事が一気に広まった。
 この件でSランク冒険者は、本当に待ち遠しくそわそわしていた。そして、AランクBランク冒険者は、もっと頑張りSランク冒険者を目指す為に、さらに依頼を頑張る事になっていた。
 Cランクまでの冒険者達は、とりあえずの目標が研磨をしてもらう事で、より一層町の雑用依頼でも、一生懸命丁寧に依頼をこなすようになっていた。

 この事はミトンの町の人間は、本当に冒険者達に感謝をすることになった。ミトンの町の冒険者は礼儀正しくなっていたのだ。
 前はごろつきのような冒険者がいたりしていたが、そういった冒険者はランクがいつまでたってもCランク以上に上がれず、㋪美研に研磨依頼が出せないからだ。
 そうなると、いつまでたっても割のいい仕事が出来ずいつまでたっても生活が安定しないからだ。それが原因で毎日依頼を受けないとその日の宿代も出す事が出来ず、野宿をしないといけないのが実状だった。
 しかし、一生懸命町の為に仕事をすればランクは上り、Bランクに上がればダンジョンに潜る事が出来る。その素材を持ち帰れば依頼を1週間に1度やれば十分裕福な生活が出来ることになる。
 そして、少し無理をして3日に1回のペースで依頼を受ければ貯金もできて、自宅を購入することも余裕でできるようになるからだ。



 カチュアは、ヒロトシがこの町に住んでくれて本当に感謝をしていた。

「ヒロトシ様がこの町に住んでくれて本当に良かったわ」

「どうかしたのですか?いきなりそんな事を言って」

「だって、そうでしょ?ここ数年、冒険者達が町で問題を起こさなくなったじゃない?」

「確かにそれは言えてますね」

 カチュアは職員達と、休憩中に酒場でそんな話をしていた。

「それもこれもヒロトシ様のおかげじゃない」

「確かにそうですね」

 するとそこに、ギルドマスターも話に加わってきた。

「おいおい。俺も頑張っているだろう?」

 その言葉に、カチュア達職員は大爆笑となった。

「「「「プッ!きゃははははは」」」」」
「ギルドマスターは何を言ってんですか?」

「なんだよ?俺だってギルドの長としてだな……」

「何を言ってんですか?どう考えてもヒロトシ様のおかげですよ」

「なんだと?俺だって町を巡回したりして」

「まあ、その努力は認めますよ?」

「そうだろ?」

「しかし、よく考えてみてくださいよ。こういっては本当に失礼かもしれませんが、ヒロトシ様の代わりなんかいませんよ」

「うぐっ……」

「仮にギルドマスターが定年退職しても、ギルドマスターの代わりは……」

「お前なあ!仮にも俺はお前の上司だぞ?」

「だったら、ヒロトシ様に対して対抗意識は捨ててください。相手にもならない相手に強がっても意味はありませんしカッコ悪いですよ」
「全くその通りです。ギルドマスターは昔からヒロトシ様に対抗意識を持っていますが、相手にもならないのでもう諦めた方がいいですよ」

「ぐっ……ちくしょお!」

 ギルドマスターは部下に言われたい放題で、自分の部屋に籠ってしまった。そして、いつもカチュアに言い負かられてしまっていている光景に、酒場にいた冒険者達は苦笑いをしていた。

「ギルドマスターも懲りないよなあ……」
「まったくだぜ。カチュアさんの気を引きたいのは分かるが、やり方が間違っているだろ……」
「まあ、みんなわかっている事だけどな。わはははははは!」

「ところでカチュアさんはどう思っているのですか?」
「どう思っているって言われても、あの調子じゃねえ……」
「もうカチュアさんの方から告白しちゃえば?」
「まったく……いつまで待たせるのやら……」

 カチュアも、呆れながらギルドマスターの方を見てため息をついていた。





 そして、ヒロトシはシュガー村に来ていた。

「ノーザンどうだ?上手く行きそうか?」

「旦那!これでどうだ?寝ずに製作して見た。俺としては上手くいったと……」

「ノーザン!誰が寝ずに製作をしろと言った!夜はちゃんと寝ろ!仕事は朝の8時から夕方5時までだと言っただろうが!」

 ヒロトシは、ノーザンの体調が悪くなっていたので激しく怒鳴った。

「お、俺は少しでも早く武器を仕上げようと……」

「俺はそんなことを望んでいないと言っただろ?そんな無理をしていい物ができたとして意味はないと言ったはずだぞ?」

「しかし、これを見てくれ……」

「確かにいい出来だと思う、しかしお前はどうだ?疲労でフラフラじゃないか?そんなんで次の仕事に支障が出ると思わないのか?」

「うっ……」

「いいか?お前は、今まで一人で黙々と仕事をやってきたのかもしれないが、それじゃ駄目だ!休むときはちゃんと休んで、いつでも最高の仕事をするように心がけろ!」

「しかし、俺はいつもこんな感じで……」

「そうか。じゃあ、俺が明日までに武器の注文をしたらお前はどうするんだ?そんなフラフラで仕事をしたら怪我をしても知らんぞ?それでも、お前はそれを続けるのか?」

「それは、旦那がそう命じるのなら俺は命がけで仕上げるさ」

「馬鹿な事を!お前の武器を作る工程で、鉄を熱して叩く作業があるだろ?もし間違って、手を叩いたらどうなると思っているんだ?」

「なっ!何で旦那が、その工程作業を知っているんだ!」

「いいか?大体の刀の工程作業は俺の頭の中にも入っている。細かいところまではわからんけどな。しかし、そんな事はどうでもいい。鍛冶師は危険を伴う作業だ!」

「そ、それは……」

「もし、これ以上俺の言う事が聞けないと言うのなら、この個人工房は閉鎖だ。そして、ノーザンは㋪美研の鍛冶工房でみんなと一緒に作業をしてもらう」

「ちょっと待ってくれ!だったら、俺のレシピはどうなる?」

「そんな心配はしなくていい。お前はみんなと一緒に鋳型をしてくれたらいいよ。それに鋳型を馬鹿にするなよ?その道を究めた生産者はまだいないんだからな?」

 ヒロトシの言うことはもっともだった。今は研磨を頑張ってくれているガイン達も元は鍛冶師であり、相当の腕を持っているが、今だ鍛冶スキルは4レベルなのだ。
 究めると言うのは5レベルになると言う事で、5レベルになっても職人の道には終わりがないのである。

「うっ……」

「ノーザン、一つ言っておくぞ?お前は長い月日をかけて一人で刀を作った。それは立派だが、自分だけと思ったら駄目だ。職人はそこがゴールじゃないんだぞ?そこからが長いんだ」

「旦那は、刀の作り方を知っているのか?」

「細かいところまでは知らないと言っただろ?しかし、お前が無茶をするならそんな技術は止めておけ。長続きなんか絶対しないからな」

「そんな事は……」

「そう思うのならそうして続けてみろ。俺はもう何も言わないし、しかしこちらの指示には絶対従ってもらうぞ?いいな?」

「ああ!任せろ!俺はこのぐらいへでもねえぜ」

「じゃあ、遠慮なく三日後また俺はここに来る。その時までにダガー2本、ショートソード2本、ロングソード1本用意しておいてくれ」

「旦那!それはあまりに無茶だ。ダガー2本が精一杯だぜ?」

「いや、刃は砥がなくていい。砥ぎはこっちでやるからな。お前は刃の部分だけをしてくれれば大丈夫だ」

 ヒロトシは、ノーザンに焼き入れまでの注文をしたのだった。それならば普通に仕上げれると思ったからだ。

「それならば大丈夫だ。任せてくれ」

「絶対に無理はするなよ?もし怪我をしたら、俺はお前を許さんからな」

 そして、ヒロトシはここでの作業を済ませて、サトウキビを持ってミトンの町に帰った。その際、屋敷の人間にノーザンの事を注意していてほしいと頼むのだった。

「ご主人様……ノーザンさんは人の言う事を聞くとはおもえないのですが?」

「それで、仕事終わりは何時だったんだ?」

「そうですね……夜中の3時になるときもありましたよ。あまりに無理をするので、ミルデンスが止めたことがあったのですが……」

「そ、そうか……じゃあ、今回はノーザンのやりたいようにやらせてくれ。そして、大変だと思うが次、俺が来る三日間だけはちょくちょく工房を確認だけしておいてくれ。このヒールポーションを渡しておくからよろしく頼むな」

「わかりました」

 そして、ヒロトシは心配をしながら、ミトンの町へと帰還したのだった。ミトンの町に帰ったヒロトシは、ノーザンの事が心配でそわそわしていた。

「旦那様どうかしたのですか?」

「セバスか?ちょっと心配事があってな」

「シュガー村で何かあったのですか?」

「ノーザンの奴がな。無理をして、作業をしているみたいなんだ。やっぱ一人で作業をさせるのは間違っていたかなあと思ってな……」

「まあ、こういっては何ですが我々は旦那様の奴隷ですからね。こういう生活が本当はおかしいんですよ。我々はそれに甘えているような感じですから、新人であるノーザンの働き方がある意味正解なんですよ」

「だが、それじゃ怪我をするし、本当の能力が出せないだろ?」

「そう思ってくれるのは旦那様だけですよ。奴隷は普通使い潰すのが当たり前の世の中ですからね」

「それじゃ、意味が無いだろ?」

「ええ。わたし達はもう、旦那様の考えが分かっていますからね。私共がこんな事を言うのはおかしいとは思いますが、私達もその意見に賛成です」

「今度、俺がシュガー村に行った時に、ノーザンが怪我をしていなければいいんだけどな」

「まあ、その時はその時ですよ」

「なんか冷たい言い方だな」

「私達は、旦那様のやることに間違いはないと信じていますからね。どういう事になっても、旦那様のやることが正解ですよ」

「それはそれでどうかと思うんだが……」

「私共は旦那様の奴隷ですからね。間違いでも正解と思いますよ。まあ、今まで間違いという事はなかったですけどね」

 セバスはそう言って、ヒロトシにお茶を淹れたのだった。それは、セバスがヒロトシに全幅の信頼を寄せているのが分かる一面だった。



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