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第4章 魔道スキルと研磨スキル

11話 事後報告

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 総帥のノアは敗残の兵だった。数年がかりで準備した計画が水の泡に消えたのだった。

「ち、ちくしょう!何なのだあ奴は!まさかあれほどまでに戦闘能力があったのか……」

 ノアは、ヒロトシの戦闘能力に驚愕し夜の森をひたすら北に向けて走ったのだった。そして、ヒロトシは北の森からマインを救いだし、ミトンの町へと帰ってきた。しかし、城門はまだ解放されておらず、待合広場に向かった。

「ヒ、ヒロトシ様?なんでこんなところに?」

 待合広場には日が暮れて町に入れなかった人間がその日野宿をする場所で、こうして衛兵が守ってくれている。その為、こうして交替でこの場所を護衛してくれているのだ。

「あっ……いや、ちょっとな」

「ちょっとってどういう事ですか?それにその素巻きになった二人は?それと、その女性はヒロトシ様の奴隷では見たことがありませんね」

 ヒロトシは、観念して先ほどまでの事を説明した。そして、モミジは闇ギルドからの脱走者として説明。そして、今から自分の奴隷になる事を承諾させて、素巻きになっているのは犯罪奴隷として自分が引き取ることを説明したのだった。

「また闇ギルドが?」

「だけど、今度は俺を直接ターゲットにしてきたんだ。マインは先ほどまで誘拐されていて、今さっき救って帰って来たんだ」

「そんな無茶をしないでください!何で衛兵に助けを呼ばないのですか?」

「今回は、俺を狙って仕掛けてきたんだ。俺だけの方が行動しやすかったからな」

「しかし……」

「現に無事に帰って来たんだ。文句はないだろ?」

 ヒロトシにそう言われては、衛兵達はもう何も言えなくなってしまった。そして、太陽が昇り城門が開き、早速この事を衛兵に報告。そして、アサシンや盗賊の死体を提出したのだった。

 その死体の中には、有名な盗賊やアサシンがいて報奨金が懸けられていた者もいた。
 そして、シアンとセレンについては幻のアサシンとも言われていた。その2人は当然処刑にされるほどの者だったが、ヒロトシが捕らえてきたので処分はヒロトシに任される事になる。
 衛兵に突き出せば、王国に送られ斬首刑にされる事になる。そして、奴隷に落す事も可能であり、売ればとんでもない金額となる。しかし、ヒロトシはそんな危険な人物を奴隷商に売れば、闇ギルドの人間が二人を買い戻す可能性がある為、ヒロトシが身請けすることにしていた。

 その日の昼、シルフォードが㋪美研に飛び込んできた。

「ヒロトシ君はどうした?」

「領主様。どうかなさったのですか?」

「今聞いたのだ!昨晩、ヒロトシ君が町を抜け出し、また闇ギルドと対決したとな。それでヒロトシ君は大丈夫なのだろうな?」

「はい。ご主人様は大丈夫です。今朝お帰りになられ、今はお休みになっています」

「そ、そうか……それで、闇ギルドはどうなったのだ?」

「それは、わたし達にもわかりません。ご主人様は色んな手続きをして、やっとお休みになったばかりですので、ご主人様から後日報告があると思いますので、今はご遠慮して頂けますか?」

「わ、分かった……しかし、本当にヒロトシ君は無事なのであろうな?」

「それは大丈夫です」

 そう言って、シルフォードは屋敷に渋々帰っていったのだ。本来こんな事はあり得ない事だが、これもヒロトシの地位の高さ故にできる事であった。1代限りの大豪商伯の地位だが、本来はシルフォードの方が地位は上である。
 しかし、今までミトンの町を救ってきた英雄と言う実績と国王と殿下、そして辺境伯の御令嬢の友人となれば、シルフォードは引く事しか出来なかった。

 そして、シアンとセレンは衛兵にアサシン達の遺体を提出した後に奴隷商店で奴隷契約を結ばれる事となった。

 その経緯は最初2人は、総帥が死んだと思い込んでいて、自分達も後を追う形で処刑を望んでいたが、ヒロトシが総帥は死んでいない事を説明し、二人を置いて逃げたことを言った。

「「総帥は、わたし達を置いて逃げるようなお人ではない!」」

「うん。素晴らしい忠誠心だな」

「「当たり前です」」

「だけど、これを見てもそう言えるのかな?」

 ヒロトシは総帥の遺体の仮面をはいだ。するとそこにはノアの顔ではなく上級アサシンの顔があった。これは親衛隊の二人だからわかる事だった。ノアは二人の前では素顔を見せていたからだ。

「「ま、まさか!」」

「これが何よりの証拠だよな?お前たち二人も親衛隊と言われたが、結局は切り捨てられたんだよ」

「「そんな……総帥がわたし達まで切り捨てるだなんて」」

「このまま処刑されるのは忍びない。どうだ今度は俺の奴隷になって俺の役に立て!お前達は処刑されるのはあまりにもったいない」

「私達にそれを拒否することはできないのでしょ?」

 シアンの言う通りだった。ヒロトシが奴隷契約をすると言えばそれに従う事になる。処刑にしてくれと言っても無駄だったのだ。

「どうしても俺の奴隷になるのは嫌か?」

「いやだと言ったら?」

「じゃあしょうがない。このまま君達は衛兵に引き渡す事にするよ。そうすれば、君達は王国法により後日処刑される事になるよ」

「本当にそうしてくれるのですか?」

「君達が俺の奴隷になるのが嫌だと言うのならしょうがないよ。でも、本当にそれでいいのか?」

 まさかの、自分達の言う事が通るとは思わなかったのだ。そして、敵だった者の意見を聞いてくれたと言う事が二人には新鮮だったようで、2人はお互いを見つめ合った。

「「わかりました。わたし達の命ヒロトシ様の為に使いましょう」」

「はっ⁉いきなりどうしたんだ?」

「総帥に裏切られようとは思いもしませんでした」
「しかし、貴方はわたし達の意見を尊重してくれた」
「だったら、それに答えようとおもいます」

「本当にそれでいいのか?」

「わたし達は闇ギルドに攫われて、必死で役に立とうと思い生き抜いてきました。そして、総帥に認められ、やっと今の地位についたのに、まさか切り捨てられるとは思いもしませんでした」
「ならば、このままわたし達を切り捨てたことを後悔させてやります」

「あっ!ちょっと待った。俺は君達に復讐してもらうつもりはないよ」

「「えっ?」」

「たしかに、闇ギルドの存在は厄介だ。しかし、こちらから何かするつもりは全くない。向こうから何かしてきた場合の自衛のみだ」

「本当にそれでいいのですか?」
「だったら私達は何のために?」

「君達には、これからは暗殺や犯罪のないところで役に立ってもらう」

「そんな事は今までやったことはないのですが……」

「やったことが無いのなら、無理と決めつける必要はないだろ?」

「「それはそうですが……」」

「まあ、悩むぐらいならやってみたらどうだ?俺はお前達を売る事は絶対にしないと約束するぞ?」

「「本当ですか?」」

 その疑問にはマインが答えた。今まで、奴隷になった人間の事を詳しく説明したのだった。その説明にシアンとセレンは納得したようだ。これも、闇ギルドではヒロトシが奴隷達を大切に扱っていることが、情報として伝わっていたからだ。

 そして、ミトンの町に着いたらすぐに奴隷商店に行き、モミジとシアンとセレンの3人は、ヒロトシと奴隷契約を結んだのだった。

 そして、ヒロトシはモミジに話を聞いていた。

「モミジちょっといいか?」

 モミジは、㋪美研で怪しい者がいないか護衛の任務に就いていた。そして、ヒロトシに呼ばれて屋敷のロビーで話していた。

「本当にここで㋪の護衛をやるつもりなのか?」

「当たり前じゃないですか!」

「お前は自分の姉と一緒に生活はしなくてもいいのか?」

「あたしは、もうご主人様の物です。姉は平民ですよね?」

「まあ、奴隷ではないな。しかし、お前達は姉妹でそれは変わらないだろ?」

「それはそうですが、奴隷が主と離れる事はないですよ。つまり、あたしがシュガー村でしたっけ?そちらで生活するのはあり得ない事です」

「そ、そうか……」

「それに、あたしが奴隷になった事も言わなくても結構です」

「それはいくらなんでもないんじゃないのか?」

「大丈夫です!それに姉にどんな顔をして会えばいいか分からないですし……今更あたしが、姉の生活に参加しても困るだけですよ」

「そんな事はないと思うけどな」

 理由は分からないが、モミジは姉であるカエデと接触を拒んでいた。嫌がっているのを無理やり会わせるのも違うと思い、ヒロトシはモミジをシュガー村には連れて行かなかった。

 そして、やっと㋪では今回の事が落ち着く事になり、ヒロトシはシルフォードの屋敷に出向く事にした。

「やっと、訪問したね」

「遅くなって申し訳ありません」

「本当に君と言う人間は!無茶をし過ぎるぞ。何回も言うが、君はもうこの町だけではなく国にとって大事な人間なんだ」

「そう言って頂けるのはありがたいと思います」

「だから、本当にあんな無茶な事はもうやめてほしい」

「それは無理ですよ」

「何を言っておる!君に何かあった場合、どうなるか分かっているのかい?」

「なんとなくわかります」

「だったら!」

「しかし、それは王国が勝手にやる事であって、俺には関係はありませんよね?」

「何てことを!」

「まあ、聞いて下さいよ。王国に重要と言って頂き有り難いと思っています」

「だったら!もっと自分という立場をだな!」

「しかし、俺は自分の家族が危ない目に遭ったなら見過ごすわけには」

「だが、それは!」

「奴隷だと言わないでくださいよ!その言葉を言ったらいくらシルフォード様と言えど、俺は本気で怒りますよ」

「悪かった……失言だった。しかしだね、今回はヒロトシ君を直接ターゲットにしたみたいじゃないか?」

「俺としては、そっちの方がやりやすかったですけどね」

「馬鹿な事を!それならそれで、まずは衛兵に被害届を出すのが筋ではないか?」

「それで、今回の様にすぐにマインを救いだす事は可能でしたか?」

「それは、衛兵の方でもしっかり捜索を!」

「それは当然でしょ?しかし、俺が言っているのはそうじゃありません。捜索が遅れて、マインが犠牲になっては意味が無いと言っているのですよ」

「それはそうだが……」

「それに今回は、衛兵に言わなくて俺は良かったとも思っているのです」

「はぁあ?それはどういうことだね?」

「今回、俺の奴隷になった人間が2人います」

「それは話に聞いているよ……なんでも、闇ギルドの幻と言われているアサシンだった人間みたいだね」

「ええ。今まで存在すると言う噂はありましたが、その姿を見たと言う情報は全くなかった二人です」

「ああ……まさか本当に実在したとは……」

「姿を見た人間は必ず処分されていたらしいので、その存在はでたらめだと言う噂も出ていたぐらいですからね」

「しかし、そんなアサシンが出てくるだなんて……」

「いえ、俺はそんな事を言っているんじゃありませんよ。今回あの二人は下っ端として切り捨てられたのです。だから、俺は2人を奴隷にして引取ったのですよ」

「馬鹿な事を!そんな凄腕のアサシンが切り捨てられただと?」

「そればかりか、今回俺の討伐したのは魔王だったのですよ」

 魔王と聞き、シルフォードは開いた口が塞がらなかった。

「……」

「そんな、闇ギルドに対して衛兵が突っ込んだとしてどうなっていたと思いますか?」

「まさか、そんな……魔王だなんて!それでその魔王はどうしたと言うのだ?」

「当然始末しましたよ」

「ばかな、魔王と言うのは1000年前に実在したが、それでも勇者がやっとの思いで討伐し、世の中が平和になったとされるものだぞ?それを一晩でそれもたった一人で……」

「とにかく、討伐はしたので安心してください。それに、多分もう闇ギルドに関しては心配はいりませんよ」

「何でそんな事が?闇ギルドは魔王を召還できるほどの技術があるのではないのか?安心する要素はどこにもないと思うのだが?」

「今回m俺が魔王より実力があると示したからですよ。そんな相手に喧嘩を吹っ掛けようとしますか?」

「た、確かに」

「まあ、心配は90%しなくてもいいですよ」

 ヒロトシは、呑気にシルフォードに説明をしていた。



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