上 下
99 / 347
第3章 新しい研磨

24話 想定外の防御

しおりを挟む
 その頃、作戦本部ではシルフォード達役員は、戦況を見守っていた。

「戦況はどうなっている?」

「何も問題はありません!そればかりか、スタンピードは魔道砲になすすべもなく浄化されています」

「浄化とはどういう事だ?」

 兵士が説明した事に、シルフォード達は驚いていた。前回のスタンピードの時より、魔道砲の威力や射程が桁違いに凄い事と、対アンデット対策が取られていたことに開いた口が塞がらなかった。

「そこまで、ヒロトシ君は考えていたのか?」

「ええ!今回アンデットの後始末はしなくても大丈夫です。しかし、闇ギルドも戦況を変えてデーモンを召還していますが、それに対しても想定内だったようで、もう一台の魔道砲はアンデット以外の魔物に対応!デーモンもミトンの町には近づけない状態です」

「そ、そうか……本当にミトンの町はヒロトシ君がいて良かったと思うよ」

「はい。我々もヒロトシ様に尊敬の念を抱いております」

「そうだな……それで、ヒロトシ君が対応している南門はどうなっている」

「そ、それが……我々には信じられないのですが……」

「どうした?まさか、やられたとは言わぬだろうな?」

 その頃、南門では異次元の戦いが繰り広げられていた。その様子を見ていた、見張り台の兵士はただその戦いを呆然と見ていたのだ。

「あれが……ヒロトシ様の奴隷なのか……」

 兵士は当然、魔道砲を使いドラゴンゾンビを討伐するものだと思っていたのだが、魔道砲はタダの置物となっていた。
 ドラゴンゾンビが確認できたと同時に、ミルデンス達は自分の武器を構えて門の外に出て行ってしまったのだ。

「ヒロトシ様!いったいなにを?」

「まあ、いいからゆっくり高みの見物と行こうじゃないか。ここはあいつらに任せておいて大丈夫だよ」

 ヒロトシが余裕なのは、ミルデンス達の装備にあった。レベルの今や100に届こうかという実力に加えて、オリハルコン製の装備にあった。
 ミトンの町では、兵士や冒険者達はミスリル製の装備が通常になりつつあったが、ミルデンスやミランダの装備はオリハルコンである。その為、ヒロトシの研磨で+5装備になっていた。オリハルコンと言うレア鉱石では、+5の強化まで磨けるのである。

「やはりこの装備は凄いわね!パワーストライク」

「ホントねトリプルアタック!」

『ぐおおおおおおおおおおおおおお!』

 ミランダたちの一撃は、ドラゴンゾンビに咆哮を上げさせていた。ドラゴンゾンビの一撃はミルデンスには全く聞いてもいないようで、盾で薙ぎ払っていた。

「馬鹿な……あんな巨体の一撃を建てで薙ぎ払える物なのか……」

 見張り台の兵士は、自分の目をこすりながら異次元のような戦いをただ見ているしかなかった。城壁の上には、万が一の為にシルフォードがよこした一部隊がいたが、ミルデンス達の戦いに歓声を上げていた。
 この事は、常時作戦本部に報告されて、本部でも信じられないとばかり驚かれていた。

「ホーリーソード!」

 ミルデンスは、レベルが上がり今やヒロトシを主君と崇め、剣の実力を高め遂にパラディンとなっていた。

 その時、生まれたスキルがホーリーソードだった。闇属性に対して2倍のダメージを与えるこのスキルは、ドラゴンゾンビにとって非常に有効な攻撃方法である。

 そして、あれほど脅威と思われていたドラゴンゾンビは、ミルデンス達護衛メンバー総勢20名の手に落ちた。

『ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

「「「「「やった!」」」」」」

「「「「「す、すげえええ!」」」」」」
「本当にあの奴隷達だけでドラゴンゾンビをやっちまったぜ」

 討伐したのを確認した時、城門の兵士達は歓声を上げた。ヒロトシはすぐにミルデンス達の側に行き、労いの言葉を掛けた。

「みんなよくやった!ご苦労様」

「主君。勿体ない言葉、ありがとうございます。我々はこのまま二手に分かれて東西門に向かいます」

「ああ!ドラゴンゾンビを倒したお前達なら心配はしない!思いっきり暴れてこい!」

「「「「「はっ!」」」」」
「「「「「はい!」」」」」

 そういって、ミルデンス達は二手に分かれてそれぞれの方向に走って向かった。ヒロトシは、ドラゴンゾンビの遺体をインベントリに収納して城門に帰っていった。



 それを苦々しく見ていたのは、ネクロマンサー達だった。

「どうなっているんだ!」
「何故ドラゴンゾンビがこうも簡単に討伐されるのだ!」
「し、信じられん……」
「しかし、このままではこの計画は……」
「我々が敗北するとでもいうのか?」
「馬鹿な……そんな事あり得ない……」

 ネクロマンサー達は、現実が受け入れることが出来なかった。ドラゴンゾンビがやられて、西門と東門のアンデットとデーモン達が、ミルデンス達によってドンドン討伐されていく現実に何もできなかった。

 ミルデンス達は、スラッシュと言う初級スキルで剣気を飛ばし、一撃で何百体と言うアンデットを討伐していき、悪魔族のレジスト能力も関係なく討伐していくのである。

 城門で見ていた兵士達は、唖然としていた。ミルデンス達は言ってみれば動く魔道砲と言っても過言ではなかったのだ。
 そして、ドンドンアンデット達は後退さして、とうとうスタンピードをミトンの町から確認できなくなってしまった。

 東門と西門では歓声が上がり、お祭り騒ぎになっていた。スタンピードを後退させた、ミルデンス達はとうとう召還していたリッチロードを発見した。
 ドラゴンゾンビを討伐したミルデンス達にとって、リッチロードは脅威ではなく、あっという間に討伐してしまった。その場には、リッチロードが身に着けていた装備品と遺体が残ったが、すぐにマジックバックに収納して、北門に向かった。

 ミランダ達も、同じようにリッチロードを討伐し北門に向かったのだ。

 そして、東西からミルデンス達が北門に迫りくるアンデットとデーモンを押さえ始めた。

「なんだ?あれが奴隷の戦い方なのか?」

 北門を守っていた王国騎士団は、ミルデンス達の戦い方を見て愕然としていた。どう考えても自分達より数段上の戦い方であり、王国騎士団長より実力が上だとはっきりわかったのだ。

 その一撃でアンデットが消滅していくのである。ミルデンスの剣はホーリーソードであり、その状態でスラッシュを放っているのである。
 スラッシュ自体に、聖属性の適性がありその剣気がアンデットにあたると消滅していくのだ。デーモンも又、消滅はしないもののダメージ自体は貫通しており、その剣気で手足や蝙蝠のような翼が切断されて、戦闘不能になっていった。

「すげぇ……」
「あの戦闘力団長と変わらないんじゃないのか?」
「馬鹿な、そんなはず……」
「いや、あれは団長以上じゃないか?」
「何を言っているそんなわけあるか!」
「よく見てみろよ……スタンピードを抑え込んでいるじゃないか……」
「ほ、ホントだ……スタンピードがドンドン後退している……」
「あんなの人間業じゃない」

 その後景を見て、ミルデンス達の実力は王国騎士団長より上だと認めざるを得なかった。それも、ミルデンスだけじゃなく、ミランダやアイリーン達、他の奴隷達もそれと同等の実力を有していたのを認めるしかなかった。

 そして、ミルデンス達はドンドンアンデット達を後退させていき、とうとう、エルダーリッチとリッチロードを確認することができた。

「やっと見つけたぞ!」
「覚悟しなさい!」

『バカな……我々の召喚した魔物を……』

「馬鹿の一つ覚えで数で侵略してももう無駄よ!」

『うるさい!我々がこのままやられるわけにはいかんのだ』

「何がいかんのよ!貴方達はもう終わりよ!」

 ミランダが、剣気を飛ばした。しかし、そのスラッシュはエルダーリッチに当たった瞬間消滅したのだ。

『かかかかかかか!そんな初級技が我に効くわけあるまい!これでも食らえ!』

 エルダーリッチの手から青白い炎が発射された。それが、ミランダに命中すると、ガクッと力が抜けたのである。

「な、何……力が入らない……」

『かかかかかかか!掛かったようだな!』

 その瞬間、リッチロードからミランダにファイヤーボールが発射された。

「きゃあああああ!」

 ミランダは、エルダーリッチにカースを掛けられ、ステータスがぐっと下がった所に、リッチロードからファイヤーボールを当てられた。その2重攻撃にミランダは瀕死状態に陥った。

「ミランダ!」

「アイリーン!ミランダを保護しろ!」

 ミルデンスは、アイリーンに指示を出し攻撃に移った。

「くらえ!ホーリーソード!」

 ミルデンスの剣は確かに、エルダーリッチに命中したはずだった。アンデットであるエルダーリッチは本来なら消滅するはずなのに、ミルデンスの剣を弾き飛ばしたのである。

『かかかかかか!お前の剣など効かぬ』

 ガンと言う音が、北の森に鳴り響き、ミルデンスは岩を殴ったかのように手がしびれていた。

「どういう事だ……」

 周りを見ると、アイリやカノンたちもリッチロードに攻撃したが、同じように岩を殴った様に剣を弾かれていたのだった。



しおりを挟む

処理中です...