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第2章 研磨という技術

32話 闇ギルドの足掻き

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 ヒロトシは闇ギルドに容赦はしなかった。逃げ惑う盗賊やアサシンは恐怖で顔が歪み、全員が逃走し始めた。

「逃げんじゃねえ!逃げた者は後日処刑だ!わかったか!」

「ふ、ふ、ふざけんな!」
「あんな奴にどう立ち向かえというのよ!」
「俺は自分の命の方が大事だ!」
「「「「そうだ!」」」」」
「そんなに言うのならお前達幹部も立ち向かえ!」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」

 ヒロトシの圧倒的な戦闘力の前ではなすすべもなく、逃げ出す人間が続出していた。逃げ惑う闇ギルドに対して、ヒロトシは怒りをあらわにして怒鳴りつけた。

「お前達は百害あって一利なしだ!逃げ出せると思うな!」

「貴様ぁ~~~!言わしておけばいい気になりおって!」

 ヒロトシの言い草に、ガーランドがヒロトシに剣を突きたてた。その剣をヒロトシは余裕で躱し、その首に剣を突きつけた。

「ぐっ……」

「お前は、ミトン支部の唯一の生き残りだったよね?」

「なっ!なぜそれを……」

「当たり前だろ?前は、俺がお前だけをわざと逃がしたんだからさ」

「何だと……何故、そんな事を……」

「そりゃそうだよ。この町の闇ギルドが壊滅した事を報せる使い走りがいるだろ?」

「この俺を使い走りだと……」

 ヒロトシに使い走りと言われて。ガーランドはプライドが傷つき奥歯を噛みしめた。

「なんだ?使い走りと言われて悔しいのかい?だが、俺の計画はお前のおかげで、ミトンの町から闇ギルドを排除する事が出来るよ」

「闇ギルドを排除だと?」

「このアジトにいる犯罪者の人数はどう考えても、前のミトン支部と比較しても多すぎる。俺に対抗する為、周辺から犯罪者を集めたんだろ?」

「な、何故それを……」

「そうなればここにいる人間を始末すれば、闇ギルドの勢力がかなり縮小するって事だ。そればかりか、この町は闇ギルドが手の出せない町と認識させる事が出来るからな」

「ぐっ……」

 ヒロトシは、ガーランドの首に剣を突きつけ、自分の計画を説明した。それを聞いていた闇ギルドの幹部達はヒロトシに背を向けて逃げ出した。

「ば、馬鹿!今、逃げだしたら……」

「ぎゃあああ!」
「ぐはっ!」
「うぐっ……」

 ヒロトシは、闇ギルドの幹部達に容赦なく魔法を撃ちこんだ。そして、幹部全員ファイヤーアローの餌食となったのだ。

「お前はガーランドと言ったよね?」

「なぜ……俺の名前を知っている!」

「俺の目は特別製でね。死んでいくお前に説明しても無駄だが、冥途の土産に教えてやるよ。俺の目は神眼と言う、ありとあらゆるものを鑑定出来るんだ」

「なるほど……それで、領主の正体がばれて、ここに乗り込んで来たのか?」

「そういうこと!まさかお前達が、ミトンの町を乗っ取ろうしたのは少し焦ったけどな。まあ、おおむね俺の計画通り動いてくれて大成功だよ」

 ガーランドは、ヒロトシから説明を受けて自分の命はこれまでと悟り、大声で笑うしかなかった。

「わはははは!恐れ入ったよ。まさかこんなガキ一人に、闇ギルドがここまでコケにされるとはな……」

「遺言はそれでいいのか?」

 ガーランドは、悔しそうに両目を閉じ、その場に膝から力が抜けたように地に膝がついた。ヒロトシはガーランドの首を刎ね、この場にいる人間を全て始末したのだった。
 そして、運よく出口に向かって逃げる事が出来た盗賊やアサシン達は、当然洞窟から出る事が出来ずに出入口ですし詰め状態でパニックを起こしていた。

「何で出れねえんだ!」
「早く行けよ!あいつが来ちまうだろうが!」
「うるせええ!ここに見えねえ壁があるんだよ!」

 盗賊達は、必死で逃げようと見えない壁を引っかいたり剣で斬りつけたり、必死の形相でここから逃げ出そうとしていた。

「お前等!ここから逃げれないと言っただろ?」

「「「「「ひっ!」」」」」」

 その声に、盗賊達が洞窟の奥を見ると、少年の姿が見えて洞窟の出入り口に、我先に逃げようと人をかき分けて、脱出を試みようとしたのだ。

「ど、どけええ!」
「俺が助かるんだあああ!」
「早く行けよ!殺されちまうだろうが!」
「ぐわああああ!押すんじゃねえ!潰れるだろうが!」

 洞窟の出入り口は阿鼻叫喚となった。洞窟の外からみると、盗賊達がガラスに押し付けられた様に顔が変形している者が多数いて、滑稽だったのは言うまでもなかった。

「た、たのむ!もう悪い事はしねえ……だから命だけは!」
「俺は奴隷に落ちて俺に仕える!」
「あたしもあんたの性奴隷になるよ。だから……」

「お前達は、今まで困っている人を助けたことがあるのか?そうやって命乞いをした人間に、情けを一度だってかけたことがあったのか?」

「「「「「「……」」」」」」

「まあ、お前達を俺の奴隷にするなんて御免だ!今度、生まれてくるときは善人に生まれてこいよ!」

「「「「「「や、やめろおおおおおおお!」」」」」」」
「「「「「「「いやあああ!」」」」」」」

 ヒロトシの周辺には、ファイヤーアローが無数に浮かんだのだった。それを見た盗賊達は恐怖で失禁したり、大声で絶叫したり気絶してしまった。
 そして、無数に浮かんだファイヤーアローが発射され、闇ギルドミトン支部は壊滅してしまったのだった。

「終わったな……いや、まだシーズの奴がのうのうとしていたな」

 ヒロトシは、このアジトに闇ギルドの人間はいないか【サーチ】をして確認した。そして、生き残っているのはシルフォードと近隣の村から攫われた女性が6人だけだった。
 そして、ヒロトシはシルフォードが捕らわれている牢屋に向かったのである。

 シルフォードは、あれほど騒がしかった洞窟が静かになって緊張が走った。

「まさか、ヒロトシ君が負けたのか?」

「「「「「やっぱり……」」」」」
「あの少年一人じゃ……」

 シルフォード達は、こんな短時間で闇ギルドを何とかできるとは思っておらず、ヒロトシが負けたと思い込んでいた。
 すると、こちらに向かってくる足音が聞こえてきて、シルフォード達は気落ちしてガックリ項垂れていた。

「領主様?どうかしたのですか?」

 そこには、いつもと変わらないヒロトシが立っていた。シルフォードは驚き鉄格子を掴んだ。そして、女性達は目を見開いて言葉が出せずにいた。

「ヒロトシ君、無事だったのか?」

「何言ってんですか?俺はスタンピードを止めた男ですよ。闇ギルドの支部なんかに遅れを取ることなんてしませんよ」

「本当に闇ギルドは壊滅したのか?」

「まあ、この町にいた人間だけですけどね。闇ギルドの本部までは」

「君って人間はとんでもないな!」

「「「「「本当にすごいです」」」」」」

 シルフォードと女性達は、驚いて笑顔となっていた。そして、ヒロトシはシルフォードにアジトにあった契約書を見せたのだった。

「領主様……それより大変なことがあります」

「ああ……分かっている。早く私をミトンの町に!」

「その前に、この書類を見てください」

 ヒロトシは、ミトンの町占領計画書を見せたのだった。

「なんだこれは!それに、裏で糸を引いていたのはフォーガンだと⁉」

「今では、アンジェリカ様とハンス様の婚約は解消されて、フォーゼン様との婚約をさせられているようです。そして、合法的にミトンの町はフォーゼン様が、町の第一権力者となる計画だったようです」

「なんてことを……」

「今、町ではシルフォード様に化けた闇ギルドの人間が、奥方様とアンジェリカ様を、部屋に閉じ込めているそうです。それをなんとか救おうとハンス様が動いてくれて、俺に報せてくれたんですよ」

「お、おのれ!フォーガンの奴め。私を裏切るとは目に物を見せてやるわ」

「領主様……」

「ヒロトシ君、早く町に連れて行ってくれ!」

 シルフォードは、闇ギルドの計画の全貌を知って、こんなところにいつまでもいられないと、ヒロトシを急かしたのだった。

「領主様。ちょっと落ち着いて下さい!そんなに慌てなくとも大丈夫です。まずは落ち着いて下さい」

「そんな事、言われなくても分かっている。それより我妻と娘は!」

「大丈夫ですってば。町を出るとき門番の兵士達に忠告を入れておきましたし、兵士の皆さんもおかしな事が頻発していて、注意をしてくれています」

「そ、そうなのか?」

「ええ。だから、町に帰ったらまずは兵士達に、フォーガンを捕らえる指示を出してほしいのです。そして、そのまま俺と一緒に屋敷へと直行してください!」

「わかった」

「屋敷の門番をしている兵士達は、屋敷の中にいる人間が本当のシルフォード様と思っているので、屋敷に入れてもらえないので、シルフォード様と一緒に行けば俺も入れてもらえるので、そこからは俺が闇ギルドを討伐します」

 ヒロトシは、ミトンの町に戻った時の計画をシルフォードに説明をした。町に戻ってからはスピード勝負で、シルフォードに化けたシーズを捕らえないと、奥方とアンジェリカの身が危ないからだ。

 そして、ヒロトシ達は計画をじっくり練ってから、まだ薄暗いうちにヒロトシ達は、ミトンの町に帰還したのだった。

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