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第2章 研磨という技術
1話 女神とスキルの奥深さ
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ガインとブロッガンが、研磨を教えてもらう様になって、1年という時間が経ち、なんとかヘアラインの形になってきていた。しかし、ヒロトシから見たらまだまだであり、この調子だと新しい商品を二人に任せるのはまだまだ程遠いものだった。
そんな中、ヒロトシは教会に来ていた。闇ギルドを壊滅させて町には平和が保たれていた。それを少しでも長く続く様に神頼みとは言わないが、1年前からヒロトシの朝の日課となっていたのだった。
「ヒロトシ君、おはようございます。今日も神へのお祈りに来たのですか?」
「シスターおはようございます。ああ!なんか習慣となってね。朝、教会にこないと変な感じになって来たよ」
「女神様は、そんなあなたを見ておいでですよ」
「じゃあ、ちょっとお祈りしてくるよ」
「はい!今日一日貴方に幸福が訪れますように」
シスターは、ヒロトシが大聖堂に入る時に笑顔だった。成人前の男の子がこんなにも熱心に、教会に通ってくれるのが嬉しかったのだ。
そして、ヒロトシは大聖堂とはいうが、ここは小さな教会で20人も人が入れば、満員になるような小さな教会だった。そんな教会だが、一日に来る人間は、ヒロトシと町の老人が3人来れば多い方であるこの教会の雰囲気が、とても心地よかったのだ。
ヒロトシは、教会の大聖堂のステンドグラスをバックに祀られている女神神像に、片足をついて静かに目を閉じてお祈りをし始めた。
「ヒロトシさん……ヒロトシさん」
いきなり名前を呼ばれたヒロトシは、ゆっくりと目を開けた。すると、そこは草原で花が咲き乱れていて、心地よい暖かな風がふいていて、女神ミレーヌが目の前にいたのだった。
「へっ?ミレーヌさんか?」
「ヒロトシさん、お久しぶりですね。あれから貴方の事はよく見ていましたよ」
「何で、ミレーヌさんと会う事が出来るんだ?まさか、俺……」
「安心してください。死んではいませんよ」
「そしたらなんで?」
「あなたが、この1年毎朝教会にお祈りしていたおかげで、信仰心というスキルが生えたのですよ」
「そうなのか?」
「はい!その為、こうして会う事が出来るようになったのです」
「って事は、教会関係者は全員、ミレーヌさんと会う事が?」
「他の人は、最低でも信仰心が5レベルにならないと、こうして天界に来る事はできませんよ」
「だったら、俺はなんで?」
「あなたには、私の加護を渡しているではありませんか?そして、ヒロトシさんはステータスのMID(精神力)が高いのです。だから、こうして逢う事が出来たのですよ」
「そ、そっか!また会えることが出来て俺は嬉しいよ。こうして、ちゃんとお礼が言えるんだからな」
「貴方のお祈りはいつも聞いていましたよ。私が原因で、地球での貴方は死んでしまったのですが、こちらに来て幸せそうに生活が出来ていて、私も嬉しく思います」
「いや、やっぱりお礼は言わしてくれよ。俺は、このミストラルに来れて本当に良かったと思っているんだ。最初、ギルドとかには厄介だなあと思ったが、基本良い奴ばかりだしな」
「それは、貴方がちゃんと対応した結果です。私は何もしていませんよ」
「だけど、あのまま地球にいても、俺は親会社の連中にいいように扱われ、人生を終わっていたと思う。それを考えれば研磨という技術で、楽しく生活できているのはミレーヌさんのおかげだよ。本当にありがとう」
ヒロトシは、改めて今の現状を話し、ミレーヌに頭を下げてニッコリ笑ったのだった。
「ヒロトシさんが、元気に明るく生活が出来ているのなら、良かったと思います」
「ああ、こんなに人生が楽しいと感じているのは初めてだよ」
「それで、話は変わりますが……今日は別の要件で、ここに呼んだのです」
「別の要件?」
「ええ、そうです。何でヒロトシさんは、研磨の技術を今まで通り、金属にしか行なわないのですか?」
「どういう事だ?」
「ヒロトシさんの研磨のスキルは、生きているもの以外はどんなものにでも、研磨が出来るものなんですよ」
「えっ⁉そ、それって!」
「ええ!つまり皮の鎧も金属研磨とはやり方は違いますが、ちゃんと磨く事は出来るのですよ?」
「どうやって?」
「地球にも、靴職人という人達がいたのは知っていますよね?例えば、革靴を磨くのは、紙やすりで傷をついたところを慣らし、クリームの研磨剤で布で擦る事で修繕することが出来ます。皮磨きはそのクリームの研磨剤を召還で出せばいいのですよ」
「経験が無いのにそんな事が?」
「スキルが経験ですよ。ヒロトシさんの研磨は有能です。どんな物も磨けると言いましたが、布や食べ物は無理なんですけどね。なにが磨けるのかは、常識の範囲でよろしくお願いします。これからも頑張ってください。しかし、無理はしない様に。マジカルの効果を付与できるのは、ヒロトシさんだけですからね」
「わ、わかったよ。ミレーヌさんありがとな!」
「それと、ここから帰還すればヒロトシさんの魔道スキルも、2レベルになるかと思います。その時、新たな事が出来るようになると思いますので楽しみにしておいてください」
「本当にありがとな。楽しみにしておくよ」
「時間が無くなってきました……名残惜しいですが又、こちらに来れる時を事を楽しみにしてますよ」
「えっ?いつでも来れる訳じゃないのか?」
「それは無理ですね。そんな事をしたら、ヒロトシさんの精神が持ちません。私もそこまでして、ヒロトシさんの精神を削ろうとは思いませんし、又長い時間をかけて精神力が貯まれば、こうして呼び出したいと思います」
「そ、そっか……確かに、普通の人間が天界になんかそう簡単に来れる場所じゃないよな」
「そうですね。ですが、何年かかるか分かりませんが、また会える日を楽しみにしてますよ」
そう言ってミレーヌの姿は、だんだん真っ白な世界に変わっていき、その風景に溶け込むようにフェードアウトしていったのだった。
「ヒロトシ君!」
「な、何だぁぁぁ⁉」
ヒロトシは、自分の肩を揺すぶられていることに慌てたのだった。揺すぶっていたのは教会のシスターだった。
「ヒロトシ君!」
「な、何ですか?」
「貴方、今女神様の啓示があったのでは?」
シスターも信仰力を持っている。その為、教会の聖堂に満ち溢れた神気が、ヒロトシに降り注いでいたことを感じ取っていたのだ。
「確かに、暖かい空気に包まれていたような……」
ヒロトシは、ミレーヌと会っていたことを隠した。天界に行き、女神と会話してきたと言ったら、大騒動になると思ったからだ。
「今まで、女神神像から聖なる光が出て、ヒロトシ君を照らしていたのですよ?」
「そ、そうなんだ?だから、暖かい気持ちになったんだな?」
「何か女神様から、お言葉があったのではありませんか?」
「俺が聖職者なら、言葉が聞けたのかもな?なんか暖かい雰囲気だったのはたしかだけどね」
「そ、そうですか……」
シスターは、ヒロトシの説明に気落ちしてしまった。しかし、ヒロトシはそんな気落ちしなくてもいいんじゃないかと言った。
「シスターが、毎日お祈りしているからこそ、この教会は暖かい雰囲気なんだよ。俺は、町の本当の教会はここだと思っているよ」
「そんな……ここは他の教会より小さくて、女神神像もあんなに小さくて……」
「でも、女神様の気が満ち溢れているって事は、ここに女神様がいるって事だろ?俺は、ここのこの雰囲気にいつも癒されているんだぜ?」
「あ、ありがとうございます」
「まあ、俺はタダの商人だからな。もし、シスターなら言葉がきけたかもしれないな」
「ヒロトシ君……」
「あ、そうそう。今日のお布施です」
「今日一日、貴方に女神様の幸運が降り注ぎますように……」
ヒロトシは、シスターにお布施を渡し、笑顔で帰っていった。
ヒロトシは、屋敷に帰りステータスを開くと、スキルの欄に信仰心が新たに生えていて、魔道のスキルが2レベルとなっていたのだった。
魔道のスキルが2レベルになった事で、ファイヤーボールや強力な魔法を唱えられるようになり、魔力上昇やMP回復上昇率も上がる事になった。
そして、一番驚いたのが魔道具製作という項目が増えていて、ヒロトシは目を見開き驚いたのである。
この魔道具製作は、マジカルアイテムを創り出す事ではなく、風呂の湯沸かし器や魔石を使った電化製品と言った方が分かりやすいと思う。鍛冶屋の炉やパンを焼くような窯などがそうである。
「これは凄い!」
「旦那様、どうかしたのですか?」
朝食をとりながら、ヒロトシはステータスを見ていた。そして、突然大声を出したヒロトシに、セバス達が驚いたのだ。
そんな中、ヒロトシは教会に来ていた。闇ギルドを壊滅させて町には平和が保たれていた。それを少しでも長く続く様に神頼みとは言わないが、1年前からヒロトシの朝の日課となっていたのだった。
「ヒロトシ君、おはようございます。今日も神へのお祈りに来たのですか?」
「シスターおはようございます。ああ!なんか習慣となってね。朝、教会にこないと変な感じになって来たよ」
「女神様は、そんなあなたを見ておいでですよ」
「じゃあ、ちょっとお祈りしてくるよ」
「はい!今日一日貴方に幸福が訪れますように」
シスターは、ヒロトシが大聖堂に入る時に笑顔だった。成人前の男の子がこんなにも熱心に、教会に通ってくれるのが嬉しかったのだ。
そして、ヒロトシは大聖堂とはいうが、ここは小さな教会で20人も人が入れば、満員になるような小さな教会だった。そんな教会だが、一日に来る人間は、ヒロトシと町の老人が3人来れば多い方であるこの教会の雰囲気が、とても心地よかったのだ。
ヒロトシは、教会の大聖堂のステンドグラスをバックに祀られている女神神像に、片足をついて静かに目を閉じてお祈りをし始めた。
「ヒロトシさん……ヒロトシさん」
いきなり名前を呼ばれたヒロトシは、ゆっくりと目を開けた。すると、そこは草原で花が咲き乱れていて、心地よい暖かな風がふいていて、女神ミレーヌが目の前にいたのだった。
「へっ?ミレーヌさんか?」
「ヒロトシさん、お久しぶりですね。あれから貴方の事はよく見ていましたよ」
「何で、ミレーヌさんと会う事が出来るんだ?まさか、俺……」
「安心してください。死んではいませんよ」
「そしたらなんで?」
「あなたが、この1年毎朝教会にお祈りしていたおかげで、信仰心というスキルが生えたのですよ」
「そうなのか?」
「はい!その為、こうして会う事が出来るようになったのです」
「って事は、教会関係者は全員、ミレーヌさんと会う事が?」
「他の人は、最低でも信仰心が5レベルにならないと、こうして天界に来る事はできませんよ」
「だったら、俺はなんで?」
「あなたには、私の加護を渡しているではありませんか?そして、ヒロトシさんはステータスのMID(精神力)が高いのです。だから、こうして逢う事が出来たのですよ」
「そ、そっか!また会えることが出来て俺は嬉しいよ。こうして、ちゃんとお礼が言えるんだからな」
「貴方のお祈りはいつも聞いていましたよ。私が原因で、地球での貴方は死んでしまったのですが、こちらに来て幸せそうに生活が出来ていて、私も嬉しく思います」
「いや、やっぱりお礼は言わしてくれよ。俺は、このミストラルに来れて本当に良かったと思っているんだ。最初、ギルドとかには厄介だなあと思ったが、基本良い奴ばかりだしな」
「それは、貴方がちゃんと対応した結果です。私は何もしていませんよ」
「だけど、あのまま地球にいても、俺は親会社の連中にいいように扱われ、人生を終わっていたと思う。それを考えれば研磨という技術で、楽しく生活できているのはミレーヌさんのおかげだよ。本当にありがとう」
ヒロトシは、改めて今の現状を話し、ミレーヌに頭を下げてニッコリ笑ったのだった。
「ヒロトシさんが、元気に明るく生活が出来ているのなら、良かったと思います」
「ああ、こんなに人生が楽しいと感じているのは初めてだよ」
「それで、話は変わりますが……今日は別の要件で、ここに呼んだのです」
「別の要件?」
「ええ、そうです。何でヒロトシさんは、研磨の技術を今まで通り、金属にしか行なわないのですか?」
「どういう事だ?」
「ヒロトシさんの研磨のスキルは、生きているもの以外はどんなものにでも、研磨が出来るものなんですよ」
「えっ⁉そ、それって!」
「ええ!つまり皮の鎧も金属研磨とはやり方は違いますが、ちゃんと磨く事は出来るのですよ?」
「どうやって?」
「地球にも、靴職人という人達がいたのは知っていますよね?例えば、革靴を磨くのは、紙やすりで傷をついたところを慣らし、クリームの研磨剤で布で擦る事で修繕することが出来ます。皮磨きはそのクリームの研磨剤を召還で出せばいいのですよ」
「経験が無いのにそんな事が?」
「スキルが経験ですよ。ヒロトシさんの研磨は有能です。どんな物も磨けると言いましたが、布や食べ物は無理なんですけどね。なにが磨けるのかは、常識の範囲でよろしくお願いします。これからも頑張ってください。しかし、無理はしない様に。マジカルの効果を付与できるのは、ヒロトシさんだけですからね」
「わ、わかったよ。ミレーヌさんありがとな!」
「それと、ここから帰還すればヒロトシさんの魔道スキルも、2レベルになるかと思います。その時、新たな事が出来るようになると思いますので楽しみにしておいてください」
「本当にありがとな。楽しみにしておくよ」
「時間が無くなってきました……名残惜しいですが又、こちらに来れる時を事を楽しみにしてますよ」
「えっ?いつでも来れる訳じゃないのか?」
「それは無理ですね。そんな事をしたら、ヒロトシさんの精神が持ちません。私もそこまでして、ヒロトシさんの精神を削ろうとは思いませんし、又長い時間をかけて精神力が貯まれば、こうして呼び出したいと思います」
「そ、そっか……確かに、普通の人間が天界になんかそう簡単に来れる場所じゃないよな」
「そうですね。ですが、何年かかるか分かりませんが、また会える日を楽しみにしてますよ」
そう言ってミレーヌの姿は、だんだん真っ白な世界に変わっていき、その風景に溶け込むようにフェードアウトしていったのだった。
「ヒロトシ君!」
「な、何だぁぁぁ⁉」
ヒロトシは、自分の肩を揺すぶられていることに慌てたのだった。揺すぶっていたのは教会のシスターだった。
「ヒロトシ君!」
「な、何ですか?」
「貴方、今女神様の啓示があったのでは?」
シスターも信仰力を持っている。その為、教会の聖堂に満ち溢れた神気が、ヒロトシに降り注いでいたことを感じ取っていたのだ。
「確かに、暖かい空気に包まれていたような……」
ヒロトシは、ミレーヌと会っていたことを隠した。天界に行き、女神と会話してきたと言ったら、大騒動になると思ったからだ。
「今まで、女神神像から聖なる光が出て、ヒロトシ君を照らしていたのですよ?」
「そ、そうなんだ?だから、暖かい気持ちになったんだな?」
「何か女神様から、お言葉があったのではありませんか?」
「俺が聖職者なら、言葉が聞けたのかもな?なんか暖かい雰囲気だったのはたしかだけどね」
「そ、そうですか……」
シスターは、ヒロトシの説明に気落ちしてしまった。しかし、ヒロトシはそんな気落ちしなくてもいいんじゃないかと言った。
「シスターが、毎日お祈りしているからこそ、この教会は暖かい雰囲気なんだよ。俺は、町の本当の教会はここだと思っているよ」
「そんな……ここは他の教会より小さくて、女神神像もあんなに小さくて……」
「でも、女神様の気が満ち溢れているって事は、ここに女神様がいるって事だろ?俺は、ここのこの雰囲気にいつも癒されているんだぜ?」
「あ、ありがとうございます」
「まあ、俺はタダの商人だからな。もし、シスターなら言葉がきけたかもしれないな」
「ヒロトシ君……」
「あ、そうそう。今日のお布施です」
「今日一日、貴方に女神様の幸運が降り注ぎますように……」
ヒロトシは、シスターにお布施を渡し、笑顔で帰っていった。
ヒロトシは、屋敷に帰りステータスを開くと、スキルの欄に信仰心が新たに生えていて、魔道のスキルが2レベルとなっていたのだった。
魔道のスキルが2レベルになった事で、ファイヤーボールや強力な魔法を唱えられるようになり、魔力上昇やMP回復上昇率も上がる事になった。
そして、一番驚いたのが魔道具製作という項目が増えていて、ヒロトシは目を見開き驚いたのである。
この魔道具製作は、マジカルアイテムを創り出す事ではなく、風呂の湯沸かし器や魔石を使った電化製品と言った方が分かりやすいと思う。鍛冶屋の炉やパンを焼くような窯などがそうである。
「これは凄い!」
「旦那様、どうかしたのですか?」
朝食をとりながら、ヒロトシはステータスを見ていた。そして、突然大声を出したヒロトシに、セバス達が驚いたのだ。
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