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第1 章 自分だけの職業

20話 マミヤとルビー無事生還

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 ヒロトシは、衛兵に駆け寄られ心配された。そして、何でこんな事になったのか問い詰められたのだった。

「ヒロトシ殿、貴方は何をやっているのですか?こんな事をして不法侵入と殴り込みで訴えられてもおかしくはないのですぞ?」

「待ってくれ!今はそんな事を言っている場合じゃないんだ!俺は仲間を誘拐されて、この場所に閉じ込められている2人を返しに来たんだ。それにここに倒れているのは連中は、全員風の群狼だぞ」

「何だと⁉それは本当か?」

「ああ。嘘は言わないよ」

 衛兵達はそれを聞き、風の群狼を確保した。そして、ヒロトシの奴隷を誘拐したブルクは、そのまま逮捕となったのだ。

 地下牢に閉じ込められていたマミヤとルビーは何とかして、拘束から逃れようと手錠を引っ張り、手首から血がにじんでいた。
 その時、地下牢に降りてくる足音に顔が真っ青になった。結局、間に合わなかったと思い、ルビーは目に涙を溜めた。マミヤとルビーは目をつむり覚悟をしたのだった。

「2人共無事だったようだね」

「「えっ……」」

 マミヤとルビーの二人はゆっくり目を開いた。すると、そこには笑顔のヒロトシが立っていたのだった。

「「ご主人様!」」

 マミヤとルビーは、涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。そこに町の衛兵も流れ込んできたのだった。

「こ、これは……」

 その地下牢には、マミヤとルビーだけでなく数多くの人間やエルフが捕らわれていたのだった。屋敷の中にはブルクだけでなく、悪徳奴隷商人もいた。
 ここに囚われた人と奴隷契約を無理やり結ばせ、主人となったブルクが正規の奴隷商人に売る事になっていたのだった。この奴隷商人は闇ギルドの人間だった。

「ったく……心配したぞ」

「「ご、ごめんなさい……」」

 ヒロトシは、牢屋の鍵を開け二人に駆け寄った。そして、手足を拘束していた手錠も外すと、マミヤとルビーが泣きながら抱きついてきたのだった。

「もう心配さすなよ」

 ヒロトシは優しく二人の頭を撫でていたのだった。しばらくすると、地下牢に捕らわれていた女性達が、衛兵によって全員救いだされた。
 
「ヒロトシ殿、お手柄だったな。この町の犯罪を一つ解決してしまったぞ?」

「まあ、俺はマミヤとルビーを助けに来ただけだから、同時に解決したのならよかったよ」

「後日、領主様から呼び出しがあると思うがよろしく頼むぞ?」

「えええ?なんで呼び出しが?」

「当たり前だろ?ヒロトシ殿は人身売買の拠点の一つを解決したんだ。領主様から謝礼金が出ると思うぞ」

「な、なるほど……この町は犯罪には厳しいからそれは当然か」

「それと、風の群狼の逮捕だな。あいつ等は特急犯罪者として、冒険者ギルドからにも多額の懸賞金が掛かっているから、とんでもないことなるぞ」

「そうなのか?」

 冒険者達も、手出しできなくてどうしようもなかった風の群狼を、ヒロトシ一人で全滅に追いやった。これは頭であるハンソンを倒してしまったからだ。あの人数が全員でないにしても、もう風の群狼の復活はあり得ないとされたのだった。
 当然風の群狼の頭のハンソンは処刑。ミトンの町を一周させられ、町の人間から石を投げられ屈辱にまみれ、打ち首となった。
 部下の人間達は奴隷に落とされ、鉱山で一生強制労働させられることになる。そして、ブルクは町の為に強制労働させられることになる。錬金術師ということで、ポーションを一生作る羽目となった。奴隷に落とされたブルクに拒否権は無く、スタンピードなど災害が起きた時の在庫を作らされることになるのだ。

 この在庫問題は町にとって、深刻な問題でいつ起こるかわからない為、大量に在庫を用意したいのだが、ポーションにも使用期限という物がある。
 長い間使わなければ劣化してしまうからである。大量に置いておきたいが全部無駄にしたら、町の税金を無駄にしてしまうからである。
 なので最低限は確保しているが、駄目になる前に冒険者が使える分だけを在庫にしているのだ。

 そして、新たに在庫分を生産ギルドに製作依頼を出していた。その役目をこれからは死ぬまでブルクにやらせようという訳だ。これなら依頼を出すのは薬草採取となり、税金を削減できるというわけだ。

 そして、最後に悪徳奴隷商人は拷問にかけられることになる。それは、闇ギルドの情報である。どこにアジトがあるのか?何人構成員があるかなど聞き出したいことは山のようにあるからだ。聞き出せなくなったら処刑となるのは当然だった。



 後日、ヒロトシは兵舎に呼び出されていた。その為、ヒロトシはマミヤとルビーと一緒に兵舎まで来ていた。

「今日はわざわざすまなかったな?」

「いえいえ……それで今日は?」

「犯人の今回の誘拐に至った動機がわかったよ」

「まあ、なんとなくわかりますけどね」

「そうなのか?」

「あの男は、錬金術師なんでしょ?」

「ああ、そうだな」

「あの男の得意分野は、シャープネスオイルなんだろ?」

 衛兵の隊長は目を見開いた。この世界は錬金術師でも個人的なレシピをもっている。これは企業秘密でありその個人の財産だ。つまり、ヒールポーションが得意な錬金術師がいればキュアポーションが得意な錬金術師もいる。

 そして、今回マミヤとルビーを誘拐した人間がシャープネスオイルが得意だった。普通のオイルに比べて3倍の攻撃力を上げるオイルで、冒険者からは高価なアイテムだが命には代えられないと購入されていたのもだった。
 しかし、そこでヒロトシの磨き技術の登場である。いくら3倍の攻撃力となろうが、1本1万ゴールドでは冒険者は買わなくなるのは当たり前だった。

「なんでそれを?」

「俺の店で、自分の店の商品が売れなくなって、どうせ身代金を要求しようとしたんだろ?」

「そこまでわかっていたのか?」

「本当に馬鹿な奴だよ。シャープネスオイルの3倍となれば凄い功績だと思うぞ?」

「そうだよな?だからこそヒロトシ殿が現れるまで、高価だが冒険者達も購入していたんだからな」

「だよな……こんな犯罪をしなければ、生涯裕福だったのに馬鹿だよな」

「どういう事だ?生涯裕福は無理だろ?お主の研磨があるので、もうオイルは誰も買わんだろ?」

「そりゃ、効果時間が20分の物に1万ゴールドは出さないよ。そうじゃなく、普通のオイルの値段は200ゴールド程だろ?」

「ああ、そうだな」

「だったら、その3倍の値段にするんだよ。600ゴールドとなったら、みんな今まで通り購入するのは間違いないだろ?」

「確かにそうだが、もう研磨の技術でオイルはいらないだろ?」

「いやいや、何を言ってんだよ。Cランクまでの冒険者がいるじゃないか。今まで高価過ぎて購入できなかった冒険者が全員買ってくれるんだぞ?」

「あっ……」

「隊長さんも気づかなかったのかよ……」

「ポーションは消費物だろ?値を下げても数がはけるんだ。儲ける手段はいくらでもあるって事なんだよ」

「そう考えると本当に馬鹿な奴だな……」

「そういうことだ。それに、それだけじゃないしな」

「まだあるのか?」

「まあな。これは商人の事情だ。つまらんことだから気にしなくていいよ」

「そ、そうか……とにかく、今回の事はそう言った動機の元に行なわれたのだ。ヒロトシ殿は目立つからこれからは気を付けてくれ」

「わざわざ心配してくれてありがとう」

「ああ!今回の事はこちらとしても本当に助かった。礼を言う」

 こうして、ヒロトシは兵舎を後にしたのだった。ヒロトシは、隊長の注意を重く感じていたのだった。結局、マミヤとルビーは誘拐されてしまったからだ。その結果、人身売買の拠点の一つが無くなったが、ヒロトシにとってどうでもいい事だった。それより自分の家族が危険な目にあった方が問題だったからだ。

「「ご主人様どうかしたのですか?」」

「いやな……今回お前達に怖い目に遭わせてしまっただろ?」

「それは、わたし達が悪かったのです」
「そうです。わたしが調子に乗り、店の誘惑に乗ってしまって……」

「それでも、俺はお前達を守ると約束したんだ。しかし、誘拐されてしまったのは、ああいう手があったとは思いもしなかったからなんだ……」

「でも、ご主人様はちゃんと救ってくれたではありませんか?」
「そうですよ!わたし、牢屋でご主人様の姿を見た時、嬉しくていっぱい泣いちゃったし……」

「でも、誘拐されてしまったのは俺の想定外だった。何らかの対策を立てないといけないのは間違いないよ」

「やっぱりわたし達みたいな奴隷が、こんな幸せな生活をするのは間違ってたんです……休日や食事色んなものをご主人様から与えられて調子に乗ったのが間違いだったんです」

「おいおい、マミヤそんな事本気で思うなよ」

「ですが!今回の事だって、ご主人様から注意を受けていたのに、わたし達が……」

「確かに、お前達が浮かれていたことは否定はしないよ。だけど、一番の悪はお前達を誘拐したあの錬金術師だよ?それをマミヤのせいで攫われたと言うのは間違っているだろ?」

「で、でも……」

「いいか?俺は奴隷とはいっても休日は必要だと思っている。それは、日々の仕事が充実する為だ。なにか楽しみがあって、日々の生活が頑張れるんだよ?」

「奴隷に楽しみだなんて……」

「それに、俺は君達を奴隷として扱っているかい?」

「「そんなことは、まったくないです!」」

「だろ?だったら、自分達をそんなに卑下しなくてもいいだろ?俺の所はこれが普通で当たり前なんだ。他と一緒にしなくてもいいだろ?他所は他所、内は内だ」

 その言葉を聞き、マミヤとルビーは目に涙を溜めた。自分達は本当に幸せ者だと改めて思ったのだった。

 そして、ヒロトシはその足で奴隷商人の店に向かったのだった。

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