上 下
8 / 347
第1 章 自分だけの職業

7話 魔法属性

しおりを挟む
 しばらくして、女将さんが部屋の扉をノックして部屋にやってきた。

「失礼します。ヒロトシ様」

「どうぞ」

「えーっと、夜になると部屋が暗くなりますが、魔石はいががなされますか?」

 宿屋では、部屋に魔石を設置するランプが置いてある。そして、部屋で使う魔石を購入することになるのが普通だった。
 この魔石を購入することで、8時間使う事が出来るのだ。当然、8時間以内にスイッチを消したら、次の日もその魔石は使用可能である。

「それは絶対購入しないといけない物ですか?」

「そんな事はありませんよ。お客様の中には自分で持っているランタンを使用する方もいらっしゃいますからね」

「それなら大丈夫です。俺も持っていますから」

「そうですか。それならお湯の方はどういたしますか?って、ヒロトシ様汚れが落ちてますね?そちらの奴隷達もすっきりしているみたいですね」

「俺、クリーンの魔法が使えるから」

「そうですか。なら、お湯の方もいりませんね」

「はい。わざわざありがとうございます」

 これも宿屋の仕事の一つで、バケツ一杯のお湯を販売していた。外から帰ってくると、お客は井戸の水で身体を拭くが、寒いときはお湯で身体を拭きたいからだ。

 しかし、ヒロトシはミレーヌに魔道のスキルを貰っている為、全属性の魔法を使えるのでとても便利がよかった。
 
 この世界の人間は、商売に一生懸命でどんなものでも販売しようと貪欲だった。魔石やお湯も低価で販売するが、塵も積もれば山となり、年間で考えると馬鹿にならない利益が上がるのだ。

「それじゃごゆっくり」

 宿屋の女将さんは、ニッコリ笑顔を見せて部屋から退出していった。

「それにしても、ご主人様は、2属性魔法がつかえるので凄いですね」

「えっ?」

「だって、わたし達を助けてくれたとき、火属性のファイヤーアローを使ってたじゃないですか」
「ホント、冒険者になっても活躍できますよ。火は必要ですし、クリーンは旅の最中では体が臭くなっちゃいますからね」
「冒険者になったら、他のパーティーからも引っ張りだこになると思いますよ」

 マインとアイは、ヒロトシが2属性を使える事に興奮していた。

「えーっと、2属性使えるのはそんなに珍しいのか?」

「まあ、普通は基本属性のどれかで、レア属性ならパーティーから歓迎されますからね」

 基本属性は、火水土風の4属性でレア属性が光聖闇無の4属性からなり、普通は基本が1属性である。
 しかし、レア属性を持っている人間は、レア属性と基本属性を1個づつ適性があるのだ。その為、レア属性持ちはパーティーでも重宝され引っ張りだこになる。
 
「えーっと、何でレアと基本の2属性になるんだ?基本属性の二つ持ちはないのか?」

「そんな人間は聞いた事はありませんね」
「そりゃそうですよ。基本属性で火と土風ならなんとか考えられない事もありませんが、火と水では反発しあう事になりますからね」
「そうですね、レア属性でも光と闇では反発します。そう考えるのが普通ですよ」

「そ、そうか……これも内緒で頼みたいのだが……」

「「えっ?ひょっとして3属性持っているのですか?」」

「いや……そうじゃなくて……」

「「まさか4属性?」」

「……ぶだ……」

「えっ?ブタ?」

「違う。全部だ。全属性使える……」

「「えぇ!ブッ……」」

 マインとアイは、ヒロトシの衝撃の告白に大声を出しそうになったが、咄嗟に自分の口を押えて大声を止めたのだった。

「ご主人様。それはやばすぎます……」

「だ、だよな……」

「とりあえず、普段は聖属性と火属性だけしか使わない様にしないと……もし、貴族達に知られたら囲われますよ」

「えっ?」

「そりゃそうですよ。ミトンの町の領主様は、そんな事をするお方じゃないとは思いますが、そういった貴族様ばかりではありません」
「そうですよ。王族に見つかったら、戦争に借りだされるかもしれませんよ」

「こ、こわっ……」

「とにかく、自重した方がよろしいかと」

「そうするよ……」

 しかし、ヒロトシの規格外の能力は魔法だけにとどまらないのだ。後にお店を開くことになるが、そこでも又規格外の能力を発揮することになる。とにかく、ヒロトシはマインとアイのおかげで助かったといえた。

「と、とりあえず、ご飯でも食べに行こうか」

「「はい!」」

 3人は、宿屋の食堂に行き席に着いた。マインとアイは又、ヒロトシの後ろに立とうとしたが、その前に席に座らせた。

「あんた、変わっているねえ。そんなにその二人を大事にしているんだ?」

「俺は、そんな人でなしじゃないよ」

「でも、あそこを見てごらんよ。あれが奴隷への普通のあつかいだよ」

 女将さんが、奴隷連れの他の客を示した。すると、そこには奴隷は主人の後ろに立たせて、自分だけが食事をしていて奴隷はその姿をみせられていた。奴隷は余程お腹がすいているのか、よだれを垂らして主人を眺めているだけだったのだ。

「まあ、他人のやることに口出しはしないが、俺は俺のやり方があるよ」

「まあ、その奴隷達はあんたの持ち物だしね。どう扱おうが誰も文句は言えないさ。あんた達も良かったねヒロトシ様に購入されて」

「「はい!」」

 宿屋の女将は、少し笑いながらマインとアイに話しかけた。

「それで食事は何にしますか?」

「お勧めはありますか?」

「日替わり定食なんかどうだい?ボアのステーキとスープ、黒パンとサラダで500ゴールドだよ。パンはおかわり自由だよ」

「美味しそうだな!二人もそれでいいか?」

「えっ?あんた、奴隷に同じものをあたえるのかい?」

「ああ。別におかしくはないだろ?」

「まあいいけどさ。こちらは商売だからありがたいよ」

「「ご主人様、本当にありがとうございます」」

 それを見て、先ほど女将さんに示された奴隷は、こちらを羨ましそうに見ていたのは言うまでもなかった。

 そして、テーブルの上には大きなボアのステーキが置かれた。

「パンはおかわり自由だからね。欲しかったらいつでも言っておくれ」

「わかったよ。ありがとう」

「じゃあ、お代は先払いでたのむよ」

 ヒロトシは、3人分で1500ゴールドで銀貨1枚と大銅貨5枚を支払った。

「それじゃちょうどで」

「まいどあり~」

 ボアのステーキは、冒険者でも満足できるように400gと大きなステーキだった。しかし、質より量というわけではなく、とっても美味しいステーキである。

 黒パンは硬いが、スープに浸して食べたらとても美味しかった。パンはおかわり自由で、3人はお腹いっぱいになって、とても満足したのだった。

 そして、部屋へと3人は帰ったのだったが、部屋に上がる前に先ほどの奴隷は、主人が残したご飯を一心不乱に食べていたのだった。
 そして、すぐに無くなってしまい、そのまま地下牢の預かり部屋に預けられてしまったのだった。

 その夜、ヒロトシはこの世界がどういった世界なのか、マインとアイの二人に聞いていた。この世界の常識は、ヒロトシをカルチャーショックに陥れた。
 しかし、それを踏まえて行動すれば、何とかやっていけるだろうとも思っていた。

 そして、その夜は寝ることにしたのだが、問題が起こったのだった。

「「ご主人様……ご奉仕のほどを……」」

「ちょ、ちょっと待て!二人ともいったい何を考えている」

 マインとアイは、服を脱いでヒロトシに迫ってきたのだった。ヒロトシからすれば、二人は高校生ぐらいであり、そんな倫理観から外れたことをする訳にもいかず、すぐに服を着る様にと言った。

「ですが、ご主人様はわたし達にご飯をお腹いっぱいくれて、暖かいベットまで与えてくれたのですよ」
「そうですよ!わたし達にお礼をさせてください」

「いいから服を着なさい!そういう事は好きな相手とするもんだ」

「「わたし達はご主人様の事が」」

「いやいや……それは違う感情だろ?愛しているとは違うだろ?」

「ですが奉仕させてください。ご主人様からの愛情は、オークから救ってもらった時からいっぱい受けています」
「そうですよ。その恩を返す為にもご奉仕を……」

「明日は、やることがいっぱいあるんだから早く寝なさい」

 ヒロトシは、必死に欲望と戦いながら、二人にシーツを被せた。

「「ご主人様の意気地なし……」」

 二人な納得いかない様に、ふてくされてベットに潜り込んでしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依
ファンタジー
主人公 山道賢治(やまみちけんじ)の通う学校で虐めが横行 そのいじめを止めようと口を出した瞬間反対に殴られ、後頭部を打ち 死亡。そして地球の女神に呼ばれもう一つの地球(ガイアース)剣と魔法の世界 異世界転移し異世界で自由に楽しく生きる物語。 ゆっくり楽しんで書いていけるといいなあとおもっています。 更新はとりあえず毎日PM8時で月曜日に時々休暇とさせてもおうと思っています。 星マークがついている話はエッチな話になっているので苦手な方は注意してくださいね。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...