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第1 章 自分だけの職業

2話 ミトンの町に到着

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 ヒロトシは、二人を連れて町へ向かうのだった。

「ご、ご主人様!ちょっと待ってください。あれは解体しないのですか?」

「えっ?解体ってどういう事?」

「あの魔物はオークです。お腹に穴が開いてしまっていますが、魔石や肉を取った方がよろしいかと」

「解体って言ってもなあ……俺そんな技術持っていないからな……」

「ご主人様は、魔法使いなんですよね?生活魔法のカッティングがあると思うのですが?」

「ああ!あるよ。それって解体に使うのか?」

「それだけではないんですが、解体にも使えますよ」

「なるほど……分からない事が多いので、おかしなことがあったら色々教えてほしい」

「「わかりました」」

 ヒロトシは【カッティング】と唱えると、オークの肉体はつかえる場所をカットしていき、魔石と肉と睾丸を取り出した。

「これらの素材や肉は、町の精肉屋やギルドで買い取ってくれますよ」

「そうなんだ。あの化け物の肉が食べれるのか?」

「まあ、庶民の間では人気がありますからね。ウルフやボアなども人気の肉ですよ」

 ヒロトシはここに来るまでに何匹か討伐したが、その場に放置してきてしまって勿体ない事をしたと後悔したのだった。

 そして、解体しながらマインとアイに、どうしてこんな森にいたのかを聞いた。

「ところでさ。何で二人はこんな森にいたんだ?戦えないんだろ?」

「あっ……それは、ちょっと訳がありましてですね」

「わけって?」

「わたし達は、村から厄介払いされ奴隷商人に売られたのです」

「厄介払いって?」

「この尻尾です。わたしは猫獣人ですが、これを見てください二股に分かれているでしょ?」
「わたしは狐獣人ですが、この通り尻尾が9本です……」

「えっ?それだけの事で厄介払いされたの?」

「それだけって……村ではこの尻尾の事でいつも虐められていて……わたし達の親だけが優しかったのですが、心労がたたって倒れてしまったのです」

「あっ……ごめん……そういう意味じゃなかったんだよ。俺からしたら、その見た目が違うだけで差別をすることが不思議だったんだよ」

「そういう事を言うのは、ご主人様だけだと思いますよ」
「でも、そう言って頂けて嬉しいです」

「それで、奴隷商人に売られて、町に移動する最中にゴブリンに襲われたんです。そこに、まだ駆け出しの冒険者が現れて、奴隷商人を助けたという事なんです」

「だったら、その冒険者はどうしたんだ?」

「奴隷商人は、救ってくれたお礼に、わたし達をその冒険者に譲ったんです」

「ふむふむ」

「しかし、奴隷を手に入れるという事は、それなりの実力を持ち合わせていないといけないという事なんですよ」

「どういう事だ?」

「奴隷は自己財産です。守る力もないと誰かに奪われるという事ですよ。今回は、前の主人はまだ駆け出しだった事もあり、森の中でオークに襲われ殺されました」

「でも、君達は生きて捕らわれていたよね?」

「えーっと、あのままでは、わたし達はオークに犯されていたといったら分かりますか?オークやゴブリンは、女性の敵と言われる魔物です」

「あっ……そういうことか。それであの時、君達は縛られていたんだな」

「そういうことです。あのまま巣に連れていかれていたら、何十匹というオークにわたし達は犯されていたんです」

「そこに、俺が運よく助けたというわけだったんだ?」

「そういうことです。本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」

「まあ、偶然だったが助けれてよかったよ」

「ところでご主人様は、町に行ったら冒険者として生活するのですよね?」

「えっ?なんで?」

「なんでって、オークを一撃で倒せるほど強いんですよね?」

「いやいや、俺は冒険者じゃなくて研磨師だよ。町ではお店を開いて生活するつもりだ」

「研磨……師ってなんですか?」

「あらゆるものを研磨するんだ。綺麗に光らせるといったら分かるかな?」

「光らせる?」

「わからないかな?分かりやすく言えば、鏡のようにてからせるといったら分かるか?」

「えーっと、銅鏡のように姿を映すという事でしょうか?」

「まあそんな感じかな」

「それって勿体ないかと思うのですが……」

「勿体ないってどういう事?」

「ご主人様なら、冒険者として物凄い才能がおありという事です。オークをファイヤーアローの一撃で仕留める腕があるのですよ?それなら、冒険者ギルドに所属していたらいいじゃないですか?」

「ちょっと待ってくれ。俺は冒険者じゃないよ」

「「えええええ!」」
「嘘ですよね?あれだけの腕を持っていたなら、上級どころかベテラン冒険者でも通じますよ」

「まあ、とにかく俺は魔物を討伐するのは性にはあってないよ」

「ですが、銅鏡を磨くのでは生活が成り立たないかと……」

「まあ、大丈夫だって。俺に任せてみてよ。研磨は俺だけしか出来ない技術だ。すぐに人気が出て、人手不足になると思うよ」

「それならいいのですが……」

 マインが心配したのは当然の事だった。銅鏡を磨くのは布で丁寧に拭く事で鈍く光らせる事で、子供が小遣い稼ぎでやるような仕事だった。
 それと似たようなものでは包丁砥ぎ等があった。子供が砥石をもって、家庭をまわって砥ぐことだったのだ。これらの仕事は、ギルドでFランクの仕事で、12歳の子供が出来る仕事だったのである。つまり、雑用としての依頼であり、1日やってもその日のご飯1人分になるかどうかの物だった。

「やっぱり冒険者になった方が……」

「まあまあ、俺に任せろって」

 ヒロトシはニコニコしていたが、マインとアイの二人は不安を隠せなかった。そんな感じで、三日かけてようやく3人は、ミトンの町に着いたのだった。

「ご主人様見えましたよ。あれが、ミトンの町です」

「あー長かったなあ。やっと着いた。ってなんであんな高い壁が?」

「何を言っているのですか?町は普通城壁で囲まれているもんです」

「なんで?」

「なんでって、ここに来るまでに魔物がたくさんいたじゃないですか。今回は盗賊には遭遇しませんでしたが、それらから守る為ですよ」

「そ、そうなんだ……」

「ご主人様ってどんなところに住んでいたのですか?」
「そうですよ。町はどこに行ってもあんな感じですよ?」

「まあ、俺のいた所は治安が良かったからなあ」

「良くても魔物はどこにでもいると思いますが……」

「まあ、その辺も含めて話しをするよ。今はそう思っていてくれ」

「「わ、分かりました……」」

 そして、3人は城門前に着て長い行列に並んだのだった。

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