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第1 章 自分だけの職業
1話 仲間2人
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ヒロトシは、森の中に立っていた。森の中は空気が澄んでいてとても気持ちがよく、ヒロトシは大きく呼吸をしたのだった。
(本当に異世界に来てしまったのか……)
まさか自分がこんな事になるとは思いもせず、過去の事を振り返っていた。自分は、今まで会社に入社したが社員にはなれず、受け取りをしてくれと言われ個人事業主となった。
個人事業主とは聞こえはいいが、親会社専属の研磨職人だった。つまり、その会社から専属に研磨をすることになる。そのため、都合がいい事は何もなく、行事など会社の言いなりで社員扱いになる。しかし、受け取りはあくまでも個人事業主で、残業や休日出勤しても特別手当が出る訳でもないのだ。
商品一つ磨いて、いくらの商売になる。そんないいなりの商売をしてきてうんざりもしていたが、生活の為しょうがなくそれを受け入れていた。
女神に殺されたとはいえ、その生活が終わった事に、ヒロトシはホッとしていた面もあった。自分の死で、あの親会社には迷惑をかけたが、まあ潰れてもしょうがないだろうとも思っていた。ヒロトシの死因は脳梗塞であり、休日出勤を連日させて、過労死した事にになっていた。
「これからは、この世界で研磨をしていき、言いなりだった人生はもう終わりだ!」
ヒロトシは、ステータスを開いた。すると、驚愕の事実が映し出された。種族はハイヒューマンとなっていて、レベルが300となっていた。
スキルは女神の言った通り、魔道のスキルは1レベルではあるが、インベントリと神眼はレアスキルだった。
名前 ヒロトシ(12)男
種族 ハイヒューマン
職業 研磨師
HP 3000
MP 3000
STR 3000 腕力を示し、直接攻撃に影響
VIT 3000 体力を示し、防御力に影響
INT 3000 知力を示し、魔法攻撃などに影響
MID 3000 精神力を示し、魔法防御などに影響
DEX 3000 器用さを示し、罠解除や解体などに影響
AGI 3000 俊敏力を示し、攻撃回数や移動に影響
LUK 100 運を示し、高ければ高いほど幸運になる。
レアスキル(ミレーヌの加護)
インベントリ(無限収納ゴミ箱付)
神眼
スキル
研磨 5レベル
研磨道具召還 5レベル
魔道 1レベル
言語読み書き 3レベル
言語理解 3レベル
ヒロトシは、このステータスに驚いた。確かにミレーヌは魔道のスキルは1レベルと言ったが、他のスキルは言語理解・読み書き以外は、とんでもないものだったからだ。
「これは一体どうなっているんだ?そういえば異世界に着いたらインベントリを開けと言っていたな……」
ヒロトシは、インベントリを開けると一通の手紙が入っていた。
『ヒロトシ様へ
色々とサービスしておきましたので、これで人生を
楽しんでください。
スキルの事ですが、魔道以外はヒロトシ様の経験から
レベルが高くなっています。
インベントリと神眼は、商人にとって必要不可欠の
スキルです。神眼は鑑定の上位版だと思ってください。
インベントリは、中にいれた物は時間が停止し腐る事も
ないマジックボックスの上位版です。
研磨道具は必ずゴミ箱へ処分してくださいね。
あと、魔道のスキルは魔法の上位版スキルで、
全属性使用可能。無詠唱と魔法威力憎と言った複合
スキルになっています。
最後になりますが、研磨スキルもちょっとしたサービス
となっています。効果は自分で試してくださいね。
そして、子供となったヒロトシ様は自分の店舗を買う事も
大変だと思い、お金も入れておきましたのでご自由にお使い
ください。
ヒロトシ様には、本当にご迷惑をかけて申し訳ありません
でした。次の人生では楽しく自由に暮らしてください。
ミレーヌ』
「ミレーヌさん、本当にありがとう……」
ヒロトシは、ミレーヌに感謝をして町を目指して歩き出した。
手紙には、東に向かえば、比較的大きな町があり、ここはミストラルという世界で、アルテシオン大陸というらしい。
そして、東に行けば王国領のミトンの町がある。とりあえず、ヒロトシはミトンの町に向かう事にした。
この辺りはまだ、そこまで強い魔物は出現しない場所なので、ヒロトシは安心していた。出てきてもウルフぐらいだったからだ。インベントリの中には、ミレーヌからショートソードやキャンプ道具などが入っていて、食料も1ヶ月は過ごせるほど入っていたので、心配することが無かった。
「は、放せぇ!何でこんな事に!」
「い、いやあああああ!放してよおお!」
『ぶひっ!ぶひぶひぶひ!』
ヒロトシが、町に向かって森を歩いていると、豚の化け物に縛られた女の子が連れ去られていた。ヒロトシは、これが命が軽い世界と言ってた理由かと思ったのだ。
ヒロトシは、その女の子達を救おうと思った。自分は51歳で死んだが、それでも悔いが残っていたからだ。それなのに捕らわれていた女の子は、まだ高校生ぐらいと若い事が分かった。そんな子が殺されるなんて不憫に思ってしまったから助けないとと思ったのだ。
「ファイヤーアロー」
ヒロトシは豚の化け物に向かって、【ファイヤーアロー】を撃った。これは火属性の初級魔法であり炎の矢を撃ちだす魔法である。
ファイヤーアローと言わなくても、ヒロトシは撃てるのだがついつい魔法の名前を言ってしまうのだった。
炎の矢は一直線に豚の化け物に命中した。ヒロトシの魔法の威力が高すぎたのか、豚の化け物の腹には穴が開き傷口は炭化して、その場に倒れ込んだ。女の子たちは、豚の化け物から放り出れてしまった。
「「きゃっ!」」
「いったい何?」
「おーい!大丈夫か?」
森の中から、草木をかき分け出てきたヒロトシに、女の子たちは驚いていた。
「すぐに縄を解くから待ってろ?」
「「あ、ありがとうございます」」
「本当に助かりました」
「いいよいいよ。困った時はお互い様だ」
ヒロトシは、女の子の縄をショートソードで切ったのだった。そして、縄を解くと女の子には人間の耳ではなく動物の耳が頭についてて、お尻の辺りから尻尾が生えていたのだった。
「そ、それはなんだ?」
「それって何でしょうか?」
「何で耳と尻尾が?獣人と言うやつなのか?」
ヒロトシは、初めて見る獣人に驚きながら、まじまじと見てしまった。
「あ、あの……わたし達のような獣人を毛嫌いするのは分かりますが、そんなに驚かないでください。それと助けてくれてありがとうございます」
「ありがとうございます」
「へっ?毛嫌いってどういうこと?俺は、君達の尻尾が珍しくて驚いただけだよ?」
「珍しいってどういう事ですか?わたし達のような獣人は珍しくないでしょ?」
「そうですよ。町に行けばいくらでも……」
「そうなのか?それは悪いな。俺は初めて見たもんだから、気を悪くしたのなら謝るよ」
「いえ……そんな謝らないでください。助けてくれた恩人なのですから。それと遅くなりましたが、わたしはマインと言います。見てわかると思いますが猫獣人です」
「わたしはアイと言います。狐獣人です」
「ああ!悪いね。俺はヒロトシといいます」
「「ご主人様。これからどうぞよろしくお願いします」」
「はっ⁉ご主人様?よろしくってどういう意味?」
「わたし達は奴隷です。主人は先ほどのオークに殺されてしまいました。だから、わたし達を見つけた貴方は、わたし達の主人という事になります」
「えええ!そんなのしらない!奴隷だって?どういう事?」
「ご主人様は、獣人も見たこともないし奴隷の事も知らないのですか?」
「この辺りの事はよく知らないが、獣人を見たのも初めてだし、奴隷だって俺の周りにはいなかったからな……」
「まさか、ご主人様は貴族のお子様でしょうか?」
「いや、貴族じゃないよ」
「貴族で大切に育てられて、長男じゃない方が家を出られたのかと思いました。そういう境遇で育った貴族様がいると聞いたことがあるので、貴族様だと思いました」
「あの……もし、わたし達がいらないというのなら、町の奴隷商店でお売りになってくれてもいいですので、町まで連れて行ってください」
「はぁあ⁉人身売買が普通にまかり通っているのか?」
「人身売買って……そうではありませんよ。これは国で認められている商売です」
マインは胸元を開け、奴隷紋をヒロトシにみせた。
「ちょっと待ちなさい!若い子が胸をはだけさすのはやめなさい!はしたないでしょ!」
「ご主人様!大丈夫です。わたしは奴隷なので、いまはご主人様の物です」
「い、いや、俺のようなおじさんに、君のような子が胸を見せたらダメだって」
「おじさん?わたしより若いように見えますが……」
「とにかく胸元を閉めて!」
マインは、ヒロトシがあまりに恥ずかしがるので胸元をしめた。
「ったく……見ず知らずの男に、そんな事をしたらだめだよ。お嫁にいけなくなるぞ?」
「「えっ⁉」」
「えってなんだよ。女の子は、もっと自分を大切にするべきだ」
「あの、ご主人様?わたし達は奴隷です。お嫁とか結婚なんかできません。今は、ご主人様がわたし達の主になります。ご主人様の為に、奉仕するのが奴隷の役目なんですよ?」
「なんだそれ?君達はそれで納得しているのか?」
「納得も何もそれが奴隷ですので……もし、ご主人様がわたし達を必要ないと思ったのなら、町で売ってくれたら問題はありませんよ。しかし、わたし達はご主人様に命を救われました。そのご恩に報いる為にも、このままお側でご奉仕させていただけるとありがたいと思っています」
「ちょっと聞きたいんだが、奴隷の暮らしってどういうものなんだ?」
「ご主人様は、日に一回わたし達にご飯を与えてくれたらそれでいいです」
「はっ?一日一回だけでいいのか?」
「大丈夫です。ご主人様によっては二日に一回のご主人様もいるぐらいですので……」
マインが言うには、奴隷は主人の言う事は絶対だが、殺人の強要と自殺の命令以外どう扱っても良いらしい。奴隷は、その人の財産であり死なない様にするのも、使いつぶすつもりで働かせてもいいという事だった。
それを聞いて、ヒロトシはもし自分がこの二人をいらないと言い売ったら、次にどんな人間がこの二人の主人になるかは運次第だと思った。
せっかく豚の化け物から、助けたのに主人次第で使いつぶされるかもしれないと聞かされたのだった。
「えーっと、もし仮に俺が、君達を奴隷商人に売って、次に購入する主人になる人間次第ではどういう扱いになるかわからないって事なのか?」
「そういう事になりますが、ご主人様が気にすることはないですよ。それも私達の人生ですから」
「わかった。じゃあ、君達は俺が面倒見ようじゃないか。せっかく助かったのに、次の主人次第でどうなるかわからないんじゃ、助けた意味が無くなるからな」
それを聞いた、マインとアイは両手を取って喜んだのだった。そして、ヒロトシは二人を連れて町に向かったのだった。
(本当に異世界に来てしまったのか……)
まさか自分がこんな事になるとは思いもせず、過去の事を振り返っていた。自分は、今まで会社に入社したが社員にはなれず、受け取りをしてくれと言われ個人事業主となった。
個人事業主とは聞こえはいいが、親会社専属の研磨職人だった。つまり、その会社から専属に研磨をすることになる。そのため、都合がいい事は何もなく、行事など会社の言いなりで社員扱いになる。しかし、受け取りはあくまでも個人事業主で、残業や休日出勤しても特別手当が出る訳でもないのだ。
商品一つ磨いて、いくらの商売になる。そんないいなりの商売をしてきてうんざりもしていたが、生活の為しょうがなくそれを受け入れていた。
女神に殺されたとはいえ、その生活が終わった事に、ヒロトシはホッとしていた面もあった。自分の死で、あの親会社には迷惑をかけたが、まあ潰れてもしょうがないだろうとも思っていた。ヒロトシの死因は脳梗塞であり、休日出勤を連日させて、過労死した事にになっていた。
「これからは、この世界で研磨をしていき、言いなりだった人生はもう終わりだ!」
ヒロトシは、ステータスを開いた。すると、驚愕の事実が映し出された。種族はハイヒューマンとなっていて、レベルが300となっていた。
スキルは女神の言った通り、魔道のスキルは1レベルではあるが、インベントリと神眼はレアスキルだった。
名前 ヒロトシ(12)男
種族 ハイヒューマン
職業 研磨師
HP 3000
MP 3000
STR 3000 腕力を示し、直接攻撃に影響
VIT 3000 体力を示し、防御力に影響
INT 3000 知力を示し、魔法攻撃などに影響
MID 3000 精神力を示し、魔法防御などに影響
DEX 3000 器用さを示し、罠解除や解体などに影響
AGI 3000 俊敏力を示し、攻撃回数や移動に影響
LUK 100 運を示し、高ければ高いほど幸運になる。
レアスキル(ミレーヌの加護)
インベントリ(無限収納ゴミ箱付)
神眼
スキル
研磨 5レベル
研磨道具召還 5レベル
魔道 1レベル
言語読み書き 3レベル
言語理解 3レベル
ヒロトシは、このステータスに驚いた。確かにミレーヌは魔道のスキルは1レベルと言ったが、他のスキルは言語理解・読み書き以外は、とんでもないものだったからだ。
「これは一体どうなっているんだ?そういえば異世界に着いたらインベントリを開けと言っていたな……」
ヒロトシは、インベントリを開けると一通の手紙が入っていた。
『ヒロトシ様へ
色々とサービスしておきましたので、これで人生を
楽しんでください。
スキルの事ですが、魔道以外はヒロトシ様の経験から
レベルが高くなっています。
インベントリと神眼は、商人にとって必要不可欠の
スキルです。神眼は鑑定の上位版だと思ってください。
インベントリは、中にいれた物は時間が停止し腐る事も
ないマジックボックスの上位版です。
研磨道具は必ずゴミ箱へ処分してくださいね。
あと、魔道のスキルは魔法の上位版スキルで、
全属性使用可能。無詠唱と魔法威力憎と言った複合
スキルになっています。
最後になりますが、研磨スキルもちょっとしたサービス
となっています。効果は自分で試してくださいね。
そして、子供となったヒロトシ様は自分の店舗を買う事も
大変だと思い、お金も入れておきましたのでご自由にお使い
ください。
ヒロトシ様には、本当にご迷惑をかけて申し訳ありません
でした。次の人生では楽しく自由に暮らしてください。
ミレーヌ』
「ミレーヌさん、本当にありがとう……」
ヒロトシは、ミレーヌに感謝をして町を目指して歩き出した。
手紙には、東に向かえば、比較的大きな町があり、ここはミストラルという世界で、アルテシオン大陸というらしい。
そして、東に行けば王国領のミトンの町がある。とりあえず、ヒロトシはミトンの町に向かう事にした。
この辺りはまだ、そこまで強い魔物は出現しない場所なので、ヒロトシは安心していた。出てきてもウルフぐらいだったからだ。インベントリの中には、ミレーヌからショートソードやキャンプ道具などが入っていて、食料も1ヶ月は過ごせるほど入っていたので、心配することが無かった。
「は、放せぇ!何でこんな事に!」
「い、いやあああああ!放してよおお!」
『ぶひっ!ぶひぶひぶひ!』
ヒロトシが、町に向かって森を歩いていると、豚の化け物に縛られた女の子が連れ去られていた。ヒロトシは、これが命が軽い世界と言ってた理由かと思ったのだ。
ヒロトシは、その女の子達を救おうと思った。自分は51歳で死んだが、それでも悔いが残っていたからだ。それなのに捕らわれていた女の子は、まだ高校生ぐらいと若い事が分かった。そんな子が殺されるなんて不憫に思ってしまったから助けないとと思ったのだ。
「ファイヤーアロー」
ヒロトシは豚の化け物に向かって、【ファイヤーアロー】を撃った。これは火属性の初級魔法であり炎の矢を撃ちだす魔法である。
ファイヤーアローと言わなくても、ヒロトシは撃てるのだがついつい魔法の名前を言ってしまうのだった。
炎の矢は一直線に豚の化け物に命中した。ヒロトシの魔法の威力が高すぎたのか、豚の化け物の腹には穴が開き傷口は炭化して、その場に倒れ込んだ。女の子たちは、豚の化け物から放り出れてしまった。
「「きゃっ!」」
「いったい何?」
「おーい!大丈夫か?」
森の中から、草木をかき分け出てきたヒロトシに、女の子たちは驚いていた。
「すぐに縄を解くから待ってろ?」
「「あ、ありがとうございます」」
「本当に助かりました」
「いいよいいよ。困った時はお互い様だ」
ヒロトシは、女の子の縄をショートソードで切ったのだった。そして、縄を解くと女の子には人間の耳ではなく動物の耳が頭についてて、お尻の辺りから尻尾が生えていたのだった。
「そ、それはなんだ?」
「それって何でしょうか?」
「何で耳と尻尾が?獣人と言うやつなのか?」
ヒロトシは、初めて見る獣人に驚きながら、まじまじと見てしまった。
「あ、あの……わたし達のような獣人を毛嫌いするのは分かりますが、そんなに驚かないでください。それと助けてくれてありがとうございます」
「ありがとうございます」
「へっ?毛嫌いってどういうこと?俺は、君達の尻尾が珍しくて驚いただけだよ?」
「珍しいってどういう事ですか?わたし達のような獣人は珍しくないでしょ?」
「そうですよ。町に行けばいくらでも……」
「そうなのか?それは悪いな。俺は初めて見たもんだから、気を悪くしたのなら謝るよ」
「いえ……そんな謝らないでください。助けてくれた恩人なのですから。それと遅くなりましたが、わたしはマインと言います。見てわかると思いますが猫獣人です」
「わたしはアイと言います。狐獣人です」
「ああ!悪いね。俺はヒロトシといいます」
「「ご主人様。これからどうぞよろしくお願いします」」
「はっ⁉ご主人様?よろしくってどういう意味?」
「わたし達は奴隷です。主人は先ほどのオークに殺されてしまいました。だから、わたし達を見つけた貴方は、わたし達の主人という事になります」
「えええ!そんなのしらない!奴隷だって?どういう事?」
「ご主人様は、獣人も見たこともないし奴隷の事も知らないのですか?」
「この辺りの事はよく知らないが、獣人を見たのも初めてだし、奴隷だって俺の周りにはいなかったからな……」
「まさか、ご主人様は貴族のお子様でしょうか?」
「いや、貴族じゃないよ」
「貴族で大切に育てられて、長男じゃない方が家を出られたのかと思いました。そういう境遇で育った貴族様がいると聞いたことがあるので、貴族様だと思いました」
「あの……もし、わたし達がいらないというのなら、町の奴隷商店でお売りになってくれてもいいですので、町まで連れて行ってください」
「はぁあ⁉人身売買が普通にまかり通っているのか?」
「人身売買って……そうではありませんよ。これは国で認められている商売です」
マインは胸元を開け、奴隷紋をヒロトシにみせた。
「ちょっと待ちなさい!若い子が胸をはだけさすのはやめなさい!はしたないでしょ!」
「ご主人様!大丈夫です。わたしは奴隷なので、いまはご主人様の物です」
「い、いや、俺のようなおじさんに、君のような子が胸を見せたらダメだって」
「おじさん?わたしより若いように見えますが……」
「とにかく胸元を閉めて!」
マインは、ヒロトシがあまりに恥ずかしがるので胸元をしめた。
「ったく……見ず知らずの男に、そんな事をしたらだめだよ。お嫁にいけなくなるぞ?」
「「えっ⁉」」
「えってなんだよ。女の子は、もっと自分を大切にするべきだ」
「あの、ご主人様?わたし達は奴隷です。お嫁とか結婚なんかできません。今は、ご主人様がわたし達の主になります。ご主人様の為に、奉仕するのが奴隷の役目なんですよ?」
「なんだそれ?君達はそれで納得しているのか?」
「納得も何もそれが奴隷ですので……もし、ご主人様がわたし達を必要ないと思ったのなら、町で売ってくれたら問題はありませんよ。しかし、わたし達はご主人様に命を救われました。そのご恩に報いる為にも、このままお側でご奉仕させていただけるとありがたいと思っています」
「ちょっと聞きたいんだが、奴隷の暮らしってどういうものなんだ?」
「ご主人様は、日に一回わたし達にご飯を与えてくれたらそれでいいです」
「はっ?一日一回だけでいいのか?」
「大丈夫です。ご主人様によっては二日に一回のご主人様もいるぐらいですので……」
マインが言うには、奴隷は主人の言う事は絶対だが、殺人の強要と自殺の命令以外どう扱っても良いらしい。奴隷は、その人の財産であり死なない様にするのも、使いつぶすつもりで働かせてもいいという事だった。
それを聞いて、ヒロトシはもし自分がこの二人をいらないと言い売ったら、次にどんな人間がこの二人の主人になるかは運次第だと思った。
せっかく豚の化け物から、助けたのに主人次第で使いつぶされるかもしれないと聞かされたのだった。
「えーっと、もし仮に俺が、君達を奴隷商人に売って、次に購入する主人になる人間次第ではどういう扱いになるかわからないって事なのか?」
「そういう事になりますが、ご主人様が気にすることはないですよ。それも私達の人生ですから」
「わかった。じゃあ、君達は俺が面倒見ようじゃないか。せっかく助かったのに、次の主人次第でどうなるかわからないんじゃ、助けた意味が無くなるからな」
それを聞いた、マインとアイは両手を取って喜んだのだった。そして、ヒロトシは二人を連れて町に向かったのだった。
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