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第8章 人類の厄災

15話 発展するマルクの町

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 マルクの町は、シオン達のおかげで何事もなく平穏だった。商人ギルドがマルクの町に許可がおりた事はすぐに商人の間で情報が周り、行商人達がマルクの町にやってきた。

「この町は本当に魔の森を切り開いた町とは思えないな」

「あんた、この町は初めてかい?」

「そうなんだよ。だけど、帝国に楽に行けるようになるとは本当にいいもんだな?南側の旧街道より安全だったぜ?」

「この町は大陸一安全な町だよ。つい最近も魔の森の魔物が溢れたみたいだけどね」

「それは本当なのか?」

「本当だよ。あんたも行商人なら商人ギルドに顔を出してみたらどうだい?良いことがあるよ」

「俺は昔からその町の住民との直接交渉をしているからなぁ」

 行商人には、商人ギルドから商品を買い配送をする行商人もいる。この場合、その商人は配送先が本当に欲しい商品である為、完売が見込めるが商人ギルドが入っているため売り上げは安くなる。
 反対にその町の住民との交渉は、交渉しだいで安く買い付ける事ができ、他の町で当たれば高く売る事ができるのだ。しかし、当てがはずれると買いつけた商品がその町では需要がなく全く売れない可能性もある。商人としての勘や経験がものを言うのである。

「あんたも行商人としてもうけたいんだろ?だったら商人ギルドに行きな?あたしに騙されたと思ってね」

 ここで話をちゃんと聞いた方がいいのか?そんな時間があれば初めての町だから他のところもまわって、商品を買い付けたいんだかな・・・・・・

 商人は、町の奥さんの話を聞いて悩む。しかし、帝国にも行く商人として、この町はヒューマンの自分に優しく話しかけてくれたのは意外な事だ。

「わかったよ。ギルドによってみるよ」

「そうかいそうかい。あんたいい商人になるよ」

「まあ、騙されたと思って行くだけだからな」

 商人は、町の獣人の奥さんに手を降り商人ギルドに出向く。すると行商人が、ギルドに溢れかえっていた。まだ、出張所のような仮の小さな家屋だが、商人ギルドに商人が溢れかえっている光景はまずあり得なかった。

「ちょっとお待ちください!魔物の素材はまだ十分にあります!」

 商人ギルドの受付嬢は商人達を抑えている。商人達は商人ギルドから魔物の素材を買い付けているようだ。

「お、おい?何が商人ギルドで売り出されているんだ?」

「魔の森の魔物の素材だよ!」

「ま、マジでか?」

「ああ!あの素材なら、ギルドを通しても十分に利益が出るはずだ」

 商人は騙されたと思ってギルドに来たが騙されて良かったと思った。その日は、商人ギルドの配送業務を受けて、次の日に帝国に向かったのだった。

 こうして、マルクの町は行商人の間で情報が共有されることになった。マルクの町では大量の素材が行商人によって輸出され、行商人は他国でマルクの町で足りないものを買い付けてくれるのだ。
 つまり、行商人達は王国と帝国をピストン運送をしてくれるのだ。素材はなくなっても、ピストン運送をしていると行商人達は、マルクの町の農作物を買い付けて行商をしてくれた。
 魔の森を切り開いた町の土で作った農作物は栄養が高く美味しいと、他国で人気の食材で高値で取引されていた。なので、魔物の素材が買えなくても、行商人達は勘と経験でマルクの町の農作物を他国に売っていた。

「おばちゃん。この大根一本50ミストは高くないか?」

「そんな事を言ってもねぇ。こちらの行商人の方は50ミストで買い付けてくれるんだよ」

 すると農家の女性の隣にいた、行商人が勝ち誇った顔をして話してくる。

「おばちゃんの大根は人気だからな」

「どこの町だよ?」

「おっと!それは商人として言えるわけないだろ?自分で探しなよ」

 つまり、この行商人は一本50ミストで買い付けても十分に利益が出せる店と提携していると言うことだ。

「もう、売れる大根はないのか?」

「ごめんなさいね。こちら方が全部買い取ってくれたんだよ。あたしも生活があるからね。ごめんよ」

「くぅ・・・・・・」

 直接交渉は、少しでも高く買い付けてくれる行商人が勝つシビアなものだ。大根が欲しければ1本51ミストを提示するしかない。しかし、その町までの運送費や護衛料などいろいろ経費を計算しないといけないのだ。
 また、他の町では魔物が活性化していて、流通が滞っている地域もある。そういう場所なら高く買い付けても利益は出るが、危険な場所に行って死んでしまうのはあり得なかった。自分は商人であって正義の味方ではないからだ。そうなると、ここの大根は諦めるしかなかった。

「本当にごめんよ」

 農家の女性は謝罪するしかなかった。しかし、農家の女性はその行商人には少し待ってもらい、大根の取引をすませる。大根を買い付けた行商人はホクホク顔で農家を後にした。

「待たせてごめんよ」

「いえ・・・・・・それで話というのは?大根はまだあるのですか?」

「これを売ったら私達家族の分がなくなってしまいからね」

「で、では?」

「今まで大根を買い付けてくれてただろ?本当に悪いと思っているだよ。だから、別の野菜を買い付けてくれないかい?」

「別の野菜?」

「ああ。トマトなんだけどね」

「トマトは売れないよ。あまり人気がないんだよ」

「それは私もわかっているよ。だけど、こいつを騙されたと思って食べておくれ。栽培方法を変えて育ててみたんだよ」

 行商人は、トマトを丸かじりしてみた。

「こ、これは!全然青臭くない!それどころか甘味さえ感じる!」

「そうだろ?私のところはトマトも作っていこうと思っているんだよ」

「こいつは行ける!」

「ただ、トマトはみんなも食べない人が多いし、特に子供はこの食感が苦手だからね。あんたは顔も広いしどうかね?」

「おばちゃん!いくらだ?このトマトなら売れる!」

「そうかいそうかい。なら、大根と同じでいいよ」

「ちょっと待ってくれ。一個50ミストはまず買えないよ」

「いやいや、トマトは3個で50ミストだよ」

「本当にいいのか?」

「ああ、かまわないよ。あんたがこのトマトを広めておくれ。大根は悪い事をしたからね」

 行商人は、この甘いトマトを手に入れることが出来てホクホク顔で農家を後にした。
 こうして、マルクの町は行商人のおかげで急成長していくのだった。
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