上 下
283 / 361
第7章 覚醒

35話 帝国が生き残る道

しおりを挟む
 宰相や貴族達は、皇帝を見て愕然とした。影であるその姿が皇帝のままなのだが、頭から角が生えてきてその背から漆黒の翼が生えてきたからだ。

「皇帝!まさか貴様人間をやめたのか?」

「ぐははははははははははは!余は人間をやめたのではない人間を超越したのだ!」

「「「「「「「皇帝陛下!」」」」」」」
「帝国をどうするおつもりですか?我らは陛下を信じてここまでついてきたのです!」

 宰相達は皇帝が魔物のいや、魔王のようになっている姿に驚いているようだ。

「お主達のおかげだ!余は新たな力を得た。お前達にもう用はない!帝国全土は魔物のが支配する国となる。新たな魔物の大群が帝都をおそうだろう!」

「皇帝!」

「もし、帝都を滅亡させたくなければダンジョンに生け贄を1000人用意いたせ!一週間は帝国の安全を保証してやろう!」

「そ、そんな!」

「帝国はこのまま宰相お主が先導して、我が息子が成人したら次の皇帝にさせよ!」

「あー!話を勝手に進めるな。皇帝!お前ダンジョンマスターになってしまったのか?」

「ダンジョンマスターではなく魔王となったのだ!いずれ大陸を制圧してやるから楽しみにしているがよい!」

「そんな事僕がさせない!」

「ぐははははははははははは!それもまた一興よ。止めれるものなら止めるがよい。返り討ちにしてやるわ!ぐはははははははははははは!」

 皇帝はマルクを嘲笑い、その姿がスッと消えてしまった。

「さて、シオン帰るか」

「えっ?」

「もうここには用はないよ。帝国はダンジョンマスターとなった皇帝に搾取されるだけの国になってしまった」

「わかったよ」

 マルクとシオンが、お城の大広間を出ようとした時、宰相や貴族達が出口をふさいだのである。

「何のつもりだよ?」

「このまま出ていく事は許さん!帝国はダンジョンマスターとなった皇帝に滅亡させられてしまうからだ!」

「あんた達が今まで、他種族にしていたようにすればいいじゃないか?一週間は生き長らえるぞ?」

「お前は、先ほど皇帝陛下にい、いや、魔王にそんな事はさせないと言ったばかりであろう!帝都に、たった二人で攻め込んだ、その戦闘力を帝国の為に使ってくれ!」

「馬鹿な事を!こうなったのは帝国の自業自得だ。自分達で何とかすればいいだろ!」

「しかし、お主は先ほど・・・・・・」

「それは、元皇帝が帝国以外の国に手を出した場合だ。僕には関係ないよ」

「相手は魔王なんだぞ!」

 宰相が焦るのも無理はない。ダンジョンマスターは過去に大陸を手中に治めようと人類に牙を剥いたことがあった。その時は、王国やエルフ国等連合国として、魔王となったダンジョンマスターを討伐したのだった。
 しかし、今回は帝国の願いを他国が聞いて協力してくれるわけがないのだ。皇帝に騙されていたとはいえ、王国に戦争を仕掛けようとしたのは事実であり、長年人至上主義国としてヒューマン族以外を亜人と罵ってきていたのだ。
 今や帝国騎士団は、帝国を守れる状態ではなく他種族の者は帝国領地から続々と逃げ出して、それを止める手段がないのだ。

「今まで好き勝手してきたツケが回って来ただけだよ。帝国は魔王に滅亡させられるだけで、僕には関係ないよ」

「わ、わかった!戦争損害賠償を払おう!」

「それは当たり前の事で魔王討伐と一緒にするな!」

「で、では!魔王討伐の依頼をお主に頼みたい!だったら構わないだろ?当然、損害賠償請求も!」

 宰相は汗だくになりマルクに交渉した。しかし、マルクは宰相の言葉を遮る。

「あー!無理ですよ。帝国に損害賠償請求をしたら金は尽きるから、魔王討伐の依頼料は出せないよ」

「ば、馬鹿な!損害賠償請求にいくら請求するつもりだ!」

「350兆!」

 マルクの提示額を聞いて宰相達貴族は血の気が引いた。その額は、帝国の国家予算だったからだ。

「「「「「350兆ミストだと!」」」」」

「そんなに驚く事か?」

「当たり前だ!そんな値段払えるわけがなかろう!」

「別に払えなくとも払うんだよ。帝国騎士団は皇帝の命令ではない僕の町を侵略しようとして負けたんだ。その責任を金で払うのは当たり前だ!」

「それは・・・・・・」

 マルクは宰相を見つめたまま、大広間を出ようとする。しかし、帝国兵士がそれを阻止しようとした。

「「「「「出ていかせない!」」」」」

「助かった命を無駄にするなよ。まぁ、近いうちに生け贄になるかもだけどな」

「「「「「ぐっ!」」」」」

「僕は帝国を助けるつもりはない!他種族を犠牲にしてきて都合がよすぎるんだよ!」

「今帰られては帝国は破滅だ!」

「わかった!」

「わかってくれるか?」

「勘違いするな!どうせ滅びる帝国だ。魔王じゃなく僕が滅亡させてやるよ」

 マルクは宰相に右手を広げた。そして、マルクの手のひらに灼熱の火球が出現させる。

「ま、待て!わ、ワシは死にたくない!」

「だったらそこをどけ!」

 マルクの手のひらに出た火球はどんどん大きくなる。そして、帝国貴族や兵士はあわてて出入口から飛び退いた。そして、マルクとシオンは城から脱出したのである。
しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

処理中です...