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第7章 覚醒

27話 なすすべもなく倒れる

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 マルクが、帝国領地から他種族の者を次々に救出して、帝国の冒険者を懲らしめていた。

「き、貴様ぁ!その亜人は俺達が捕まえたんだぞ!横取りするなんて卑怯だぞ!」

「何を勘違いしている。僕はこの人達を救いにきただけだ!わずかな金の為に、何もしてない人を帝国に引き渡して恥ずかしくないのか?」

「はっ!何もしてないのにだと?亜人共はいるだけで罪なんだよ!」

「馬鹿な事を!」

 マルクは、獣人族の女性6人の前に立ち、冒険者を威嚇した。

「お前、その亜人達を騙して俺達の代わりに帝国に差し出すつもりなんだろ?だったら、俺達で山分けしようじゃねぇか?」

「うるさい!黙れ!」

「じゃあ!死ねぇ~~~~~~~~~~~!」

 帝国の冒険者は、リーダーの掛け声で6人が一斉にマルクに襲い掛かった。マルクは、帝国の人間性に怒りが込み上げ魔法を冒険者に放つ。

「ストーンバレット!」

 ボキッボキッボキッボキッボキッボキッ!

「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」

 帝国の冒険者はマルクの魔法に悲鳴を上げた。普通の魔法使いのストーンバレットは、ダメージを負うくらいの小さなダメージである。
 当然、帝国の冒険者もそれなりのレベルを持ち、マルクのような若僧の魔法ぐらいでは、ダメージはほとんどないとたかをくくり、避けることなくつっこんだのだ。
 その結果、冒険者6人全員の利き腕が吹き飛んだのだ。

「「「「「「ぎゃあああああああ!」」」」」」

「俺の腕がああああああああああ!」
「「「「「「いでぇ~~~~~~~!」」」」」」

「馬鹿な奴等だ!普通避けるだろ?なんで正面から突っ込んできているんだよ!」

「普通、ストーンバレットでBランク冒険者の腕は吹き飛びませんよ・・・・・・」

  マルクの後ろにいた、兎獣人の女性が目を丸くして驚いていた。

「えっ?こいつ等Bランク冒険者なの?」

 Bランク冒険者と聞いて、マルクがびっくりして声を上げた。

「そうですね。だからあたし達も助からないと思ってました」

「帝国の冒険者は精神的にも低レベルなんだな?こんな奴らがBランクだなんて驚きだよ」

「いでぇ!助けてくれ!」

「お前等は盗賊と一緒だ!百害あって一利なしだ。本来なら兵士に突き出すとこだが、帝国兵士も腐っているから僕が楽にしてあげるよ」

 マルクは帝国の冒険者に右手を広げた。

「や、止めろ!まだ、死にたくない!」

 冒険者達は、自分の利き腕を押さえて背を向けて逃げ出したのだ。

「ストーンバレット!」

 マルクは、冒険者達の心臓に命中させた。ストーンバレットは冒険者の心臓を貫き絶命させたのだった。
 獣人達は、マルクの魔法の威力に言葉を失った。ストーンバレットは土属性の初級魔法で親指程の大きさの石礫だ。その石礫が人体を貫くのは見たことがなく、それを可能にするのはマルクの魔法力が余程高い事になる。

「さて、君達はこれからどうする?」

「これから帝国の国境を越えて、王国に向かうつもりです」

「獣人国にはいかないのか?君達全員獣人族だろ?」

「いえ・・・・・・獣人国はアインシュタル王国より小さな国ですから。大陸一大きな国が安心ですから」

「王国に向かっても、身分証がないと入国出来ないよ?国境付近でまたされるのがオチだよ」

「しかし、帝国は王国に戦争をしようとして、王国さえ落とせれば他の国は楽勝と唄っているんです」

「じゃあ、なおさら王国は止めた方がいいんじゃないの?」

「王国は多分大丈夫です!魔物部隊がいても王国は負けません」

「えらい自信があるんだね?」

「当たり前ですよ!王国には凄い英雄がいるんですからね」
「「「「「そうですね!」」」」」
「帝国までその名は届き、帝国の他種族達は自分の故郷に帰らない理由は、その人が王国にいるからです」

「そうなんだ。まさか、帝国まで届いているとは思わなかったよ」

「「「「「えっ?」」」」」

「その英雄の名は?」

「「「「「マルクさんですよ」」」」」

「そのマルクが僕だよ」

「「「「「「ええええええええ!」」」」」」

 マルクは、ギルドカードを獣人達に見せると涙を流して喜んだ。自分達は、本当に運が良かったと、マルクに何回も頭を下げていた。そして、マルクは王国の状況を説明して、獣人達を直接マルクの町に案内したのだった。
 当然、獣人族達はマルクのゲートに驚いたのは言うまでもなく、マルクは世界地図でどんどん他種族の人間を救出していた。

「マルクの大将!こんな感じでどうだい?」

「いいじゃないか!さすがアインシュタル王国一と言われた棟梁の仕事だな!」

「わしも、この年になって初めてだぜ!魔の森の材木だけで家を作らせてもらったのは!本当にありがとな!」

 大工の棟梁の仕事はマルクの屋敷だった。この町の家の材木は全て魔の森の材木だけで作られ、以前リーラン地方であったような地震がきても倒壊する事はまずないだろうと、大工職人達は満足げであった。
 その時、城門の上にいたゴーレム達から一斉に警戒音が鳴り響いた。

「な、なんだ?」

「この町に向かう魔物集団あり!警戒せよ!」

「ス、スタンピードか!」

 町中に響く警戒音に、町の住民は震え上がる。大工の棟梁も顔面蒼白になり、マルクに避難を呼び掛けていた。

「マ、マルクの大将!ど、どうすんだ?わしはまだ死にたくない!」

「棟梁落ち着いて!魔物集団はこの町に一切入れないよ」

「そんなわけねぇだろ?スタンピードたぜ?」

「僕を誰だと思っているんだよ?」

「しかし、あのスタンピードは帝国の魔物部隊で統率がとれていると聞くぜ?」

「所詮、オーガまでの低ランクで見てみなよ。システィナ一人で十分だ!」

 棟梁がマルクに言われ、城壁の上を見るとシスティナだけが矢を構えていていた。オウカやシオンは住民達を落ち着かせようとしていたのだ。

「アローシャワー!」

 システィナは、矢を魔物に向けず天空に放つ。すると広範囲に渡り魔力の矢が魔物に降り注いだ。

『『『『『グオオオオオ!』』』』』

 スタンピードと言っても、マルクの言ったように所詮オーガまでの魔物であり、システィナの敵ではなかった。降り注いだアローシャワーにオーガやオークはなすすべもなく、システィナ一人に討伐されていくのだった。それを見た町住民は歓声を上げるのだった。
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