役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした！

本条蒼依

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第７章　覚醒

１３話　緊張が走る国境

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　マルクが自分の土地を整備していた頃、バッカン帝国領では、悪魔が暗躍を開始し始めていた。

「待ってくれ！何で俺達がこんなことをしないといけないんだ！」

「うるさい！亜人奴隷が、皇帝の命に逆らうつもりか！」

「馬鹿な！いくら皇帝様でも奴隷の命を無下に出来ないはずだろ？」

「お前達には、帝国の為にダンジョン攻略をしてもらう」

「そんな横暴な！俺達は生産者なんだぞ！」

「だったら生き残れ！」

　帝国兵士達は、ドワーフ族や獣人族あらゆる種族の奴隷を購入して、ダンジョンに送り込もうとしていた。奴隷達は、この横暴な行為に意見をぶつけていた。
　犯罪奴隷なら、こうしたダンジョン攻略にも文句は言えないが、ここに集められた奴隷達は冤罪をかけられて奴隷に落とされた者や借金奴隷達も多数いたのだ。

「そんなむちゃくちゃな！」
「「「「「やめてくれ！」」」」」
「「「「「お願いだぁ！」」」」」
「俺達に、ダンジョンの魔物を討伐できる訳がねぇんだ！」

　奴隷達は縄に縛られ、ダンジョンに強制連行されていった。帝国兵士達は、奴隷達にダンジョン攻略させるつもりは最初からない感じである。

　その頃、皇帝の寝所では皇帝が高笑いを上げていた。

「ふははははは！余は最強の力を手に入れた！亜人達を集めるのだ！」

　薄暗い部屋の中で笑う皇帝は、今まで以上に人至上主義になり亜人族の命は、自分達ヒューマン族の為にあると思っているようだ。
　帝国領に住む他種族は、カノン達のように金を貯めて帝国領を逃げ出す準備をしていたがこうなると話は変わってくる。金を貯めてと言ってはいられない。
　ヒューマン族は、他種族にいちゃもんをつけて衛兵に通報しだすからだ。平民達も僅かな金の為に、他種族を陥れようと必死になっていた。
　他種族は金がなくても帝国領から出る選択を強いられたのだ。そうじゃないと冤罪をかけられて奴隷に落とされるからだ。そして、帝国に買い取られて強制労働をさせられると噂は一気に広まった。

　帝国領に住む他種族は当然だが、町に平然には住めない。今までもスラムに隠れて住んでいた。大抵は大きな町から離れて他種族の村の中で平和に自給自足の生活だ。町で住む他種族は、カノン達のようにほとんど冒険者で金を稼いで帝国を早く出たいと思っていた者達だ。
　冒険者になれない者達は、生活を切り詰め金を貯めて帝国を出るしかないが、人至上主義国家では乗り合い馬車や町の入場料も金が断然高く設定されている。
　しかし、他種族は命には変えられないと旅の準備が整ってないのに帝国領の脱出を決意した。

「なんだあれは！」
「まさか、スタンピードか？」
「違う！人だ！」

　アインシュタル王国国境警備隊が見たのは、おびただしい人数の難民達だ。帝国領から逃げ出した他種族である。

「止まれ！ここからは、アインシュタル王国領となる！身分証の提出を求める！」

　難民達のほとんどは身分証がなかった。冒険者や商人はギルドカードを持つが、帝国民は身分証を発行せず逃げてきたからだ。帝国で身分証を発行してもらうには莫大な金額を用意しないといけない。それかあれば、他国にも移り住む手続きができる。

「た、頼みます。帝国領にいれば家族が殺されてしまいます・・・・・・」
「我々を王国に受けいれてくれ・・・・・・」

「ちょっと待て！決まりは決まりだ！身分証を発行して出直してもらわないとこちらが困る！」

「帝国には戻れない！戻ったら奴隷に落とされる」

「お主達は犯罪者か？」

「「「「違う！」」」」

　国境警備隊の兵士は難民達に、水晶の魔道具に触れてもらった。すると水晶は青く輝き犯罪者でない事が証明される。犯罪者であれば赤く輝くからだ。この魔道具は各町にもある物だ。

「しかし、身分証が無い者を王国領に入れるわけにはいかないんだ。わかってくれ・・・・・・」

「衛兵さん、その者達を入国させて一時保護もしてやれないのか？」

　話かけてきたのは、身分証を提示した冒険者や商人達だ。自分達だけ入国できて罪悪感があるようで衛兵に話しかけてきたのだ。

「お主達は入国できたから関係ないではないか？」

「それはそうだが、これからアインシュタル王国に難民が押し寄せてくるぜ？」

「どういう事だ？」

「今は、まだここにいるのは１００人足らずだが、帝国領は他種族にとって最悪最恐な国になっちまったんだよ」

「はぁあ？」

「そんな国に他種族はもう住めねぇから、亡命者が続々やってくるぜ？」

　兵士が難民を見ると、ヒューマン族は一人もいなかった。入国出来ない者は自分の命を捧げるから、子供達だけでも保護して欲しいと懇願していた。
　今の帝国の事情を聞いた国境警備の隊長は、自分が責任を取ると言って難民を国境の兵舎に一時保護する事に決めた。

「誰か！辺境伯様に帝国に異変があると早馬を飛ばせ。あと難民の保護を！」

「「「「「はっ！」」」」」

　辺境伯は、他国から自国を守る為に国境付近にいる。国王の信頼を得ている貴族の一人だ。
　早馬の兵士は、国境から１日の距離にあるミトンの町に到着した。

「大変だ！帝国領から亡命者が多数現れた！」

「なんだと？それで難民はどうしたんだ？」

「ランディ隊長の指示で一時保護していますが、避難してきた冒険者によりますと、これから難民の数は増えると言う情報が入りました」

「馬鹿な！難民の数が増える言っているのか？」

「はい！早急に対処しないと、国境付近は難民でどうにもならない事になります！直ぐにナーバレン辺境伯様に報告を！」

　この事は直ぐにナーバレンに報告されて、国境警備が強化された。帝国に不審な動きがありと聞いて用心の為である。

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