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第6章 異世界転移
56話 猛獣王ダイガロス出現の報せ
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マーブルの提案には乗らないマルクは、王都エンリダムで城壁の修繕ブロックの運搬をしていた。
「マルクさんがこの仕事をしてくれて、修繕作業が進んだよ。本当にありがとな」
この修繕ブロックは山から切り出した大岩を、王都エンリダムに運搬するのが仕事だ。依頼を受注する人間はポーターが殆どで収納スキルを持つ職業の人間だ。しかし、2tもの重さのブロックを五個運べる人間が優秀であり普通は三個が限界だ。
その中でマルクのインベントリは無制限で運ぶのだから、修繕作業が一気に進むのは当たり前だ。
マルクは、山からの帰りにボアやウルフ、ディアの肉を取って町に大量に卸すのだ。それだけで十分な収入があるので、マーブルの説得が上手くいくわけがないのは当然だった。
「そういや、マルクさんよ」
「何ですか。悪ぃんだけどブロック運搬の依頼は当分受けなくていいからな」
「ええ。構いませんよ」
「本当、悪ぃな!俺達は受けてほしいんだか、マルクさんが受けると他のポーターの仕事がなくなっちまうからよ」
「大丈夫ですよ。今回は工期が遅れていたのを聞いたから依頼を受けたんで」
「本当に悪ぃな!また、ピンチな時は助けてくれ」
城壁修繕の職人達は、マルクに頭をあげていた。マルクも他のポーターの仕事を無理やり奪うつもりもないので笑顔で了承した。
そんなことを3ヶ月過ごしていたが、マルクもそろそろ焦っていた。この世界にやって来て10ヵ月が経とうとしていたからだ。シオン達は、ディクトに殺されてしまったのかどうかもわからない。
早く元の世界に戻らないといけないが今の自分には何もできないのだ。予想では獣人国で、猛獣王が出現する予想をしていたが一向に現れないのだ。
マルクは焦ってもしょうがないと思い、暇な時間はシオン達の武器の製作に時間を当てたのだった。
そんな歯がゆい日々がさらに3ヶ月が過ぎようとした頃、マルクがギルドの酒場で食事をしていると獣人族のバナーが珍しくマルクに声をかけてきた。
ドラコニア族のブレスと違い、バナーはあの一件からもマルクに歩み寄る事はなく、付かず離れずの関係性だった。
「マルクの兄貴!頼む。この通りだ!」
「いきなりどうしたんだ?お前が兄貴なんて言うなんて・・・・・・」
バナーというより、種族的に心を開きにくいのだろう。エンリダムにいた獣人族はそんな感じだった。
「マルクの兄貴。獣人王国を救ってほしいんだ!」
「リベリア王国を救ってほしいって?お前今まで故郷に帰っていたのか?」
「ああ・・・・・・マルクの兄貴が、猛獣王の事を言ってただろ?」
「ああ・・・・・・だけど、あれから半年程たったが何もないみたいだし、僕の予想は外れたみたいだよ」
「違うんだ!マルクの兄貴の予想は当たったんだ。今、リベリア王国では猛獣王ダイガロスが暴れている。頼む。この通りだ!」
「リベリア王国は、自分達で何とかしようとしているのか?」
「そうなんだ。しかし、状況は芳しくないんだ」
「何でリベリア王国はそんな無理をしてんだ?」
「こう言ってはなんなんだが、獣人族はヒューマン族を信じちゃいねぇ。当然だが過去の事は忘れちゃいねぇんだ。マルクの兄貴の噂はリベリア王国にも届いているんだが、俺達獣人族はヒューマン族に頼る事は多分しない・・・・・・」
「だったら、どうしようもないじゃないか?」
「だから、こうして俺が頼んでいるんだよ」
「バナー、お前が頼んで報酬はなにがだせるんだ?ブリーナッシュ王国との架け橋になれるのか?」
「そ、それは・・・・・・しかし、このままじゃリベリア王国は滅亡しちまう」
「助けてほしいと言わないならしょうがないだろ?」
「だから、俺が助けてほしいと!」
「うん。それは聞いたよ。リベリア王国が太刀打ちできないような魔物の討伐を、バナーは僕に討伐依頼をするんだよね?逆の立場だったら、君は冒険者としてどれ程の報酬を請求するんだい?」
「うぐっ・・・・・・」
「支払えないというなら悪い事は言わない。バナーの両親や身内の者だけでも説得して、ブリーナッシュ王国に逃げてきた方がいいよ」
「リベリア王国を見捨てろと言うのかよ!」
「このままじゃリベリアは滅亡するんだろ?僕がリベリアに住んでいたなら動く事もありえるが、他国の事だからな。報酬が見合うなら動くよ」
バナーは、マルクの言う事に何も言えなかった。実際自分も同じ立場なら同じ事を言うからだ。
すると、話を聞いていたブレスが話に割って入ってきた。
「兄貴。俺からも頼むよ。リベリア王国を助けてやってくれないか?」
「おいおい。お前まで何を言ってんだよ」
「兄貴は本当にリベリア王国を見捨てるつもりなのか?」
「見捨てるも何も、リベリア王国から依頼があった訳じゃないだろ?」
「兄貴はヒューマン族だからわからないが、獣人族は素直になれないだけなんだ。本当は兄貴に依頼をしたいはずだと思うぜ」
「いやいや。だからってなんで僕が気をきかす必要があるんだよ。悪いがリベリア王国の国王の顔も名前も知らないしな」
「はぁあ!なんで知らないんだよ」
「僕の人生に関わらないのに知るかよ!それに獣人王国がリベリア王国って名前もさっき知ったばかりだよ」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「とにかく、僕を動かしたいなら国の要請があるなら動くよ」
それを聞いたバナーは、ただ佇むしかなかった。マルクは我関せずとばかりに食事をすませて、冒険者ギルドを後にしたのだった。
そして、マルクはようやくこの時がきたと思い、笑顔となっていた。バナーにはああ言ったが、マルクは猛獣王を討伐するつもりでいた。
バナーのお願いを聞いて動けば、冒険者として依頼報酬が発生するからだ。本来ならリベリア王国が依頼してくれれば理想だが、ヒューマン族の世話になりたくないというのであれば、勝手に討伐してしまえばいいだけなのだ。
そして、マルクは誰にも言わず、リベリア王国に転移するのだった。
「マルクさんがこの仕事をしてくれて、修繕作業が進んだよ。本当にありがとな」
この修繕ブロックは山から切り出した大岩を、王都エンリダムに運搬するのが仕事だ。依頼を受注する人間はポーターが殆どで収納スキルを持つ職業の人間だ。しかし、2tもの重さのブロックを五個運べる人間が優秀であり普通は三個が限界だ。
その中でマルクのインベントリは無制限で運ぶのだから、修繕作業が一気に進むのは当たり前だ。
マルクは、山からの帰りにボアやウルフ、ディアの肉を取って町に大量に卸すのだ。それだけで十分な収入があるので、マーブルの説得が上手くいくわけがないのは当然だった。
「そういや、マルクさんよ」
「何ですか。悪ぃんだけどブロック運搬の依頼は当分受けなくていいからな」
「ええ。構いませんよ」
「本当、悪ぃな!俺達は受けてほしいんだか、マルクさんが受けると他のポーターの仕事がなくなっちまうからよ」
「大丈夫ですよ。今回は工期が遅れていたのを聞いたから依頼を受けたんで」
「本当に悪ぃな!また、ピンチな時は助けてくれ」
城壁修繕の職人達は、マルクに頭をあげていた。マルクも他のポーターの仕事を無理やり奪うつもりもないので笑顔で了承した。
そんなことを3ヶ月過ごしていたが、マルクもそろそろ焦っていた。この世界にやって来て10ヵ月が経とうとしていたからだ。シオン達は、ディクトに殺されてしまったのかどうかもわからない。
早く元の世界に戻らないといけないが今の自分には何もできないのだ。予想では獣人国で、猛獣王が出現する予想をしていたが一向に現れないのだ。
マルクは焦ってもしょうがないと思い、暇な時間はシオン達の武器の製作に時間を当てたのだった。
そんな歯がゆい日々がさらに3ヶ月が過ぎようとした頃、マルクがギルドの酒場で食事をしていると獣人族のバナーが珍しくマルクに声をかけてきた。
ドラコニア族のブレスと違い、バナーはあの一件からもマルクに歩み寄る事はなく、付かず離れずの関係性だった。
「マルクの兄貴!頼む。この通りだ!」
「いきなりどうしたんだ?お前が兄貴なんて言うなんて・・・・・・」
バナーというより、種族的に心を開きにくいのだろう。エンリダムにいた獣人族はそんな感じだった。
「マルクの兄貴。獣人王国を救ってほしいんだ!」
「リベリア王国を救ってほしいって?お前今まで故郷に帰っていたのか?」
「ああ・・・・・・マルクの兄貴が、猛獣王の事を言ってただろ?」
「ああ・・・・・・だけど、あれから半年程たったが何もないみたいだし、僕の予想は外れたみたいだよ」
「違うんだ!マルクの兄貴の予想は当たったんだ。今、リベリア王国では猛獣王ダイガロスが暴れている。頼む。この通りだ!」
「リベリア王国は、自分達で何とかしようとしているのか?」
「そうなんだ。しかし、状況は芳しくないんだ」
「何でリベリア王国はそんな無理をしてんだ?」
「こう言ってはなんなんだが、獣人族はヒューマン族を信じちゃいねぇ。当然だが過去の事は忘れちゃいねぇんだ。マルクの兄貴の噂はリベリア王国にも届いているんだが、俺達獣人族はヒューマン族に頼る事は多分しない・・・・・・」
「だったら、どうしようもないじゃないか?」
「だから、こうして俺が頼んでいるんだよ」
「バナー、お前が頼んで報酬はなにがだせるんだ?ブリーナッシュ王国との架け橋になれるのか?」
「そ、それは・・・・・・しかし、このままじゃリベリア王国は滅亡しちまう」
「助けてほしいと言わないならしょうがないだろ?」
「だから、俺が助けてほしいと!」
「うん。それは聞いたよ。リベリア王国が太刀打ちできないような魔物の討伐を、バナーは僕に討伐依頼をするんだよね?逆の立場だったら、君は冒険者としてどれ程の報酬を請求するんだい?」
「うぐっ・・・・・・」
「支払えないというなら悪い事は言わない。バナーの両親や身内の者だけでも説得して、ブリーナッシュ王国に逃げてきた方がいいよ」
「リベリア王国を見捨てろと言うのかよ!」
「このままじゃリベリアは滅亡するんだろ?僕がリベリアに住んでいたなら動く事もありえるが、他国の事だからな。報酬が見合うなら動くよ」
バナーは、マルクの言う事に何も言えなかった。実際自分も同じ立場なら同じ事を言うからだ。
すると、話を聞いていたブレスが話に割って入ってきた。
「兄貴。俺からも頼むよ。リベリア王国を助けてやってくれないか?」
「おいおい。お前まで何を言ってんだよ」
「兄貴は本当にリベリア王国を見捨てるつもりなのか?」
「見捨てるも何も、リベリア王国から依頼があった訳じゃないだろ?」
「兄貴はヒューマン族だからわからないが、獣人族は素直になれないだけなんだ。本当は兄貴に依頼をしたいはずだと思うぜ」
「いやいや。だからってなんで僕が気をきかす必要があるんだよ。悪いがリベリア王国の国王の顔も名前も知らないしな」
「はぁあ!なんで知らないんだよ」
「僕の人生に関わらないのに知るかよ!それに獣人王国がリベリア王国って名前もさっき知ったばかりだよ」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「とにかく、僕を動かしたいなら国の要請があるなら動くよ」
それを聞いたバナーは、ただ佇むしかなかった。マルクは我関せずとばかりに食事をすませて、冒険者ギルドを後にしたのだった。
そして、マルクはようやくこの時がきたと思い、笑顔となっていた。バナーにはああ言ったが、マルクは猛獣王を討伐するつもりでいた。
バナーのお願いを聞いて動けば、冒険者として依頼報酬が発生するからだ。本来ならリベリア王国が依頼してくれれば理想だが、ヒューマン族の世話になりたくないというのであれば、勝手に討伐してしまえばいいだけなのだ。
そして、マルクは誰にも言わず、リベリア王国に転移するのだった。
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