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第6章 異世界転移

42話 奇跡の生還

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 カイザーはマルクの一撃に倒れ、全てをマルクに任せる事にした。

「国王様、ちょっとよろしいですか?」

「なんだね?私が出来る事ならなんでも協力させてもらうよ」

「そうじゃないんですが・・・・・・」

「なんだね?」

「ドラグーン王国騎士団の治療をさせていただきますね。多分、今は騎士団が役に立つ状態ではないですよね?」

「それはそうだか・・・・・・そんなことが可能なのか?」

 ドラグーン王国の騎士団の怪我人の数は膨大で、ポーションが足りない事態に陥っており、今もヒーラーが懸命に治療をしていた。

 騎士団長や隊長クラスのドラコニア族は、部下から治療をしてくれと言い、どんどん体力が尽きていきそうな状態だったのだ。

 マルクが兵士達の治療室に入ると、そこは戦場のようでヒーラーはもちろん錬金術師達も世話しなく動いていた。

「まだギルドから薬草がとどかないの?」
「まだです!」
「もうすぐ在庫が切れるからギルドに行って来てちょうだい」
「わかりました!」
「私、もうダメです・・・・・・MPが尽きます・・・・・・」
「ちょっと、しっかりしなさい!」

 ドラコニア族はどちらかと言えば戦士系の種族だ。数少ないヒーラーや錬金術師が頑張って治療をしていた。
 そして、マルクがカイザーと一緒に治療室に入るとヒーラー達は、国王の姿に驚き治療の手を止めた。
 
「国王様この様なところに・・・・・・用があれば!」

「皆の者、忙しいところすまない。今までよく頑張ってくれた。もう大丈夫だ!」

「大丈夫とは?薬草が届いたのですか?」

「いや、このマルクが治療をしてくれる」

 国王の言葉に、ヒーラーや錬金術師達は落胆していた。ヒューマン一人が来たところで、焼け石に水だからだ。

「マルクよろしく頼む!」

 カイザーがそう言うと、マルクはエリアヒールを唱えた。部屋全体が光輝きベッドに安静にしていた騎士達の傷がふさがったのだった。

「う、嘘・・・・・・」

 マルクの回復魔法は通常の10倍の威力があり、部屋で寝ていた騎士達は一気に全回復してしまい、ベッドから起き上がる事ができた。

「き、奇跡だ!」
「す、凄い・・・・・・・」
「エルフ族の聖職者より凄いんじゃない?」

「この部屋はもう大丈夫みたいですね」

「マルク、いや、マルク殿!本当にありがとうございます」

「国王様やめて下さいよ。今まで通りで構いませんから・・・・・・それにまだ全員治療は済んでいませんよ」

「そうだったな。部屋はこっちだ。よろしく頼む!」

 カイザーは、マルクを治療室を連れて回り、マルクは騎士達を治療した。そして、ひときわ重傷者はエリアヒールでは完治出来なかったので、マルクが個別に治療した。

「パーフェクトヒール」

「お、俺の腕が!」

 カイザーや貴族達はもちろん、ヒーラー達はマルクの回復魔法に歓喜する。
 今までは、傷があった重傷者だったが、今いる治療室には欠損した騎士達だったからだ。
 
 マルクの回復魔法で、手や足が無くなった者や失明した騎士達が復活をとげたのである。
 治療をしてもらった騎士達は、マルクの手を握り涙を流し感謝した。そして、一番最後に騎士団長のクバートが治療をされた。

「本当にありがとうございます。この恩は一生忘れません」

 騎士達はマルクに頭を下げていた。仮に命が助かっても引退をしないといけなかったが、完全回復したことで君主に仕える事が出来る喜びは、何物にも替える事ができない喜びだったのだ。

「国王様、少しよろしいですか?」

「治療費の心配はいらん。ちゃんと支払わせていただくよ」

「それは心配していませんよ。ちゃんと支払っていただきます」

「わはははは!お主はさすがだな。まあよい。それでなんだ?」

「国王様と宰相様とだけお話がしたいんです」

 マルクの真剣な目に、カイザーは人払いを命じた。

「それでなんだ?私達二人だけに話とは?」

「今からする事は本当にご内密にして欲しいのです」

「どういう事だ」

「こちらに来ていただけますか?」

 マルクは、騎士団が眠る安置室にやってきた。

「この様なところに連れてきてどうしたのだ?」

「宰相様、この人達は治療も空しく昨日亡くなった騎士達です」

「わかっておる。この者達の無念を思うと心が痛いの・・・・・・」

「よろしいですか?ここで見たことは内密にして下さいね」

 マルクは安置室で、フェニックスウィングを広げた。

「な、何をする気だ?」

「国王様、絶対約束して下さいね。フェニックスヒール!」

 マルクはフェニックスヒールを唱えると、安置された遺体にフェニックスウィングから次々に撃ち出された羽が命中した。すると、遺体が燃え始め虹色に輝く。

「マルク殿!我が騎士団の遺体に何をするのだ!」

 カイザーはマルクの胸ぐらを掴んでいた。

「落ち着いてください」

「これが落ち着いていら・・・・・・なっ!」

「なんだとっ!私は夢を見ているのか?」

 カイザーと宰相は、目の前で起こった事に目を白黒させた。虹色に輝く遺体は傷や欠損が治り、静かにその目を開き起き上がったのだ。

「こ、ここは?」
「俺は一体・・・・・・」
「俺は死んだはず」
「確か俺は・・・・・・」

 その状況に、カイザーと宰相は腰を抜かしたのだった。




 
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