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第6章 異世界転移

41話 大陸最強の剣士倒れる

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 カイザーは、ドラグーン王国で剣豪と言われた相手だ。その相手にマルクの大胆不敵な行動はカイザーの怒りを買う事になった。

ぬしよ!剣豪と言われる私に武器は要らぬと申すのか?」

 カイザーの武器はファルシオンという剣だ。片手でも両手でも扱えるロングソードより大きな刃の剣である。

「ええ!ハンデですよ。これからあなたより強い古代竜を相手に単独討伐するんですからね。これぐらいやらないと、あなたも納得できないでしょうからね」

 マルクは、カイザーを煽るようにウィンクをした。

「私を煽っているつもりか?そのふざけた態度を正してやろう!」

「あいつ死んだな・・・・・・」
「ああ・・・・・・陛下を相手に拳一つだなんて・・・・・・」
「ああ、馬鹿につける薬はないな」
「死んで後悔することになるだろう」

 周りにいる貴族達が、口々に陰口を叩いていた。

 カイザーはマルクに対して剣を構えた。マルクにはマルクの考えがあった。ここまで徹底的に実力をわからせないといけないと思っていたのである。
 当然だがカイザーは、自分の国の兵士を誇りに思っていた。大陸一の騎士団だからだ。主力部隊とか関係なく末端の兵士にも同じように、レベルが低いから臆病風に吹かれるようなドラコニア族ではないと。
 マルクもそれがわかっていたからこそ、カイザーを煽って本気を出させようとしたのだ。

 マルクは、カイザーに対して構えを取らず棒立ちだった。

「ナメるのもいい加減にしろ!瞬歩」

 カイザーはマルクとの間合いを一瞬にして詰める。瞬歩とは、相手との距離を一瞬にして詰める瞬間移動のような踏み込み技だ。
 一瞬にして間合いを詰めたカイザーは、その大きな剣を振りかぶる事はせず、ハリケーンスラッシュを繰り出してきた。

「さすが国王様だね」

「な、何っ!」

 マルクはカイザーの無数の剣撃をすべて回避した。ハリケーンスラッシュとは、毎秒4発の剣を繰り出すアクティブスキルだ。
 マルクはカイザーの無数の攻撃を10秒間かわし続ける。つまり40発もの攻撃をあの間合いで回避したのだ。

「いまのは何だ?」
「ワシには見えなかったぞ?」
「何が起こったのだ?」

 貴族達はもちろんカイザーの動きは見えず、兵士達も言葉を失っていた。

「陛下の攻撃を回避しただと!」
「あの動きはなんだ・・・・・・」

 ゴクリ・・・・・・

 兵士達は、カイザーとマルクの殺し合いのような試合に固唾を飲んだ。

「ば、馬鹿な!」

 カイザーは、マルクの動きを捕らえる為、スピード重視の技を繰り出す。しかし、マルクはそれをすべて交わし続ける。

「国王様。もう僕の実力はわかったでしょ?」

「やかましい!まだ負けてはおらぬわ!お主こそ逃げ回ってばかりで、私を倒せないのではないか!」

「そんなに痛いおもいがしたいんだ。だったら少しだけ僕の実力を見せてあげるよ」

「今まで本気じゃなかったと?ハッタリぬかすなぁ!」

 カイザーはマルクの言葉に、更にスピードを上げた。もう、兵士達にもカイザーの剣筋は見えていなかった。それでも、マルクはカイザーの剣筋を見切り交わす。

「おのれ!ちょこまかと鬱陶しい!」

 カイザーは、渾身の力を込めてファルシオンを振り下ろした。しかし、マルクの姿はそこにはなかった。

「ど、どこに行った?」

 カイザーの目には振り下ろす寸前まで、マルクの姿をとらえていた。カイザーはマルクを探し辺りをキョロキョロすると、右斜め後ろ4時の方向に捕らえた。

「おのれ!ちょこまかと!瞬歩」

 カイザーが瞬歩を使った瞬間に、マルクがカイザーの懐に跳び込んできたのだ。

「テレポート」

「な、なんだと!私の瞬歩より・・・・・・」

 カイザーは自分の目を疑った。長年修行をして瞬歩を極めた自分より速く間合いを詰められたのだ。
 マルクの場合は、瞬歩ではなく魔法の瞬間移動だがカイザーにはわからない。カイザーは瞬歩を繰り出したが、いきなりマルクが懐に入ってきたことでカウンター状態で、マルクの拳が腹に決まる。

「ごはっ!」

 カイザーは、マルクの渾身の力を腹に受けて悶絶することになる。
 カイザーはマルクの拳を受け、訓練所の壁に叩きつけられ、その衝撃に気絶してしまった。

「「「「「「陛下!」」」」」」

 貴族や兵士達は、カイザーの元に駆け寄るがカイザーの意識はなくその場に崩れ落ちた。

「ま、まさか国王陛下が負けるなんて」
「し、信じられん」
「う、嘘だろ?」
「あれを見てみろよ。陛下相手に試合したのに息一つ乱れていない・・・・・・」
「お前達、国王を医療室に早く運ぶのだ!」

「「「「「はっ!」」」」」

「宰相様!グレーターヒールポーションがもうありません・・・・・・」

「なんだと!何故在庫がないのだ!」

「陛下が兵士達の治療に使えと言われて、重傷者に優先的に使ったばかりで・・・・・・」

「何て事だ!」

「宰相様大丈夫ですよ」

「何が大丈夫だ!国王様にこんな怪我をさせた張本人が!」

 マルクは、宰相を無視してカイザーにグレーターヒールを唱えた。

「「「「「おおお!」」」」」

 マルクが唱えた回復魔法で、カイザーにできた痣や出血はなくなり、カイザーは目を覚ました。

「「「「「陛下!」」」」」

「わ、私は負けたのか・・・・・・」

 目を覚ましたカイザーは呆然として、負けたのかと呟いた。

「「「「「はい・・・・・・」」」」」
「しかも、マルク殿が陛下の治療までしてくれまして、あのままでは陛下は寝たきりになっていたかもしれませぬ」

 マルクの一撃は、カイザーすらも重傷者にするもので、ここにいる兵士が同じ攻撃を受けていたらあの世行きだっただろうと思われた。

「私が何もできなかったとは・・・・・・」

「国王様、今までの無礼をお許し下さい。僕の実力をわかってくれないと、一人で古代竜の討伐を許可してくれなかったので、わかってほしかったのです」

「・・・・・・」

 カイザーはマルクの目を見て、一言だけ呟くように言った。

「古代竜を討伐してくれ・・・・・・」

 マルクは、カイザーの言葉に笑顔で応えるのだった。

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