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第6章 異世界転移

21話 災害級の魔物の正体

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 冒険者ギルドリズムダルム支部のホールにはパラライズで麻痺している冒険者達が身動き出来ずにいた。

「きゃ!ちょっ、ちょっとあなた一体何を!」

「ああ。こいつ等は町の中で僕を襲った盗賊だからな」

 マルクは、冒険者達の身ぐるみを剥いで素っ裸にして、冒険者ギルドの外に放り出してしまった。冒険者ギルドの外では悲鳴が上がっていたがマルクは気にも止めずギルドの扉を閉めてしまった。

「あなたとんでもないわね・・・・・・」

「誉め言葉として受け取らせてもらうよ」

 ギルドの外では、誰かが通報したのだろう。衛兵がとんできたみたいだった。

「お前達!素っ裸で何をしておるか!」

「「「「「ううう・・・・・・」」」」」

「こいつ等麻痺しているのか?」

 衛兵は冒険者達を毛布に包み、とりあえず冒険者ギルドに運び込んだ。

「すまぬ!ちょっと場所を借りたい」

「ああ。そいつ等は僕を襲った盗賊です。返り討ちにしたので、牢屋に閉じ込めて下さい」

「はぁあ?ヒューマンのお主が返り討ちだと?」

 衛兵は、ギルド受付嬢に事情を聞き直していた。

「今の話は本当なのか?」

「はい・・・・・・信じられない事ですが、ダイダロスさん達が、そこのヒューマン族の青年に襲いかかり返り討ちに・・・・・・」

「「「「「・・・・・・」」」」」

 衛兵達は、ギルド受付嬢の話を聞いて言葉を失っていた。

「しかし、なぜこいつ等は公共の場で素っ裸なんだ?」

「それは、こいつ等は僕に決闘を申し込みもなくこのホールで腰の物を抜いたから盗賊とみなしたんだ」

「はっ?」

「だから、返り討ちにしたらこいつ等の財産の装備品を貰ったんだよ」

「とんでもない奴だな・・・・・・」

「そうか?町中で襲いかかる方がとんでもないだろ?」

「それはそうだが・・・・・・」

「命を取らなかった僕に感謝してほしいぐらいだよ」

「今の話は本当に本当の事だろうな?」

 衛兵は、再度受付嬢に聞き返した。受付嬢も嘘を言えば虚偽申告となるので、マルクの言う事が本当だと進言したのだった。

「わかった。お前達こいつ等を連れていけ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 ダイダロス達は、衛兵に縛られ連行されてしまい、きつくお叱りを受ける事になった。
 ダイダロス達は、しばらくの間町の人達からヒューマン族に返り討ちになったと笑われる事になり、プライドを傷つけられてリズムダルムの町を出る事になった。



 マルクは、ダイダロス達が衛兵に連れて行かれるのを見送り、冒険者ギルドが静かになった。それも当然で、マルクに襲いかかった冒険者達は連れて行かれ、残った者はマルクの実力にびびり静かにしていたからだ。

「やっと落ち着いて話ができる。僕はブリーナッシュから来たマルクと言います」

「先ほど聞きました。それでヒューマン族の貴方がドワーフの国に何の用があるのですか?」

「あなたの名前は?」

「申し訳ありません。私はランファと申します」

「ランファさんですね。以後お見知りおきを」

「それでなんでしょうか?」

 マルクはヒューマン国に塩が入って来ない原因をランファに聞いた。

「ヒューマン族の貴方が、どうにかできる案件ではありません。自分の分の塩を商人ギルドで購入して、ヒューマン国に帰りなさい」

「それじゃ困るんだよ。ドワーフ国の塩の産出を再開して貰わないと、ヒューマン国の料理が不味すぎるんだよ」

「そのような事を言われても、ドワーフ国でも塩が取れないのです。今、各地から高ランク冒険者を募っていたのに、貴方が全部無駄にしてしまったんですよ」

「僕のせいで無駄?」

「今、衛兵に連れて行かれた冒険者達ですよ。あの人達はドワーフ国の各地から集まった冒険者です。まだまだ人数を集めないとあの化け物は倒せません」

「僕のせいじゃないだろ?そんな大事な任務があるのに僕に返り討ちされたアイツ等が情けないんだよ」

「貴方は一体何者なのよ!ヒューマン族があの人数に勝てる訳がないでしょ?」

「ランファさんはさっき目の前で起こった事が信じられないの?」

「そ、それは・・・・・・」

「まぁ、アイツ等が居なくなって反対に良かっじゃないか?」

「何を言うのですか!」

「だってそうだろ?ヒューマンの僕にあんな簡単に負けたんだよ?そんな奴等が何百人と集まっても烏合の衆だよ」

「・・・・・・」

 ランファはマルクの言う事に反論出来なかった。ヒューマン族に負けるSランク冒険者が訳が分からなかった。

「それで、何の魔物を討伐依頼が出ていて高ランク冒険者を募っているの?」

「ヒューマンの貴方に何ができるのよ!」

 マルクはランファの仕草に可愛らしいなぁと思い微笑んでいた。ランファもマルクより何十年と年上で大人の女性だ。
 しかし、その見た目は10歳ぐらいの少女で身長も150弱で、その瞳はクリクリして大きくツインテールなのだ。

「何笑っているのよ・・・・・・」

「あっ、いや、笑ってなんかいないよ」

 マルクはランファの言葉に焦り、笑っていないと否定した。

「ったく・・・・・・これだから他種族の男は嫌いなのよ。すぐ子供扱いするんだから!」

「まあまあ。落ち着いてくれよ。僕からしたらランファさんは少女にしかみえないから、なんか微笑ましいとしか・・・・・・」

「ったく、失礼しちゃうわ!」

 ランファの仕草はいちいち可愛らしく、マルクの言葉に頬を膨らませ腕を組んで怒っていた。

「それで、話を戻すけど何の魔物なの?」

「だから!ヒューマンの貴方に!」

「ヒューマンに拘る必要ないだろ?現に、さっきの冒険者の中にはSランク冒険者がいたはずだ!そいつ等はヒューマンの僕に手も足も出なかったじゃないか?」

「それは・・・・・・」

「仮に、僕が討伐依頼に受けて失敗して命を落としたところで、馬鹿なヒューマンが一人いただけだろ?」

「馬鹿な事を言わないで!ギルド職員として、そんな無謀な依頼を受けさせる訳にはいけません」

 ランファはヒューマンの事は嫌いだが、ギルド受付嬢としての誇りを持って働いていた。
 その為、マルクの言動はこころの底から怒りが溢れていたのだ。

「だが、このままでは塩が産出できないのだろ?」

「塩はついでです。鉱山に住み着いた魔物を討伐しないとドワーフ国の経済が滞るのです!」

「僕は、あなた達が考えるヒューマンじゃないよ。その魔物を討伐してあげれると思うよ」

「馬鹿な事を言わないで!その魔物を討伐するのに各地からSランク冒険者を募っているんです。それでも討伐できるかどうか五分五分の勝算なんです!」

「だから、その魔物は何?教えてくれてもいいだろ?僕もヒューマンだが、冒険者の一人だ」

 ランファは、マルクのしつこさにため息を大きくついて、その魔物の名前を告げた。

「アダマンタイマイよ・・・・・・SSS級の魔物なの!なるべく早く討伐しないといけないけど、貴方が冒険者達をのしちゃったから、早急に集め直さないといけないのよ」

「アダマンタイマイ?それって亀の魔物だったよね?」

「そうよ!体長は20から30mはあり、その固い甲羅はドラゴンを超えると言うわ」

 アダマンタイマイは、ジャイアントトータスの上異種だ。ジャイアントトータスが鉱石を食べる事で成長したもので、大抵はミスリルを食べてミスリルトータスになるのだか、今回はアダマンタイトを食べて、アダマンタイマイに成長してしまったのだ。

 ドワーフ国は、最初ドラコニア王国に救援依頼を考えだが、ドラコニア王国は、ヒューマン国、エルフ国のさらに西にある為、到着に時間がかかりすぎるので、ドワーフ国に滞在するドラコニア族の冒険者を募って対処するつもりだった。
 マルクに絡んだ、冒険者の中にもドラコニア族が多数いて、各地から冒険者が集まるのを待っていた。
 
「このままでは鉱山のアダマンタイトを食べ尽くされてしまうわ。そうなれば、ドワーフ国の経済は破綻しちゃうの」

「なんだよ。アダマンタイマイなら早くそう言えよ」

「「「「「はっ?」」」」」

 マルクの言葉に、ランファだけじゃなく周りの受付嬢達も変な声が出た。

「僕が、アダマンタイマイを討伐して上げて、ドワーフ国に恩を売って上げるよ」

「貴方は一体何を言っているのよ!」

「アダマンタイトだろ?固いだけの魔物じゃないか」

「はぁあ?アダマンタイトが固いだけですって?そんなわけないでしょ!」

「僕も討伐依頼の手続きをしてくれよ」

「駄目です!Fランク冒険者に何ができるんですか!他の冒険者の足手まといです」

「足手まとい?なんか勘違いしてるけど、他の冒険者を待っている時間はないんだろ?僕一人で討伐してあげると言っているんだよ」

「何を言って・・・・・・」

「ランファ。手続きをしてやれ」

 ランファは、声をした方に目を向けた。

「誰ですか?そんな無責任な・・・・・・ギルドマスター!」

 そこには、ギルドの奥から顔を出したギルドマスターがいた。
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