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第6章 異世界転移

11話 王都の物価を下げる

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 国王に謝罪させると言ったマルクに、ギルドにいた人間は言葉を失っていた。

「そんな事出来るわけねぇだろうが!いい加減な事を言うんじゃねぇ!」

 大きな声を出したのは、魔族のビートだった。しかし、マルクは冷静に言い返した。

「ビート、君達はヒューマンの僕が、ドラコニアのブレスに勝てると思ったかい?」

「今はそんな事関係ねぇだろうが!」

「僕がブレスに勝てると思ったかい?」

「そんな事、世界がひっくり返っても無理だと思っていたよ!」

「だよな?でも僕はブレスに圧勝した」

「くっ・・・・・・そんな事言うなよな」

 マルクのセリフに、ブレスがぶちぶち小声で文句を言っていたが、マルクは聞こえないふりをした。

「そんな奇跡を起こせた僕は国王に謝罪させる事等簡単なんだよ」

「はぁあ?訳わかんねぇ!国王だぞ?弱小国だと言ったも一国の王にどうやって謝罪させるんだよ!」

「まぁ時間はかかるが見ていてくれ。だけど、それにはギルドから変えなくてはいけない。僕はここに来たばかりだからね。君達には、王都の人間の為に依頼を受けてもらうよ」

「だ、誰がそんな事・・・・・・」

「ビート。すまんがマルクの言うとおりにしてくれないか?」

「ブレス!何を言うんだよ」

「お前達の気持ちはわかる。しかし、俺はマルクを殺そうとしたのに治療してもらった。そればかりか決闘を無視してギルドを追放されるところを救ってもらった恩がある」

「はぁあ?なんでブレスがギルドを追放されなきゃいけないんだよ」

「バナー達は、ちゃんと決闘の手続きをとったが、俺は暴走しただけだ。本来なら手足がなくなって、殺人未遂の汚名を着せられ追放だ」

「それは・・・・・・」

「しかし、マルクがギルドに交渉をしてくれたおかげで目をつむってくれたんだ」

「本来なら絶対無理ですからね。しかし、ギルドにも事情というものがあるからです」

 マーブルが、横から割って入ってきた。ギルドも本部からのノルマがきついからである。

「まぁ、僕は君達のリーダーに貸しがあるから言う事を聞いて貰うよ。今はこうした強引な手を使うが、君達を納得させるから今は言う事を聞いて欲しい」

「わ、わかったよ!ブレスがそういうなら、ブレスに従う!」

「ああ。それでいいよ。その代わり、君達が以前のように、ヒューマン族に迷惑をかけるようだったら、ブレス達ドラゴンスピリッツに責任をとって貰うから、努々ゆめゆめ忘れるなよ」

「マルク!それはないだろ。なんで俺達が!」

「責任取りたくないなら、お前達は下の者によく言い聞かせるんだな。お前達はヒューマンをまだ信じていないように、僕達も信じきれてないんだからさ」

「ひ、卑怯だぞ!」

「ブレス、お前は僕に負けて救われたんだ。それを忘れるなよ」

 マルクにそう言われて、ブレスはガクッと項垂れたのだった。マルクはそれだけ言って、マーブルとギルドの買い取り場に向かった。
 ギルドの隅では、ハンスは気絶して同じパーティーメンバーに介抱されていたのは言うまでもなかった。

「それでマルクさん、ギルドに卸してくれる素材は?」

「まずは、王都の食糧事情を改善させますよ」

 マルクはオークやボアの肉を大量に出した。

「この量はなんですか?」

 マーブルはその量に目を見開いた。今まではオークの肉は、他種族の冒険者から買い取りをしていたが、相場の倍以上の値段で買い取らされていたのだ。なぜ、オークは他種族の冒険者かというと、オークが強い魔物だからだ。
 ヒューマン族の冒険者にも、狩れない事はないがやはりヒューマンのレベルと比べると死人が出る魔物なのだ。
 マルクが、精霊の泉を出た時、ゴブリンが強いと感じた事は勘違いではなく、この世界の魔物は明らかにレベルが高いのだ。

 今のマルクには理由が分からなかったが、これはヒューマン族の数が減った事で、この数百年で魔物を間引くヒューマンがいなくなったからだ。それにともない、他種族の人種のレベルが上がり、魔物もそれに対応して強くなっていたのだ。つまり、ヒューマン族が時代に取り残された形と言っていいだろう。

「これだけあれば、食糧の高騰は少しはましになるだろ?」

「それはそうですが、どれだけ貴方のマジックボックスは容量があるんですか?」

「まぁ、そんな事いいじゃないか。魔物の素材はどうですか?」

 又、マルクが出した魔物の素材は、DやEランクではなく、Bランクのブラックグリズリーやサーベルタイガーの素材を出した。

「こ、これは一体どこで?オーガだけでも凄いというのに!」

 マルクは、行商人のカイン夫妻を助けた時のオーガの素材も出していた。最近、解体はずっとクレアに任せていたが、一人なのでカッティングで解体をして、インベントリに収納していた。

「オーガもまともに買い取りできていなかったのか?」

 マーブルはオーガなんて買い取ったら完全に赤字になると言って買い取れなかったと言った。

「じゃあ、他種族の冒険者はオーガとかの素材はどうしていたんだよ?」

「町には、ドワーフ達生産活動をしている他種族がいますからね。そちらに買い取りをお願いしていたんですよ」

「なるほどね・・・・・・」

「どちらにしても、ヒューマン族は他種族から搾取されるようになっていたか」

「ええ・・・・・・ヒューマン族より、長生きするドワーフのスキルの腕は間違いないですからね」

「まぁ、これからは当分の間、僕がギルドに素材を卸すから楽しみにしてください」

「本当ですか?」

「その代わり条件はあるよ」

「な、なんですか?そんなにお金は出せないですよ・・・・・・」

「馬鹿な事を・・・・・・そんな事したら、ブレス達の反感を買うだろ?」

「じゃあ何を?」

「冒険者ギルドはちゃんと適正価格で、町の人間に販売をして、ヒューマン国の高騰した物価を下げることだ」

「それは当然です!」

「とりあえず、ヒューマンの生産職にだけこれらの素材を卸すようにしてくれるかい?」

「でも、そんな事したら他種族の生産者が?」

「いいかい?冒険者の中にはまだわだかまりを持つ他種族はいっぱいいるはずだ」

「それは当然です。マルクがああ言ってくれましたが、冒険者ギルドに足元を見てつり上げるでしょう」

「冒険者ギルドは、そういう素材は買い取らないだろ?」

「当然ですよ。買い取りしたら大赤字になります」

「と、言う事はそいつ等は、他種族の生産者に買い取ってもらわないといけなくなるだろ?他種族の生産者は、ヒューマン国の人間に高値で売って今まで利益を出してきたんだ」

「そうです」

「しかし、これからはそんな高値の商品を誰が買う?他種族の生産者の商品は売れなくなるとどうなるか?」

「他種族の冒険者の素材も、適正価格で買い取りしないといけなくなるんですね」

「そういう事!」

「しかし、そんなに上手くいきますか?」

「物量の事を言っているのか?」

「そうです」

 マルクは、マーブルの心配をよそに笑顔で任せておけと言った。


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