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第4章 成長

13話 発狂するアサシン

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 会議というより話が終わり、各自解散となったがマルクはまだ屋敷の大部屋に残った。それを見て、カエデはマルクに話しかけた。

「あ、あの・・・・・・」

「なんだい?やっぱり協力してくれるの?」

「そうじゃない」

「そっか。じゃあしょうがないね。それじゃなんだい?」

「ご主人様は、なんでアサシンである私を引き取ろうと思ったんだ?」

「なんでって、カエデのステータスにレアスキルの暗殺があったからだよ」

「なんで他人のステータスが見れるんだよ?」

「僕のスキルは特別なんだよ!鑑定の最上位神眼のSランクを持っているんだ。カエデは霞隠Aを持っているみたいだけど、それじゃステータスは隠せないからね」

「私に暗殺を使わせるつもりなのか?」

「カエデが犯罪奴隷だからって、暗殺を使わせるつもりなんかないよ。それに、奴隷を使っての暗殺は駄目ってルールじゃないか」

 奴隷を購入する時、奴隷商から禁止されている事を言われている。それは、奴隷を使って人殺しと自殺強要である。つまり、犯罪奴隷でアサシンを購入した場合、暗殺させるのは駄目だということだ。
 もし、暗殺させた事がわかった場合、その奴隷はもちろんだが暗殺を命令した主人も火あぶりの刑に処される事になっているからだ。

「だったら、私なんか引き取ってもご主人様に得になる事はないじゃないか」

「カエデは、そのスキルを授かってどうだった?」

「・・・・・・」

「最悪だったんじゃないか?」

「・・・・・・」

「Sランクスキルを授かったら、普通は幸せだと思う。僕とは真逆なんだからね」

「真逆?」

「うん。僕は7歳の時神聖の儀で魔法Eランクを授かって絶望したんだ。だけど、カエデはSランクを授かって絶望したんだろ?」

「ああ・・・・・・司祭が暗黙の了解である他人のステータスを村の人間にしゃべったせいで、私は両親からも命を狙われたよ」

「だろうね・・・・・・それが容易に想像ができたから、僕はカエデを引き取ろうと思ったんだ」

「嘘をつけ!そんな理由で!」

「確かにそれだけじゃないよ。打算的な考えはあるからね。どうあがこうと君は僕の犯罪奴隷だ。言う事を聞かせる事だってできるよ」

「ふん!やっぱりな」

「だけどね・・・・・・カエデを使うにはリスクは伴うからね。カエデ自身が協力的になった上で働いてもらいたいんだよ」

「・・・・・・」

「私がご主人様に協力的になる?そんな事!」

「だから、嫌ならいいんだよ。ただ今は君の信頼を勝ち取ろうと、僕は頑張っているだけだからね」

「そんな頑張りは無駄だ。早々に諦めるといい!」

「カエデに言われなくともわかっているから大丈夫だよ。諦める時は僕の君への扱いが変わる時だよ。何も心配しなくてもいいよ」

「くっ!」

 カエデは、マルクからそう言われて大部屋から出ていった。

「・・・・・・まったく素直じゃないな」

 マルクは、カエデが話しかけてくれて、少しはこの家に慣れたのかなと安心した。
 今まで、闇ギルドという犯罪組織にいたカエデは普通の生活に戸惑っているのだろう。神聖の儀から信じられるのは自分だけと思った生活をしていたのだ。
 マルクは、カエデが心を開くまでもう少し気長に
待とうと思った。




 それから三日後、ようやく次のアサシンが襲って来た。マルクがアルマと中庭でいた時に襲って来たのだ。

「アルマ、危ない!」

「えっ?」

 アルマが、マルクの為にハープで演奏をしていたところに矢が飛んできたのだ。マルクはアルマを抱き抱え矢を回避して、アサシンにライトアローを打ち込んだ。
 ライトアローは、光属性魔法で光の速さで敵を攻撃する魔法である。光の速さで射ぬく矢は人間の目には一瞬ピカッと光るだけでかわす事はほぼ不可能だ。

「ぎゃっ!」
「ぐはっ!」

「ヤバイ!散会しろ!」

「逃げ切れるわけないでしょ?」

「ぎゃああああああ!」

 シオンとセバスチャンが、残りのアサシンを斬りすてた。シオンは、敷地の外で足をとばされたアサシンを敷地内に連れてきた。

「マルク捕まえたよ。に、しても凄すぎるね。足が吹き飛んでいたよ」

「まぁ当然だね。アルマもありがとね」

「当然ですわ!旦那様の役に立てて嬉しいです」

 アルマは、アサシンが襲って来るように、中庭で演奏をして誘きだそうとマルクに提案した。
 そして、アサシンはまんまと罠に嵌まったという訳だ。

 マルク達は、アサシンを屋敷の地下牢に入れた。そして、マルクはアサシンに闇ギルドのアジトや王都での人員を聞いたのだった。

「闇ギルドのアジトの場所は?」

「・・・・・・」

「王都で活動している犯罪者の数は?」

「・・・・・・」

 マルクはアサシンが黙秘していたが、関係なくどんどん聞いていく。アサシンもニヤニヤして何も答えなくて、とうとうセバスチャンがマルクに話しかけた。

「ご主人様?やはり聞くだけではこいつらアサシンはしゃべらないと思いますが・・・・・・」

「セバス、僕がただ聞いているだけだと思っているのかい?」

「どう見ても聞いているだけだと・・・・・・」

「闇ギルドのアジトは、西の墓地にあるってこいつは吐いたよ。そして、犯罪者の数はだいたい200人前後で、王都のハードル麦屋も裏では闇ギルドと繋がっているみたいだね」

 その説明に、取り調べをされていたアサシンは、自分の足がないのに椅子から立ち上がり、盛大に椅子から転んだのだ。

「な、なんで!」

「なんで君に種明かしすると思っているんだい?」

 アサシンは、何もしゃべっていない。なのに重要機密がどんどん当てられていくのだ。

「闇ギルドの幹部は何人だい?」

「や、やめろ!」

「そうかい。王都には10人いるんだ。その幹部達が揃うのはいつなんだい?」

「やめろ!やめろ!」

「なるほど!第二週の・・・・・・」

「やめろぉ~~~~~~~~!」

「やめるわけないでしょ?闇ギルドは君が暴露したせいで壊滅されるんだよ」

「俺はしゃべってなんかいない!」

「いいや。僕は君がべらべらしゃべって色んな情報をもらったんだよ?ベンチャ男爵が、闇ギルドと繋がっていて村の人間を誘拐していたこともわかったしね」

「ぐっ!俺はしゃべってなんかいない!」

 アサシンは、マルクに恐怖を覚えて発狂した。マルクの声が聞こえないように耳を塞いでもどうにもならなかったのだ。
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