役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした ！

第４章 成長

６話 勝利

　マルクは、首狩りと表示されたアサシンを睨み付けた。その瞬間、首狩りはウッと声をあげて麻痺してしまった。
　くそぉ～～～～～！何故あたしの変装がばれたのだ？首狩りはマルクの底知れぬ力に恐怖していた。

「お前が[首狩り]か？いや、カエデと言った方がいいか？」

「なっ！うぐっ・・・・・・」

 　首狩りこと、カエデは目の前にいるマルクの瞳に目を反らしてしまった。カエデは今までにない敗北感を味わっていた。
　カエデは、暗殺者になるべくして、この世に生を受けた人間だった。しかし、そのせいでカエデの両親からもその命を狙われたからだ。
　この世に生を受ければ、子供達は誕生して７歳になると神聖の儀を受ける事になる。マルクは魔法(Ｅ)を授かった。そして、カエデは神聖の儀でレアスキル暗殺（Ｓ）と毒（Ｓ）変装（Ｓ）を授かったのだった。
　この時、司祭は親にでさえ子供のレアスキルを教えてはいけない。しかし、司祭はそのルールをやぶり公表してしまった。
　カエデの村では、カエデはアサシンになると騒然となり、両親もカエデを亡き者にしようとした。
　カエデは、この件で人間不信となり闇に落ちた経緯があった。ちなみに、この時カエデの村はカエデによって全滅させられている。

「カエデと言ったな？お前の計画は失敗だ」

「くそぉ・・・・・・」

 　カエデは、この時初めて地声を出した。しかし、その声は敗北者として絶望したように震えていた。
　カエデは、神聖の儀から信じられるのは自分だけだと思い強気に生きて、闇に落ちても誰にも媚びず引くことはなかった。
　しかし、この男だけは逆らってはいけないともう一人の自分が警告を鳴らしていた。

「女将さんはどうした？」

「・・・・・・い、生きている」

　足を押さえて出血を止めようとカエデは必死だ。マルクに睨まれ本来の行動ができずにいたからだ。
　カエデの変装は相手の姿形をコピーするスキルであり、コピーすれば用はない。マルクも女将がどこにいるかわかっていた。いや、村の用心棒や盗賊集団の位置すらも把握していた。



　その頃、カノンとオウカはロゼの部屋をノックしてロゼを守っていた。

「あんた達ありがとうねぇ」

「大丈夫！ロゼさんはあたし達が守るから！」

「マルクさんは？」

「「マルクなら親玉を拘束してるよ」」

　宿屋の中に入ってきた盗賊を、オウカが殴り吹き飛ばした。ロゼは、盗賊に怯え小さくなって部屋の角でいた。カノンがロゼの前に立ち、部屋に入ってきた盗賊をオウカが殴り吹き飛ばしていった。

　そして、システィナとクレアは見張り台に登り、遠くを見通せる場所に立った。
　すると、見張り台めがけて矢が飛んできた。盗賊には、腕のいいスナイパーがいるようだ。システィナの足元には、用心棒の一人が腕を押さえて身を低くしていた。

「システィナ！東側の木の上！」

　クレアが、盗賊の位置を教えたが、何もない村である。村の出入口に松明の明かりぐらいだ。村の外まで明かりが届くはずがなかった。
　しかし、システィナはエルフだ。

「インフラビジョン」

　インフラビジョンとは、エルフやノームがもつ能力のひとつである。暗闇の中でも相手の姿がはっきり映し出す魔眼の一種だ。
　木の上に、盗賊の姿が浮かび上がる。人間には熱があるのでサーモグラフィーカメラのように見えるのだ。当然だが、インフラビジョンには弱点もあり、熱関知ができないアンデットには真っ暗で姿が写し出せない。

「姿が見え見えだよ！ロングショット！」

　システィナは、ロングショットを繰り出した。基本ダメージの８割となるが射程は３倍と遠く離れた場所を狙える。

「ぐはっ！」
「ぎゃあああ！」
「うぐっ」

「システィナ、ナイス！」

「クレア、どんどん教えて！」

「す、すごい！」

「あんたは身を低くして！これを飲んで！」

「あ、ありがてぇ・・・・・・」

　クレアは見張り台にいた、用心棒のにポーションを渡した。用心棒は、自分に突き刺さった矢を抜きポーションを飲み干した。
　その間もシスティナは見張り台から射撃して盗賊達を射殺していった。

「さすが、システィナとクレアね。遠距離からの攻撃がなくなってきたわ」

　戦場を駆け抜けているのはシオンだ。シオンは村に入ってきた盗賊をどんどん叩き斬っていく。

「なんだこの村は！家の中に入れねぇじゃねぇか！どうなって、ぎゃあああああああああ！」

「くそぉ！開けやがれ！ぐはっ！」

　家の中では、村人達が小さくなって震えていた。盗賊達がなぜか家の中に入ってこないのだが、やはり恐怖で家の角で小さくなっているしかなかった。

　盗賊達は何とかして、家の中に入ろうとして悪戦苦闘をしていた。そこにシオンが後ろから叩き斬っていくのだ。

「くそぉ！何で盗賊達がこんなに！」

「諦めやがれ！この村はもう終わりなんだよ！」

「誰が諦めるか！」

「うぐっ！」

　用心棒と盗賊が、剣を重ね合わせていた。その時
盗賊のこめかみに矢が突き刺さりその場に崩れ落ちた。
　システィナが、村の外からの射撃を始末して、村の中にいる盗賊達を射撃し始めたのだ。こうなると不利になるのが盗賊達だ。

　盗賊達が用心棒とつばぜり合いをしているところに、見張り台から射撃されるのだ。

「スナイプショット！」

　スナイプショットは、命中率を３倍に引き上げるスキルだ。混戦している時その威力を発揮する。遠距離射撃がなくなった今、見張り台からは村の用心棒も射撃をしていた。

「エルフの嬢ちゃん。ありがとうよ。あんた達が村に来ていて本当に助かったよ」

　用心棒は、村の狩人だ。いつもは野性動物を狩り村に肉を持ち帰るのが仕事だ。こういったことは畑違いでなすすべもなかったのだ。

　しかし、システィナとクレア弓矢で攻撃していた盗賊を始末してくれたおかげで、安全に盗賊達を射撃する事が出来るようになった。
　そして、シオン達が戦闘に加わってしばらくすると、村の中で歓声が上がったのだった。