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第3章 嫁

19話 武器屋

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 カノンは、システィナの能天気に呆れていた。しかし、カノンはこのシスティナの性格にいつも救われていた。

「ったく、あなたはホントお気楽ね」

「あたしからしたら、カノンが心配よ。いっつも一人で考え込んで自分の意見を言わないんだもの」

「そうだな!カノンは真面目過ぎなんだ」

「わっ、びっくりした!オウカもおきたの?」

「あんた達がうるさいから寝られないんだよ」

「ごめんね」

「でも、あたしもカノンの気持ちはよくわかるよ。あたしもマルクとシオンは羨ましく思っていたからね」

「うん・・・・・・」

「だよね・・・・・・あたしもそう思う」

「わっ!クレアもおきたの?」

「うん・・・・・・あたしも今日この家の中見てそう思ったんだ。でも、システィナが言った頑張ればこの生活が手に入ると言うのは無理がある」

「なんでよぉ?最初から諦めなくてもいいでしょ」

「実際、どのようにしたらマルクと同じ功績が残せるのかビジョンが見えないからだよ」

「だからって、クレアは諦めるの?」

「そうは言ってないよ!もっと現実を見たら?あたし達は、この羨ましい生活を手にいれる前にマルクに借金を返さないといけないんだよ」

「確かに・・・・・・マルクの優しさで、あたし達は救われた。本来なら王都に着けなかったんだ」

「あ~~~~~~!ハイハイ!カノンとクレアはいつも暗く考えすぎなんだから」

「「何よ!」」

「いい?あたし達は、マルクとシオンの優しさで救われた。今はその優しさに甘えましょうよ」

「「それは・・・・・・」」

「甘えるといっても、頭には乗らないよ。シオンが言ってたんだ」

「なにを?」

「人生は嫌なことばかりじゃないって。嫌な事があったら次は良い事があるんだって言ってたんだ」

「「・・・・・・」」

「あたし達は帝国で差別されてここに来た、これたじゃない?」

「「うん」」

「だから、良いことが始まったんだよ。本当ならブラッディーオーガに殺されてたんだよ?」

「「でも、あれで運をつかちゃったかも」」

「そんなことないよ。人生は長いんだからこれから一杯良いことがあるよ!」

「ぷっ、あははははは!」

「オウカ、何よ?笑う事ないじゃない!」

「だって、人生は長いって、これから良いことばかりだと、エルフのシスティナはどんだけ長い間良いことが起きるんだ?」

「「ぶはっ!」」

 オウカの一言で、カノンとクレアが吹き出した。システィナは二人が笑っているのを見て、一緒になって笑うのだった。

 次の日、カノン達は嫌なことばかり考えるんじゃなく、せっかくマルクとシオンに救われた命を謳歌できるように頑張ろうと決めた。

「なぁ、マルク?マルクは、ギルドの依頼は何をメインにやっているんだ?」

「オウカ達と変わらないと思うよ」

「そうなの?マルク達は強いだろ?ダンジョンに潜るのがメインじゃないの?」

「いや、どちらかというと薬草採集とかの方が多いよ。後は、行商人の護衛かなぁ?」

「そうなの?」

「Bランクに昇格するのに、行商人の護衛依頼が試験になるからね。きっちりやり方を学んでいるんだよ」

「マルク達ってCランクなのか?」

「「そうだよ」」

「あたし達と同じ?嘘でしょ?」

「まぁその辺も色々あるんだよ。とにかく、僕達も冒険者として学ぶ事はたくさんあるよ」

「あたし達は、どちらかというと狩り専門なんだ。あたしが前衛で、カノンとシスティナが後方から援護する形なんだ」

 オウカが、ファーストアタックでダメージをメインに与えて、カノンが槍術、システィナが弓術で戦う感じだ。

「それだと、魔物は小隊でも辛くないか?」

「だから、10匹以上だと厳しくなるよ。だけど、薬草採集は安いからどうしても魔物退治がメインになるんだよね」

 マルクは、確かに4人パーティーで薬草採集はきついと思った。マルクのような世界地図のスキルがあれば薬草の位置もわかるが、一日中探して30束だと完全に赤字だからだ。
 行商人の護衛もまた、帝国ではカノン達は差別の対象だったので、護衛依頼がなかなか受けれなかったみたいだ。

「じゃ、今度一緒に依頼をしてみるか?」

「いいの?」

「だけど、報酬は暁月と紅で折半だよ」

「うん!」

 後日、暁月と紅で一緒に依頼を受ける事になる。

「だけど、今はオウカ達の買い物を完璧にしないとな」

「そうだね」

 マルクは、オウカ達と武器屋に向かった。その武器屋は大通りから外れた場所にあり、あからさまに客が入っていなかった。

「マルク?何でこの店に?」

「こういう場所に掘り出し物があるんだよ」

「大通りの武器屋の方が、品揃えがいいと思うんだけど?」

「カノン。店の雰囲気で判断したら痛い目にあうよ」

「ほう!坊主いい事言うじゃねぇか?若いのに、店の雰囲気で選ばずたいしたもんだ」

 店の者が、マルクに話しかけてきた。話しかけてきたのは一人のドワーフだった。

「武器を見させてもらっていいかい?」

「ああ!構わねぇよ。嬢ちゃん達、その坊主と一緒で良かったな?」

「どういう事ですか?」

「あの大通りの武器屋はなまくらばかりだ。得に嬢ちゃん達みたいに、亜人が買いにいくと粗悪品を購入させられるんだ」

「「「「えっ?」」」」

「あの店は帝国出身の店主がやっているんだよ」

 王都にも、こうしたように差別をしてくる人間はいる。住みやすいと言うだけで0ではないのだ。
 マルクは、世界地図のスキルがあり、良心的な武器屋を探し出せただけだった。

「カノン!この槍凄いいいぞ?」

 マルクは、店の槍を手に取りカノンに見せた。カノンはマルクに勧められた槍を手に取り、店の裏で素振りをしてみた。
 すると、槍は手に馴染み重心が絶妙で、体重がダメージに乗る感じた。

「これは凄い!むちゃくちゃ扱いやすいな!」

「嬢ちゃん、その槍はやめておけ」

 いきなり店主のドワーフが、マルクの勧めた槍を取り上げ、奥に入っていってしまった。

「店主、何を?あたしが亜人だからか?」

「カノン!そうじゃないと思うよ」

 すると、すぐに別の槍を持って来て、カノンに渡してきた。

「そいつを使ってみな?」

 カノンは、店主の勧めた槍を振るってみた。すると、マルクの勧めた槍より使いやすかった。

「嬢ちゃんは、有翔族だからな。翼があるからその槍の方が扱いやすいだろ?」

 カノンは、店主のドワーフを疑った事をすぐに謝罪した。

「店主、すまなかった」

「かまやしねぇよ。嬢ちゃん達、帝国からついたばかりか?」

「ああ・・・・・・」

「俺も、王都に長く商売を続けているからわかるがお前さんみたいな亜人をよく見るよ。最初は誰も信じられない雰囲気を漂わせておる」

「うっ」

「まぁ、どういうわけか知らんが、その坊主にはなついておるみたいだかな」

 ドワーフに、そう言われカノンは顔を赤くした。

「何を言って!」

「まぁ、何にせよ槍はそっちにしておけ!」

 ドワーフの店主は、カノンに自分が選んだ槍を勧めたのだった。
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