上 下
34 / 349
第2章 役に立つスキル

8話 ギルドからの帰還命令

しおりを挟む
 マルクとシオンは、村の周辺を探索していた。デビット達は町への街道沿いを巡回していた。

「それにしても懐かしいわね」

「そうだね。シオンと父さん達に連れてこられて初めて魔物を討伐した場所だからね」

「あの時、マルクってば一角ウサギの突進にびっくりして、逃げ出して後ろからおしりを刺されたんだよね」

「また、その話を・・・・・・もう忘れてくれよ」

「だ~め。あんなに笑ったの初めてだったんだから忘れられないよ」

「ったく、あんな黒歴史・・・・・・」

「でも、今のマルクは全然強いし凄いじゃない」

「全然フォローになってないよ」

「まぁまぁ、そんなに拗ねないで。それにしても、村長が報酬を払ってくれるとは思わなかったわ」

「そりゃ当然だよ」

「なんでよ?村の収入は少ないんだよ。あたし達がタダでいいと言っているんだから、村も助かるじゃない」

「あたし達じゃないよ。タダでいいと言ったのはシオンだよ」

「じゃあ、マルクは最初から報酬をもらい気だったの?」

「うん。当たり前じゃないか」

「そんな!村には幼い頃からお世話になってきたのに、こういう時に恩返しを・・・・・・」

「シオンの言っていることも分かるんだけどね。これは僕達の為でもあるんだよ」

「えっ?」

「僕達は冒険者だからね。Cランクまでは目立たないようにしないといけないと、前に言っただろ?」

「うん。目立つと柄の悪い先輩に絡まれるからだよね?」

「そうだね。だけど、なめられたら冒険者はつとまらないから、タダで仕事を引き受けると、暁の明星に恩を売るとタダで依頼を受けてもらえると噂が広まるんだよ」

「でも、そんなの断ればいいんじゃ?」

「そうだね。それが通じる相手ならばね。昔、暁の明星はタダで依頼を受けたのに自分達は無理なのかと、貴族様に言われたらどうする?」

「貴族様に恩なんかないよ?」

「なかったとしても無理難題を言って来るのが、貴族様だよね?」

「な、なるほど・・・・・・」

「つまり、冒険者は仕事をしたら、安くても依頼を受けたら報酬はもらわないとナメられるんだよ。そうならないようにしないといけないんだよ」

「わ、わかった」

 シオンは、マルクの説明に親指を立て納得した。そして、マルクとシオンは村の周辺を探索していると、あり得ない光景が広がっていた。
 村長に言われた、この地域には珍しくオークが出現した場所にオークの村が出来ていたのだ。

「こ、これは!」

「マルク、この村のせいで勢力圏図が変わったんだわ」

 オークの村は、マルクが初めて魔物討伐した野原を更に北に行き、森の奥に入った場所に出来ていたのだ。
 ここは村の者も滅多に来ることはなく、いつの間にかオークの村が出来上がっていた。

「不味いな。こんな大きな村に育つとオークキングがいるかもしれないな・・・・・・」

「本当に?」

 マルクは、世界地図と神眼で確認するとキングどころか、エンペラーの存在を確認した。

「ヤバい!すぐに引き返るよ!」

「な、なに、何がいたの?」

 マルクは、シオンの手を引きこの場を離れた。

「ギルドに任せよう!エンペラーがいる。デスベアが街道沿いに出現したのも、オークの村ができたからだよ」

「エンペラー・・・・・・」

「とりあえず、村に報告しよう!」

「う、うん」

 マルクとシオンは、村に帰って村長に報告した。村長と用心棒をしていたデビット達は、マルクの報告に冷や汗を流していた。

「マルク、その話は本当なのか?」

「父さん本当だよ。嘘なんかついてもしょうがないじゃないか」

「お義父さん、マルクの報告は本当です。オークの村が出来て、デスベアが街道沿いに逃げて来たんだと思います」

「わかった・・・・・・村長!これはもう災害級の事案だ。すぐに冒険者ギルドに報告をしないと!」

「そうじゃな。なんとかしてもらわんと、村が滅亡してしまう」

 村長は、もう一度オークの村を確認させ、リーランの町の冒険者ギルドに早馬を使い助けを求めた。

「すいません!西の村にオークの集団が村を作っている。なんとかしてほしい!」

 西の村は、リーランの町から1日程の距離にあるつまり、リーランの町にも実害が出てもおかしくはないのだ。

「あの村はヤバい!エンペラーの存在を確認した」

「なんですって!それは本当ですか?」

 リーランの町の冒険者ギルドは騒然となった。マルク達は、村から早馬が出てすぐに両親に自分達もリーランの町に帰る事を伝えた。

「ああ。わかった!無理はするなよ」

「うん。僕達はまだDランクだから、前線には送られる事はないと思う」

「ああ。だが、あのオークの村は規模がでかい。何が起こるかわからんから油断はするなよ」

「わかった」

 マルクとシオンは、冒険者ギルドから帰還命令があるはずなので、村の一週間滞在を切り上げ、リーランの町へと帰っていった。
 すると、村からの早馬がリーランの町についたらしく、ギルドカードから帰還指示が表示された。

「早馬がリーランの町に着いたみたいね」

「みたいだね」

「マルク、怖いからもうちょっと低く飛んで!」

「ご、ごめん」

 乗り合い馬車が、村に来るのが3日後だったのでマルクのフェニックスウィングで、マルクがシオンを抱えて飛んでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋愛ゲームのヒロインにガチ恋~転生したのは大好きなヒロインが居る世界。でも弟として~

美鈴
ファンタジー
気が付いたら大好きな恋愛ゲームの中に転生していて…。ガチ恋したヒロインと恋愛出来る!?マジか!?喜んでいたのも束の間…。大好きな人は俺の姉で… カクヨム様でも掲載しております!あちらは全年齢対象となっております!

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

堕ちた英雄

風祭おまる
BL
盾の英雄と呼ばれるオルガ・ローレンスタは、好敵手との戦いに敗れ捕虜となる。 武人としての死を望むオルガだが、待っていたのは真逆の性奴隷としての生だった。 若く美しい皇帝に夜毎嬲られ、オルガは快楽に堕されてゆく。 第一部 ※本編は一切愛はなく救いもない、ただおっさんが快楽堕ちするだけの話です ※本編は下衆遅漏美青年×堅物おっさんです ※下品です ※微妙にスカ的表現(ただし、後始末、準備)を含みます ※4話目は豪快おっさん×堅物おっさんで寝取られです。ご注意下さい 第二部 ※カップリングが変わり、第一部で攻めだった人物が受けとなります ※要所要所で、ショタ×爺表現を含みます ※一部死ネタを含みます ※第一部以上に下品です

社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。 草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。 露骨な性描写あるのでご注意ください。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

権田剛専用肉便器ファイル

かば
BL
権田剛のノンケ狩りの話 人物紹介 権田剛(30) ゴリラ顔でごっつい身体付き。高校から大学卒業まで柔道をやっていた。得意技、寝技、絞め技……。仕事は闇の仕事をしている、893にも繋がりがあり、男も女も拉致監禁を請け負っている。 趣味は、売り専ボーイをレイプしては楽しんでいたが、ある日ノンケの武田晃に欲望を抑えきれずレイプしたのがきっかけでノンケを調教するのに快感になってから、ノンケ狩りをするようになった。 ある日、モデルの垣田篤史をレイプしたことがきっかけでモデル事務所の社長、山本秀樹を肉便器にし、所属モデル達に手をつけていく……売り専ボーイ育成モデル事務所の話に続く 武田晃 高校2年生、高校競泳界の期待の星だったが……権田に肉便器にされてから成績が落ちていった……、尻タブに権田剛専用肉便器1号と入墨を入れられた。 速水勇人 高校2年生、高校サッカーで活躍しており、プロチームからもスカウトがいくつかきている。 肉便器2号 池田悟(25) プロの入墨師で権田の依頼で肉便器にさせられた少年達の尻タブに権田剛専用肉便器◯号と入墨をいれた、権田剛のプレイ仲間。 権田に依頼して池田悟が手に入れたかった幼馴染、萩原浩一を肉便器にする。権田はその弟、萩原人志を肉便器にした。 萩原人志 高校2年生、フェギアかいのプリンスで有名なイケメン、甘いマスクで女性ファンが多い。 肉便器3号 萩原浩一(25) 池田悟の幼馴染で弟と一緒に池田悟専用肉便器1号とされた。 垣田篤史 高校2年生 速水勇人の幼馴染で、読者モデルで人気のモデル、権田の脅しに怯えて、権田に差し出された…。肉便器4号 黒澤竜也 垣田篤史と同じモデル事務所に所属、篤史と飲みに行ったところに権田に感づかれて調教される……。肉便器ではなく、客をとる商品とされた。商品No.1 山本秀樹(25) 篤史、竜也のモデル事務所の社長兼モデル。 権田と池田の毒牙にかかり、池田悟の肉便器2号となる。 香川恋 高校2年生 香川愛の双子の兄、女好きで弟と女の子を引っ掛けては弟とやりまくっていた、根からの女好きだが、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.2 香川愛 高校2年生 双子の兄同様、権田はの一方的なアナル責で開花される……。商品No.3 佐々木勇斗 高校2年生 権田によって商品に調教された直後に客をとる優秀商品No.4 橘悠生 高校2年生 権田によってアナルを開発されて初貫通をオークションで売られた商品No.5 モデル達の調教話は「売り専ボーイ育成モデル事務所」をぜひ読んでみてください。 基本、鬼畜でエロオンリーです。

【DX文庫二次落ち】~武器と魔法と学園バトルラブコメ~世界初の男性Aランク魔術士候補生の少年は自らの運命に翻弄される。

R666
ファンタジー
時は20XX年、魔法と言われる技術が発達し医療や軍事に使われるようになった日本。 そこでは未来ある魔術士を育成する為に設立された高校……通称【WM】学園が存在する。 学園に入学するには適正が必要で、とある少年は男性でありながら女性にしか出せないとされている適正ランクAを叩き出し、半ば強引にWM学園に入学が決定してしまう。 そしてWM学園に通う生徒はほぼ全員が女子生徒であり、そこで白髪アニオタの少年は新たな『出会い』『再会』『別れ』『友情』を経験して更に個性豊かな乙女達に迫られる多忙な毎日が幕開ける。 ※ヤンデレ(多め)、ツンデレ、デレデレ、ちゃんと登場しますので大丈夫だ問題ない※ ダッシュエックス文庫のIP部門、二次落ち作品。

処理中です...