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第1章 役に立たないスキル

13話 ディクト達、闇に落ちる

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 マルクとシオンが新たな一歩を歩んでいた時、ディクト達は影に連れ去られていた。

「ちくしょおおおおおお!マルクの奴ぜってえぶっ殺してやる!」
「本当だぜ!あのやろう、なんで生きて帰ってきたんだ!」
「本当よ!あんな奴死んじゃえばよかったのに!」
「……」

「やかましいぞ。大人しくついて来い!」

「それでお前はいったい何者なんだ?」

「察しの悪い奴だな。俺は闇ギルドの人間だよ」

「闇ギルドだと?闇ギルドが俺達に何ようなんだ?」

 ディクト達4人は、黒ずくめの男と地下道を連れられていた。

「お前達は闇ギルドに認められたんだよ!あのまま処刑されるのは勿体ないと思ってな!」

「俺達が勿体ない?」

「ああ!そうだ。おまえたちはSランクスキル持ちなんだろ?このままじゃ、お前達のスキルは無駄になると思ってな。それなら闇ギルドで働いてもらおうと思ったわけだ!」

「だが、闇ギルドに所属すればもう抜けれないんじゃないのか?」

「どちらにしてもお前達は脱走したんだ。戻れると思わないが?それなら、やりたい放題出来る闇ギルドに籍を置いた方が都合は良くないか?」

「本当にやり放題できるのか?」

「まあ、最初は無理だぞ?闇ギルドに所属すればFランクだからな。最初は毒草の採取など雑用ばかりだと思ってくれ」

「なんだよそれ!」

「しかし、Bランクになればお前達も一流として認められる。そうなれば、闇ギルドもお前達の要望は聞けると思うぞ?」

「な、なるほど!」

「特にお前達はSやAランクスキル持ちだ。ランクもすぐに上がるだろう?違うか?」

 ディクト達を救い出したアサシンは言葉巧みに誘導し、ディクト達をその気にさせた。強いとはいえ、まだまだ成人したばかりの子供だ。アサシンはディクト達がいい気分にさせるのは簡単だった。

「あたしは闇ギルドに入るよ!」

「おお、そうか!お前はヴィトラだったな?お前はローグだからな隠密活動に向いてると思うぞ?」

「闇ギルドで成り上がりいずれマルクとシオンをこの手で殺してやる」

「その意気だ!そういう心意気はかうぞ」

 ヴィトラが今までずっと沈黙を貫いていたが、ここにきて発言をした事でディクト達は驚いた。

「それでお前達はどうする?逃げるなら今の内だぞ?所属すれば絶対に逃げれないからな。今なら俺も目をつむってやろう」

「「「……」」」

 ディクト達3人は、お互いを見つめ合い頷くのだった。ここで逃げてもギルドから指名手配になっているのは分かっていた。

「俺達も行く!そして、4人で闇ギルドで成り上がってやるよ!」

「そうか!よく決断をした!ここが闇ギルドリーラン支部だ!」

 アサシンはそう言って、地下道の壁を押したのだった。すると、地下道の壁がゴゴゴゴっと動いて部屋が現れた。そこには、暗い雰囲気の酒場があった。

「お前達には、所属すれば依頼をこなしてもらうぞ」

「「まじかよ!」」

「闇ギルドの依頼は、自分で選ぶんじゃないからな。全部指示だ!」

「なるほど……」

「無理という言い訳は聞かない。依頼成功か失敗だけだ。失敗すれば消されると心しろ!」

「分かったよ……」

 ディクト達は、先輩であるアサシンに闇ギルドの掟をいわれた。そして、所属の手続きをすますとギルドカードではなく指輪を与えられた。

「こ、これは?」

「ギルドカードのようなものだ。そこにお前達の報酬や依頼達成の情報が記録される」

「ほう!カードより便利だな」

「そして、その指輪はマジカルアイテムでな。姿形を変えることが出来る」

「なるほど!逃亡者の俺達にはうってつけと言う訳だな」

「そう言う事だ。それとその姿形は鑑定ではばれることはない」

「それじゃあ、無敵じゃねえか!」

「上位スキルの看破を持つ人間には注意しろよ」

「なるほど看破ならばれると言うのか……」

「まあ、看破を持っている人間は滅多にいないから大丈夫だろ」

「「「「確かに!」」」」

「お前達パーティー名は雷神でいいのか?」

「いや……雷獣にする!」

「ほう!いい名だ。早速お前達に依頼を出す」

「ああ!俺達は成り上がってやる」

 ディクト達は、闇ギルドに入り、のし上がっていくことになる。それも歴代一位早くBランクへと。そして、マルク達に近い将来襲い掛かる事になる。




 そして、一方マルクとシオンは、着実にその実力を伸ばしていた。

「ねえ、マルク?」

「どうかしたのか?」

「何でこの依頼を受けたの?」

「冒険者は、依頼主が困っているものから順に受けるものだって、父さんが言っていたからね」

「でも、アイアンウルフの討伐って大丈夫かな?それにフォレストウルフが何十頭もついているみたいだって……」

 マルクとシオンは、その被害があった村に馬車で向かっていた。乗合馬車で半日の距離にある名もない村だった。
 アイアンウルフとは、牙は鉄のように硬く毛並みも欠のように硬い魔物である。しかし、村の予算が無いようでDランクとしては安くて誰も受けていなかったのだ。

「確かに5000ミストは安いかもしれないけど、お金じゃないと思うよ。討伐すれば感謝され、人とのつながりが増えるんだよ」

「確かにおじさんとおばさんは、今でもリーランの町で感謝されていたものね」

「うん。父さんと母さんのおかげで僕はあの町で生活できていたと言っても過言じゃないからね。今度は俺がいろんなとこで返していく番だよ」

「うん、わかったわ。あたしもおじさん達のような冒険者になるわ」

 二人はこれからの事を笑顔で話していた。しかし、村で起こる問題はマルク達には予想もしていなかった。

 村に着いたマルク達は、村の門番に挨拶をした。この村にも、マルクの父親と同じく冒険者を引退し、村の用心棒がいる。

「冒険者か?」

「はい!依頼を受けやってきました」

「君達がか?まだ若いように見えるが、相手はアイアンウルフだぞ?それにフォレストウルフが20頭以上しもべのようについている。やめておいた方が……」

「だいじょうぶです!こう見えても僕達は強いので」
「そうよ。見かけで判断したらおじさんでも許さないんだから」

「そうか……それは悪かったな。冒険者は自己責任だ。まあ、頑張ってくれ。村長の家はここを真っ直ぐいって、鶏小屋がある家だ」

「はい!ありがとうございます」

 用心棒の元冒険者は、村長の家を教えたのだった。マルクとシオンは教えられた家に向かった。この村もマルク達の村の様に時間がゆっくり流れて、子供達の声が聞こえていた。冒険者が珍しいのであろう。遠くからこちらを興味津々に見ていた。

「すいませーん。リーランの町から依頼を受けに来ました」

 マルクの声に、家の中から村長が出てきた。村長は、長い眉毛で長いひげを生やし、まるで仙人のような風貌だった。しかし、マルクとシオンが依頼を受けてくれたと聞いて、笑顔がしわくちゃになって喜んでいた。

「依頼料が安くてすまんのう……よく依頼を受けてくださった。感謝します」

「いえいえ!あたし達が来たら大船に乗った気持ちでいてください」

「ほう!若いのに頼りになるのう」

「それで、狼の出没はどのあたりに?」

「もう向かうのかい?もうすぐ日が落ちる明日の朝にしたらどうだね?」

「なんでも村の家畜が荒らされると聞いたのですが?」

「そうなんじゃ……村の牛がもう何十頭と被害が出ておる……今晩も襲ってくるかもしれんのう……」

「だったら、ここで見張りをした方が早そうですね」

「構わぬのか?」

「そうですね、森の中に入るより待ち伏せの方が早そうです」

 そういって、マルクとシオンは徹夜をすることになった。


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