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34話 脱出口

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 騎士団団長のフォーガンは、部下を連れて4階層に足を踏み入れた。すると、そこは今までとは違い魔物もAランクになり、ダンジョンの罠もグッと上昇したのだった。

「「「「「何だここは?」」」」」

 フォーガンの部下である騎士団が騒めいた。

「今までと全然違うじゃないか……みんな気を引き締めるんだ。斥侯部隊前へ!」

 フォーガンは、斥侯員を5人も前に出し、罠を調べる者とマッピングと周囲感知を同時にやらせた。

 周囲感知で周りの気配を調べる事で、何か近づいてくれば騎士団が対処し、前方にある罠を3人がかりで罠発見解除を使うのである。
 そして、マッピングのスキルを持つ者は、ダンジョンの階層の攻略でだいたいの感覚だが、最短距離を感知する能力がある。これにより、最小限の時間で攻略が可能になるのだ。

「しかし、何だこのダンジョンは……これじゃ冒険者達には攻略は無理だろうな……」

「ああ……この部屋の先には魔物と罠が2重で張ってやがる」

 扉が開かれると扉からの罠が発動し、普通はこの罠を外せば完了となるが、これは気を引くための罠である。本当の罠は扉とは別の場所にありその罠を解除しなければ、部屋に入った時に落とし穴が発動してしまい、不利な状況で戦わなくてはならなくなるのだ。

 騎士団は4階層にある罠をドンドン解除していき、豪華な扉の前にやってきていた。斥侯隊はすでに扉の罠は解除し、後は突入だけにした。

「団長!初めてのボス部屋です!後はもう突入するだけです」

「みんなよくやった!お前達のおかげで、犠牲者は無くここまで来れた」

 斥侯員の5人は頭を軽くさげた。そして、フォーガンは全員に活を入れボス部屋に突入したのだ。このとき、案内役に同行していた冒険者達は全員いなかった。
 4階層に降りた時フォーガンが、冒険者は足手まといになると判断し、帰還させていたのだった。団長の判断は間違っておらず、3階層ならば冒険者達だけでも十分帰還できたが、4階層に降りてしまえば帰る事は出来なかっただろう。

 そして、フォーガンは念のためだが騎士団の中でも、一番の若手と言われるカインを護衛に付けていたので何も心配はなかった。カインは騎士団の中では一番頼りないが、それでも冒険者達より遥かにレベルは高く頼りになる存在である。
 しかし、この判断は間違っていた。マサルは、侵入してきた騎士団一行を逃がすつもりはなかったからだ。

「カグヤごめんね。申し訳ないけど、帰還させた冒険者をよろしく頼むよ」

「かしこまりました」

「気を付けて行ってらっしゃい」

 すると、カグヤはスッとその姿を霧状に変化させて、その場からいなくなってしまったのだった。カグヤは、ダンジョンマスターの部屋から伸びる脱出口である別の通路を通り、3階層の入り口付近にでた。
 この通路は緊急事態の時使うもので、ダンジョンに通じる扉がある訳ではない。緊急事態用の脱出口であり、普通の人間ならダンジョンに戻れない脱出口である。

 しかし、カグヤの提案で脱出口までに、各階層の入り口付近に針の穴のような小さな穴を、ダンジョンに通じる様にしておいてほしいと言われていたのだった。
 カグヤは、このように体を霧のように変化させられる為、カグヤはダンジョン内に入り、侵入者を待ち伏せにできるのである。

「貴方達、どこに行くつもりですか?」

「お、お前は!」

 Sランク冒険者が、カグヤの姿を見て大声を出した。護衛をしていた騎士のカインは冒険者に聞いたのだった。

「あいつがだれか知っているのか?」

「あ、あの女がバンパイアクイーンと言われた女ですよ」

「何だと……」

「あたしはクイーンじゃないと言ったはずだけど?」

「じゃあ、お前はいったい何者なんだ?」

「これから死に逝く者に関係はありません事よ。うふふふ」

 カインは、カグヤの笑みを見て恐怖したが、剣を抜き構えたのだった。そして、カインはその恐怖に打ち勝つために、カグヤに突進し斬りかかったが、カグヤは涼しい顔でカインの剣を指でつまんで受け止めたのだった。

「ば、馬鹿な……俺の剣を指で……」

 その後景は、冒険者達も呆気に取られて、その場に立ち尽くした。

『影達よ。その身を斬りさけ!シャドーカッター!』

「みんな伏せろ!」

 カインは、詠唱をしたカグヤにハッとして、冒険者達に大声で叫んだが、すでに遅かった。カグヤの足元に伸びる影がいくつにも分かれ、その何本にもなった影が、物凄い勢いで伸びて冒険者達を襲ったのだった。
 カインの剣が指でつままれた事で呆気に取られていた冒険者達は、カインの声に反応できず、カグヤの【シャドーカッター】に切り刻まれて、手足が切断された者や首が切断されて死んだ者もいた。
 この時、生き残っていたのは5人だけだったが、全員が戦闘不能となっていた。

「ぐは!」
「ぎゃあああああああ!」
「ぐふっ……」
「俺の腕が!」
「ぐうううううううう……」

 その場にはうずくまる5人がいて、後の人間は全てダンジョンに吸収されてしまった。

「あらら……ほとんど死んじゃったわね」

「き、貴様ぁ~~~!その剣を離せ!」

「いいわよ!」

 カインは剣を引っ張っていたが、カグヤの握力がすごくてビクともしていなかったが、いきなりパッと離され、カインは後方に転んでしまったのだった。

 カインはすぐに立ち上がり、カグヤの方に向き直ったのだが、そこにはカグヤの姿はなかった。

「ど、どこに行った!姿を現せ!」

 すると、カインの後方からザシュッという音が聞こえた。その方向を見ると冒険者達がカグヤに首をはねられて、ダンジョンに吸収されてしまったのが見えてしまった。

「そ、そんな……馬鹿な……こんな奴がダンジョンにいるなんて……貴様は一体」

「そんなに、わたしの事が気になるの?正体なんか知っても貴方はもうしんじゃうのよ?」

 カグヤは、カインをみて妖艶な笑みを浮かべてくすくすと笑った。

「ち、ちくしょう!馬鹿にしやがって!」

 カインは、馬鹿にされた事と恐怖で剣を振り回し、騎士の剣技とは程遠いもので斬りかかったのだった。その様子に呆れたカグヤは、涼しい顔で素手で難なく受け止め、カインの耳に顔を近づけた。

「貴方はもう……死ぬのよ。冥途の土産にわたしの正体を教えてあげる」

 カグヤは、カインの耳元で真祖だと打ち明けた。

「バ、バンパイアの真祖だと……ぐはっ!」

 カインは、カグヤの言葉に驚愕の真実を知ってしまい、思考が停止してしまった。



 そして、その瞬間カグヤはニコッと笑い、カインの腹にその拳を打ち込み腹を貫いた。カグヤは、その場にいた侵入者全員を始末して、身体を霧状に変えて、非常通路の抜け穴に消えていった。その場には、冒険者とカインの荷物や装備品だけが転がっていたのだった。



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