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29話 討伐隊壊滅

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 その場に残された指揮官や幹部は、無事に戻ってきた冒険者達を介抱した。そして、中の状況を聞きたかった。その中には食事係として、このダンジョン攻略に参戦していた者もいて、無事に帰ってきた冒険者を介抱していた。

「おい!しっかりするんだ」
「お前達だけが、中の情報を持っているんだぞ?」

「駄目だ……今は全然起きない……救護班。冒険者達をテントに運んでくれ」

「「「「「はっ!」」」」」

 冒険者は、救護班に担架で運ばれ、設置されたテントへと寝かされた。そして、情報が何もない為これからの事で会議が開かれたのだった。

「まさか、クイーンがこのダンジョンに出現しているなんて……」

「それよりも、帰ってきていないSランクが多数いるのだぞ?」

「それは分かっておる!しかし、彼らも冒険者だ。犠牲になるのも自己責任と納得してたはずだ!」

「今はそういう事を言っているんじゃない。Sランクの冒険者の数が減ったことが問題なのだ!彼らは各地から集まった高ランクの冒険者だぞ」

「それは分かっておる!だが、それを言っても今更どうにもならんだろ?今は、このダンジョンを攻略しないと後々どうしようもなくなるんだぞ?」

「二人とも!少しは冷静になるんだ。ここは一旦ここを離れるのが得策だと思わないか?」

「「何を言っておる!」」
「このダンジョンは、まれにみる凶悪なダンジョンだと証明されたんだぞ?だったら、どう攻略できるか……」
「そうだ!出来るだけ早く攻略しないと……」

「それは俺も同じ考えだが、もっと冷静になれと言っているんだ!実際Sランク冒険者の50%は帰ってきていないんだぞ?それも、あのクイーンが言った事を覚えているのか?」

「「……」」

「2階層に到達できた冒険者は、迷惑料として駒の一つにしたと言ったんだぞ?」

「そ、それは……」

「つまりだ。Sランクでも、優秀な人物をバンパイアに変えたという事だろ?返還してきた冒険者は、Sランクなのに1階層すら攻略できなかったこと言ってきているんだ」

「「うっ……」」

「そんな状況で、このダンジョンを攻略なんかできるわけないだろう?」

「だったら、あのクイーンの言う通りに放置するのか?」
「そんな事認めるわけいかないだろう!放置したら、スタンピードがいつ起こるかわからないんだぞ?」

「なんで、魔物に降伏しなきゃならん!これはもう国が動く案件だ!ギルドに、今回の被害を報告をして、国の騎士団を中心に、このダンジョンを攻略してもらわねば、俺達だけでこの場でごちゃごちゃ言っていてもしょうがないだろ!」

「お前は、冒険者としてのプライドがないのか?」

「はっ!あんた達ギルドの幹部は、ここで作戦らしきものを考えていたらいいかもしれないが、実際現場に赴くのは俺達冒険者だ。しかし、今のままでは、どうしようもない情況じゃないか。俺達は、町の安全のために集まっているが、何の攻略法もなく根性論で、このダンジョンの攻略は無理だよ」

「むぐぐぐ!」

「それにわかっているのか?」

「なにをだ!」

「後一時間で、あのクイーンが言った4時間が立つんだぞ?」

「「うっ……」」

「後一時間もしたら、陽が落ちる……もう言わなくとも、あんた達でもどういうことになるのか理解できるんじゃないのか?」

「ううううう……」

「俺達、冒険者は無駄死にだけはしたくない」

「何を言っている!お前達はもう下がれ!後は、わし達でこの後の作戦は話し合う!結果が決まったら報せるからもう下がれ」

 冒険者達から、詰め寄られた幹部達は、この後の話し合いにはパーティーリーダーを参加させなかった。会議を追い出されたパーティーのリーダー達は、これ以上幹部達についていけないと判断したのだった。

「おい……」
「ああ、わかっている。このままでは、運良く助かった命が無駄になる」
「みんなも各パーティーに戻り、俺達だけで撤退準備にはいるんだ」
「幹部達に分からない様に素早く静かに頼む」

「「「「「了解」」」」」

 討伐隊は、幹部の横暴に分散してしまった。そして、30分ほどで冒険者達は撤退してしまったのだった。

 そして、マサルのダンジョン前には、ギルド幹部のテントと会議が開かれている大きなテントだけが残っていた。





 1時間後、会議の開かれているテントに女性が入ってきた。

「あれだけ忠告したのに、何で貴方達は残っているのですか?」

「お前達は出ていろ!」
「会議中だ!作戦が決まったらおって伝える」

「何を言っているの?作戦を伝える?」

「なっ!貴様はクイーン?冒険者達はっ!グフッ……」

「わたしは、クイーンじゃないと言ったはずよ」

 クイーンと呼んだ幹部の一人は、カグヤに腹を貫かれて絶命した。

「冒険者達は何をやっておる!曲者だ!」

「大声で叫んでも、ここには貴方達しかいないわよ。他の人間は、貴方達と違っておりこうさんだったようね」

「「「「「なんだと……」」」」」
「誰もいないだと?そんなバカな!」

 幹部の一人が、テントの外を見ると、陽が落ちてランプや松明の明かりだけが明々と照らされて、そこには冒険者の代わりに、バンパイア達が真っ赤な目を光らせ、牙を見せて笑っていたのだった。

「なっ!あいつ等わし達を残して……」

「上司が無能だと、部下もついていけなくなるのはわたしもわかるわ。その点、わたしの主様は貴方達と違って頼りがいのある立派なお人よ」

「何だと……ダンジョンマスターは人間だというのか?」

「まあ、貴方達がそれを知ってももう遅いわ」

「ぐっ……わし等も、お前達の駒にしようというのか?」

「あはははは!貴方達は駒にもなりゃしないわ。先を見通せない馬鹿はいらない。後悔しながら死ねばいいわ」

 カグヤは、そういってバンパイア達に、ギルドの幹部達を捕らえてダンジョンに引きずり込んだ。

「や、やめろおおおおおおお!」

「わし達をどこに連れて行くつもりだ!」

「あんた達のような役立たずでも、少量ながらでもDPになれば、ダンジョンの成長の糧になるわ。遠慮しないでDPになりなさい」

「DPだと!なんだそれは?」

「死んでいく貴方に説明する義理はないわ。大人しくしなさい!」

「ぐはっ!」

 幹部達はダンジョンの入り口で、次々に殺されて少量のDPにされてしまったのだった。そして、ダンジョン前にあるテントや野営に必要な道具は、全てダンジョンの入り口に放置された。
 これら物品も、ダンジョンに放置される事で、全て吸収され綺麗さっぱり処分される事になる。

「ふう……やっと鬱陶しい下等生物がいなくなったわ。さてと、次は国が相手だと言っていたわね」

 カグヤは、そういってダンジョンの中へと帰っていった。


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