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11話 女神の感覚

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 ソフィアは、マサルの底知れぬ能力に呆気にとられながらも食事の準備をした。
 
「ソフィア?火はちゃんと起こせるか?」

「はい、大丈夫です。町で魔道具を買って頂いたので楽におこせますよ」

 マサルは、田舎での家事は本当大変だと聞いていたので、調理する為の魔道具を購入していたのだった。その魔道具はカセットコンロのようなもので、魔石をセットすることで手軽に火を起こせるものである。
 この魔道具が無ければ、薪をくべて火を起こさないといけないのである。

「そうか、それは良かった」

「ご主人様ありがとうございます。この魔道コンロが無ければ調理が大変でした」

「そうだな……薪から火を起こす作業は俺も知らないから、魔道コンロは高かったけど買って損はなかったな」

「ゴブリン程度の魔物の魔石でも1週間はもちますからね」

 ソフィアは、そう言いながら食事を作ったのだった。

「ルナ、ご飯できたわよ。ご主人様も待っているから早くきて!」

「はぁ~い。今いく」

 そうして、3人は同じ食卓についてご飯を食べながら、マサルは2人にこれからの事を話し始めたのだった。

「二人とも、そのままご飯を食べながらでいいから聞いてくれるか?」

「「はい」」
「それって、先ほどの聖属性魔法のことですね」

「ああ、それも含めてだな」

 ソフィアとルナはゴクリと喉を鳴らした。

「この村に来るまで、俺は君たち二人には魔道錬金術士だと教えられたがそれだけじゃないんだ」

「「どういう事でしょうか?」」

「実は、俺はこの世界に転移されてきて、本当は45歳のおじさんなんだよ」

「「はっ?」」
「何を言っているのですか?」

「信じられないかもしれないけどこれは事実であり、この世界の女神エステ様に拾われて、この世界に転移させてもらったんだよ」

「えっ⁉ご主人様は女神エステ様に会ったんですか?」

「ああ。それで、この世界で自由に過ごせるだけの力を貰って、この地に降り立ったんだ。今まで騙していてごめんな?」

「いえ……それはいいのですが……じゃあ錬金術の師匠がいて、山奥で生活していたというのも違うのですか?」

「ああ、錬金術師ならお店を開きのんびり生活が出来ると聞いていたんだが、何か聞いていた事と違ってきていてだな……今まで黙っていたんだ」

「聞いていたのと違う?」

「ああ……女神様から聞いていたのは、貴族達が錬金術師を取り囲むって言ってなかったんだよ。だから、俺は女神様の好意でスキルは最大レベルになっているんだ」

「「えええ!」」

「魔法は全属性を使え最大の5レベルだ」

「そ、そんな……オールラウンダーなんて聞いた事ないですよ?」

「それに俺は錬金術師じゃないんだよ」

「でも、ご主人様はポーションを作れるんですよね?」

「ああ、だけど薬も作れる薬師でもあるんだ」

「「魔道練金薬師ってことですか?」」

「そういう事になるな」

「そ、そんな……それが貴族にばれたらご主人様は……」

「ソフィアのいう事を聞いていたら、本当にまずいなと思って、ここに来るまで黙っていたんだよ」

「それは、英断だったとおもいます。もし、宿屋で話していて誰かに聞かれていたら、こんなにスムーズに旅は出来ませんでしたよ」

「だけど不思議な事もあるんだ」

「なんでしょうか?」

「女神様は、錬金術師は生活に不便はなく、どこに行っても歓迎されるからって言っていたのに、実際は錬金術師は町にはおらず、みんな田舎に引っ込んで細々と生活しているのがおかしいと思うんだよ」

 これには訳があった。女神の言っていたのは数百年前の情報だった。女神も色々と忙しく下界の様子をずっと見ていれるわけではない。
 そして、女神の数百年は人間の1時間ほどと言っておかしくないのである。そのため、錬金術師が不遇の立場になっているとは、女神にとっても寝耳に水のようなものだった。

「それって、女神様も知らなかったんじゃないのですか?」

 ルナは、食事をとりながら無責任に言った。

「女神様が知らない?神様だぞ?」

「でも、その可能性はあるかも……」

「ソフィアまでなんだよ。女神様がそんなことある訳……」

「しかし、女神様がずっとこの世界を見ている補償など無いじゃないですか?」

「ルナは何故そう思うんだ?」

「だって、あたしなんかは冒険でへまをしたのが悪いけど 不運が重なって奴隷に堕ちちゃったし、もし女神様が人間界をずっと見ているのなら スタンピードが起きた時でも教えてくれてもいいと思うんだけど」

「確かに教会があるんだから、その町で起きる不運が起こりそうなら、啓示として司祭さまや司教様が聞く事もあると思うけど、そんな事は一切聞かないわね」

「そう思うでしょ?あたしは信者ではないから、昔からその辺の事はおかしいなあと思ってたのよね。もし奴隷に落とされそうになった時、不運が重ならなければ助かったと思うもん!」

「それはそうかもしれないけど、ルナは奴隷に堕ちたことでご主人様と会う事が出来たんでしょ?ひょっとしたら女神様が会わせてくれたかもしれないじゃない」

「じゃあ、ソフィアは女神様はずっと下界の様子を見ているというの?」 

「絶対そうとは言わないわよ。だけど、放置しているとは思わないわ」

「だけど、ご主人様が言っている事と、今この世間の普通がかけ離れているじゃない」

「私はこう思うの」

「どう思っているの?」

「時間の流れが違いすぎるんじゃないかと思う。私のようにエルフ族と、ご主人様のヒューマン族としての時間の感覚は違うわよね?」

「「あっ……」」
「た、たしかに!」

「女神様の情報は数百年前の物だとしても、女神様にしてみれば去年の事だったのかもしれないよ」

 エルフ族のソフィアだったからこその意見だった。

「な、なるほど……女神様は俺に言っていたことは、数百年前の事だったが感覚がずれていたというのか……」

「そうです。わたしはヒューマンでいえばまだ成人したばかりですが、実際はその10倍は生きていますからね。もし、ルナが3年ほど前の事を懐かしんで言っていても、私にとっては3日前の事のように感じます」

「なるほど、女神様なら数万年数億年生きていてもおかしくないから、ちょっと目を離したって言っても、数百年経っていてもおかしくないってことか……」

「そういうことです」

「って事は、僕はむっちゃやばい情況になるって事か……」

「はい……ですから、ご主人様は薬師としての能力は出さない様にして魔法も当初通り水属性だけ使ってください」

「わかったよ」

「魔法も1レベルが使えるの効果で使ってくださいね」

「つまり、ウォーターだけでポーションを作る時だけってことか」

「「そういうことです」」

 マサルは、二人にきつく言われたのだった。マサルの能力がばれたら、貴族だけではなく王族が動く事になるのは絶対だったからだ。

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