上 下
10 / 53

10話 生活拠点

しおりを挟む
 マサルは、村のはずれに一軒の家を貰い、村長にここで店を開くといいと言われた。

「本当にこの家を貰っていいのですか?」

「あー、かまわんかまわん。中は結構汚れておるし壁も穴が開いておるでな。自分達で掃除や修理をせな住む事は出来んから好きにしておくれ」

 村長は無責任にカラカラ笑っていた。町ではこういった物件はギルドがちゃんと管理をして、売り物にしているがこういった村では住人が増える事もまずないので管理はまずしていないのが普通である。
 当然、村には領主などいない為、税金なども年に一回収穫物を納める感じでどんぶり勘定のようなものだった。

「村長ありがとうございます」

「いやいや、こちらこそありがとよ。錬金術師様が移住してくれるというだけで、その村は盛り上がること間違いないからな」

 村長は満面の笑顔でそう答えた。実際、怪我をしても治療ができるだけで全然違うのである。大怪我をした場合、教会に治療を頼むと法外な治療費を請求されるためとてもじゃないが連れてはいけないのである。
 たまたま冒険者がいても、ヒーラーは数が少ない。回復魔法を使える人間も、その価値を知っている為、治療費を請求されるととんでもない事になる。
 
 またポーションもそれなりに値は張るが、最下級ポーションなら村人でも購入することが出来る為、行商で売りに来るポーションより断然安く購入できるため、村としてもすごく有り難い事になる。

「あーそうそう、家の修理に使う資材置き場はちょっと離れておる。自由に使っていいが頑張っておくれ」

 村長はそう言って、家に帰ってしまった。

「じゃあ、ソフィアは家の掃除とかをしてくれ」

「わかりました」

「ご主人様あたしは?」

「ルナは俺と一緒に、村で買い物と資材置き場に行こう」

 マサルは、村の人達に挨拶をして回った。顔を繋げる為の大事な行動で最初は素っ気なかったが、マサルが錬金術師と分かると村の人間は笑顔となった。

「これからよろしくお願いします」

「いやぁ。まさか、この村に兄ちゃんのような若い人間が住んでくれるとは思ってもいなかったよ。こちらこそよろしくな」

「いえいえ、こちらこそ若輩者ですが色々教えてください」

 マサルは、会った村人一人一人丁寧に挨拶をしていった。そして、資材置き場でちょうどいい材木などを、収納箱に収納してしまった。

「ルナは修理とかできるのか?」

「まあ、穴をふさぐぐらいなら大丈夫ですよ。だけど、ちゃんとした修理は本業の大工さんに頼むのがいいんじゃないですか?」

「そうか……今は修理で我慢をするか……」

「そうするしかありませんね……」

 マサル達は、色んな材料を収納箱に入れて家に帰ったのだった。さすが、錬金術師だけあって挨拶をした時、村人たちはその重要性が分かっていて笑顔になってくれた。そればかりか家で収穫された野菜まで、快く安く売ってくれたりしてくれたのだった。普通なら、よそ者という事で距離を置かれたり、高額で売られたりしてもおかしくなかった。

「でも、食べ物を売って貰えてよかったですね」

「ああ、そうだな。旅をしてきて魔物の肉もあるし当分は大丈夫だな」

「そうですね。ご主人様のおかげで普通に生活できそうですしね」

「そういえばルナは明日からは森に入る事は出来るか?」

「大丈夫ですよ。でも、どうしてですか?」

「この周りの探索と、薬草採取を手伝ってほしいんだ」

「それならあたし一人で十分ですよ」

「いや、ルナは大丈夫かもしれないが、何が起こるかわからないからな。二人で探索をして周りを把握しときたい」

「分かりました。ソフィアはどうするのですか?」

「ソフィアは家の事をしてもらうに決まっているだろ?それにエルフ族なら家の庭に畑を作ってもらいたいしな。植物系には自信持ってたから大丈夫だろ?」

「なるほど。だから、この村に来る前に野菜の種や、クワなどの農作業道具を買ってきていたんですね」

「まあ、自給自足だと聞いていたからな。全部ソフィアの案だよ」

「そういえば、さっき資材置き場でドラム缶を拾ってましたが、あんなの何にするのですか?」

「あれか?あれは風呂だよ。やっぱり風呂に入りたくてな」

「そんなのどこに置くのですか?」

「家の中に土間ががあっただろ?そこに置いたらいいと思って、お湯は俺が出せばいいんだからな。十分だろ?」

「た、確かに……」

「ルナもソフィアも風呂に入ったら一日の疲れが吹っ飛ぶと思うぞ」

「えっ?」

「えっ?ってなんだよ?風呂に入りたくないのか?」

「いえ……あたし達も入ってもいいのですか?」

「そりゃ当り前だろ?なんで駄目なんだ?」

「だって、あたし達は奴隷ですし……お風呂だなんて貴族様ぐらいしか入れない物なんですよ?」

「ルナもソフィアも僕の家族なんだよ。そんなこと気にする必要なんかないよ」

「あ、ありがとうございます」

 ルナは、マサルの気遣いにお礼を言ったのだった。


 そして、家に着いたマサルはソフィアに村で売ってもらった野菜や肉を渡して料理を頼んだ。ルナは資材置き場で持ってきた材料で、家の修繕をし始めたのだった。
 村の生活は結構不便で、生活水も井戸から水をくむところから始まるため、土間には大きな瓶が置いてある。
 ソフィアも水属性魔法を使えるが、その瓶に水を貯める事は出来ない。そんな事をすれば、MPが無くなり気絶してしまうからだ。

「ソフィア?どこに行くんだ?」

「生活水を組みに、井戸まで行かないと瓶の中に水がありませんので……」

「それなら俺がやるから、料理の準備をしておいて」

「何を言っているのですか?こんな事は奴隷の仕事です。ご主人様はゆっくり部屋で休んでいてください」

「まあまあ、井戸に行くわけじゃないからさ」

 マサルは瓶に【クリーン】をかけて綺麗にしてしまった。

「はっ?何でご主人様がクリーンを?それって聖属性魔法じゃないですか?」

「まあ、今まで黙っていたけど、その理由は晩御飯の時に言うよ。とりあえず、家の事をやってよ」

「分かりました……」

 マサルは、水瓶をクリーンで清掃し、まるで新しく買ったばかりのような綺麗な水瓶にして、そこに水魔法の【ウォーター】で綺麗な水を満タンにしてしまった。
 それを見たソフィアは、目を見開きその場に固まってしまったのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ
ファンタジー
 全世界で唯一無二の覇権国家を目指すべく、極端な軍備増強を進める帝国。  その辺境第十四区士官学校に一人の少年、レムダ=ゲオルグが通うこととなった。  血塗られた一族の異名を持つゲオルグ家の末息子でありながら、武勇や魔法では頭角を現さず、代わりに軍事とは直接関係のない多種多様な産業や学問に関心を持ち、辣腕ぶりを発揮する。  その背景にはかつて、厳しい環境下での善戦を強いられた前世での体験があった。  群雄割拠の戦乱において、無能と評判のレムダは一見軍事に関係ない万能の知識と奇想天外の戦略を武器に活躍する。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。 クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。 どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

処理中です...