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外伝
① システィナこの世を去る
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ここは、ケンジが活躍していたFreedomではなかった。あの時代からすでに1000年近くが経ち、ケンジはその地位を子供に継承し、山の中に身を潜めて静かに生活をしていた。
「ご、ご主人様……先に旅立つことをお許しください。お迎えが近くなってきたようですね。このシスティナ、ご主人様と一緒になれて本当に幸せでした」
「システィナ……そんな事言うな。こちらが礼を言う事だよ。俺もシスティナが側にいてくれて本当に幸せだったよ」
「勿体ない言葉です……これからはあの世でご主人様を見守らせていただきますね」
「もうそんな事を言うな!お前は長命種族のエルフだろ?まだまだ俺の側にいてくれよ!」
ケンジの側で仕えている人間は、もうシスティナとユリア、そしてアンドロイドであるイチカ達だけだった。
マイマールやギル達もすでにこの世を去っており、魔物のハヤテやツバキ達もその生を全うし、あの世に旅立っていた。
そして、唯一残っていたのが寿命のあるシスティナだったのだ。しかし、そのシスティナも命が尽きようとしていたのだった。
「ご主人様……私からの最後のお願いを聞いて下さりませんか?」
「最後なんて言うな!お前はまだまだ生きれるんだ。ほら!リターンポーションを飲むんだ。1年若返ることが出来るんだ」
システィナは、首を横に振った。
「私はもう十分幸せな人生を送りました。それよりご主人様、いつまでここにくすぶっているおつもりですか?」
「いつまでって……俺はもう表舞台に立つつもりはないよ……」
「本当にそれでよろしいのですか?わたしはご主人様が、いつまでもそのようにしているのは違うと思います」
「なんで、そんな事を言うんだよ……」
ケンジは、マイマールが死んでしまいそれから次々自分を残し、セバスやギルスレインがこの世を去った事で表舞台から姿を消したのだった。
いまや、1000年という月日が流れ、自分の孫さえももういない。ケンジは完全に世の中に興味を無くしてしまっていた。
「ご主人様?本当にそれでよろしいのですか?ご主人様の人生はまだまだこれからなのですよ?」
「それは分かっている。俺はハイヒューマンだから、少なくとも5000年は生きる。だが……」
「ご主人様よく聞いて下さい。貴方はまだ人生の折り返し地点にもついていないのですよ?それをもう世捨て人のようになるおつもりですか?初心を思い出してください。このガイアースに来たときの事を……そして、人の別れを恐れないで……」
「……」
「いいですか?あなたには、人生を共のできるユリアがまだいるしイチカ達もいます。なにも悲しがることはないのですよ」
「「「「「「そうです!私達がずっと支えますから!」」」」」
システィナの言葉に、ユリア達がケンジに寄り添うのだった。ユリアはハイエルフである。永遠の時の中を生きる種族であり、ケンジと同じく1000年前と変わらぬ姿でそこにいたのだった。イチカ達もアンドロイドであり、メンテナンスをちゃんとしている為、当時のままの姿でケンジを見つめていた。
「ご主人様。貴方を待っている人間は世の中にごまんといるのですよ?」
「何で俺をそんなに表舞台に立たせたいんだよ……」
「貴方は、この世界の希望であり拠り所です。今の世の中をちゃんと見てくれませんか?」
「俺はもう……Freedom統一国家からは退いた人間だ。今更……」
「ご主人様がそんなこと思っていないのは、ここにいる人間全て知っていますよ!」
「うぐっ……」
「もう一度ご主人様が……いえ、ケンジ様が政権を取り戻し世界を平和にしてください。これが最後のシスティナのお願い事です」
「卑怯だぞ……そんな事を言うなんて……」
「はい……私は卑怯です。ご主人様はわたし達の言う事なら何でも聞いてくれますからね……でも、わたし達はケンジ様には、こんな人生を送って貰いたくないのです」
「そんなこと……俺はお前達だけと生活してても楽しいぞ……」
「ふふふ。ご主人様の嘘などすぐにわかりますよ。何百年連れ添ったと思っているのですか?」
「ぐふっ……」
「ケンジ様、今のFreedom統一国家は最悪です……統一する前の帝国よりもです。あまりに大きくなり過ぎた国家をなんとかしたいと思っているのでしょ?」
「そ、それは……」
「お願いします……ケンジ様。わたしの最後のお願い事です……もう一度、表舞台に立ち今の腐りきったFreedom統一国家を、世界を救ってください……」
「……」
「ユリア、イチカ、フタバ、ミキ……ケンジ様の事を頼みましたよ」
「「「「「システィナ……」」」」」
「ケンジ様……世の中は楽しい事で溢れています。それを思い出して……」
そして、システィナはケンジに腕を伸ばした。ケンジはその手を優しく握り、その優しさにシスティナは笑顔を向けたのだった。そして、その手は力を無くしケンジの手から離れたのだった。
「シ、システィナ?おい……返事をしろよ……なあってっば……寝たふりするのはズルいぞ……」
ケンジは、瞳に涙を溜めて、システィナを揺さぶった。その後ろでは、ユリア達も声を押し殺して泣いていたのだった。
システィナ、享年1153歳 ケンジに手を握られて笑顔でこの世を去った。ケンジの護衛でタンカーを務め、4次職である歌姫185レベルという功績をのこした。
そして、ケンジはシスティナを火葬し、粛々と葬式を行った。
「システィナ……最後にとんでもない事を言って先に逝きやがって……」
『ご主人様なら大丈夫……あたしはいつも見守ってますよ』
ケンジに風が吹き、システィナの声が聞こえたようだった。ケンジは何か吹っ切れたような感じで笑顔となり、森を見つめて口角があがっていた。
それから1ヶ月後、ケンジは朝早く目覚めていた。
「ご主人様、こんな朝早くどうかしたのですか?」
「ユリア、それにイチカ達も長い間悪かったな……」
「「「「「「えっ⁉……」」」」」」
「い、いえ……そんな事謝らないでください」
「俺は、もう一度旅立つよ。システィナの遺言を叶えようと思う。旅立つ準備をしろ」
「「「「「「ご主人様!」」」」」」
ユリア達は、ケンジが旅立つと聞き笑顔で返事をしたのだった。
「ご、ご主人様……先に旅立つことをお許しください。お迎えが近くなってきたようですね。このシスティナ、ご主人様と一緒になれて本当に幸せでした」
「システィナ……そんな事言うな。こちらが礼を言う事だよ。俺もシスティナが側にいてくれて本当に幸せだったよ」
「勿体ない言葉です……これからはあの世でご主人様を見守らせていただきますね」
「もうそんな事を言うな!お前は長命種族のエルフだろ?まだまだ俺の側にいてくれよ!」
ケンジの側で仕えている人間は、もうシスティナとユリア、そしてアンドロイドであるイチカ達だけだった。
マイマールやギル達もすでにこの世を去っており、魔物のハヤテやツバキ達もその生を全うし、あの世に旅立っていた。
そして、唯一残っていたのが寿命のあるシスティナだったのだ。しかし、そのシスティナも命が尽きようとしていたのだった。
「ご主人様……私からの最後のお願いを聞いて下さりませんか?」
「最後なんて言うな!お前はまだまだ生きれるんだ。ほら!リターンポーションを飲むんだ。1年若返ることが出来るんだ」
システィナは、首を横に振った。
「私はもう十分幸せな人生を送りました。それよりご主人様、いつまでここにくすぶっているおつもりですか?」
「いつまでって……俺はもう表舞台に立つつもりはないよ……」
「本当にそれでよろしいのですか?わたしはご主人様が、いつまでもそのようにしているのは違うと思います」
「なんで、そんな事を言うんだよ……」
ケンジは、マイマールが死んでしまいそれから次々自分を残し、セバスやギルスレインがこの世を去った事で表舞台から姿を消したのだった。
いまや、1000年という月日が流れ、自分の孫さえももういない。ケンジは完全に世の中に興味を無くしてしまっていた。
「ご主人様?本当にそれでよろしいのですか?ご主人様の人生はまだまだこれからなのですよ?」
「それは分かっている。俺はハイヒューマンだから、少なくとも5000年は生きる。だが……」
「ご主人様よく聞いて下さい。貴方はまだ人生の折り返し地点にもついていないのですよ?それをもう世捨て人のようになるおつもりですか?初心を思い出してください。このガイアースに来たときの事を……そして、人の別れを恐れないで……」
「……」
「いいですか?あなたには、人生を共のできるユリアがまだいるしイチカ達もいます。なにも悲しがることはないのですよ」
「「「「「「そうです!私達がずっと支えますから!」」」」」
システィナの言葉に、ユリア達がケンジに寄り添うのだった。ユリアはハイエルフである。永遠の時の中を生きる種族であり、ケンジと同じく1000年前と変わらぬ姿でそこにいたのだった。イチカ達もアンドロイドであり、メンテナンスをちゃんとしている為、当時のままの姿でケンジを見つめていた。
「ご主人様。貴方を待っている人間は世の中にごまんといるのですよ?」
「何で俺をそんなに表舞台に立たせたいんだよ……」
「貴方は、この世界の希望であり拠り所です。今の世の中をちゃんと見てくれませんか?」
「俺はもう……Freedom統一国家からは退いた人間だ。今更……」
「ご主人様がそんなこと思っていないのは、ここにいる人間全て知っていますよ!」
「うぐっ……」
「もう一度ご主人様が……いえ、ケンジ様が政権を取り戻し世界を平和にしてください。これが最後のシスティナのお願い事です」
「卑怯だぞ……そんな事を言うなんて……」
「はい……私は卑怯です。ご主人様はわたし達の言う事なら何でも聞いてくれますからね……でも、わたし達はケンジ様には、こんな人生を送って貰いたくないのです」
「そんなこと……俺はお前達だけと生活してても楽しいぞ……」
「ふふふ。ご主人様の嘘などすぐにわかりますよ。何百年連れ添ったと思っているのですか?」
「ぐふっ……」
「ケンジ様、今のFreedom統一国家は最悪です……統一する前の帝国よりもです。あまりに大きくなり過ぎた国家をなんとかしたいと思っているのでしょ?」
「そ、それは……」
「お願いします……ケンジ様。わたしの最後のお願い事です……もう一度、表舞台に立ち今の腐りきったFreedom統一国家を、世界を救ってください……」
「……」
「ユリア、イチカ、フタバ、ミキ……ケンジ様の事を頼みましたよ」
「「「「「システィナ……」」」」」
「ケンジ様……世の中は楽しい事で溢れています。それを思い出して……」
そして、システィナはケンジに腕を伸ばした。ケンジはその手を優しく握り、その優しさにシスティナは笑顔を向けたのだった。そして、その手は力を無くしケンジの手から離れたのだった。
「シ、システィナ?おい……返事をしろよ……なあってっば……寝たふりするのはズルいぞ……」
ケンジは、瞳に涙を溜めて、システィナを揺さぶった。その後ろでは、ユリア達も声を押し殺して泣いていたのだった。
システィナ、享年1153歳 ケンジに手を握られて笑顔でこの世を去った。ケンジの護衛でタンカーを務め、4次職である歌姫185レベルという功績をのこした。
そして、ケンジはシスティナを火葬し、粛々と葬式を行った。
「システィナ……最後にとんでもない事を言って先に逝きやがって……」
『ご主人様なら大丈夫……あたしはいつも見守ってますよ』
ケンジに風が吹き、システィナの声が聞こえたようだった。ケンジは何か吹っ切れたような感じで笑顔となり、森を見つめて口角があがっていた。
それから1ヶ月後、ケンジは朝早く目覚めていた。
「ご主人様、こんな朝早くどうかしたのですか?」
「ユリア、それにイチカ達も長い間悪かったな……」
「「「「「「えっ⁉……」」」」」」
「い、いえ……そんな事謝らないでください」
「俺は、もう一度旅立つよ。システィナの遺言を叶えようと思う。旅立つ準備をしろ」
「「「「「「ご主人様!」」」」」」
ユリア達は、ケンジが旅立つと聞き笑顔で返事をしたのだった。
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