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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

134話 就活の苦労

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 グドンとガルドランは、人知れず処刑された。そして、フリーの町では保育園という事業が発表された。これには旦那を亡くし働きたくとも職場がなかなか見つからず、苦労している未亡人達に喜ばれたのは当然だった。
 保育士達を募集したところ、やはりFreedom国営と言う事もあり40人の募集に対し、集まった人間は4000人以上ととんでもない数が集まったのだ。保育所は10ヶ所とギリギリの予算で建てたが、それでも400人の合格者だった。

 その応募者の中には、マリアンヌもいたが落選してしまった。

 ケンジは、何とかして国民達が楽にならないかと色んなことを考えたが、今度はそれが国民達の貧富の差が大きくなる事に繋がったのだ。

 町が発展すれば、上手く行く人間はどんどん裕福になるが、貧乏から抜け出すことが出来ない人間も数多くいたのである。
 当初、マリアンヌはもし保育士に選ばれなくとも、マイクとマリンを保育所に預けることが出来れば、新しい職場を見つけることが出来ると思っていた。
 しかし、現実はそう甘くはなかったのである。ここはフリーの町で、人口がマリアンヌが今までいたムンシャートの町とは比べ物にならない程いる。その為、子供を預ける事の出来ない母親も続出したのである。

「まさか……マイクたちを預けることが出来ないなんて……」

 マリアンヌは、まさかの出来事に顔を青くしてしまった。こんな事になるとは思いもしなかった。ケンジから当面の生活費を貰ったとはいえ、このままではまた生活が困窮すると焦りがでてきたのだ。

 マリアンヌは、NFGの窓口に何回も相談しに行ったのだが、職場を案内してもらえるのだが子供が幼すぎる為、合格が出来ないでいた。

「母ちゃんおかえり」
「お母さんおかえり」

「ただいま。いい子にしてたかい?」

「うん。今日は近所に行って遊んでた」
「それでね。今日は孤児院の子とお友達になれたんだよ」

「へえ、それはよかったねえ」

「明日も遊ぶ約束をしたんだよ」
「うん!」

 マリアンヌは、マイク達の笑顔に情けない母親だと思い涙が出そうになった。しかし、泣いてばかりもいられないと思い、明日こそは職場を見つけようと思ったのだ。

 それから、3ヶ月が経ったがマリアンヌは今だ職を見つけていなかった。

「ケンジ様から、頂いたお金はまだあるけど、このままでは本当にどうしようなくなるわ……」

 このころになると、マリアンヌもフリーの町の生活に慣れてきていた。しかし、知り合いのいないマリアンヌにとって孤独そのものであり、就職活動しかしていなかった。
 ムンシャートの町なら知り合いはまだいるかもしれないが、3年は追放の身である。帰る事さえできないでいた。

 そして、今日はマリンが熱を出して動けないでいた。

「お母さんごめんね……」

「そんな事気にしないの。マリンは早く元気になる事だけ考えていたらいいのよ」

 マリアンヌはマリンの頭を優しく撫でていた。マリアンヌはもっとお金があったら、熱覚ましの薬を買って上げれるのにと悔やんだ。薬屋で働いていただけあって、癒し草さえあったらと悔やまれたのだ。

 マリアンヌは、このままではだめだと焦っていた。何とかして住み込みのできるお店を見つけて、マリン達が何かあった時すぐに駆けつけることが許される職場を見つけないと、本当にムンシャートの町の時みたいに住む場所も無くなってしまうと思ったのだ。
 
(やはりもう一度ケンジ様に頼ろうか……いやいや、面会などいまさらどうやってできるの?)

 マリアンヌは、あの時何で断ったのか後悔していたのだった。いまさら後悔してもすでに遅かった。

 すると、マリアンヌの住む宿屋の扉がノックされたのだった。

「はい?開いてますよ。」

「失礼します」

 部屋に入ってきたのは、なんとケンジとシスティナだった。

「こ、国王様⁉何でこんなところに?」

「うん、やっぱり気になってな?やっぱりこういう事になっていたか……」

「なんでここに?」

「子供、熱が出ているのか?」

「あっ、はい……二日前から熱が下がらなくて……」

 ケンジは、マリンに※①【キュアディジィーズ】を唱えた。するとマリンの体長は良くなりベットから跳び起きたのだ。

「マリン大丈夫なの?」

「うん!体がすっごく楽になった」

「魔法で治したからもう大丈夫だぞ」

 ケンジは、病気が治る魔法と説明した。マリアンヌはすぐにケンジに頭を下げお礼を言ったのだった。

「重ね重ね本当にありがとうございます」

「それで、生活の方は大丈夫なのか?」

「えっ?」

「本来なら、ご主人様がこうしてくる必要などないのですよ」

「システィナ!」

「ですが、ご主人様は忙しい身であり、わざわざこんな事に来る必要……」

「システィナ、やめるんだ!」

 システィナは、なんでケンジがわざわざ一回断られた相手にここまでする理由が分からなかったのだ。

「国王様!申し訳ありません!国王様の好意を無下にしてしまい、結果このざまです。許されるならもう一度ご慈悲のほどを!」

 マリアンヌは、ケンジにすがるように頼み込んだのだった。しかし、システィナはマリアンヌの言葉を遮るように発言をしたのだった。

「ご主人様、子供も治したのでこのまま帰りましょう!」

「ったくお前は、少し黙っていろと言っているだろ」

「ですが……」

「どうか、子供達を保育園に預からせてもらえるだけでも……」

「マリアンヌさん、今更子供達を保育園にねじ込む事は出来ないよ。それこそ依怙贔屓と言われ、今度はマリアンヌさんの子供達が、保育園でいじめが起きてしまう」

「そ、そんな……」

「だからそうならない様に、まだ皆が分からない前に、俺は貴女を保育園にねじ込みたかったんだ。話は変わるがここにきて、マリアンヌさんは知り合いを作ったりしたか?」

「いえ……NFGの窓口に相談と、この宿屋に帰る往復だけで精いっぱいでした」

「俺は、あの時一人で抱え込むなとも言ったつもりだったんだがな……」

「申し訳ございません……」

「まあいいや。そこの子供二人を連れて、一緒に来てもらえるかい?」

「あの……どこに?」

「本当はこんな事をしちゃいけないんだろうけど、職を案内してあげるよ」

「それって?」

「国営事業はもう無理だぞ?後から入ってくると君が変に思われ、居心地が悪くなってしまうからな?」

「それでは……いったいどこに?」

「まあ、ついて来たらわかるよ」

 ケンジに言われて、マリアンヌ達はついていくしかなかった。ケンジに連れられついた場所は、ここも又大きな屋敷であり門番には、幾人ものの施設兵団の兵士が立っていた。

「あ、貴方は国王陛下様⁉何故こんな場所に?」

「いつもいきなりお邪魔してごめんね。ガンスさんはいる?」

「はい!いらっしゃいますこちらにどうぞ!」

 施設兵団の兵士は緊張で直立不動で、ケンジの応対をしていた。

「あの……ガンスさんってどういうお方なのですか?」

「今は引退して、気の良いおじいちゃんだよ」

 すると、ケンジが来たと聞いて、ガンスが急いで豪快に笑いながらでてきた。

「がははははは!坊主よく来たな!まあ上がれ。上がれ」

「国王様に坊主……どういう人?」

「ガンス様はいつもあんな感じですよ」

「で、でも……」

 ケンジ達は、ガンスに引き連れられ奥の客室に通されたのだった。

「坊主、今日は何か用か?そちらの女性と関係があるのか?」

 ガンスは、もう70は過ぎているのにその覇気はいまだ健在で、本当に引退したのかという程元気である。

「こちらマリアンヌさんと言う女性で、ムンシャートの事件の犠牲者の一人です」

「何⁉あのムンシャートの犠牲者だと?」

「さすが、ガンスさんは知っていましたか?」

「坊主、馬鹿にするでない。現役を退いたと言っても情報は集めておるわ」

「マリアンヌさん、こちらガンスさん。メイガン商会の会長さんだよ」

「えっ⁉メイガン商会の?」

「がはははは!そういう反応をしてくれるのは嬉しいのう!」

「は、初めましてマリアンヌと申します」

「そうかお主があの事件の……それで坊主?この人をワシの所で雇えと言う事か?」

「さすが、ガンスさん話が早い。何とかなりませんか?」

「坊主……何とかなりませんかって、お主の頼みじゃわしは断る事は出来んよ。だが、理由を聞きたいのう?何でその人を?」

「それはですね。今、この国は国民が普通に生活が出来る様にしたいのですが、現実はまだまだです」

「まあ、そうだな。坊主はよく頑張っておるよ。学校の時も驚いたが、今度出来た保育所あんな画期的な物は今までなかったからの」

「しかし、その施設に入れた子供は一部です。入所を希望したのはその何倍ものの数です。反対に言えばそれほどまでに生活が満足に出来ずにいる国民がいるという事です」

「そういうことだな」

「ここにいるマリアンヌさんも、子供を二人も抱えて生活が出来ずにいる1人です」

「ふむ」

「それで、俺は考えていることがあるんですが、それにはガンスさんのような人達の協力です」

「どういう事だ?」

「商会の求人雇用の拡大ですよ」

「はあ?」

「いいですか?この世界は男性は寿命はかなり低いですが、女性は長いです」

「まあ、それは当然だな。わしも運がよく生き残れただけで、運が悪ければ行商中に命を落としていただろうしな」

「つまりです。フリーの町だけでも、あれだけ働きたいが働けない女性がいると言う事です」

「な、なるほど……しかし、子供達がいるという事で足かせになっているだろ?経営者はそこを嫌がっているんじゃないのか?」

「しかし、商会は住み込みを基本やっていないではありませんか?せっかく見つかった職業なら女性達は一生懸命働くと思いますよ?」

「つまり坊主は、商会に住み込み従業員を推奨せよと言っておるのか?」

「そういうことです」

「まあ、いい考えだとは思うが、商会の経営者はまず動かんと思うぞ。やはり、子供が熱を出したりした場合、母親は子供につきっきりになる。それで仕事を休まれては誰かにシワ寄せになるからな。それならば、そういう問題がない人間を雇うのが普通だろ?」

「ガンスさんも年を取られたみたいですね」

「な、なんだと!わしは引退したがまだ健在じゃぞ!」

「まあまあ、話は最後まで聴いて下さいよ。俺は、商会だけに押し付けたりしませんよ」

「どういう事じゃ?」

「つまり、国としては保育園の事業を立ち上げた。ですが、それだけでは手は足りないのです」

「なるほどなあ!そいつなら商会も動こうとするかもな」

「でしょ?」

 マリアンヌとシスティナは、二人の会話がさっぱり分からなかった。ガンスも頭の回転がはやく、ケンジの言いたいことを瞬時に悟り、会話を進めていくからであり、会話が繋がっておらず二人だけが分かっているのである。

「わかった、それならばマリアンヌをうちの商会で雇おう」

 それを聞き、マリアンヌはケンジとガンスに頭を下げたのだった。



 それから、各商会にはこの話がまわり、未亡人の従業員を特別枠で雇うと一部税金が免除されるという保証制度を用いてほしいと通達がFreedom国からでたのである。
 商会なら、独身寮があるのでそこを利用すれば可能であった。フリーの町には、各町の商会の本店が一堂に集まっていたので、これもまた幸いとなった。




 国民達は、国の補償に更にわきあがり、国は更に発展をしていくのだった。しかし、その裏で新たな犯罪が出てくることになる。

 
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